竜王のワンピース 作:野生の生蛇
ラードゥンは新世界の適当な島に降り立ち、昼寝をすることにした。
降り立ったのは無人島だ。新世界によくある小さな島。そこに降り立った。
「ふむ。周囲に敵影は無いな」
ラードゥンはぐるりと周囲を見ると安心したかのように一息つく。
島には猛獣の類は居らず、海中にも海王類はいない。海獣は居たが。
安心してラードゥンは眠りに着いた。背中を斬られたことにふて寝したのである。
この世界で何をすればいいのか、ラードゥンは未だわかっていない。
場に流されて生きて来たラードゥンは自主性というモノが欠けている。
だからこそ、たかが覇王色如きに威圧された。本来の竜王ラードゥンならば威圧などされず、逆に殺しに行くだろうに。
故、これからの人生──竜生目標を考える。これから先、どう生きていくかを。
考えて、考えて、考えて──世界征服でもするかと考えた。
どうせラードゥンになったのだから、それっぽく生きるのもまた一興だろう。
そうとなれば善──悪は急げだ。ラードゥンはその巨体を支えるに相応しい翼をはためかせ、空へと飛んでいった。
■
ラードゥンは空を飛び、海を見下ろす。
探すのは手ごろな海賊船だ。まずは適当な海賊を傘下に収め、勢力を築く。その為にはどうしたって人手が必要だ。
そうして飛び回る事一時間。ようやく海賊船を見つける。
海賊船としては中型だろう。百人も乗れば一杯になる船だ。
その船に向かってラードゥンは落下し、船の真横に着水する。
そして着水してきたラードゥンに驚愕し、海賊たちは声を上げた。
「ら、ラードゥンだ!」
「天竜人殺し!」
「ふむ。我らの事は知っているようだな」
ラードゥンは海賊たちの反応にいい事だ、とニヤリと笑みを浮かべる。
「今話題の竜さんが俺らに何の用だ!」
「貴様らを配下とする。貴様らに拒否権は無い」
「はっ、ふざけたことを言う蜥蜴野郎だ。野郎ども! こんな蜥蜴ぶっ殺してバーベキューの材」
そこまで言ったところで、三億ベリーを超える賞金首はラードゥンの真ん中の首に食い殺された。
目にもとまらぬ速度とは正にこのこと。船員は誰一人として視認出来なかった。
「嘘だろ船長?!」
「マジかよ?!」
自分たちの船長が成す術無く一瞬でやられた。そのことに海賊たちは恐怖を感じる。
「さて、逆らうモノは?」
「「いません!!」」
海賊たちは揃って敬礼をし、ラードゥンに忠誠を誓う。
こんな化け物相手に逆らえるか馬鹿野郎。海賊たちの心は一致した。
これならばいいな、とラードゥンは擬人化のスキルを行使する。
眩い光が迸り、光が去った後、船に美女が乗る。
胸元が大きく露出し、腰にはスリットが入った露出が多いドレスを纏ったラードゥンが現れた。
一言で言えばエロかった。
エロい美女を前に海賊たちは鼻の下を伸ばす。
ラードゥンは船の手すりに腰かけ、妖艶な笑みと共に宣言する。
「これから私がこの船の船長だ。異論ある者は立って示せ。殺してやる」
「「「Yes! I'm!」」」
■
ラードゥンが適当な海賊を自身の配下にして船に乗り込んでから三日が経った。
以外にも、ラードゥンは海賊たちに好意的に受け入れられていた。
理由としては幾つかある。単純に擬人化したラードゥンがとんでもない美女だという事だ。女ヶ島の戦士にも劣らぬ美貌である。男ならば女の美貌に酔いしれることが多々ある。
次点にそもそも前の船長があんまり好かれてなかった。力でモノ言うタイプの分かりやすい海賊であり、無理矢理に海賊にさせられた者も多い。
その為あの暴君よりはマシだろ、という考えがあった。
それ故ラードゥンは受け入れられていた。
そして三日後。
「旗を変えるぞ!」
ラードゥンは船の甲板に人を集め、堂々と宣言した。
「海賊旗の変更ですか?」
船員の一人がそう尋ねる。
「我らは違う。海賊などというモノではない。我らは軍を名乗る。竜王軍だ。海賊等というモノではない」
「海賊じゃない? じゃあ何するんです?」
「世界征服」
は? と一同尾驚愕に顎を外した。
「この世界の全てを支配する。世界政府だろうが天竜人だろうが全て食い殺して嬲り殺して支配下に組み込んでくれる!」
それは世界への反逆。海賊などという生易しい物ではない。
その言葉に何人かが笑う。出来る訳が無い、と。
それに怒ったラードゥンが笑った者の眼前まで刹那で移動し頭を握り潰した。
「笑ったという事は我らに逆らうという事。逆らう者等要らぬ」
「「Yes I'm!」」
唐突な殺人に一同敬礼をして再び忠誠を示す。
志が本物の海賊ではない彼らには殺しという脅しが通じている。
「という事で、旗印になる旗を描こうと思うが我らには絵心が無い。絵が描ける奴はいるか?」
その言葉に何人かの船員が手を上げる。
「よし。描きたいのは我らの横顔だ。それを旗とする」
「わかりました」
という事でラードゥンは一度擬人化を解き、竜の姿に戻って船の横で横向きに待機する。
その姿をスケッチさせ、船の旗の絵を描き直させる。
そうして待つ事三十分。新しい旗が出来上がる。
ラードゥンは擬人化し船に戻り旗を見る。
「いい出来じゃないか」
よし、とラードゥンは満足する。
その姿に他の者達は安心する。思った通りじゃないと癇癪で殺されてはたまらないからだ。
「これより竜王軍の立ち上げを宣言する!」
「「うぉぉぉおおお!」」
一応船員たちは新しい一味の門出を盛大に祝った。
「まずは手ごろな島を支配下に治め、成り上がりの土台とする。手ごろな島はあるか?」
ラードゥンの言葉に船員の一人が手を上げる。
「うちで保有している
「ほう。都合がいいな。ならばそこを目指すとしようか!」
■
ラードゥン──竜王軍が向かったのはラルース島だ。
スルハ帝国が治める国であり、新世界の中でも中々に広大な島となっている。
広大な農地を持ち、新世界でも有数の食料生産国家だ。
その島の港にラードゥン率いる竜王軍が乗り込んだ。
港に船を強引につけ、ラードゥンを筆頭に船員が続々と降り立つ。
すぅ、とラードゥンは息を吸ってから叫ぶ。
「聞け、人間共! 今からこの島は我らが支配する!
その言葉に港に居た者達はパニックを起こす。
「か、海賊だぁぁぁ!」
「逃げろぉぉぉ!」
住民は我先にと逃げ出す。
そしてラードゥンが本来の姿に戻り、右から二番目の首が水属性のブレスを放つ。
広範囲に影響が及び、水のブレスは当たった場所を凍らせる。
「進め、者ども! 邪魔する者は皆殺しだ! この国の皇帝を殺せ!」
ラードゥンが指示を出し、竜王軍の者たちが声を上げて進軍を開始する。
そうして港町を進軍していると街中から一人の男が飛び出しラードゥンの真ん中の首を殴った。
ラードゥンの頭を下から殴り上げ、脳を揺らす。
「何者だ!」「食い殺してくれる!」
ラードゥンが殴られた事に怒り、他の首が声を発する。
「この国を守る騎士団だ! これ以上の狼藉は許さない!」
相手は正義感に溢れた若者だ。歳は十代後半程度だろう。
髪と瞳は黒の有り触れた顔つきの男だ。
だがその身から発する武装色の覇気の練度は高く、懸賞金にして十億は超えているだけの実力を持っている。
新世界で海賊の縄張りにならず自治するためには相応の実力者が必要となる。この者はこの国を守る刃なのだ。
「人間風情が、我らに敵うものか!」
ラードゥンは鋭い前足を持って斬り裂かんと腕を振るう。
男は見聞色の覇気で先読みをし、どうにか回避する。
ラードゥンも負けじと首を動かし食い殺そうとするがこれもまた見聞色の覇気で先読みされ回避される。
「ちっ、ちょこまかと!」
ラードゥンは怒りに顔を歪めるが、男は冷や汗を流す。
どうにか、見聞色の覇気で行動を読むことで回避こそ出来るが、そこまでだ。一瞬でも攻撃に移ろうものならばラードゥンのその速度によって殺されてしまうだろう。
だが、ラードゥンもただやられる訳ではない。その動体視力を持って次の手を読み──口を開いてブレスを放つ。
「しまっ」
「死ね、人間!」
ラードゥンの右から五番目の首が口を開き土属性のブレスを放った。
重力の力を持つブレスは男を引き寄せブレスに飲み込ませ──そのまま体を崩壊させた。
「さぁ、進め、竜王軍! 人間共を支配するのだ!」
そうしてラードゥンたちはスルハ帝国を進軍し──国の騎士団もラードゥンが殲滅し、皇帝を食い殺す事でスルハ帝国はラードゥンの物となった。