TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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『根回しって大事だよなあ……』

 

 

「……礼は言わねーぞ」

 

「狼藉者にそんなものは求めないよ」

 

「ちっ。変な言葉を使うチビだな」

 

 案内された子供たちの隠れ家で、私はのんびりとソファに身を預けていた。生地が破けて足が折れて傾いたソファだが、何、そもそも野宿生活でまともな家具とは縁がない。慣れたものだ。

 

 隠れ家には10人近い子供が集まっているようだった。

 

 配給を囲んで分け合っている小さな子供たちを、3人の男の子が見守っている。彼らが保護者のような立場らしい。

 

「なんで子供たちばかりで集まっているんだ? 大人はどうした、大人は」

 

「大人なんて信じられる訳ないだろ!!」

 

 単純な疑問に、返ってくる拒絶の反応。あー、はいはい。そういう事情か。

 

 まあよくある事だな、うん。

 

「だがな。あんな小さな子供たちの腹をすかせたままにしておくのはどうなんだ?」

 

「ちっ……母親みたいな事をいうチビだな」

 

 そりゃあ母親だしな。

 

「どっちにしろ、俺たちに仕事をくれるやつなんていねーよ。大体、あいつらのほうがここにあとからやってきたんだ。俺たちが隠れ住んでいた所に集落をつくったんだ」

 

「なるほどね」

 

 これはめんどくさい話になってきた。早い話が、集落からすれば彼らは先住民であり、かつ不法滞在者みたいなものか。関係が上手くいかないのも頷ける。

 

「普段の食事はどうしてるんだ?」

 

「……近くに防壁の穴がある。そこから廃墟に繰り出していって食べられるものを探してる。ただ最近はあんまり食べられるものも減ってきて……前々からずっと、ガキどもを飢えさせていた訳じゃない」

 

 ふてくされたような顔でリーダーの少年が私の質問に答えてくれる。

 

 当初の接触から考えれば、これでもずいぶんと穏便な対応だ。同じ子供、という事に加えて、配給を提供したのがなかなか彼らには好意的だったらしい。

 

 あくまで自分達より、あの小さな子達が最優先という事か。

 

 それは好感が持てるが……しかし、彼らもまた、本来保護されるべき子供たちであるという事実も変わらないはずだ。

 

 それに何より、一人分の配給食など子供たちにはまるで足りていない。

 

 案の定、私の持ってきた食事は一瞬で食べつくされ、小さな子供が物足りなさそうに指についたビスケットの欠片をなめながら声を上げた。

 

「おにいちゃん……もうちょっと食べたい……」

 

「あ、ああ……ごめんな。俺たちが不甲斐なくて」

 

「本当だな」

 

 子供たちのやりとりに横から口をつっこむ私に、ギン、と少年がにらみを利かせてくる。まあ本人的には精いっぱいの敵意を込めているのだろうけど、私からしたらチワワの吼え声にも足りていない。せいぜい、アリクイの威嚇といったところか。

 

「どうせ住人とトラブルを起こして締め出されたんだろう。まあいい、私が繋ぎを取ってやる」

 

「最近来たばかりのチビが何ができるっていうんだよ」

 

「まあ何、どうせ泥船だと思って任せてみろ。失敗したところでお前たちには何の損にもならんだろう?」

 

 我が子の毛皮についた埃を払って立ち上がる。

 

 リーダーの少年は訝しむような視線を向けているが、私の提案はそれなりに魅力的なようだ。興味を引けたという事だろう。

 

「いいからついてこい。交渉、というものを教えてやる」

 

 

 

 私がガキ共をつれて向かったのは、瓦礫を解体しているおやっさんの所だ。

 

 かんかんかん、と音を立てて幾人もの大人が瓦礫を破砕し、資源とゴミに分けている。あるいは、壊れた電化製品を分解して、使える部品を集めたり。

 

 いくら人手があっても到底足りない。口癖のように人が欲しい人が欲しい、とつぶやいていた親方の元に、私は中学生三人を連れて行った。いやまあ、話を聞くに中学には通ってないから小卒どもか? どうでもいいか。

 

「ああん? 例の悪戯小僧どもじゃねえか。ここに何しに来た」

 

 案の定、最初はおやっさんの態度は否定的だった。

 

 否定的な視線を受けて身を固くする小学生たち。そんな彼らの前に出て、わたしは両手を合わせて渾身のきゃぴるん声を出した。

 

「ねえ、おじちゃん、ダメかな? お兄ちゃん達も、反省してると思うの」

 

「いや、しかし、お嬢ちゃん、こいつらはなあ……」

 

 さしものおやっさんも、年端もいかない女の子の渾身の甘え声には強く出れないと見える。手ごたえはある。

 

 もう一押し、といったところか。

 

 なお背後では少年どもが、突然ものすごく作った感じのきゃぴきゃぴ声を出し始めた私にドン引きしてる気配がする。

 

 気持ちはわかるが覚えてろよ貴様ら。

 

「それにお兄ちゃん達、小さな妹や弟たちの面倒を見てたの。みんないい子なんだよ。でも、お腹を空かしていて可哀そう……」

 

「む……それは、俺も気の毒だと思うが……」

 

「おじちゃん。私、『蜻蛉の墓』って嫌いなの。おじちゃんもそうでしょう?」

 

 ここで引き合いに出したのは、国民的な反戦アニメ映画だ。私自身小学生やら中学生の自分に、いやっていうほど体育館とかで見せられたアレを引き合いにだす。

 

 あれもまた、戦争の中、社会から孤立した兄と妹がそれでも二人で生きていこうとして、しかし結局二人とも死んでしまうという、救いようのないどうしようもない話だ。何が一番どうしようもないって、結局、子供だけでは生きていけるように社会はできていないのだ。

 

 それは、今の現状にもあまりにも合致している。

 

「んぐ……」

 

 そしてそれは、このおやっさんにも同じことが言える。

 

 後味が悪いってもんじゃないアニメの事を思い返したのだろう、気まずそうにおやっさんは口を紡いだ。

 

「……ええい、わかった! しかたない! お嬢ちゃんの顔に免じて、俺がこいつらの面倒を見てやる!」

 

「わあい、おじちゃん大好き! ありがとう!!」

 

「あ、あくまでこいつらがいう事をちゃんと聞く限りの話だぞ! お前らもいいな!?」

 

 おやっさんが取り繕ったように厳しい事を言うが、抱き着く私の頭を撫でながら相好を崩していては威厳も何もあったものではない。

 

 少年たちはなんだかあっけにとられた様に「は、はい……」と頷いている。こっちも、嫌いな大人に頼る不愉快さよりも、話の展開の不可解さに意識が持っていかれているようだ。

 

 よしよし。

 

 あとはこのままごり押しに限る。

 

「それで、何をすればいい? 私も手伝う!」

 

「あー、ううん。まあしかしいきなり解体手伝わせても怪我をするだけだしな……よし、お前ら。ゴミの入った台車を、集積場所に運んでくれ。場所は知ってるか?」

 

「それなら私が案内できるわ!」

 

 私が挙手をすると、よし、とおやっさんは頷いて指示を飛ばした。

 

「わかったわかった。ガキども、何でもいいからあとはこのお嬢ちゃんに従え。余計な事はするんじゃないぞ!」

 

「大丈夫よ、わたしが見張ってるから!」

 

「お、おう、わかった……」

 

 そんな流れで、急遽結成された子供チームでの仕事が始まったのだ。

 

 あとは、言われた通りに台車を子供三人で運んで捨てる作業を行うだけ。

 

 台車は重いが、中学生の子供が三人もそろえば運べない事はない。彼らがえっちらおっちら運ぶ横で、私は余裕しゃくしゃくで道案内をする。

 

 その途中で、リーダーの子供がなんだか茫然と私に声をかけてきた。

 

「な、なあ、お前……」

 

「ん?」

 

「お前、ここにきて一週間もたってないよな? なんであんなに馴染んでるんだ? あのおやっさん、かなり気難しい奴だろ?」

 

 なんだか狸に騙されているんじゃないか、といった顔の少年。他の二人もそんな感じで、私に対する困惑があまりにも大きくて仕事に集中できていないようだ。

 

「もしかして催眠術……?」

 

「あははは、そんな訳ないだろう」

 

 そういうのが出来たら楽なんだけどなあ。少なくとも現状は駄目っぽい。

 

 嫌でも、そういう能力をもった子が生まれたらやってみたいね。いや駄目だ、客観的に考えて新しい侵略者以外の何物でもない。自分から人類の敵になってどうする。

 

 ともかく、私がやったのはそう大したことではない。

 

「別に、へんな事はしてないよ。根回しと誠実な仕事、それだけさ」

 

 私がまじめに仕事をして回っていたのは、ただ配給の為だけではない。それを通して、この集落の状況を把握するためだ。

 

 あと2週間ほど滞在する間に、ある目的を達成するための行動だったが、思わぬところで役に立った。

 

「そんなアホな……」

 

「そんな事があるんだよ。このご時世、誠実であるというのはそれだけで評価される。相手が何を求めているのか、何が欲しいのか。それをわかった上で立ち回るのが大人というものだ」

 

「お前だってチビだろ……」

 

 呆れながらも、少年たちは何かおもう所があったようだ。よそ見をやめて、前を向いて台車を押す。

 

 少しだけ世の中を知って成長したように見える子供たちに、私はにっこりとほほ笑んだ。

 

「さあ頑張れガキども。労働の後の飯は旨いぞ?」

 

 

 

「わああーー!!」

 

 そしてその日のお昼。

 

 列にならんで受け取った配給の山を手に隠れ家に戻ると、チビ達が歓声を上げて少年たちを出迎えた。

 

 その手には、人数分の食糧配給。山のようなそれに、子供たちはきらきらと目を輝かせた。

 

「いいの? これ食べていいの?!」

 

「ああ、しっかり食べろ」

 

「わーい!!」

 

 奪うように配給の盆を受け取り、子供たちは無我夢中で食べ始めた。やはり普段は相当我慢していたらしい。

 

 口の周りをべちょべちょにして食べているのは注意したいところだが、今回は流石に野暮というものだろう。子供たちの食べっぷりを見守りつつ、自分の皿に口をつけていると、隣にリーダーの少年がやってきた。

 

「お、おい……」

 

「うん?」

 

「いいのか、あれだけの配給券、貰っちまって……。お前だって地道に働いていたんじゃないのか……?」

 

 そう。

 

 いくらなんでも、子供三人がちょっと半日働いたぐらいであれだけの配給券はもらえない。あれは私がため込んでいたものを全部放出した形になる。

 

 なんせ日がな一日働きまわっていたからな。そもそも配給は本来無条件で配ってもいいのを、「働かない人間は駄目になる」「労働とその対価という形がなければ人間社会は維持できない」という集落の主の意向で配給券、という形になっているだけのようで、レートはかなりどんぶり勘定だ。

 

 まあだとしてもそれなりに集落では役立つ代物ではあるが、長居する予定の無い私には関係ない話だ。

 

「なあに。私には目的がある。そのためなら惜しくはない」

 

「目的? やっぱ、俺たちに近づいた理由があるのか……?」

 

「勿論。私は慈善事業家じゃないからね」

 

 内緒の話、と私は少年の肩を引き寄せて、顔を寄せて小声で話す。

 

「探しているものがある。この集落に必ずあるはずだが、一般人からは隔離されているもの。君たちなら、協力してもらえるんじゃないかと思ってね」

 

「な、なんだよ。大人に頼めばいいじゃん……ま、まさか、武器とか?」

 

「違う違う。大体そんなもの探しても、君たちじゃ触らせても貰えないだろう。私が探しているのはもっと別のものだ」

 

 

 

 

 

「……私が探しているのは情報端末だ。人類軍の装備、侵略者との戦争の状況……最新の情報が、どうしても欲しい。協力してくれるかな?」

 

 

 

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