竜王のワンピース   作:野生の生蛇

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第4話

 

 ラードゥンは竜の姿に戻り空を飛んでいた。

 向かう先は偉大なる航路(グランドライン)後半の海。通称新世界。

 何故ここに来たのか、と問われると理由は単純で暇つぶしだ。

 この世界がどういう世界なのか気になったから飛んできた、程度でしかない。

 人の姿になれば金を稼げるし人の状態では懸賞金も掛かっていない為普通に過ごせる。

 海賊を倒して金を稼いでいるが、海賊なんて雑魚しかいない。レベル千のボスキャラからしたら多少覇気やら悪魔の実の能力やらが使えたところで雑魚である。

 そんな安定した暮らしにちょっと退屈を覚え、それなら竜王感覚で近いし新世界とやらに行ってみるか、と来たのである。

 

 そして来て早々半分後悔していた。

 

「嵐が鬱陶しいわ!」

 

 ラードゥンは嵐に見舞われていた。

 新世界でも偉大なる航路(グランドライン)でも珍しくない、よくある嵐である。

 ラードゥンにとって嵐程度飛行には何の支障もない。だが鬱陶しいのである。

 ラードゥンは叫び、四つの首でブレスを吐く。

 月、火、日、木属性のブレスだ。

 

 ブレスによって嵐は跡形もなく消し飛んだ。

 

「む?」

 

 そうして嵐を消し飛ばした後。ラードゥンの視界に船が映る。

 巨大なガレオン船である。

 

 船は海を航海する物であり、空を飛ぶものではない。

 だというのに空を飛んでいるということは、それはこの世界における異能が関わっているという事。

 つまりは悪魔の実の能力者が何かをしているとラードゥンは考える。

 

(まぁ、関係ないか)

 

 だが自身には関係の無い事だと一瞥する。

 どんな事情で空を飛んでいるのか知らないが、自分には関係ない事。とっとと島を探しに空を飛ぶとしよう。

 だが船から何かが飛んできたことでその行動は阻害された。

 

「ふむ?」

 

 はて。何が起こるのやら。

 これまでの退屈を塗りつぶしてくれそうな予感にラードゥンは年甲斐もなくワクワクした。

 

 

 ■

 

「なんだぁあの竜?!」

 

 ロックス海賊団。

 それは今この世界で最も有名な海賊団。

 海賊島ハチノスから有名な海賊を引き抜き、デービーバックファイトで有力な海賊を仲間に引き入れた海賊団。

 その分仲間の絆というものはなく、更には船長への敬意すらない。

 そんな海賊団は諸事情で凪の帯(カームベルト)を渡り、新世界に戻って来ていた。

 無論通常の手段で凪の帯(カームベルト)を渡る事は出来ない。だが悪魔の実の能力ならば可能だ。

 船員の一人、金獅子のシキのフワフワの実の能力で船を浮かせ海王類蔓延る凪の帯(カームベルト)を抜けて来たのだ。

 

 そんな彼らは空に浮かぶ竜王ラードゥンを前に興奮していた。

 男の子ならだれもが憧れる竜が目の前に居るのである。

 だが一部の者は冷静で、どうせ悪魔の実の能力だろと冷めている。

 

「ありゃ面白れぇな」

 

 船を浮かせている能力者。シキがラードゥンを見て呟いた。

 金の髪を鬣のように持つ高身長の男だ。

 シキは三種の覇気を高レベルで鍛え上げている。その見聞色の覇気をもってすればわかる。あの竜の強さが。

 だからこそ興味を持った。更にはこの前手に入れた新聞にも載っていた存在だ。

 

 "竜が天竜人を殺害! "と、ラードゥンは世界経済新聞に大々的に乗せられていた。

 だからこそ、シキはラードゥンに強い興味を抱いた。

 

「ちょっくら見てくるわ!」

 

 シキはそう言うと船を海に降ろし空を飛んでラードゥンに近づく。

 

「そこのドラゴンちゃん! ちょっと俺とお茶してかねぇか!」

 

 ラードゥンはその言葉によってシキの方を向く。

 ラードゥンも相手が海賊だと海賊旗から知り、舐められてたまるかと高圧的な態度をとる。

 

「なんだ、人間」「我らに何の用だ」

 

 その言葉にシキは笑いそうになる。

 まるで自らが人間ではないかのような言い草だ。

 恐らくは四つの海で悪魔の実を手にし、そのまま勘違いしたままなのだろうと予想を付ける。

 シキの考えとしては自身と同じく飛行できる悪魔の実の能力者。ここでペットにするのも面白いと考えているのだ。

 

「まぁまぁそう硬い事言わずに──よ!」

 

 シキは腰から名刀『桜十』と『木枯し』を抜き、武装色の覇気を載せた飛ぶ斬撃を放つ。

 斬撃はラードゥンの首に当たる。

 だが、ダメージには成らない。竜王の強靭な鱗──レベル千の頂きの防御力によって防がれる。

 

「何?」

 

 本気ではないとはいえ、覇気を載せた一撃。それを無傷で防いだ。

 だが、相手が覇気を使った様子はない。それは見聞色の覇気で分かる。

 何か種があるのだろうか、とシキは考える。

 

「攻撃したな?」「それはつまり我らを害そうという事」「人間風情が。思いあがるなよ」「食い殺してくれる!」

 

 そしてシキの攻撃によってラードゥンの戦意が高まる。

 思ったよりもヤバいのに手を出したかもしれない。シキは冷や汗を流した。

 

 

「死ね、人間」「無駄に無様に屍晒せ」

 

 ラードゥンの一番右の口が開き、火属性のブレスを放つ。

 五千度にも達する超高温のブレス。触れた者は灰すら残らぬブレスだ。

 一直線に、ある種レーザーにも見えるように、だが野太いブレスはシキに向かって真っすぐと飛んでいく。

 シキは防御ではなく回避を選択。真下に急降下する事で回避する。

 

(あぶねぇ!)

 

 回避が遅れていたら今ので死んでいたかもしれない。シキは恐怖する。

 だが避けた先にラードゥンの九番目の首が迫り、大口を開けてシキを食い殺さんとする。

 

「うぉっ?!」

 

 シキは回避が遅れ、その口に入ってしまう。

 だが腕を上部に上げ、覇気で強化する事で閉じる口に何とか抵抗する。

 

(腕が……折れそうだ……!)

 

 思った以上の顎の力にシキは冷や汗を流す。

 

「ぬぅん!」

 

 シキは覇王色を発し、ラードゥンを一瞬怯ませる。ラードゥンは自身にとっての未知の力によって一瞬硬直した。

 その隙を逃さずシキはラードゥンの口から退避。距離を取る。

 

獅子・千切谷(しし・せんじんたに)!」

 

 シキは両の手の刀を振るい、飛ぶ斬撃をお見舞いする。一発や二発ではない。十数発の飛ぶ斬撃だ。

 先の手を抜いた一撃ではない。一撃一撃が並みの海賊──新世界基準──ならば即死する大技だ。

 

「通じるものか!」

 

 その斬撃の雨をラードゥンは突っ切る。

 防御など知らぬ。回避など要らぬ。持ち前のステータスの高さがあれば攻撃など通じる訳が無い。

 事実シキの攻撃は通じることなく、鱗を撫でるだけに終わった。

 

「まじかいな!」

 

 シキはその結果に驚く。これは直接斬らねば斬れぬのか、と。

 

 ラードゥンは再び大口を開け食い殺そうとするがシキがそれを許すはずがない。

 シキはラードゥンよりも高く飛び、ラードゥンの背に飛んで乗る。

 そうしてそのまま斬撃を放つ。今度は鱗を破壊し、ラードゥンに痛みを与えた。

 

「よくも我らに傷を!」

 

 自らが傷つけられた事に怒り、ラードゥンは右から七番目の首を後ろに向かせブレスを放つ。

 放たれるのは月属性のブレスだ。これもまたレーザーのように放たれる。

 シキは回避が遅れ、その身に受ける。

 

「うおおおおおお!」

 

 体が焼ける。激痛が走る。

 そして──能力が強制的に解除される。

 

 ミズガルズにおいて月属性は相手の魔法や天法──回復等の支援系魔法──を無効化、打ち消す能力を持っている。

 ラードゥンの月属性のブレスはそれらの要素を持ち、悪魔の実の能力を打ち消す能力を持っている。

 月属性を用いれば自然系(ロギア)の実の能力者であっても実態にダメージを与えられる。

 

 シキは真っ逆さまに海へと落ちかけ、すんでのところで能力が戻り空へと浮上する。

 だが追撃にラードゥンが突っ込んできており、ラードゥンが突撃する。

 その突撃をシキは横に飛行する事で回避。ラードゥンは海へと突っ込んだ。

 

「あらら。これで終いか」

 

 シキは海に突っ込んだラードゥンに向かってそう呟く。

 悪魔の実の能力者が海に突っ込めば終わりだ。自身のように海水を操る能力を持っているのならば別だが、そうでないならば海に身をつけた時点で能力が使えなくなり、死ぬのみ。

 更には大分勢いづいて突っ込んでいた。そうとう深くまでもぐりこんだ事だろう。

 

 船に戻るか、とシキは見聞色の覇気でロックス海賊団の船の位置を探し、飛んでいこうとし──下からの強襲に驚愕した。

 

「馬鹿な?!」

 

 下を見ればそこには変わらず怒りに顔を染めたラードゥンの姿があった。

 悪魔の実の能力者ならば海で力が使えないはず──その常識に囚われてしまった。

 

 下から再度食い殺そうと十の首を伸ばし、シキに襲い掛かる。

 

 だがその寸前。強い覇王色の覇気が襲った。

 

「……!」

 

 余りにも強い力だ。竜王といえど竦む程に。

 

「……どうやらひかないといけないらしいな」

 

 シキは忌々しそうに舌打ちをする。

 覇気の正体はロックスだ。いい加減船に戻れと覇王色を飛ばして来たのだ。

 

「じゃあな蜥蜴野郎! 次会った時はその首跳ね飛ばしてやる!」

 

 ラードゥンはただ、飛び去って行くシキを見るしか出来なかった。

 

 

 ──数分後。シキとロックス海賊団が去った後。

 

「いてぇぇぇぇ!」「背中斬られた! 痛い!痛い!」「やろうぶっ殺してやる!」「人の背中斬りやがって!」

 

 ラードゥンは痛みに悶えた。

 無論傷など既に治っている。ラードゥンには強力な再生能力が備わっている。

 例え首を斬り落とされたとしても十数秒あれば新しい首を生やせる程には強力な再生能力だ。

 それがあれば背中に付けられた傷など瞬く間に治る。

 

 だが、それはそれとして痛いものは痛い。

 元が単なる一般人、喧嘩とは無縁の人間だ。

 

 だからこそ、シキが逃げるのをただ見ていた。最初は怒りが痛みを凌駕していたが途中から普通に痛かったから。

 無論直ぐ再生能力で治っていたので痛みは幻痛だったが。

 

 これまでは持ち前の防御力の高さで無傷で戦闘を終えていたから問題なかった。だが初めての痛みに苦しむしかない。

 

「次会ったら絶対殺す」

 

 ラードゥンはそう決意し、空の彼方へと飛んでいった。

 

 

 

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