使い捨て上等強化人間兵士は生き延びれるのか? 作:⚫︎物干竿⚫︎
はいどうも。この間の「諸共死ね」から3日が過ぎました。あれから特に出撃も無く穏やか(当社比)な日々を過ごしています。
這々の体で帰って来た俺達に上から下された指示もまた何事も無かったかのように「別命あるまで休養と補給」である。マジで上はただの消耗品としか俺達を見ちゃ居ないらしい。これならまだマッド共の方が俺達が長生き出来るように色々と考えてるぞ。
ちなみに前の作戦で殉職した日下部准将(2階級特進)の元部下の連中はバカも含めて俺達の隊に統合される事になった。だが、どいつもこいつも頼りにしてた日下部准将の戦死と諸共面砲撃のせいではっきり言ってまともに戦える状態じゃない。
「弾除けくらいにしかならないな」
そいつらに対する東少佐のセリフがこれだ。完全に戦力としては計算に入れていない。完全に戦意を喪失していて、薬をぶち込んでバーサーカー化させて突っ込ませるくらいしか使い道が無い。今も与えられた部屋に閉じこもって出て来る様子が無い。流石に飯くらいは食いに出て来てるがそれ以外はもうずっとだ。
「あー終わった終わった。水ちょうだい」
食堂で金田と戦場での判断力を鍛えるための将棋だかチェスみたいな感じのボードゲームに興じていると、作業用のツナギ姿の森野がやって来た。そして、金田が渡したコップに入った水を一息に飲んで俺の隣に座る。
「新しい狙撃重砲の整備大変だったよ。まぁ、その分納得いく仕上がりにはなったんだけどさ。あ、ついでに金田と枢木の突撃重砲もやっといたからまた確認よろしく」
装備の扱いの一環で、一応は一通り装備類のメンテも仕込まれているから俺達は俺達でやろうと思えば出来る。今みたいに出撃の間隔が空いてないと出来ないだけで。
「お、悪ぃな。ま、その分は戦場で返させて貰うぜ」
「流石に命預ける道具をあんな欠陥整備で出して来るような奴らに任せられないよ」
「そう言ってやるなって。整備班連中も毎度毎度、機動甲冑メンテして武装までってやってんだから手が回り切らない事もあるっての」
「そうだけどさ。この間の作戦、冗談抜きで死んでもおかしくなかったじゃん」
結局、この前の作戦で日下部准将の部下連中で生き延びたのは3人だ。日下部准将と東少佐のバケモンコンビのオマケにひっついてた奴と俺達のとこに来たバカと後1人。本当はもう1人居たが運悪く降って来た砲弾に当たってミンチすら残らなかった。
「上は俺らが何人くたばろうがどうでも良いんだろ?明日のために必要な人材とやらはストック溜め込んでんだからよ」
「戦況優勢の寒いギャグ誰が笑うんだろな………あ、死んだわ」
「っし、ガム寄越せよ」
「へいへい」
シート状のただ甘いだけのガムを金田に手渡す。こんなのでも数少ない嗜好品だから割と重い。
「で、割と真面目な話なんだけどさ………本土の幼馴染から手紙来たんだけど結婚の知らせだったんだよね」
「めでてぇ事じゃねーか。なんだ?僕の方が先に好きになったのにってか?だったらご愁傷様だな。ま、どっちにせよ死ぬまでこのクソッタレな戦場からオサラバ出来ないだろう俺達にゃ、結婚どころか恋愛すら夢のまた夢だし良いんじゃねーの?泣かせないで済むし」
「そこらへん金田の割り切りすごいと思うよ。いや、単に御祝儀とかどうしようかなって」
「適当に金一封で良いんじゃね。手紙添えて」
「俺もそう思う。聞いた感じだと割と仲良かったっぽいし」
「結婚の約束してたしね。まぁ、子供の口約束だよ」
「「それは先に言えや」」
「いやだって、金田も言ったでしょ?生きて本土の土踏む事無いんだし、泣かせるだけなんだから、あっちで相手見つけて幸せならそれで良いよ。後はその旦那が僕達みたいにならない事を祈るばかりだね」
「お前も大概割り切りすげーよ。俺の場合、単純にそう言う相手居ねーだけだし。訓練所ブッ込まれてる間に婆ちゃんも死んじまったから残してる思い残りとか無いし」
「俺なんか強化手術前の記憶吹っ飛んでて、その前の事なんも覚えてないしなぁ」
3人ではははと軽く笑いあってからガムを同時に口に放り込む。甘い。なのになんかしょっぱい気がするけど気のせいだ。
『金田曹長、枢木曹長、森野軍曹の3名は直ちに東少佐の下へ出頭せよ。繰り返す。直ちに出頭せよ』
お呼び出しだ。なんだちょくちょく賭けてるのバレたか?顔を見合わせてからとりあえずコップやらを返して食堂を出る。東少佐の部屋は俺達と違って指揮官の側でもあるので個室が与えられている。
「おい、賭けの言い出しっぺはお前なんだから、お前から行けよ枢木」
「言い出しっぺの法則ってあるよね?」
「お前らなぁ。まぁ、良いや………失礼します。枢木曹長以下3名入ります」
東少佐の部屋は個室ではあるが、執務用の机がある事を除けば俺達の部屋と大して変わらないと言うか共有スペースがある分、俺達の部屋の方が広いまであるかもしれない。俺と森野はともかく肩幅の張っている金田も一緒に横に並ぶとはっきり言って窮屈なくらいだ。
「来たな。悪い知らせだ」
「もしかして出撃ですか?」
「単に出撃なだけだったらまだ良かった。まずはコレを見ろ」
そう言って東少佐が寄越して来た写真に3人で目を通す。解像度は悪いがそれでも黒い煙を上げる艦船の残骸とその中に立つ火砲類で武装した異形の怪物は間違い無くワダツミだ。
「俺達の艦隊が補給のために向かっている場所は覚えているな?」
「第3宮ノ杜補給基地………ってまさか」
「察しが良いな。第3宮ノ杜補給基地からの連絡が今日の朝、ワダツミの襲撃報告とその写真の送信を最後に途絶えた。そして、丁度向かっていた俺達に調査と該当目標が存在していた場合は目標の殲滅をせよとの指令が下った。しかもご丁寧に大将閣下の直筆付きでな」
「いやいやいや、待ってくださいよ少佐⁈どう見たって新種じゃねーっすか⁉︎そんなのにここに居る四人だけで突っ込めってーのかよ⁈」
「そうなるな。それから金田、気持ちはわかるが上官相手に今の態度は許されないぞ?いきなりの事だ。聞かなかった事にしてやるが注意しろ」
「うっす」
「でも、少佐。本当に俺達だけでやるんですか?一応は前衛2、中衛1、後衛1はなんとか確保出来てますけど」
「断れるなら断りたいとも。が、大将閣下の署名付きともなれば断れん」
「使いっ走りの現場部隊の宿命だね………この分だと結婚祝いが遺書になりそうだよ」
「ボヤいても意味が無い。生き残るにはどうするかを考えろ」
「って、言われましても薬全部ぶっ込みしたらそれどころじゃないでしょう」
「ああ。今回も投薬量は抑える。強化度は確かに落ちるがバーサーカー状態でまともな判断すらつかなくなるよりはマシだ。後は連携でカバーするしかないな」
「カバーっても、敵の情報がほぼ皆無じゃないですか。わかってるのは腕と脚が付いた亜人型って事くらいっすよ」
「それだけでも判る事はある。砲撃に噛みつきくらいしか無かった従来の連中と違って、近接格闘及び白兵戦能力を有する可能性がある、とかな」
そう言って東少佐が俺達が食堂で食っていたのと同じガムを口に放り込んで噛み始める。俺達の前でそんな事をするあたり大分、東少佐も参っているらしい。
「うーん?御祝儀と言う名の遺言状になるかな?」
「「だから、笑えねーよ」」
思い付きで書くもんじゃない。良い子の皆はちゃんとチャート組んで書こうね!(いましめ)