TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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『僕とミー助・孤島大脱出!』

 

 

 ピリリッ、ピリリッ、ピリリッ。

 

 耳元で、何か電子音が規則正しく鳴り響いている。

 

 その響きに誘われて、僕はゆっくりと眠りから目覚めた。

 

「ふわあ……」

 

 大あくびをしながら、時計に手を伸ばす。が、ギリギリ届かなくて、僕は何度も手を彷徨わせた。

 

『ミフゥ……』

 

「あ、ごめんね、ミー助」

 

 ベッドと僕の間に挟まれて圧迫されたミー助が寝苦しそうな声を上げる。僕は一言謝って、仕方なくシーツから這い出して冷たい床に足をつけた。

 

 たちまちその冷たさで頭が冷えてくる。僕はぶるり、と身を震わせて、ベッド脇の小さなデスクにのっかったデジタル時計のアラームを切った。

 

 時計の時刻はちょうど6時。ちょっと早いが、もう起きてしまおう。

 

「ミー助、朝ごはんにするよ。起きて。起きなさい」

 

『みふみふぅ……』

 

 ゆさゆさ揺さぶるが、ミー助は起きる気配はない。しかたないなー、と背中に抱えると、四肢を使ってがっしりと僕にしがみついてきた。ぬくぬく暖かい毛皮を背負って、僕は洗面所で顔を洗った。

 

 続けてうがいしたら、朝ごはんの準備。

 

 牛乳を温めつつ、パンをトースターに。皿を並べて、ジャムの瓶を机の上に。

 

 制服の準備をしつつTVをつけると、今日のニュースをやっていた。

 

『……それでは、続けてのニュースです。本日、宇宙連合監査局による三度目の隔離島への立ち入り調査が行われました。本件は、100年以上にわたって放置されてきた、反共生主義者のテリトリーに対する本格的な調査と交渉であり、関係者の話によれば島内ではそのイデオロギーは失われて久しく……』

 

「あ、島の話だ」

 

 見覚えのある風景がテレビに映っていて、僕はちょっと手を止めて画面に見入る。

 

 テレビの中では、何機もの離発着機が島の中央の広場に着陸していく様子が映し出されていた。そしてやっぱりしっているおじさんが、建物の影から石を投げつけているけど、最新鋭の防御システムが紫電と共にそれを弾き返すとびっくりして逃げていった。

 

 やめとけばいいのに。

 

 呆れていると画面がぱっと切り替わって、両手を掲げて完全降伏ポーズの人達が、体格の大きいフレンドに囲まれて竦み上がっていた。フレンド達はテレビカメラに気が付くと、それぞれ思い思いにピースピースしてアピールしている。それを見れば体格が大きいだけの子供だってわかるだろうに、島の人達は今から僕達殺されます、みたいな絶望顔をしていて、フレンド達を見ていない。

 

 そのなかに、僕の兄さんの姿もあった。やれやれ。迷惑かけてないといいんだけど。

 

『……監査局長は、この介入について「かつて袂を分かったとはいえ、同じ人間。いつまでも目を逸らし、触れぬままにしていては変わるものも変わらない。これから彼らとどのような関係を築いていくかはまだ未知数だが、双方、最終的には後悔しないように振舞いたい」と述べており……』

 

 一見すると物騒な事になってるけど、島の人を取り囲む兵士さん達は銃も持っていない。あくまで島の人達が暴れて怪我をしないように、ちょっと言い聞かせているだけだ。ほかならぬあの島出身の僕は、そうしないと話にならないのはよくわかっている。

 

「……すごいや、約束守ってくれたんだ」

 

 船の上で出会った不思議な女の子……ビッグママの事を思い出す。

 

 あの後。女の子に出会って話をしたことを伝えられた船のおじさん達は、机ごとひっくり返った後、僕になんだかすごく豪華な部屋を用意してくれた。それまで用意してくれた部屋とはベッドやソファのふわふわ感が全く別物で、後から知ったけどVIP用の部屋だったらしい。

 

 その後、船が港に戻ったら、今度はスーツを着たおじさん達がたくさんやってきて、色々と質問された。今思うと、ビッグママと直接話をしたばかりか、直接お願いを聞いてもらって、挙句名前まで貰っちゃうとかすっごい話なんだけど、その時の僕は何も知らなかったから、何か悪い事をしたのかな、と震えあがっていたっけ。

 

 勿論、怒られるなんて事は全くなく、おじさん達は終始僕に優しく、おだやかに話かけてくれた。

 

 そして事情を一通り聞き出すと、くずのはざいだん、って所から来たって言うおじさんが、僕にある話を持ち掛けてきた。

 

 “学校にいってみたいと思わないかい?”って。

 

 僕は勿論、一も二もなく頷いた。

 

 だって学校だよ! 絵本の中でしか知らなかった場所だよ! 僕と同じぐらいの子供がいっぱいいて、フレンドもたくさんいる! 想像するだけでもわくわくしちゃう!

 

 それからしばらくして、こせき、ってものを用意してもらった僕は、こうしておうちを用意してもらって、学校に通う事になったのです! ふふん!

 

『ピンポーン』

 

「あ、はい。ちょっとまってね!」

 

 ニュースを見ながら今日までの事を振り返っていると、チャイムが鳴った。

 

 慌てて玄関に向かうと、そこに居たのは、りょうぼ、っていう優しいおばさんだった。

 

「おはようございます、おばさん!」

 

「ええ、ええ。おはようございます。すごいわね、自分で起きれたの? えらいわ」

 

「えへへへへ……」

 

 おばさんがしゃがみこんで、優しく僕の頭を撫でまわしてくれる。僕からすると全然たいしたことないんだけど、おばさんはいろんなことを褒めてくれる。なんかちょっと、照れ臭い。

 

「朝ごはんの用意に来たんだけど……もしかして、もう全部自分で?」

 

「うん! 牛乳をあっためてるし、パンも焼いてるよ!」

 

「あらあ! 本当に凄いわー! 純一君は偉いのねえ」

 

 わしわしわし、と頭を撫でる手が倍になった。流石にちょっと頭がぐわんぐわんする。

 

 僕はぼさぼさになった頭を押さえて部屋に戻った。

 

 おばさんも鞄片手に部屋にあがってくる。

 

「んまー、全然散らかってないし、本当にいい子。でも大丈夫、遠慮してなあい? 何も遠慮する事はないんだからね?」

 

「大丈夫! それにその、あんまり物を出してると、ミー助がなんでも口にいれちゃうから……」

 

「あらあ」

 

 おばさんが目を丸くして、僕の背中に目を向ける。当のミー助はというと、僕にしがみついたまま爆睡中だ。

 

 そうなんだよ。学校、の準備で筆箱だしてたら、ミー助ったら消しゴムを丸呑みにしちゃって。仕方ないから口をこじ開けて腕を突っ込んで取り出したけど……身体がいくらでも膨らむからってとりあえずなんでも口にいれちゃうのはミー助の悪い所だと思う。島に居た時はそんな事なかったんだけど……いやでもあの島にあるものってガラクタばかりだったしね……。さしものミー助も好みがあるか……。

 

 普通に考えたらミー助の膨らみ方はおかしいんだけど、フレンドって大体そういうものらしい。フレンドは皆、何か一つ不思議な力を持っていて、多分ミー助は伸縮自在の体がそれになる、と教えてもらった。そうなると、あの不思議な女の子の連れていた銀色の鳥さんも凄い力があるんだろうけど、それは聞いても教えてもらえなかった。いや、おじさんは知らないよ、しんじゅうさまのちからなんてわからない、って言ってたけど、目が凄く泳いでたし絶対知ってる。

 

 きっと説明が難しいぐらい凄い力なんだ。それと比べると膨らむだけ、っていうミー助の力はなんていうか、ちょっと可愛らしいよね。悪い事は出来なさそう。*1

 

 ちなみに今まで丸呑みにした中で一番大きいのはトラック。ここに来たばかりの頃、ちょっと目を離した隙にやらかしてた。なんでもトラックの積み荷はフルーツだったらしくて、それにつられてしまったらしい。その後しばらく『怪奇! 着ぐるみトラック!』でニュースの一面を飾ったのは恥ずかしかった。

 

 そこでちょうどパンがやけたので、おばさんと一緒に朝ごはんにする。

 

 カップに牛乳を注いで、あと黄色い粉を牛乳で溶いてコーンポタージュってのに。パンには赤いジャム、イチゴっていう果物を甘ーく煮た物なんだって。

 

 僕が牛乳を飲むと、またおばさんが褒めてくれる。

 

 なんかもう、何かする度に褒められちゃうから変な感じ。

 

 えへへ、なんか変な感じ。むずむずしちゃう。

 

『みふみふ。みふぁー……』

 

「あ、起きた。ミー助、はい。朝ごはん」

 

『みっふゅ!』

 

 

 

 おばさんと一緒に朝食を食べて着替えたら、カバンを手に外に向かう。洗い物をしてくれるおばさんに後を任せて、玄関を飛び出す。エレベーター、っていうのを使って、一階に。

 

 すすすす……とエレベーターの数字が減っていって、扉が開くとそこはもう地上だ。あの高さから地上にあの勢いで降りてなんともない、というのはとても吃驚。飛び降りたら大怪我しちゃうような高さなのに、エレベーターをつかうと何ともないどころか、同じように高い場所まで一瞬で行けるんだよ。

 

 すごいよねえ。

 

「おはようございます!」

 

「おや、おはよう。朝から元気だね」

 

「うん!」

 

 バス停に向かう途中で、通りすがりのおじさんにご挨拶。五本脚で毛むくじゃらのフレンドをつれているおじさんは、にこやかに微笑みながら挨拶を返してくれた。フレンドも、「ばう!」と毛皮で隠れた口を開いて元気にご返事。

 

 ほら、ミー助も挨拶、挨拶。

 

『みふ、みふふ』

 

『ばう、ばうばう……ばぅ』

 

「ふふふ。じゃあ、僕はこれで、バスに遅れちゃう!」

 

 見れば、バス停に見慣れたスクールバスがゆっくりと停車している所だった。

 

 僕はおじさんに手を振って、急いでバスに向かう。幸い、置いていかれる事なく乗り込んだ僕は、大きな声で皆に声をかけた。

 

「おはよう、皆!」

 

「おはよう!」

 

「おはよ、葛葉君!」

 

 見知った顔が、手を振りながら返事を返してくれる。

 

 いつもの席に座ると、隣の女の子が小さく挨拶をしてくれた。

 

「お、おはよ、くずのは、くん」

 

「うん、おはよう、まいやちゃん!」

 

「う、うん……」

 

 黒い髪の女の子はそれだけ言うと、席の中で小さくなってしまう。

 

 まいやちゃんは、毎朝こうしてバスの中で並んで座るお友達だ。だけどちょっと気が弱くて心配性、声も小さいから挨拶するのも毎日大変そう。

 

 僕は彼女をびっくりさせないように少し距離を離して座ると、前の席のお友達とおしゃべりを始めた。

 

 同い年の男の子。首に蛇みたいなフレンドを巻き付けたその子は、入学した僕に一番に話しかけてきてくれた子だ。ちょっとわんぱくで行動的だけど、一緒に居てとても楽しい。

 

「りっくん、おはよ。昨日のテレビ、みた?」

 

「みたみた! すごいよね、250周年スペシャルだって! あのビッグママも、子供の頃にはあれを見てたんだってさ、信じられる? 250年だぜ、想像もつかないよなー」

 

「すごいよねー」

 

 お友達と話していると、がくん、とバスが揺れる。発進したバスの中で揺さぶられながら、僕は今日の学校ではどんな事を教えてもらえるのだろう、と胸を膨らませたのだった。

 

「ところで、じゅんいちー。おまえ、そのかばん……」

 

「ん? あ、ああ。ミー助がね……どうにも鞄を丸呑みにすれば教室に一緒に入れるんじゃないかと思ったみたいで……」

 

『みふみふ』

 

 カバンを丸呑みして一体化しているミー助に、友達とそのフレンドがちょっと引いている。

 

 言うまでもないけど、フレンドは授業中はフレンド用の教室行きだからね? お前もちょっとはお友達増やしなさい! ほら、吐き出して! もう!

 

『みぃ~~~(涙』

 

 

 

 こうして、僕の大冒険は終わりを迎えた。

 

 まあ、この後も色々あったというか。学校で出来た友達とミー助、みんなで一緒に色んなトラブルに巻き込まれて、たくさんの大冒険を繰り広げたり、悪い悪い宇宙人と遭遇して怖い思いもしたりするんだけど、それはまた、別の話で。

 

 でもたった一つ、言える事がある。

 

 僕達にはフレンドがいて。フレンドには僕達がいて。

 

 それを全部、大切に見守ってくれている人が居る。

 

 僕達は、いつだって、どこでだって、誰かを大切に思う限り一人じゃない。

 

 人を思うって、多分そういう事なんだ。

 

 

 

◆◆

 

 

 

●葛葉純一

 

詳細:反共生主義者の島で生まれた子供。幼いながらも思慮深く、優しい少年。ひょんなことからフレンドの卵を拾った事が切っ掛けで島の外に脱出し、相棒のミー助と共に巡視船に救助される事となる。

 

 保護後は葛葉財団がその後ろ盾となり、設立されたばかりの宇宙連合地球学園都市の小学部に入学。島の過酷な生活のせいか、小学生離れした生活能力を発揮し、一躍学年の人気者になる。

 

 しかしその後も頻繁にトラブルに巻き込まれては学友と共に遭難しており、後にその時の経験を生かし、漫画原作を担当。発表された作品、『僕とミー助』シリーズは一世を風靡する大ヒットとなる。

 

 一番人気があるのは勿論、第一作『僕とミー助・孤島大脱出!』。以後シリーズは第十作まで続いており、なかなかに波乱万丈な人生だった事が伺える。

 

 成人してからは、故郷である隔離島の住人の社会復帰にも意欲的に取り組んだとの記録が残っている。

 

侵略宇宙人の標的になる事を避ける為、純一の名が、ビッグママ……葛葉零士その人から与えられた名前であるという事実は、一般には公開されていない。

 

 

*1
知らない方が幸せな真実もある。

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