TSさせられてエイリアン生まされたけど我が子は可愛い   作:SIS

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『今日の主役は私達じゃないしー』

「まあ、しかし、気合入ってんなー」

 

 我が子と共に宇宙人どもの防衛線の要所、まあつまりは連絡網やら対空砲座やらをこっそり潰して回る傍らで、私は防壁の上から眼下で繰り広げられている激闘を見下ろした。

 

 下では防壁を盾に応戦するリモコン星人の軍団と、装甲車輛を前に出して進撃してくる人類軍の熾烈な銃撃戦が繰り広げられている。

 

 なんかもう人類軍側の勢いが凄い。戦車を全面にだしてばちこんばちこん砲撃を打ちこんでるのもそうだが、荷を下ろし終わった兵員輸送車両まで前に出てる。

 

 装甲車輛はもう完全に壁というか盾というか、割り切っているらしくて撃破されようがお構いなし。中には履帯を破壊されて行動不能になりつつも、固定砲座として攻撃を続行する者までいる。気合入ってんなあ。

 

 そんな機甲部隊の損害をよそにずんずん進撃を続けるのは、強化スーツを纏った陸戦歩兵だ。いつも見かける骨みたいなちゃっちい奴じゃなくて、パワードスーツと呼ぶにふさわしい重装甲・重装備の兵が至近距離での爆発をものともせずに進軍、バリバリ敵を打ち倒している。

 

 どれだけ技術が進歩しようと、それが異星人相手であろうと、最後には歩兵が相手の拠点を制圧しなければ戦争は終わらないという事なのだろう。

 

 とはいえ、人類と宇宙人の技術格差は歴然。そもそもリモコン兵はデフォルトでパワードスーツのようなものだ。だからちょっとでも油断すると押し返されるんだが、今の所その兆候はない。

 

 何故なら、本隊が進軍する前に、敵防衛線をずたずたに引き裂く連中がいるからだ。人類軍の主力部隊はその切り開かれた傷口に首を突っ込んで流血を広げているのである。

 

「いやあ、あのお嬢さんやっぱ大したタマだわ」

 

 不意に宇宙人の防衛線後方から空に舞い上がる影を見て、私はいたく感心した。

 

 ジェットパックらしきものを装備した精鋭部隊が、先行して敵陣に奇襲を仕掛けている。彼女らは防備を固める敵部隊の後方に降り立つと、手にした銃とソードで一撃をくわえ、追いすがる銃火を振り切るように空へ消えていく。

 

 その中の一人の顔には覚えがあった。いつぞや、プルートゥと一緒に助けたお嬢さんである。

 

 ローラースケートみたいな装備で、時速100キロ以上で廃墟の道路を疾走していたのだから動体視力と反射神経が人間卒業レベルの逸材だと見込んでいたが、やはり私の審美眼も大したものだ。

 

 というかこれだけの人材を切り捨てようとした人類軍の上官はアホだろ。存在罪といってもいい。

 

「一騎当千とはこの事かねえ」

 

 たった五人の精兵が、数百数千で行われる合戦の行く先を左右している。よくもまあ、そんな絵空事を現実のものにしたもんだ。

 

 そして言うまでもなく、大した無茶だ。そもそも防備を固めている敵陣の中に飛び込んでいくのがどれだけの無謀かは言うまでもない。

 

 だがその無謀を実現可能ラインに落とし込むまで、人類軍は出来る限りの事をしている。

 

 今も空には、迎撃された対地ロケット弾の爆発の花が開き、防衛線全体に圧力をかけている。物資に乏しい中で、備蓄した弾薬を使い切らんとするかのような大盤振る舞い。これがあるおかげで、前線部隊が磨り潰されずに済んでいる。

 

「とはいえ、まあ、ちょっと手が回らない所はあるよな」

 

 それでも限界はある。

 

 なので、そこをフォローしてやるのがこっちの仕事だ。本来なら人類軍にあんまり関わりたくはないのだが……。

 

「これでこの作戦が失敗したら、人類軍の勢力は大きく後退する。それは困るんだよ」

 

 頭に過ぎるのは、集落で出会った子供たちの顔。

 

 集落が解散した後、彼らは人類軍に保護される形で後方に移送された。もし人類軍の旗色が今以上に悪くなれば、彼らの生活も脅かされる事になる。あるいは最悪、人類軍が少年兵の徴兵に踏み切る可能性だってある。

 

 それは私の望むところではない。

 

 あとはまあ、私が好き勝手やれてるのも、人類軍が表立って宇宙人とやりあってるおかげだ。人類軍の脅威がなくなると、宇宙人がこっちに本腰入れてくる可能性が高い。

 

 そうなったらお手上げだ。とにかくひたすら逃げ回るしかない。

 

『ふしゅる、しゅしゅ』

 

「ああ、そうだな。その為に、お前にも無理いって付き合ってもらってるんだ。人類軍には勝って貰わないと……おっと」

 

 下で繰り広げられる戦場に変化がある。

 

 ここの主戦力はラジコン兵士だが、そいつらしかいない訳ではない。大規模な防衛兵器が存在する設備では、必ずマシンカルティストの連中が保守点検要員として詰めている。数は遥かに少ないが、戦力としては無視できない連中だ。

 

 なんせ、兵器の製造元だ。連中直々の直下戦力は、数の差を質で覆しうる。

 

「出てきた出てきた」

 

 基地の床がせり上がり、いくつものシルエットが運ばれてくる。

 

 それらは一言でいうと、ロケットエンジンを背負ったロボットだ。分厚い装甲で覆われているが、隙間から見えるフレームは骨のように細い。両手は頑丈そうなパワークローになっており、戦車の装甲でもばりばり引きはがせそうだ。

 

 ついでにいえば恐らく、時間操作技術も搭載しているだろう。瞬間移動のように加速したりされると、捕捉も困難。射撃武器を搭載していない事からみても、その可能性は高い。

 

 それが何十機も一度に出現する。

 

 こいつらが一斉に襲い掛かってきたら、人類軍には厳しい。

 

 なので。

 

「動き出す前に潰すか」

 

 高出力の脳波動を叩きつける。青い非物質の波動を背後から叩きつけられて、一斉にロボット達がスパーク、痙攣しながら地面に倒れ込んだ。

 

『●■★!?』

 

『■●●★!!』

 

 状況に気が付いたラジコン兵達がこっちを見つける前にすぅっと透明化。パニックの声が聞こえる中を、悠々と撤退する。

 

 ラジコン兵達の方は私の脳波動対策してるんだが、マシンカルティストの連中はここ最近もずっと素通りだ、楽でいい。技術体系の違いか、それとも何か別の理由で根本的対策が無理なのか?

 

「ラジコン兵士どもは本体がクラゲで、生身。それに対して、マシンカルティストの連中は全身機械化してるからな。そこの違いか? どう思う、シルル」

 

『ふしゅるるう、るる、ふしゅ』

 

「あー……センチネルの連中は生身だけど脳波動食らったらレンチンみたいになるもんな。種族的な差か、確かに」

 

 巧みなジェスチャーで意思を伝えてくる我が子に頷くと、子もうんうん、と頷き返してくる。

 

 そうこうしている間にも、私達は前線をどんどん離れ、敵基地に奥へと進んでいく。

 

 大慌てで走っていく敵の兵士と、透明化したまますれ違う。頑張らなくていいぞー、と手を振りながら前を向くと、防壁の向こうからふよふよ浮き上がってくる機影が見えた。

 

 マシンカルティストのガンシップだ。あれは装甲車輛の天敵だ、前線に出てくる前にどうにかしないと。

 

 さあてどうしようかな、と思っていると、視界の端で何かが煌めいた。

 

 お、と思う前に、ガンシップが一機、キャノピーに取り付かれていた。お嬢さんは振り払おうと蛇行するガンシップの防弾ガラスにソードを突き立ててカチ割ると、そこからハンドガンを連射して操縦者を射殺した。

 

 ふらふらしながら墜落していくガンシップから離脱して次に。他のガンシップにも、それぞれ二人がかりで飛行部隊が取り付き、エンジンを破壊したりして無力化している。瞬く間に出撃したガンシップは全滅し、そろって地上の爆炎と咲いた。

 

 立ち上がる噴煙を突っ切って、少女達が空をかける。向かう先はいよいよ敵の大御所、超大型対空砲の有る中枢部。

 

「手際がいい事で」

 

 感心しつつも、私は彼女らの後を追う足を速めた。

 

 あの閉鎖空間内では機動力をいかせまい。それに、人類軍は知らないようだが、こういう要塞の中枢部にはちょっと厄介な奴がいる。

 

 手助けした方がいいだろう。

 

「シルル、まだやれそう?」

 

『ふっしゅるる!』

 

 私の問いかけに、どこで覚えたのかガッツポーズで応える我が子。思わず苦笑しつつも、私は彼の頬に自らの顔を寄せ、優しく口周りの髭を撫でまわした。

 

「ありがとう。でも無理はしないでね」

 

『しゅるるぅ!』

 

 元気よく答える我が子。でも、それが空元気にすぎない事を、親である私はよくわかっている。

 

 この子に残された時間は少ない。

 

「…………」

 

 私は我が子の首に手を回し、ぎゅ、と抱きしめた。

 

 

 

 

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