TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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なかなか進まない感想返信ですが、順繰りだと永遠に追いつけそうにないので、最新話と順繰りで返信を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。


『湿気さえなければ多少暑くても快適!! だよね!』

 

 

「ええっとぉー……」

 

 正直、私は困っていた。

 

 目の前には土下座するディノゾーアの大使、ティガさん。彼は私に頭を下げたまま、ぴくりとも動かない。まるでこれを使ってかっさばいてくれー、と言わんばかりに目の前に置かれている刃が、ぎらり、と照明に鈍い輝きを放った。

 

 ううぬ。どうしたもんだか……。

 

 と、とりあえず、穏当に、穏当に……。

 

「え、えーと、その。ティガさん? その、いきなりそんな事言われても、私困っちゃいまして……とりあえず、頭上げてくれますか?」

 

「はっ! これは、結論を先走りすぎてしまったようで……申し訳ありませぬ」

 

 私の言葉に、ばばっ、と顔を上げるティガさん。

 

 気まずい雰囲気からは解放されたが、しかし状況は変わっていない。

 

 私はティガさんを興奮させないように言葉を選びながら、穏やかに、穏やかに語り掛けた。

 

「ええとですね。私はまだ、正直状況を把握できていない、というのが正直な所でして。何か判断を下すにも、色々、調べたい事があってですね?」

 

『ピルルゥ』

 

「ほら、アースも怒ってないし、とにかく腹を切るとか首を斬るとか、そういう物騒な話は一旦無しにしましょ、ね?」

 

 こくこく頷くアースを見て、ティガさんも考えを改めてくれたようだ。

 

「それは……わかりました。ビッグママがそうお望みであれば、いかようにも」

 

 彼は正座の状態から立ち上がり、剣を拾って腰に差した。

 

 再び席に戻って静かに座り込む彼の様子に、私はほぅ、と息を吐いた。

 

「まあとにかく、フレンド達がおとなしくしている、という時点で私は特に何もしませんよ。卵からあの子達は望んでその形で生まれてきたのでしょう? あくまであの子達の自由意思の結果、というなら、私が首を突っ込むのは野暮です」

 

「はっ。いえ、しかし……事実として、我々はフレンドから自由を奪ってしまっている形になりますし……」

 

「話を聞くに、それは仕方ない事でしょう。本来共存していた寄生虫を失った貴方達は、まともにしゃべる事もできないのでしょうし。全てのディノゾーアから知識が失われてしまったら、後から知性問題をなんとかしてもそれまでの貴方達の文化、歴史、そういったものは全て失われてしまいます。アイデンティティを失った民族の行く末は悲惨なもの……時間が無かったというのもわかります」

 

 時系列から察するに、ディノゾーアがフレンドと共生するようになったのは遅くても30年以内の話だ。宇宙連合が成立してからちょうど30年だ、ってこないだTVでやってたからね。

 

 つまり、彼らは今現在数万人まで激減した状態から、フレンドの力を借りて急ピッチで復興中という事になる。

 

 なんせ10億人から3億人まで減って、そのうちまともに頭が動くのは数万人で、その数万人で他の2億数千万人の面倒を見なきゃいけなかったんだぞ。手段なんぞ選んでいられる状況ではない。フレンドの助けが借りれるなら借りるに決まっている。

 

 それに、考えるにフレンドが融合して知性を取り戻したとしても、恐らく本来の共生体である寄生虫に蓄えられていた知識までは戻らない。民族に伝わる神話、伝承、記録、習慣。そういったものはきっと、寄生虫と共に失われた。宇宙まで進出していたという技術力を考えればライブラリーなどはあって当然だが、民族というものは記録を見ればいいものではない。

 

 日本人についての記録をライブラリーで見れば、その人は今日から日本人か? といえば応えはNO、そういう事である。よって、生き残ったディノゾーア達は共生体が死ぬ前に、フレンドと融合したディノゾーア達に知りうる限りの文化と知識を伝える必要もあったはずだ。

 

 何もかもが無い無い尽くし、その中でなんとか、彼らが彼らであるための大切な何かを伝える、その助けになったのだとしたら、私がするべきは彼らに怒る事ではなく、我が子達をよくやったと褒めたたえてやる事のはずである。

 

「確かに思う所もありますが、貴方達が置かれた苦境の想像ぐらいはつきます。大変でしたね……」

 

「……はっ。御恩情……ありがたく……!」

 

 ちょっと感極まった感じで言葉につっかえるティガさん。……もしかすると、年齢的に彼は、寄生虫の喪失を経験した個体なのかもしれない。だとしたら彼もまた、かけがえのない者を失った一人という事になる。

 

 ミストルティン達もそうだった。宇宙連合に所属している宇宙人の多くは、侵略宇宙人によって深い傷を受け、その傷が今だ癒えず血を流すばかりなのだ。その傷を、我が子達がそっとよりそい慰めているのだとしたら、それは親として誇らしく思うべきである。

 

 それはそれとして、絶対に絶滅させてやるぞ侵略宇宙人ども。

 

 憎い敵への憎悪をあらたにしつつ、しかし私はちょい、と首を傾げた。

 

「それはともかく。腹を切るとか、首を斬るとか。私、そんな事する風に見えます?」

 

「え゛っ」

 

 おい。まて。なんだ今の反応。

 

「あっ、いえ、その。ナチュラリストと遭遇した時、怒りによって船を溶かしたとか燃やしたとか聞きましたので……」

 

「う゛っ」

 

「あとその、地球での戦いにおいて、たった一人で悪鬼羅刹もかくや、という孤軍奮闘をなさっていたとも聞き及んでおりますし……正直なところ、苛烈な御方という印象でしたので……」

 

 言われて脳裏に思い返されるのは、昔昔の自分の戦いぶりである。

 

 ……うん! 千切ったり噛み砕いたり踏みつぶしたり燃やしたりしてたね!!

 

 まあ苛烈! 文字通りの鬼母と認識されててもおかしくないよね!

 

 ……ぐすん。

 

「あ、あの、その。……申し訳ない……」

 

「い、いえ、身から出た錆びですので……」

 

『ぴるるぅー(ママ、かっこよかったよ?)』

 

 ありがとアース……。慰めじゃなくて本気で言ってるとしても嬉しいよ……。

 

「をほん! まあともかく、状況はわかりました。ただ、フレンドがどういう状態か、というのはちょっと気になりますね。……ティガさん、ちょっと触らせてもらってもいいです?」

 

「それは勿論。どうぞ」

 

 言うが早いか、ティガさんは私に背を向けて膝をついた。彼の首筋から、ぷるぷる震えるフレンドの体がよく見える。

 

 ふむ。正面からではわからなかったが、彼の鎧、ちょうど首裏のフレンドの形に合わせて凹んでいるんだな。というかクッションになってる? なるほど、まあもともと寄生虫がぶら下がっていた訳だし、そういう服飾文化になるわな。

 

 それでは失礼して、っと。

 

「ふむ……(ぺたぺた)」

 

「ど、どうでしょう……?」

 

「うーむ? ふむ。なるほど……」

 

 これは……意識がない訳ではない、か? 眠っているというのが正しい表現かな。

 

 そうか、カロリーのバランスか。恐らく本来ならフレンドは自分の意識を保ちつつ、ディノゾーア達の意識活動を補助するぐらいの脳容量は持っている。だけど、それだけの脳機能を維持しようとすると、必要なエネルギーが尋常ではない。

 

 見た所、ディノゾーア達は脳波動に適性がある種族ではないようだ。よって私とアースみたいに無線で思考領域を利用する事ができないので、どうしても直結、融合する必要があり……そうなると、彼らの肉体から活動リソースを分けてもらう事になる。その場合、自分の意識も覚醒状態で動かそうとすると、ディノゾーアの皆さんはそれこそ一日中何かを食べ続けるぐらいのカロリー摂取が必要になってしまう。

 

 とてもじゃないが、壊滅から復興途中の彼らにそんな生活は送れない。この形態も、妥協に妥協を重ねた上での産物、という事か。なるほど……。

 

「ふむ。だいたいわかりました、ありがとうございます」

 

「いえいえ。それで、何か分かりましたか?」

 

 期待を込めてこちらを見つめてくるティガさん。

 

 私は口元に指をあてて少し考え込むと、ちょっと彼にお願いをしてみる事にした。

 

「ある程度は。ただ、結論を出すにあたって、もう少し確認したい事があります」

 

「確認したい事、ですか。ええ、勿論。どのような事でもお引き受けします。それで、それは一体どんな?」

 

「母星の様子を、直接みせてもらえないでしょうか?」

 

 私は窓から見える、赤茶けた色合いの彼らの母星に目を向けた。

 

「実際に、あの星の上でどのように貴方達が過ごしているか、この目で確認したいのです」

 

 

 

 私の要望は即座に通り、すぐに母星に降りれる事になった。

 

 どのような事でも、という彼の言葉に嘘偽りはなかったらしい。まあ切腹覚悟で来てるんだから、それ以下のお願いならなんでも通るわな。あんまり無茶ぶりしないようにしよう。

 

 そうして明らかにVIP用のシャトルで地上に降りた私を待ち受けていたのは、かんかんと照り付ける太陽の光と、からからに乾いた砂混じりの風だった。

 

「おおぅ、これは……」

 

「どうぞ、日傘を……いや、いらなさそうですね。直射日光にはご注意を、我々はなんともありませんが、他の知性体には聊かこたえるようです」

 

 とっさに翼を広げて日陰を作ってくるアースを見て苦笑しつつ、ティガさんは差し出しかけた傘をひっこめた。代わりに冷たいドリンクを差し出してくれるので、有難く受け取って口をつける。

 

「あ、なんだろこれ、ひんやりするぅ~」

 

「我々の星に自生する植物から作ったドリンクです。冷感作用があって、炎天下での体温を調整してくれます。まあ、ビッグママには不要かもしれませんが……」

 

「いえいえ、ありがたいです。あ、この子の分ももらえます?」

 

 ついでにお願いしてみると、ティガさんの合図に従ってドラム缶みたいな容器が運ばれてきた。え、どんだけ用意がいいの、この人達。

 

『ピルルゥ♪』

 

「ふふ、よかったね、アース。美味しい?」

 

『ピルルッ!』

 

 ほんのり甘いドリンクは、アースも気に入ったらしい。

 

 ちゅーちゅードリンクを味わいながら、二人でティガさんの後を追って発着場を降りる。

 

 それにしても、なんていうか、荒涼とした風景が広がっている。

 

 宇宙往来機の離発着場なんて、最先端の科学が集結する場所でありある種の都市みたいなもんだが、ここは地球のかつての南アメリカを思わせる荒涼とした荒野が広がるばかり。地上絵のように滑走路が広がり、点々と大木が生えている。建物のようなものはあるが、いずれも壁がなく、柱と床が段々重ねになっている。そこには無数のディノゾーアがつめていて何やら作業しており、時折私達に向けて手を振ってくれていた。

 

「おかしな風景に見えるかもしれませんが、我々ディノゾーアの建築物というのはああいったものです。我々はその、己惚れに聞こえるかもしれませんが、他の宇宙連合所属生命体と比べても、生物学的に高温に適性がありまして……。他の星の皆さんにはうだるような暑さとされるこの気温も日差しも、我らにはちょうど適温ぐらいなのです。どちらかというとしめっぽいほうが嫌なので、建物には基本、壁が無いのですね」

 

「なるほど……」

 

 そういや、研究によれば恐竜の生きていた時代は平均気温が45度ぐらいだったらしいな。現代人からすると超暑いが、ディノゾーアが恐竜と似たようなルーツを持つ生き物ならばさもありなん、だ。

 

 まあ、何階建てもある建物に壁がないと危なくないかな……とも思うが、見た感じ彼らは今まで見知った宇宙人の中では一番身体的に頑強だ、ア・ラクチャ・ルゥやナチュラリストも及ばない。数階ぐらいの高さから落ちたぐらいじゃなんともなさそうだな。

 

「でもそれだと機械文明が発達しづらくないです?」

 

「それに関しては、まあ先祖に偉大な方がいらっしゃったというか……。なかなか大変だったようですが、少なくともご覧の通り、宇宙との往来が出来る程度には文明を自力でなんとかできました。ありがたい事です」

 

 建物を見ていると、ちゃんとパソコンらしきものが駆動している。この炎天下でも問題なく作動するコンピューターかあ、多分情報素子とかの耐熱性能が桁違いなんだろうな。まあ、似ていると言っても地球とは違う星だし、資源も違ってしかるべきか。

 

 というか人類が結局死ぬほど足をひっぱりあって平和な時代には実現できなかった本格的な宇宙進出を実現させてるあたり、かなりレベル高い文明だったんだな、ディノゾーア。

 

 それが今じゃ3億人か。全く害悪宇宙人どもときたら。

 

「雨とか……いや、あんまり降らないのか。この空気の感じだと」

 

「降るときは降りますがね、雨季と乾季ではっきりわかれております。それで、ビッグママ。どちらにうかがいますか? 流石に都市部に向かう場合は、少し警備等の準備がありますので……」

 

「ああいいや、そっちはいいよ。私が行きたいのは、あっち」

 

 私はそういって、脳波動で感知した場所を指さした。

 

 地平線の向こうに、巨大な大木が聳えているのが見える。この星に根付いたマザーツリーだ。

 

 そしてそれは同時に、フレンドの卵の生産拠点であり……それ故に、ディノゾーア達はある施設を併設しているはずだ。

 

「貴方達の、新生児とフレンドの様子をちょっと見せてもらいたいんだ。それで、全部がはっきりすると思う」

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