使い捨て上等強化人間兵士は生き延びれるのか? 作:⚫︎物干竿⚫︎
突貫作業で徹底的な整備が行われた機動甲冑着て海上で御座います。波の音だけで不気味に静かです。ちなみに心折れた引きこもり達はお留守番だ連れて行くだけ邪魔にしかならないと言う東少佐の判断だ。
そんな訳で東少佐と金田を先頭に、俺が真ん中で一番後ろに森野と言った隊形で目標の基地跡に向かう。
「森野、何か見えるか?」
「ここからは艦艇の残骸と綺麗に吹っ飛んだ基地跡しか見えないですね」
「そうか。悪いがそのまま索敵を頼むぞ」
「了解。にしても海鳥すら居ないなんて不気味だなぁ。本当に何か出そうだよ」
「その出て来るのをシバきに来たんだろ?俺ら。なぁに前は俺達でなんとかすっからよ」
そのまま海上を進んで行くと、俺達でも甲冑のカメラの望遠機能を使えば残骸やらが見えるようになって来た。
「各位警戒を厳にして突入するぞ」
東少佐がそう言い、防波堤を通り抜けて基地跡の入江に入る。自爆したのを証明するように大きく陸が抉れていてそこまで海水が入り込んでいる。人命検索するまでもなく生き残りが0なのが丸わかりだ。
「基地クラスの霊脈路を吹っ飛ばすとこんなになるんだな。すげえ破壊力だ」
「でも、この感覚」
「居るな。間違いなく」
「ッ!散開ッ!」
東少佐の警告に反射的にバラけるとさっきまで居たところの真下から盛大な水飛沫が上がり、同時に海中から写真で見たであろうワダツミが飛び出して来た。
黒灰色の3メートル近い頭と胴体がひとつになったような猫背姿勢の丸太のように太い両腕から伸びる4本の指に備わった爪はどう見ても武器で、全身至る所がひび割れていてワダツミ特有の緑色の体液が滲んでいるがふらついたりもしておらず、前に突き出した頭部には赤い単眼が備わっていてそれが俺達を順に見て行く。
「目標追加ヲ確認………射撃兵装喪失ニヨリ近接格闘ヲ選択………行動開始」
「コイツ喋りやがった⁈」
「金田!構えろ!」
東少佐の警告が早いかどうかと言う速さで海水の抵抗を感じさせない速さでワダツミが金田に接近して右腕を振るう。3メートルもある巨体の癖に速い。いや、速過ぎる。なんとかギリギリで盾も兼ねている槍の装甲で金田がそれを防ぐが、それだけで金田の左腕が肩から先が機械部品をばら撒きながら千切れた。
「下がれ金田!」
突撃重砲をぶち込みながら金田と入れ替わる。突撃重砲の弾がまるで効いちゃいない。見るからにぼろぼろの瀕死スレスレの状態だって言うのに平然とノーガードで耐えている。
「金田状況報告!」
「左腕完全喪失!戦闘続行問題無し!」
残った右腕で突撃重砲を構えて撃ちながら金田がそう返す。あれでビビらないのやっぱすげえわコイツ。
「各位、被弾を避けて目標を攻撃!森野!これ見よがしに見せ付けているあの目玉に熱いのくれてやれ!」
耐えられないとは言え、被弾を避けてとか無茶苦茶にも程がある指示を出しながら東少佐がワダツミの注意を引き付けるように立つ。同時に薬が注入される。痛覚麻痺まで行ってるなコレ。
紙一重で爪が当たらない距離に立った東少佐が至近距離で重砲を撃ち込みつつ槍を打ち込むタイミングを探り、俺と金田がそれへの支援射撃を行う。流石に首から上への命中弾は嫌らしい。
「まるで射的の的みたいな目してるね?とっておきのくれてやるよ!」
その言葉と共に森野が撃った弾がワダツミの頭部を捉えて着弾した瞬間、爆発を起こした。特殊弾頭のひとつで撃ち込んだ場所を基点にして周囲を巻き込む炸裂榴弾だ。これまでも相手にして来た連中ならこれでも十分に複数を仕留められたが、爆煙の中からワダツミが飛び出して来て一直線に森野下手向かって行く。
「優先撃破対象変更」
「させるかっての!」
あえてワダツミの前に立ってその懐に飛び込んで槍をひび割れ部分を狙って打ち込むが、射出された槍が刺さったかと思ったら半ばからへし折れ、その反動が返って来た槍の射出器が内側から自壊する。
「どんだけ硬いんだよテメェ!」
距離を取って振るわれた爪を躱しつつ愚痴りながら突撃重砲を目玉目掛けて撃つ。相変わらず効いてる気はしないがやらないよりはマシだ。
「枢木、金田はこのまま俺と奴を引き付ける。森野はある限りの弾薬を奴の頭に撃ち込め。槍も効かん以上は森野の狙撃重砲が頼りだ」
「それで倒せなかったら?」
「その時はまぁ、日下部准将の時と同じだ。お前達は撤退して現行の水上機動歩兵の装備では撃破が不可能だと司令部に伝えろ。何、奴の片腕くらいはあの世への行き掛けの駄賃に貰って行くさ。枢木、その時は後は任せる」
「了解」
これが俺達消耗品同然の水上機動歩兵の引き継ぎだ。昇進の辞令書が来たりだなんてのは無い。まず、俺達の軍服には階級章の類がそもそも付いていない。階級はその通りだが、使い捨ての兵隊に階級章なんていらないだろうって話だ。その証拠に本土に居る連中の制服にはしっかりと付いているし。
「クソ!サブアームじゃリロードおせぇ!」
機動甲冑のバックパックは水上で加速するための推進器に加えて予備弾倉を納めるストレージや両手が銃器で埋まっていたり、金田みたいに片腕が欠損しても弾倉の交換装填に困らないようにするためのサブアームで構成されているが、とにかく数を揃えるのが第一のため装填するスピードなどはお察しだ。はっきり言って、自分でやれるならやった方が速い。
俺と東少佐で弾幕が途絶えないようにしながら金田のリロードする時間を稼ぐ。時折森野がぶち込む弾でそっちにも行こうとするからなんとかそれを抑えなきゃならない。
「枢木予備弾倉残り3!」
「森野は?」
「通常弾が弾倉2つで炸裂榴弾が残り2発!」
「………指示した通り枢木、金田、森野は撤退を開始しろ。奴の撃破は不可能と判断した」
言うなり、東少佐がワダツミに向かって特攻を仕掛けるように突っ込んで行く。
「行こう枢木。東少佐の邪魔になる。金田もこんなだし」
「わかった………聞こえるか春風21。作戦は失敗した」
春風21と言うのは俺達の母艦で、春風型水上機動母艦21番艦が正式な名前だがぶっちゃけどうでも良い。死ぬまであの船から降りる事が無ければ他の船に乗る事も無いんだからな。
『こちら春風21。それは確かか?』
「現状の我々の装備では不可能だと東少佐が判断した。現在、少佐は単身で最終攻撃を敢行中」
無線の向こうからそんな化け物を連れて来る気かとか聞こえてくるが、どちらにせよ俺達に出来る事は無いに等しい。有効打になる攻撃が出来ないのにどうやって倒せと言うのか。
そのまま全速力で撤退を続けるが、母艦の姿が見えて来ない。つまりは俺達は捨てられたと言う訳だ。そして、同時に霊脈路が爆発した時特有の轟音と共に東少佐のシグナルが消えた。
「どうする?」
「どうするもこうも無いだろうがよ」
「金田、俺の残りの弾倉全部持ってけ」
予備弾倉を全部金田に渡して、突撃重砲を左手に持って腰後ろにマウントされたワダツミの相手には頼りない短刀を空いた右手に持つ。対装甲破砕刀と言う名前の装備で刃渡りはさ30センチほどあって、微細振動する刀身で対象を粉砕しつつ斬る装備だが槍が近接兵装の主力な通りお察しだ。
そうして迎え撃つ態勢を整えると海中からワダツミが出て来る。言っていた通り左腕が半ばから無くなっていて、全身のひび割れも更に広がっている。だが、撃破にはまだ遠いらしい。
「損傷レベル深刻。排除対象健在。戦闘続行」
「かかって来いよデクが!とことんまで付き合ってやる!」
左回りに移動しながら鉛玉をぶち込みつつ距離を詰めてひび割れが酷い胴体部を短刀で斬りつけるがひび割れているにも関わらず火花が金切り音が鳴り火花が散るだけだ。
「枢木!金田!なんとか奴の土手っ腹に隙作れる⁈」
「そのこころは!」
「アレだけぼろぼろなんだし、もしかしたら胴体の装甲が割れるかもしれない!ワダツミの例に漏れず装甲を破れれば核を抜けるかもしれない!」
炸裂榴弾を装填しながら森田がそう言う。弾薬も残りが心許ない以上は他に取れる選択肢がある訳もない。