TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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17番目の漂流者
『なんだか懐かしい奴らの気配がするぞ?』


 

 

 宇宙連合、銀河外縁防衛艦隊。

 

 それは文字通り、宇宙連合の支配する宙域の外縁部を警備する艦隊である。

 

 しかしながら、宇宙連合の支配領域は広大であり、その外縁部となると天文学的な広さを誇る。その全域の監視、防衛は到底不可能であり、そう聞くと艦隊といっても唯のお飾り、古代日本における防人のような実質的な人身御供のように聞こえてしまっても仕方がないだろう。

 

 もちろん、そんな非人道的な考えを、宇宙連合は肯定しない。

 

 防衛艦隊は、下手をすれば中央の防衛部隊よりも潤沢な装備を施された、一艦隊がおよそ100を超える宇宙艦で構成された大規模な集団である。実質的に国や街そのものが宇宙を漂っているに等しい。これだけの規模を与えられているのは、外縁部に侵入してきた敵艦隊をいち早く発見し、かつ、全滅する事なく必ず情報を報告するためではなく、万が一宇宙連合の支配領域が陥落するような事があったとき、外縁防衛艦隊が新たな宇宙連合中央組織となる事を期待されての事である。

 

 宇宙連合は今も、侵略宇宙人艦隊の力を決して侮ってはいない。彼らの支配領域は宇宙連合のそれの数百倍を超えるとされており、その戦力もいまだ未知数だ。局地戦においては宇宙連合は圧勝を収めているものの、もし彼らが本腰を入れて侵略してくれば、宇宙連合は一たまりもないだろう(かの究極生命体を戦力に数えないのであれば、だが)。

 

 幸いにして、彼らはその支配領域の膨大さゆえに動きが遅いが、いつかその日は必ずやってくる。

 

 外縁防衛艦隊は今日も、緊張を伴って己の職務に取り組んでいた。

 

 

 

「漂流物?」

 

「はい、司令官。外縁部以遠を探索していたセンサーが金属反応を感知しました。敵艦の残骸の可能性があるとして、調査隊が回収に向かったのですが……そこで拾ったのが、これです」

 

 宇宙船の作業ドッグ。そこには運び込まれてきた金色に輝く何かしらの構造体が、チェーンで拘束されてスタッフによる調査を受けている所だった。

 

 それなりの時間、宇宙を漂流していた割には表面に劣化は見られない。形状は円筒形だが、細かい配管などが多数露出している。

 

 少なくとも人類のテクノロジーのそれの範疇にはない物体である事は間違いなかった。

 

「宇宙連合に所属する知的生命体のテクノロジー、いずれにも合致しません。完全に未知の物体です。ただ、あえて言うなら……」

 

「勿体ぶるな。言うなら、なんだ」

 

「……侵略宇宙人達のテクノロジーに似通った部分があるかと」

 

 言われて司令官は、目の前の構造体に目を向ける。なるほど、確かに言われてみると連中のテクノロジーに通じるような所があるようにおもえるが……。

 

「それにしては綺麗というか、まとまりがあるな。連中は無秩序に機械構造を膨張させていくのが好みのようだが」

 

「あまりスマートにまとめるのは好きではないようですからね、連中。無駄な配管、無駄なレバーを増やして手間を増やすのが好きというか。本来のテクノロジーを理解しきれず、自分なりにアレンジを加えて悪化させるのが奴らのやり方です。それでも元のテクノロジーが桁違いなのが厄介なのですが」

 

 それゆえに人類もリバースエンジニアリングには苦労した。苦い歴史を思い返しつつ、しかし司令官は首を傾げた。

 

「となると、これは連中の設備、という事か? それが何故、宇宙に放棄されているのだ。設備の更新で要らなくなったか?」

 

「わかりません。今調べていますが、セキュリティが頑丈すぎて、内部へのアクセスができません。いかがなさいますか?」

 

「……外縁艦隊が、この遺物を持っている。その事をどう考えるべきか……」

 

 もしかすると、この設備そのものが何かしらのトラップ、発信機か何か、という事も考えられる。その場合、これを持っている事は外縁艦隊の存在を敵に教えている事になってしまう。かといって、貴重な敵のテクノロジーを解析するための遺産だ、危惧一つで廃棄するのはいささかおしい。

 

 しばし考えて、指令はふと妙案を思いつき、副官に確認を取った。

 

「確か、ビッグママが現在、宇宙連合所属の種族との面談の為に、宇宙を飛び回っているという話だったな?」

 

「はい。……もしや」

 

「聞いたところによれば、彼女が座しているのは最新鋭戦艦、そしてそれを守る為に過剰なレベルの防衛戦力が集められているという話ではないか。ある意味宇宙で一番安全かつ、テクノロジーが整っている場所といえる。そこに一旦、これを預けるのはどう思う?」

 

 それにビッグママは200年前、たった一人で侵略宇宙軍の戦力と戦っていたという。ある意味、彼女以上に侵略宇宙人に詳しい人間はそうそう居ないともいえる。

 

 外縁艦隊の研究設備もたかが知れている。かといって、地球のような主要惑星に怪しげな物体を送り届ける訳にもいかない。

 

 折衷案としては悪くないのではないかと思われた。

 

「悪くない考えだと思います」

 

「よし。そうと決まれば輸送の手続きを進めろ。それと、流石に何もわかりませんでした、では立場がない。何か一つぐらい、判明した事はないのか?」

 

「それについてですが、一つ分かった事が。あの漂流物にでかでかと刻まれている記号の意味が判明しました」

 

 副官が吊り下げられた漂流物の表面に刻まれている、傷のようなマークを指さして言う。

 

「『No.17』……それが何を意味するかは、わかりませんが」

 

「17か……」

 

 ……200年後の未来。人類軍の一司令官と、エイリアンの使者が交わした言葉の一言一句まで正確に伝えられている訳ではない。それらは機密の向こうにあり、長い年月の間に失われた部分がある。

 

 17。

 

 その数字の意味を理解する者は、まだ宇宙連合には存在しなかった。

 

 

 

◆◆

 

 

 

「それでは、次に葛葉さんに面談していただきたい異種族について、説明させていただきますね」

 

「わーい! 待ってましたー!」

 

 アマノトリフネ級12番艦“スピリッツ・オブ・ヴェンジェンス”。その最上級VIP室で私は美鶴さんから説明を受けていた。

 

 内容はもちろん、中断していた宇宙連合所属種族との面談の再会についてである。

 

 いやあ、ミストルティン達と楽しく食事を楽しんでから、もう一月以上たつのか。

 

 なんでか知らないけど、防衛体制の見直しとかなんとかで、しばらくずっとお預け状態だったんだよねえ。窓から外を見ると、光り輝く星の海に、あきらかに星のそれではない光がきらめいているのが見て取れる。距離をおいて船を護衛している戦闘艦の光だ。

 

 こないだまでは単艦で移動していたこの船だが、今は30を超える戦闘艦が護衛に回っている。なんでも、侵略宇宙人どもが私の復活を感知し、その身柄を狙っている、という情報が入ったらしいのだ。そのため、アマノトリフネ級といえど単艦では万が一があるという事で、こうして多数の護衛が付く事になったという訳である。

 

 私としちゃあ、別に連中が襲い掛かってくるならそれはそれで構わないのだが……全員焼き尽くしてしまえばいい。ミストルティンの所で聞いたけど、彼らの開発した装備に脳波動増幅装置というものがあるらしい。本来は長距離で脳波動通信するものらしいが、それさえあれば私の炎を波動砲みたいにぶっ放せるはず。一個欲しいのだが、残念ながら提案は却下された。

 

 まあ、前にのってた船は私が溶かしちゃったからね……流石にダメだった。無念。

 

「今度の人達はどんな感じなの?」

 

「えーと、まあ。その……彼らはとても善良で知的な存在なんですが、ちょいと特殊なところがありまして。それでミストルティンの次に回させていただきまして……」

 

「ふんふん?」

 

 なんかちょっと言いづらそう。事故って遭遇したナチュラリストの件を見るに、私の心象が死ぬほどよくないか、何か変な思想を抱いてる連中が後回しになってるのはなんとなくわかる。

 

 ア・ラクチャ・ルゥの皆さんは良くも悪くも私に対して関心はなかった。

 

 ミストルティンはちょっと人間よりも重い感情を抱いていた(なお私のやらかしでちょっと揉めたのは忘れておく)。

 

 ナチュラリストはクソ害悪宇宙人の親戚だった。

 

 となると……なんだろ? フレンドと仲が悪いとか?

 

「そんな事はありません。次の異種族……ディノゾーアの皆さんは、フレンドとかなり強い結びつきをもって共存しています。強いというか、強すぎるというか……」

 

「??」

 

「その、フレンドの皆さんも納得して一緒にいるので、勘違いして怒ったりしないでほしいのですよ。約束してくださいます?」

 

 首をかしげてアースと顔を見合わせる。

 

 なんだろ。どうしてこんなに念押しされているのだか。

 

「まあ、わかった。怒るにしても話を聞いてからにするよ」

 

「ほんとですね? ほんとですよ? よろしくお願いしますね?」

 

「????」

 

 なんでそんなに念を押すの?

 

 

 

 そうして向かったディノゾーアの母星。

 

 彼らの星は、地球によく似た惑星らしい。ただ気温は常に40度近く、惑星全体が極めて温暖だ。植物もシダとかソテツとかそういう感じのが多いそうで、なんか話だけ聞いていると恐竜時代を思い出す。

 

 実際、彼らの発生経緯も歴史も、地球の恐竜によく似ているらしい。ただ彼らはその一億年にあまる歴史の過程で、知的生命体に発達するフラグを踏む事に成功したのだという。

 

 それによって、単なる優れた野生動物としてではなく、霊長として進化を遂げた彼らは、野生的ながらも発展した一大文明を星の上に築き上げた。

 

 残念ながらそれは例によって例のごとく、侵略宇宙人の攻撃によって崩壊したのだが……壊滅するまえに宇宙連合の介入が間に合い、なんとか彼らは種族と文明を維持する事ができたらしい。

 

 幸いにして惑星の汚染も回復傾向にあるらしく、一応例によってマザーツリーの枝を植えてはいるが、それがなくても惑星環境が死滅する事はないという事だ。

 

 話を聞く限りでは、今までで一番、マシな感じの星である。少なくとも文明レベルもア・ラクチャ・ルゥより高いらしいし、精神的にも安定している。

 

 厄介なところは何もないように見えるのだが……。

 

 ま、あってみればわかるか。

 

 そういう訳で、私は彼らの母星“ガロア”の衛星軌道上に待機する船の中で、ディノゾーアの大使さんと面談する事になった。

 

「お初にお目にかかります、ビッグママ。私はディノゾーアの特使として任命されました、ティガ、と申し上げるものでございます。本日は貴方様のご尊顔を拝見する名誉をいただいたこと、恐悦の至り」

 

「う、うん。どうも、こんにちは。知ってるとは思うけど葛葉零士です。こっちは我が子のアース」

 

『ピピルゥ』

 

 目の前で頭を下げる緑色の鱗肌に、私は内心ちょっとドキドキしながら対面していた。

 

 ティガさんはなんていうか、絵にかいたようなリザードマンが、漆黒の鎧を着ているといった感じの見た目をしていた。爬虫類型の宇宙人とは聞いていたけど、想像以上にリザードマンしてる。尻尾も長いし、首も長いし、口もかなりとんがっている。目は黄色く瞳孔が縦に裂けている。

 

 爪も鋭く、いかにも狂暴そうな見た目。しかしながらその立ち振る舞いは紳士的で礼儀正しく、今もまるで中世の騎士のように片膝をついて私に頭を下げている。

 

 なんだこれかっこいい。

 

 というか普通に日本語しゃべれるんだ、びっくりした。見た所、発声器の形は人間と大きく違うみたいだけど……まさか私と話すためだけに練習したとか? すごいな。

 

 ただちょっと気になる事がある。彼らの後頭部、首から背中にかけてなんか変なでっぱりがあるのだ。何かの病気かな、と思ったんだが、あきらかに色合いが彼らの鱗とは違う。まるででっかいダニか何かがくっついているような……。なんだろ。普通に考えて病気もちを特使にはしないだろうし、彼らの種族の特性なのだろうか。

 

 それに、なんだ。

 

 うちの子の匂いがするが、姿が見当たらない。どういう事だ?

 

「お話には伺っております、アースどの。貴方にもこうしてお会いできて幸栄です。フレンドは、我らにとってかけがえのない同胞。その血族とこうしてお会いできて、喜ばしい限りです」

 

「そ、それは、どうも。ところで、そのフレンドはどこに……? 姿が見えないのですが……」

 

「……それについて、ビッグママにお伝えしたい事があります。我々、ディノゾーアの生態についてでございます」

 

 少し長くなります、と前置きした彼が、私に着席を促してくる。

 

 いぶかしみながらもそれに応じ、ソファに座り込んだ私の前に、飲み物が用意される。

 

 ティガさんにはただの水。彼はグラスで口を湿らせると、私に彼らディノゾーアについての説明を始めた。

 

 

 

 

 

「……ビッグママ、どういう反応するんでしょう……?」

 

「お前……説明ちゃんとしなかったのか」

 

「ティガさんが自分達の種族の事は自分達で話すっていうから……」

 

 

 

 

 

 

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