TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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『雁首揃えてのこのこと。おしおきの時間だぞ』

 笛の音が鳴り響いて数秒。

 

 心のどこかでほら、何も起きないじゃないか、と思っていた北川は、しかし突如震えだした大地に地面に這いつくばる事になった。

 

「わ、わわ」

 

 地の底から響いてくる振動に、地面へとしがみつく。見れば、この振動は敵味方無く襲い掛かり、全ての兵士は地面に倒れこむようにして戦闘を停止している。

 

 例外は、宙に浮いて疾走する敵の装甲車両ぐらいのものだ。

 

 はるか後方から迫ってくる敵の車両が、地震に身動きできない兵士達に、その砲塔の照準を合わせる。

 

 直後。

 

 その隊列が、一瞬で視界から消えうせた。

 

「え……」

 

 己の目を疑って、北川は目を凝らした。

 

 よく見ると、敵の車両集団は消えうせたわけではない。何か突然、彼らの進路上に深い深い亀裂が発生して、そこに突っ込んだ車両は次々とクラッシュしてしまったようだ。遅れてぼん、ぼんと機関の爆発する音がして、幾筋もの煙が空に上っていく。

 

 それだけではない。落ち着いてきた振動が、今度は明らかに移動を開始した。北川達の足元から、要塞の方へ……侵略者達の軍隊に向かっていく。

 

 振動は完全に彼らの足元に移動すると、そこで一瞬、完全に停止した。

 

 世界に再び静寂が戻ってきて……。

 

 轟音と共に、地面が砕けた。

 

 地面が激しく隆起し、あるいは陥没し、まるで巨大な怪物の顎のように断裂が広がっていく。激しくスパークする地割れの底に、次々と侵略者の車両や兵士達が飲み込まれていく。

 

 隆起はまるで獲物をかみ砕くように次々と発生し、隊列を地の底に引きずり込んだ。慌てて、侵略者達の部隊が後退する。

 

『●◆★!?』

 

『◆★●、▼●!?』

 

 同様に侵略者達が金切声を上げているが、それは北川も全く同じ気持ちだった。

 

 一体、何が起きている?

 

 その答えは、直ぐそこに。

 

 

 

『ヒィイイイ………ンン……』

 

 

 

 口を開く大亀裂の地下深くから、タービンの回るような音がする。

 

 何か、途方もなく巨大な何かが動いてる気配。

 

「な、なにが……巨大な化け物……なんだって?」

 

 思わずつぶやいた北川は、自分の言葉にはっとした。

 

 覚えが、ある。

 

 

 

『です。あの地面の下の怪物の行動は把握してるので』

 

 

 

「まさか、葛葉ちゃん……?!」

 

 されど、侵略者もさるもの。

 

 最初こそ動揺を見せたものの、直ぐに地下にいる何者かへの攻撃を再開する。

 

 味方に構わず、基地から発射されたミサイルが地割れに降り注ぎ、爆炎で彩る。

 

 さらに振動の中でも姿勢を崩さないホバー戦車が、その砲塔を地の底へと向けた。距離をとって仰角を取り、徹甲弾を地下へ……。

 

 しかしその直前、彼らを不幸が襲った。

 

 突然の衝撃。

 

 戦車部隊の地面が突如として爆発したかのように吹き上がった。巻きあがる濃厚な、爆煙のような土煙。

 

 その土煙を突き破って、一両の装甲車両が遠く彼方へと吹っ飛んでいく。

 

 その行方を目で追った北川は、茫然と視線を戻した。その彼の横を、今度は横向きに吹っ飛ばされた装甲車両が、バウンドしながら転がっていく。

 

 慌てて後退する装甲車両の一団、それが巻き起こす旋風が土煙を引き裂き、その内部に潜む何かの姿を露わにした。

 

『ヒィイィン……』

 

 それは、巨大な、あまりにも巨大な竜の如き怪物だった。

 

 地上に出ている部分だけで、全長20mは固い。体の太さは5mを越えている。全身を漆黒の甲殻で包み込み、ところどころに金色の模様が煌めいている。

 

 その頭部は、丸い開口部に無数の牙が並んだ、シールドドリルのような形状をしていた。それで、地面を掘りながら進んできたのだろうか。

 

 茫然と見守る北川の目の前で、ゆっくりとその頭部が変形していく。まるで裏返るように、端からひっくり返っていく巨大な顎。

 

「違う……逆だ……」

 

 そう。それは、あくまで巨大な顎が、その驚異的な柔軟性と強度を生かして、裏返ってシールドドリルを構成していたにすぎない。それがゆっくりと元に戻ると、怪物の頭部は三つに裂けた顎を持つ、巨大な竜の頭部を形成していた。

 

 地竜。

 

 ある少女が、それをガルドと呼んでいた事を、彼は知らない。

 

『ヒィイイイイン……!!!』

 

 全身の甲殻を震わせて、地竜がタービンのうなるような雄叫びを上げる。バチバチバチ、とその甲殻の合間から、青い光が迸った。

 

『◆●★』

 

『●★◆! “クイーン”●★◆★!!』

 

 侵略者達の兵器が、一斉に地竜めがけて解き放たれる。

 

 基地から降り注ぐミサイルが、戦車部隊の砲撃が、歩兵たちの手にする対戦車兵器が。

 

 次々と地竜の体表で爆発が巻き起こり、その巨体を包み込んでいく。どんな重戦車でも破壊されてしまうであろう猛攻が、一匹の巨大生命体を爆煙の向こうに押し包み……。

 

 直後。

 

 それを突き破って振り下ろされた巨体が、侵略者達を叩き潰した。

 

 棘だらけの吊り天井のような体躯が、鉄槌のように侵略者達を地面ごと割り砕く。さらにそのまま、薙ぎ払うように上半身を地に擦り付けて、扇状に侵略軍を挽肉へと変えていく。

 

 辛うじて攻撃範囲から逃れた数台の戦車が、素早く地竜の背後に回り込んだ。そのまま、無防備な背を砲撃しようとして……地面から突き出した鋭い槍のような穂先に串刺しになった。尻尾を振って突き刺した戦車を要塞の外壁に投げつけつつ、振り返った地竜が再び頭部をシールドドリルに変形。地面ごと削りながら突進し、戦車数台を地面ごと掘削して消滅させた。

 

 ゆっくりと身を起こす地竜。その下には、もはや動く生命体は存在しなかった。卸金のようなその胸郭が、青い返り血でべったりと染まっている。

 

 その漆黒の甲殻には、いくつかの真新しい陥没が刻まれている。侵略者達の総攻撃による傷跡だ。

 

 彼らの攻撃は、怪物に通じなかったわけではない。わずかには通り……そして、それにとどまった。

 

 圧倒的だ。

 

 あまりにも、生物としての……戦力としての格が違う。

 

『ヒィイイイン……!!』

 

 勝ち誇るようにおたけびを上げる地竜。が、そこに性懲りもなくミサイルが降り注ぎ、爆炎の花を咲かせた。

 

 さらに無数の対空機銃らしきものが、横殴りの豪雨のように地竜の体を薙ぎ払う。

 

 しかしそれらは、地竜の命に届くことはない。せっかくの勝鬨を遮られ、うっとおしそうに顔を向けた地竜が、その体を再び青白く発光させる。

 

『ヒィイイイ……イイン!!』

 

 迸る、青い衝撃波。

 

 地竜の体から生じる青い波動のようなものが、要塞の防衛設備を飲み込んでいく。途端、激しく砲火を繰り返していたそれらの防衛設備は、激しい火花を散らしながら徐々に動きを停止していった。

 

 攻撃をやめた要塞に、地竜が体を叩きつけて、外壁もろとも防衛設備を破壊していく。二度、三度体を叩きつけて満足した地竜が体を離したときには、防衛要塞の外壁は一見すると廃墟のような有様になり果てていた。

 

「なんだ……あの怪物は……一体……?」

 

 繰り広げられる一連の暴虐を、北川は茫然と見守っていた。

 

 その耳元で通信機がザリザリと音を立てた。

 

『聞こ……か、誰……か……。……か、誰か、生きているか? こちら、攻撃部隊B班の中川だ! 部隊長が負傷した為指揮を引き継いでいる! 攻撃部隊A班、誰か、生き残っているものはいるか!? 状況を把握しているものはいるか!? 何が起きている!?』

 

「っ! こ、こちら、攻撃部隊A班の北川二等兵! 報告します、戦場に巨大怪生物が出現! 侵略者に攻撃を行い、侵略者の防衛部隊は壊滅! 繰り返す、侵略者の防衛部隊は壊滅!!」

 

 通信に向けて怒鳴りながら、北川は目の前の怪物に目を向けた。

 

 一通り目に映る全ての敵を排除し終えた地竜は、地響きを立てて再び地面の下へと戻っていく。完全に姿を消した地竜が、防衛要塞の内部に向けて移動していくのが、地上に稲妻のように走るひび割れで見て取れた。

 

 理由はわからないが、あの地竜は侵略者を目の敵にしているようだ、と北川は見て取った。であるならば、利用できるかもしれない。

 

 地竜が穿孔していった後に残された大穴を見て、彼の頭にある閃きが過った。

 

 これは。使える。

 

『怪物!? 何の事だ?!』

 

「と、とにかく! 怪物は地中を潜航して侵略者の基地に侵入したようです。怪物の作り出したトンネルから、今なら内部に突入できます! 今がチャンスです!」

 

 北川の言葉に、通信の向こうで息を呑む気配。数秒置いて、念を押すような確認が返ってきた。

 

『それは本当か? と、とにかく、今からそちらに合流する! 指示を待て!』

 

「はい!」

 

 通信が切れないようつなぎ続けながら、北川はもう一度、地竜の消えていったトンネルに目を向けた。

 

 巨大な怪物の姿は、今は見えない。しかし、防衛要塞の内部からは、断続的に大きな振動が響き渡っている。内部で、あの怪物が暴れているのだ。

 

 ぎぎぎ、とあの悪趣味な巨像が傾くのが見える。

 

「葛葉ちゃん……君は、一体……」

 

 この事態を招きよせたであろう少女の事を思い返し、北川はぎゅっ、と警笛を握りしめた。

 

 

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