TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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『はぐれた奴からボコボコにしよう』

 

 

 

 

 全く。妙な事になってるね。

 

 それが現場を前にした私、葛葉零士の率直な感想だった。

 

 前の寝床を後にしてさまよう事数日、ようやく落ち着けそうな場所を見つけた矢先のビル爆破。

 

 一体誰が、こんなところで何を……と思って顔を出した先で見つけたのは、逃亡する人類の戦士っぽい女の子と、それを追うマシンカルティスト連中の一派だった。

 

 女の子の事情はよくわからないが、カルティストの連中が少数で単独行動しているのなら良い機会だ。

 

 ちょっとした意趣返しにはちょうどよい。

 

 そのついでに、女の子を助けられれば万々歳だ。

 

 そう思って、うちの子(プルートゥ)を急がせたが、どうやら残念な事に少し遅かったらしい。

 

 倒れている二人の女の子のうち、一人はすでに息が無い。だけど、もう一人はまだ息がある。

 

 この子だけでも、助けないと。

 

「もう大丈夫だよ。うちの子は、強いからね」

 

『グルァアアア!!!!』

 

 雄叫びを上げる子が、破壊したスクラップを投げ捨てて黒服達に突進する。牙を剥き涎を垂らしながら猛進する彼に、黒服達がレーザー銃を発射する。

 

 こいつらの主武装は知ってる。ラジウムライフル、生命体にとって極めて有害な放射線を収束した熱線。

 

 なるほど、確かに生っぽいうちの子には効くかもしれないが……。

 

 傷を受けるのと、それが致命傷になるかはまた別問題なんだなあ。

 

『グァアアア!!!』

 

「?!」

 

 全身をレーザーでうち貫かれて焼け焦げた弾痕を残しながらも、まったく勢いを衰えることなく突進するプルートゥ。その大鎌のような爪が、黒服の一人を頭から貫いた。

 

 そのまま敵集団の中央で暴れ狂うプルートゥ。貫いた残骸を投げ捨てて、尾で叩き潰し、爪で薙ぎ払い、牙でかみ砕く。瞬く間にそのボディを青白く染める殺戮の痕跡。

 

 とはいえ、敵もやられてばかりではない。

 

 マシンカルティストの連中は時間操作能力を持つ。プルートゥの突撃に巻き込まれなかった連中の姿が突如掻き消える。時間を加速してこの場を離脱したのだ。

 

 だが残念。

 

 そいつは、私とうちの子には通じないんだよなあ。

 

「プルートゥ」

 

『グルァアアッ!』

 

 私の指示に応えて、プルートゥの頭部が青白く発光する。活性化した脳パルスが甲殻を突き抜けるほど強くなって、周囲を青白く照らし出す。

 

 その輝きに照らされる中、消えたはずの黒服達の姿が突如出現する。彼らは逆再生のように、時間加速する前の状態に戻された。

 

 時間加速なんて芸当、この世の道理に反している。それを途中で中断されたら、まあ一旦なかったことにするのが一番丸いよね。

 

 戻された黒服達は見るからに動揺している。

 

 離脱したはずが元に戻された、時間を操る方が逆だけど「頭がどうにかなりそうだ」状態だろうね。

 

 まあだけどかまってやる理由はないんだよなあ。

 

 再び始まる一方的な虐殺。

 

 これはこのまま終わりかな、と思っていたら、空の向こうから妙な音が響いてきた。これは……。

 

「増援かな。こりゃー、最初から君たちの動きはバレてたね」

 

「え……」

 

 空を見上げると、ビル街の向こうから曇り空を飛び越えてくる黒い機影。

 

 連中の使うガンシップだ。UFOと戦闘機を足して2で割ったような航空力学を無視したような形状の物体が、青白い光を放ちながら接近してくる。

 

 そういえばやっぱあれもやばい感じで放射線バリバリなのかな。私や子供たちには影響ないけど、足元の少女が被曝したらちょっとやだな。

 

 庇うように少女の前にでる。

 

 一方、接近してくるガンシップは明らかに「ここからビームを撃ちますよ」といった感じの銃口を展開しながら高度を落としてくる。

 

 このまま地上を掃討するつもりかな。ぼんやり見上げていると、がっ、と私の足首が強くつかまれた。

 

 びっくりして見下ろすと、必死な形相で見上げる人類軍の少女と目が合った。

 

「に、逃げて! 早く!」

 

「え……と?」

 

「あれはクロノス・オーダーの対人掃討機よ! このままここに居たら、貴方も巻き込まれる……早く!」

 

 お、おお。流石に知ってたか。

 

 だけど、逃げるといっても……見たところ、少女が装備しているアーマーは戦闘によって損傷して動力が停止しているようだ。すごく重たそう。

 

 彼女を置いて逃げる訳にもなあ。

 

「お姉さんはどうするの?」

 

「わ、私は大丈夫よ! いいから、早く……」

 

 嘘だな。一瞬、ぎくっとした顔をした。多分、パワーアシストが切れてもう自分では起き上がる事も出来ないと見た。

 

 いい人だな。優しい人だ。

 

 こういう人が、一人でも多く生き残ってほしいよね。

 

「早く、向こうに……」

 

「悪いけど手遅れだよ。それに……」

 

 飛来してくるガンシップが荷電粒子ビームをチャージするのが見えた。人間どころか、重装甲の戦車も蒸発させる威力のそれ。戦争初期、人類軍の防御線はこいつのせいでさんざんに蹂躙された、私はそれを複数の立場から見てたからよく知っている。

 

 さしもの私もあれを食らったら耐えられない。

 

 でもそれは、その攻撃が私に届いたらの話ですよね?

 

『ガアアッ!』

 

 私を飛び越える巨大な影。

 

 地響きを立てて目の前に着地するのは、さっきまで殺戮に酔いしれていたうちの子だ。遊んでいる最中でも、親がやばそうだと見たら切り上げて飛んでくる、うーん親孝行である。あとでご褒美上げないと。

 

 それはともかく、私の前に立ちはだかったプルートゥは、迫りくるガンシップに向けて再び脳波動を放った。

 

 青白い放射を受けて、低空飛行するガンシップの安定性が損なわれる。連中のテクノロジーは、高度で微細だからこそ、介入されると容易く崩れる。

 

 勿論それはあちらもわかっていて対策しているが、残念。プルートゥレベルの脳波動への対策は、まだまだ行き届いていないみたいね。

 

 低空飛行でバランスを崩したら、そりゃ当然攻撃どころじゃない。ふらつく体勢を立て直すのを最優先としたのか、攻撃を中断するガンシップ。

 

 プルートゥが、低く身を沈める。次の瞬間、その巨体が宙を舞った。

 

 正面から突っ込んでくるガンシップに、とびかかるプルートゥ。その巨大な鉤爪が、陽光を受けて一瞬だけ煌めいた。

 

 激突。

 

 トラック同士が正面衝突したらこんな音になんのかな、聞いたことないけど。

 

 とにかくすごい音を立てて、ぶちかましを決めたプルートゥを乗せたまま、ガンシップが蛇行しながらビル街に突っ込んでいく。建物の壁を削りながら減速したガンシップが、四軒ほど新鮮な瓦礫に変えた先で、ぼぉん、と炎を吹いた。

 

 黒煙をもくもくと上げて燃え上がる航空機。

 

 ありゃあ完全にダメだね。ご愁傷様。

 

 敵機の撃墜を確認し、私は再び空に目を向ける。敵の追撃はなさそうだ。

 

「た、助かった……?」

 

「そうみたいだね。でも……ごめんね、お姉さん」

 

「え……」

 

 私は倒れ伏したもう一人の少女に目を向けて、少しだけ顔を伏せた。

 

「あっちの子は、ダメみたい」

 

 何を言われたかわからない。そんな感じの少女の呆けた顔が、みるみるうちに曇っていく。

 

「……うそ」

 

 重たい体で這うように、彼女は斃れた女の子の元に向かっていく。必死に否定するような言葉が、その口から洩れる。

 

「うそ、うそよ……だ、だって私は助かったのに……幸奈……ゆきな! お願い、返事をして! ゆきなぁ!!」

 

 物言わぬ躯にしがみつくようにして、嗚咽交じりの叫びをあげる少女。

 

 ああ、こういうのは嫌だなあ。

 

 何が一番いやって、これを見て「よくある事だね」とか思い始めてる自分が一番嫌だな。

 

 そりゃあ、この世界ではこんな事もう有り触れていて、いくらでも見てきたことだけどさ。

 

 だけど、悲しい事は悲しいに決まってるじゃんか……。

 

『グルルル……』

 

「あ、お帰り」

 

 ずしん、ずしん、と傍らに立つ巨体。見上げれば、プルートゥが何かを咥えて私の傍に戻ってきていた。

 

 咥えているのは……ガンシップの制御に使われていた生体パーツかな。

 

 ぶちぶちぶち、と音を立ててそれを引きちぎり咀嚼するプルートゥ。良い食べっぷりを見守っている間に、人間一人分ほどもある生体パーツは彼の胃袋に収まってしまった。

 

 ただそれでは物足りなかったのか、プルートゥは地面に転がる黒服達の遺骸をあさり始めた。爪で胸郭をひっぺがし、内部に収まっているポッドを引きずり出す。

 

 内部には、青白い液体に満たされて、脳みたいなものが収まっている。それを、プルートゥは入れ物ごと咀嚼して嚥下していく。

 

『ガゥガゥ、ハフッ、ガウ』

 

「ああほら、落ち着いて食べなさい。もう、こんなにこぼして……」

 

「な……なにを、してるの……?」

 

 プルートゥのがっつきっぷりに苦笑していると、震えるような小声で少女が問いかけてきた。

 

 振り返ると、彼女は相棒の亡骸を抱きかかえたまま、青ざめた顔で残骸をむさぼるプルートゥを見つめている。

 

「何って……おなかへったみたいなんだよねえ」

 

「そうじゃないっ! あの兵士達の原材料を知らないの!?」

 

「原材料って……人間でしょ?」

 

 そんな事は私も知っている。

 

 連中は、マシンカルティストの連中が、捕獲した人間の脳髄を制御パーツにして作り出したアンドロイドだ。連中のテクノロジーは核を動力源にしていてその放射線は人体にきわめて有害で、当然人間はそんなの浴びたらたちまち全身が腐って死んでしまう。が、脳と心臓だけは放射線そのものが原因では死なないんだよね。

 

 放射線はあくまで遺伝子を破壊するだけだから、細胞分裂をほとんどせず新陳代謝の必要のない脳と心臓は即死しないんだよね。で、脳というのは高度な生体部品でもある。連中はそれを利用して、さらった人間の脳を玩具にしていろんなもんを作っている訳だ。あの黒服兵士もその一つ。

 

 そのあたりは私も当事者だったのでよーくしってる、玩具にされる側だけどね。

 

「し、知ってるなら……なんで……!?」

 

「そうは言うけど、うちの子も食いしん坊だから」

 

 ドン引きしてる少女に、申し訳ない気持ちになる。言いたい事はわかるよ、でも食費大変なのよ……永遠に食べ盛りみたいなもんだから……。

 

 そんな事を話してる間に、プルートゥは兵士達の生体パーツを食べつくしてしまったようだ。しーはしーは、と爪の先で歯の間に挟まった金属片をかきだしている。

 

 その視線が、ぎろり、と少女とその腕の亡骸をとらえた。

 

 あ。

 

「ヤバ」

 

『グルルゥ……』

 

 のしのしプルートゥが歩いてくる。

 

 開かれた口からだばだばと涎を垂らしながら、腹ペコ怪物が近づいてくる。

 

 少女の前で立ち止まった怪物が屈みこむように少女の顔を覗き込む。その感情の無い黄色い複眼の向こうに、底なしの貪食を垣間見た少女が息を呑んだ。

 

「ひ……ま、まって……やめてぇ!」

 

『グルルル』

 

 逃げ出すよりも早く、両手の爪で挟むように少女を抱きかかえるプルートゥ。武装のせいで超重量であるはずの少女二人を軽々と、高い高いするように持ち上げるプルートゥ。

 

 その口が、大きく大きく開かれる。伸びてきた舌が、しゅるりと少女の足に絡みついて引き寄せた。

 

『ガァー………ン゛』

 

「ひ……いやあああああ!?」

 

 そのまま、無数の牙が生えそろった顎が嚙み締められ、少女二人が貪られる、その直前で。

 

「生きてる人間は食うなって教えたでしょ!!!」

 

 跳躍した私のローリングソバットが、プルートゥの側頭部に直撃した。

 

 

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