TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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僕とミー助・救難編

 

 

「やっほーい!」

 

『みゅるふふふ!』

 

 吹き付ける涼風、飛び散る水飛沫。爽やかな風にあおられて、僕はミー助の上で喝采をあげた。ミー助もまた、海の波をかき分けながら気持ちよさそうに声を上げる。

 

 そんなミー助の手には、いくつものロープが握られている。その先を追っていくと、ロープをくわえて泳ぐいくつもの奇妙な生き物。それにひっぱられる形で、ミー助と僕は大海原を高速移動しているのだ。

 

 不思議な生き物、彼らはミー助の兄弟達……らしい。まあミー助の卵自体、どこから流れ着いたのかもわからない漂流物なので、そんな事もあるのだろう。ああも自信をもっていうのだから、きっと間違いはないのだ。

 

 それに、見た目は不思議だけどあの生き物達はとても親切だった。彼らは僕らが道に迷っている事を知ると、人間のいる所まで案内を買って出てくれたのである。

 

 なんでも、それが彼らの御仕事らしい。かいなんきゅーじょたい? とか言うそうだ。

 

 普段は墜落したお船の捜索とかが御仕事らしい。船が墜落するってなんのこっちゃ、という感じだけど。ただ今回は、沖合で発生した嵐がいきなり消えたから、その調査に来ていたとも言っていた。その先でミー助と僕を見つけたんだって。

 

 それにしても、凄いスピード! 水の抵抗をものともせずに、信じられない勢いで海を泳いでいくミー助の兄弟達。僕が陸で走るよりもずっと早いんじゃないかな。

 

 ミー助とは似ても似つかないなあ。お前、歩くのも走るのも凄く遅くて、転がって移動した方が早いもんね。

 

『み、みふみふ……』

 

 え、転がるのも立派な移動方法だって? そんなのお前だけだよ……。

 

 そんな風に快適な旅を楽しんでいると、一行のリーダーらしき三つ目ちゃんが突然声を上げた。

 

『きゅいー!』

 

「……え? そろそろ、着くって? 着くって、どこに……あっ! 鉄の箱!」

 

『みふみふ』

 

 水平線の向こうから、波間の間にちらり、と見える四角いシルエット。それは近づくにつれてどんどん大きくなっていく。

 

 島からも何度か見た、海に浮かぶ鉄の箱だ! あの子達の言う人間の居る所って、これの事? 中に人間が住んでるのか、島みたいだなあ。

 

 徐々に速度を落としながら箱に近づいていく僕ら。

 

 近くで見ると、やっぱりとても大きい。僕の背丈だと、背後に倒れるぎりぎりまで顔を上げないと、箱の天辺がみえない。箱とはいったけど、真四角じゃなくて先端が三角形になっていて、よく見たら幾つも重なってるような構造になっている。海に浮かんでいるおわんみたいな物の上に、大きな家が一杯建っている。動く島だ!

 

 見上げていると、その建物の一つから何かが投げおろされてきた。縄梯子らしきそれに僕が捕まると、ずっと上から人の声が聞こえてきた。

 

「だいじょうぶかー!?」

 

「今からそっちに向かう、ちょっと待ってろ!」

 

「だ、大丈夫ですー! 自分で上がれますー!」

 

 心配してくれる声に叫び返し、僕は縄梯子を昇り始めた。

 

 って、大事な事忘れてた。

 

「ミー助のお兄さん達、ありがとうございました!」

 

『きゅいきゅい!』

 

『ふしゅるるる!』

 

 波間に揺れる兄弟達に手を振ると、彼らもまた体の一部を振り返してきた。

 

 一しきり別れを惜しむと、彼らはちゃぽん、と海の中に戻っていく。お仕事に戻ったのだろう。

 

 僕は少しだけ彼らの事を見送ってから、えいしょ、えいしょ、と梯子を上り始めた。

 

 その後から、ぷしゅぅ、と音を立てて小さくなったミー助が続く。って、こら、お前。僕の背中にしがみついて楽しようとするんじゃない! 頭によじ登ってこない!

 

『みぃい』

 

 可愛く鳴いても駄目! もう、まったく。まあ、仕方ない、しっかり掴まってるんだぞ。

 

『みぃ!!』

 

 

 

 そんなこんなで鉄の箱に乗り込んだ僕達だけど、上がるや否や僕はたくさんの大人に囲まれていた。皆、白と青の同じ格好。これまで見た事がないほどたくさんの大人に一遍に囲まれて、僕はミー助に思わずしがみついた。

 

「わ…………」

 

「大丈夫か? ケガはないか?」

 

「よくもまあ、こんな子供がたった一人で大海原に……怖かっただろう、もう大丈夫だ」

 

 固まる僕に、大人達が膝をついて目線を合わせて問いかけてくる。

 

 みんな、優しい声。視線もおだやかで、声を荒げる人はいない。

 

 なんだろう。

 

 僕は食べ物も何も持っていないのに、一体何に気を使っているんだろう。

 

 茫然としていると、大人の一人がすっと手を伸ばしてきた。

 

 びく、と肩を跳ねさせると、その人ははっとして手を引っ込めた。

 

「おっと、すまんな、坊主。怖がらせるつもりはなかったんだ」

 

「う、ううん」

 

「その……なんだ。これ、食べるか?」

 

 バツが悪そうな顔で、大人の人が何かを差し出してくる。

 

 おずおずと受け取ると、それは銀色の包みだった。大人の人に目線を返すとこくり、と頷かれたので、おっかなびっくり包装を破ってみる。

 

 途端に漂う、あまーい香り。

 

 中から出てきたのは、黒くて四角くて、あまーい奴だ。僕は知ってる、数回しか食べた事がないけど、とっても美味しい奴だ!

 

「た、食べてもいいの? ぼ、僕、一番下の子供だし、交換できる物は何ももってないよ?」

 

「……ああ。いいぞ、誰も取らない、それは君のものだ」

 

 ほんとに!? ほんとに僕が食べてもいいの?!

 

 ワクワクしながら残りの包装を捲った所ではたと気が付く。

 

 ミー助の分も残さないと!

 

 パキッ、と四角いのを割って、僕は半分、ミー助の口元にもっていった。

 

『み?』

 

「ミー助もお食べ。これね、あまーくて、おいしーんだよ。いつも食べさせてもらえないけど、この人達はいいんだって。ほら、お食べ」

 

『みみぃ!』

 

 嬉しそうにミー助が半分こしたのを食べ始める。僕もそれを見ながら、残りを口にした。

 

「……あ、あまぁ~~い!」

 

 ほっぺが溶けちゃいそう! ただ甘いだけじゃなくって、いい香りもして、硬かったのが口の中でみるみる溶けていく! ふんわり優しい後味もして、喉にもひっかからないし、凄い、なめらか!

 

 島で落ちてたのをこっそり食べた時のより、美味しい!

 

「ふわああ……。あ、ありがとう、おじちゃん! ……あっ、な、何か、いけなかった?」

 

「いや、そんな事はないぞ?」

 

「でもだっておじちゃん、なんか難しい顔……」

 

 お礼を言うも、おじさんはなんかしかめっつら。や、やっぱ駄目だったのかな!? でももう食べちゃったよ……。

 

「っ、い、いや、実はもっと美味しい奴があるんだが、おじさんお腹一杯でどうしようかなーと思っててな? よかったら食べてくれないか?」

 

「いいの!?」

 

「あ、俺も食べきれなくて困ってたのがあってな。坊主が食べてくれると嬉しいんだなー」

 

 おじさんが、もう一つ包みを僕に手渡してくる。それを見て、別の大人が、違う包みをポケットから。あれよあれよと僕の手の中に、食べ物が山盛りに。

 

「え、え? い、いいの? ほんとに食べちゃうよ? あとでお腹を叩かれたりしない?」

 

『みぃふふふ! みぃふ!』

 

「……ここではだれもそんな事しないよ。いいから、貰っておきなさい」

 

 おじさんはちょっと硬い顔で、だけど優しい顔で微笑んで、僕は本当にいいんだ、と食べ物を両手で抱きしめた。

 

 こんなにたくさんの食べ物を独り占めしても、誰も奪いにこないんだ!

 

 ここの人はなんて優しいんだろう!

 

「ミー助、ミー助。ここの人は優しいね!」

 

『みゅふぅ!』

 

「はいはい、ぼんくらども、無駄話はそこまで! 救助された人はここかい!?」

 

 ミー助とニコニコしていると、大人の人をかき分けて、真っ白な服の人がやってきた。その人は僕を見つけると、目をまんまるにして声を張り上げた。

 

「子供じゃないか!! どういう事だい!? 報告はちゃんとしろって言ってるだろ!?」

 

「ああ、いや。すまん、まさかこんな小さな子供だとは……」

 

「おまけに遭難してた人間に何を食わそうとしてるんだいお前達! 基礎の基礎も知らないのかアホンダラども!!」

 

 そして何やら、優しい大人達と喧嘩を始める。

 

 や、やめて! その人達をしからないで!

 

「ち、違うの、その人達は悪くないの!」

 

「あ、あー。ごめんね、君。君から見たらそうかもしれないけど、この人達悪い事したの。悪い事したら怒らないとね?」

 

「あ、いや、その……」

 

 メリメリメリ、とおじさんが襟元を締め上げられてる! た、助けないと。で、でも僕には何もできないし……そ、そうだ!

 

「ミー助! おじさん達を助けて!」

 

『みみみぃ!』

 

「「「えっ」」」

 

 直後。

 

 周囲の人を巻き込んで、文字通り爆発的に膨れ上がった毛玉が、全てを有耶無耶にしちゃったのでした。

 

 僕とミー助はあとでちょっとだけ叱られました。

 

 しょぼん。

 

 

 

 

 

 

 

●ミー助

 

形態:護衛獣型

 

特殊能力:超高靭性体組織

 

詳細:流れ着いた卵から生まれた、“僕”の友達。平べったいゴマフアザラシの赤ちゃん、あるいは毛がふさふさで尻尾が短いトッケイヤモリ、といった見た目をしている。その体に爪や牙は備わっておらず全身ふわふわだが、それこそが最大の武器。その体組織は、瞬間的におよそ数千万倍もの伸縮にも耐える異常な強靭性を持ち、それに加え体内でガスを精製する事で瞬間的に膨張する事ができる。形状もある程度自由自在で、護衛対象を体の中に包み込んで保護するだけでなく、肉体の膨張そのものを疑似的な爆発として利用する事で広範囲を破壊する事や、急激な体積変化によって生じる超低温や超高温の吐息も組み合わせる事が出来るので、応用力が極めて高い能力。

 

 もし、明確な殺意の元にこの能力を運用すれば、巨大な宇宙船でもミー助一匹を送り込むだけで撃沈せしめる事が可能な程である。

 

 当然ながら防御力も極めて高く、圧力を加える形での攻撃(打撃は勿論銃撃も含む)でミー助を殺害する事は不可能である。ただし火は苦手(苦手なだけで火炎放射器程度では死なない)。その戦闘力の高さから、孵化した環境を考慮するとある種の“先祖返り”を起こした個体だと考えられる。

 

 しかしながらそんな能力とは裏腹に性格はおとなしく、甘えん坊で寂しがり屋、かつ悪戯好き。怖い物は嵐(正確には嵐を消し去った存在)。

 

 

 

 

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