TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

154 / 158
『宇宙連合という寄り合い所帯』

 

 そんなこんなで、私達は惑星ウィンストリアを後にした。

 

 ドロップシップが惑星の重力圏を離脱すると、衛星軌道上で待機している巡洋艦の元に向かう。

 

 全長4km。恒星間航行船としてはコンパクトだけども人間の身からすれば途方もなく巨大な銀色の船体がぐんぐん近づいてくるのが、窓からもよく見えた。

 

 その景色に魅入っていると、隣にアリスがやってきた。彼女の拘束具は、既に取れている。

 

『あれがお前達の宇宙船か……』

 

「そうだね。ウェッソン級戦闘巡洋艦マテバ。侵略宇宙人の艦からリバースエンジニアリングしたワープドライブを持つ、宇宙連合の主力艦の一つだね」

 

『随分と小さいな……あれで大丈夫なのか?』

 

 アリスの言葉は率直だが端的だ。まあ、実際の所どうなのかというと……。

 

「全然大丈夫じゃないね」

 

『おい』

 

「まあまあ。ウェッソン級はとにかく、宇宙艦隊の体裁を整えるために建造された戦時量産艦みたいなものだから……とにかく数をそろえるのが最優先だったんだよ。今は、新しく建造されている新型艦に徐々に役割を譲って一線からは遠のいている。それになんだかんだでここまで来れてるし、居住性と航続性はお墨付きだよ」

 

 それになんだかんだ、私達の場合はちょっとズルできているしね。本来想定されていたよりも、宇宙航行のハードルは大幅に下がっているのだ。ま、それは置いておく。

 

「しかし。アリスも大分私達に気を許してくれたようでうれしいよ」

 

『え?』

 

「口調。最初にあった時はですます調の丁寧語だったのに、今はすっかり砕けちゃって。それが素? 戦闘時だから口調が乱れてたのかと最初は思っていたけど」

 

 そこで、私がずっと気になっていた事をいざ指摘してみると、アリスはきょとん、と硬直した後、慌てて自分の顔を手で押さえた。今更遅いね。

 

『いやほほほ、そんな事は、ありませんですわ、よ?』

 

「いいっていいって、今更気にしないし。銃を突きつけられるよりは些細な事さ」

 

『うぐ。なんだかんだで根にもってるじゃないか……』

 

 そりゃあね。私だけならともかく相棒やフレンド君たちにも敵意を向けられちゃあね。

 

『ムフゥ』

 

『ギュルル……』

 

 そんな事を考えていると、腕の中の相棒や、お目付け役のサロンちゃんがちょっと困ったような鳴き声を上げる。どうやら、僕達そんなに気にしてないから、と言いたいらしい。

 

 本当にお前達は良い子だねえ……。よし、ご褒美に飴玉を上げよう。

 

『ムフ……ッ』

 

『ギャアギャア』

 

 貰った飴ちゃんを嬉しそうにフィルムを剥がして口に放り込む相棒たち。美味しい? そう、良かった。なんといってもこれ、かつてチルドレンの神獣キティも大好きだったという、地球印のベッコウ飴なのだ。砂糖を煮詰めただけだけど、だからこその混じりっけない糖分の味が脳に染みるんだよねえ。

 

 貴重品だから味わって食べてよ。噛み砕かないように。

 

『……ところで。船にはそのフレンド、というのがいっぱいいるのか?』

 

「ええまあ。他にも色々といらっしゃるけど」

 

『他にも……?』

 

 首を傾げるアリス。どうやら、エンケティア人は単独で寄り集まって暮らしているヒューマノイドだったみたいだね。被造物であるアリスにも同じ人型を採用したあたり、単一種族文明だったのがよくわかる。

 

 となると説明した方がいいかな? いや、もうその時間はなさそうだ。

 

 仕方ない、出来るだけ傍にいて仲介するしかないか。

 

 ドロップシップが艦の下部にドッキングし、ガコンと船が揺れる。艦内放送が流れる中、私はアリスをエスコートするべく手を差し出した。

 

「それではどうぞお手をお取りください、エトランゼ。私達、宇宙連合の船は、貴女を歓迎します」

 

『……痛み入る』

 

 おずおずと差し出された指を手に取る。血の通わぬ彼女の指は冷たかったが、なあに。すぐに私の体温で暖かくなるだろうさ。

 

 

 

 

 

 

 

『……スタッフにお知らせします。本艦は、通常航行でこの場を離れつつ、演算が終了し次第、跳躍航行に入ります。演算終了予想時間はおよそ96時間後。直ちにナビゲーターの皆さまは、艦橋にお集まりください。各スタッフは、所定の位置で待機。繰り返す、本艦は、通常航行でこの場を離れつつ、演算が終了し次第……』

 

「それでは、我々は職務に戻るとするよ。後はよろしく頼む」

 

「はい、船長」

 

「はっはっは、艦に戻ったら私は船長ではなくただの船員さ。では、またな」

 

 呵々と笑って、ドロップシップの運行メンバーが去っていく。私達を救助してくれた戦闘メンバーも同じくだ。この船の正規のクルーである彼らは、やる事がたくさんあるのだろう。ただ一匹、サロンちゃんがしきりに振り返って手を振るのに見えなくなるまで答えて、私は乳白色の艦内通路を見渡した。

 

 正直言っていつまでたってもウェッソン級の艦内構造はイマイチ慣れない。無重力下での運用を前提としているせいか、艦内は網目状に重力を無視して通路が張り巡らされている。侵略宇宙人との艦内白兵戦闘になった時を想定しての構造らしいが、ちょっと記憶を違えると忽ちどこにいるのか分からなくなってしまう構造はどうなのか。

 

「頼むぞ、相棒」

 

『ムフッ』

 

 情けないが艦内での現在位置把握は相棒が頼りだ。まかせておけ、と鼻息を吹き出す相棒を抱きかかえて、私はアリスに声をかけた。

 

「じゃあ、アリス、行こうか。まずは防疫スタッフと警備に顔を通しておこう」

 

『わ、わかった。よろしく頼む』

 

「ムフ」

 

 そんなこんなで、彼女を連れて艦内を移動しようとしたその時である。

 

 ちょうどいいタイミングで響いた、聞き覚えのある電子音声が私の足を押しとどめた。

 

『ノーン、プロブレーム! こちらの方からお出向きしました~。ようこそ、マテバへ! 異郷の御方!』

 

「あ、防疫班長」

 

『?!』

 

 現れたのは、無重力を推進する透明なカプセル。その内部には、果実を思わせる肉塊がぷよぷよ浮いていて、伸びた索がカプセルの端、機械部分に繋がっている。さらにそのカプセルを、ツヤツヤした水色の肌を持った魚のようなフレンドが抱きかかえて、円らな目をぱちぱちさせながらこちらを見た。

 

 彼とは顔見知りである。私は早速、ご足労頂いた事を労った。

 

「わざわざお忙しい中をすいません」

 

『いえいえー。いくらフレンド由来の万能免疫を手に入れているとはいえ、万が一という事はアリマース! そういう場合に備えて動くのも、ワタクシの仕事デース! お気になさらーず』

 

『んな、なん、な……?!』

 

 カプセルから伸びてきたロボットアームと悪手していると、隣でアリスがめさめさ狼狽えている。

 

 おもしろ……じゃなくて説明がいるかな。

 

「紹介するよ。こちら、防疫班のトップやってるER213Aさん」

 

『よろしく頼むぞい、アリスどの。ところで翻訳これで合ってる?』

 

『こ、これはご丁寧に……じゃなくて!』

 

 ガッ、と鋼鉄の指が私の肩をわしづかみにする。痛い。

 

『ど、どういう事だ学者! 神獣へ……じゃなくてフレンドはとうとう言葉を操るまで進化したのか!?』

 

「いたた、違う、違うって。彼は異星人! フレンドは抱えてる水色の方!」

 

『ピキュー』

 

 そうです、僕がフレンドです、と頭を下げる班長のフレンド。一方、アリスさんは異星人、という言葉に何か酷いショックを受けたようだった。

 

『い、いせ、異星人……?』

 

「宇宙連合、っていったでしょ? 彼はミストルティンという、別の惑星出身の知性体。宇宙連合はね、侵略クソ宇宙人に迷惑かけられた知性体が集まって出来た、自らを守るための集まりなんだ」

 

『然り。同じく侵略ファッキン宇宙人に迷惑をかけられた者同士、助け合って連中に対抗してる訳です。はい。よろしくね?』

 

 とりあえず宇宙連合所属の知性体同士であれば、侵略宇宙人の悪口で掴みはオッケー。同じ目に合った者同士、痛みを分かち合えば今日からマブダチ!

 

 そんなノリで班長と肩を組んで仲良しアピール。相棒同士も、くっつきあってムニムニ。まあこっちはいつだって楽しそうだけど。

 

『ピルルゥ』

 

『ムフッ』

 

『そ、そうなのか……。しかし、そのような形体の知性体が存在したとは。宇宙は広いな……』

 

 何やら不思議そうに首を傾げているアリスだが、どうやら彼女とは大分、知性体に対する認識にズレがあるようだ。まあ、エンケティア人はどうも、後継者以外の知性体と接触しなかったようだから仕方ないか……。

 

「言っておくけど、宇宙連合だと私達みたいなヒューマノイドタイプの知性体はむしろ少数派だからね? 大体の知性体は不定形で、決まった形を持ってないのが大半だから」

 

『え? そ、そうなのか……?』

 

「そう。例えばこちらの方」

 

 私は、班長の後ろに控えている蟹みたいなフレンドと、その子が後生大事に抱えている植木鉢を指さした。

 

「こちら、植木鉢に入っているのがファンガサイト、知性化菌類の皆さんです。この株はジョシュアを自称していますね」

 

『どうも、私達がジョシュアです。よろしくお願いします』

 

 植木鉢に埋め込まれたスピーカーから声がして、アリスは困惑しながらよろしく、と頭を下げた。

 

「んで、こっちでぷかぷか浮いてる真珠色の丸いのが、ケイ素生物ことシリコニアンのプラスティー君です。挨拶」

 

『プラスティーです! ねえ君、僕達と相性がよさそうな体をしているね! どう、くっつかない?』

 

「やめれ」

 

 物騒な事を言い出したプラスティー君を空中ではたき落とす。床にべちっと張り付いた彼を、お供のカエルみたいなフレンドが『毎度スイマセン……』という顔で引きはがして、口に咥えるとゴクンと丸呑みにした。胃の中でどたんばたんとプラスティー君が暴れているのかお腹がボコボコしているが、フレンドは気にもしていない。

 

『クライーセマイー』

 

『ゲップ』

 

 手厳しいようだがこれが適切な対応である。シリコニアンは実質不死身な上に、他の物質と融合する能力を持っている。これについてはメタリアンも同様なのだが、シリコニアンは後先考えずに親和性の高い存在を“同化”するせいでサルベージするのがメタクソ大変なのだ。少しはメタリアンの皆さんを見習ってほしい、いや、あっちはあっちで大変か……。

 

『????????』

 

「あ、気にしないで。シリコニアンの皆さん、知性体としては凄い未発達段階で皆子供みたいな性格しててさ。そのくせ能力は凄いから、アンジャッシュで大ごとを引き起こすことがあってね……」

 

 まあそのおかげで侵略バカ宇宙人の侵攻にも抵抗できていたんだが。いや、あれは侵略だったのだろうか。どっちかというと迂闊にテリトリーに踏み入った侵略宇宙人が玩具にされていたというべきか? いやでも一応、連中の船の中枢システムの素材にシリコニアンが使われてるから立派な被害者ではあるんだが。ううーん。

 

 宇宙連合もフレンドが居なかったらしちめんどくさい事になっていただろう。くわばらくわばら。

 

『ダシテー』

 

『ケププ』

 

「まあそういう訳だから、まずは安全の確保と付き合い方を知るために、班長の所に行ってもらいたいのだよね。いいかな」

 

『わ、わかった……』

 

 相互理解の道はまず一歩から。困惑した様子のアリスの手を引いて、私は班長の後に続いた。

 

『ところで、こういう連中が全部でどのぐらいいるんだ……?』

 

「宇宙連合は12種族で構成されてるね、いまんとこ。この船にはそのうち7種族ぐらいが乗ってるかな。私達人間、ミストルティン、ファンガサイト、シリコニアン、ア・ラクチャ・ルゥ、ザ・ワープ……あとフレンドだね。まあザ・ワープは滅多に人前に顔を出さないから気にしなくていいよ。X99やナチュラリストみたいなレア種族はこんな場末の船には居ないしね」

 

 一応説明するが、正直ピンと来ないだろう。連合の種族については、おいおい覚えて行って貰わないとね。

 

 そう思ったのだが、アリスは何やら俯いて考えている様子だった。

 

『……その全部に、フレンドがついているのか?』

 

「うん、そうだけど。彼らが居るからこその円滑なコミュニケーションだしね」

 

『そうか……』

 

 それきり、アリスは黙り込んでしまう。その表情の無い銀色の相貌からは、彼女が何を考えているのかは私には伺い知れなかった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。