竜王のワンピース   作:野生の生蛇

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第7話

 

 "天竜人殺し","魔竜" ラードゥン。懸賞金三億ベリー。

 

「すっごい増えたな」

「けど、これでも少ない方じゃないですかね」

 

 ラードゥンは建設途中の王城前で世界経済新聞を眺めながら呟いた。

 新聞は堂々と本来の姿のラードゥンの写真が載っており、懸賞金として三億の値が付いている。

 

「これからは懸賞金狙いの馬鹿どもも増えるな。良い事だ」

「良い事なんですかい?」

 

 付き人として使われているラードゥンが船長を殺した海賊団の元副船長ニコラスだ。

 長身の男で二メートルはある。それ以外に特徴らしい特徴は無い。黒髪黒目の男だ。

 

「ああ。適当に襲ってくる奴を撃退し名を上げるもよし。傘下にして勢力を盛り上げるにもよしだ」

「適当に傘下にした奴が従いますかね?」

「従わねば食い殺すだけだ」

「おっかねぇ~」

 

 ひぇ、とわざとらしくニコラスは悲鳴を漏らす。

 

「城が出来るまで後三年。その間に出来得るだけ勢力を伸ばすぞ」

 

 

 

 

 ■

 

 そうして、三年の時が過ぎた。

 三年の間にラードゥンの懸賞金は五億にまで上がった。

 それ以外には傘下の海賊団が三つ出来た事だろう。ラードゥンの力の前に平伏する事を選んだ者達だ。

 質ははっきりって悪いが、それでも新世界を航海出来るだけの力を持つ者達である。

 

 そうして出来上がった城をラードゥンは見上げる。

 

「いい出来だ」

 

 うぬん、とラードゥンは頷き、出来栄えを褒める。

 

 出来上がった城は西洋風だ。外見で言えば地球のモンサンミッシェルが近いだろう。

 前の城の倍以上の大きさだ。軽く百メートルはある。

 

 その出来に満足したラードゥンはよし、と傘下の海賊団を前に胸を張る。

 

 城の前の広場に集められたのは三つの傘下の海賊団。

 

「我らの名を上げろ! 我ら竜王軍はこれより世界を獲る!」

 

 

 うおおおおおお! と海賊たちが雄たけびを上げる。

 

 

──ジハハハハハハ! 

 

 

 そんな時。空から笑い声が聞こえた。

 

「なんだ?」

 

 竜の聴力をもってすれば声の位置を把握するなど簡単な事。

 空の上を見上げれば、そこには男が居た。

 金の髪は鬣の様であり、鍛え上げた体を持っている。

 かつてロックス海賊団に所属していた大海賊、金獅子のシキだ。

 

「い~い城じゃねぇか。俺がもらい受けてやるよ!」

「──貴様はあの時の……殺す!」

 

 ラードゥンは怒りに震え、跳躍する。

 レベル千のジャンプだ。瞬く間にシキのいる空まで飛びあがる。

 ただのジャンプ一つでここまで飛んできたことにシキは驚愕に顔を染め、行動が一手遅れる。

 ラードゥンはそのまま回し蹴りを放ちシキを吹き飛ばす。

 すると月歩などの飛行手段を持たないラードゥンはそのまま素直に地面に落下する。

 

 落下、着弾する。

 

「ニコラス! 海賊共を警戒にあたらせろ! 奴の海賊団が来てるかもしれん! 迎撃だ!」

「わかりました!」

「我らはあのクソカスを殺してくる!」

 

 そういうとラードゥンは本来の姿に戻り飛翔。吹き飛ばしたシキを追う。

 

 

 

「いてて……思ったよりも強いな」

 

 ラードゥンの一撃を受けて尚、シキは原型をとどめていた。

 無意識化で武装色で防御していたのと、ラードゥンが空中というのもあって力を込めた攻撃を出来なかったからこその無事だ。

 

「……でっか! タコかいな!」

 

 シキは飛行してくるラードゥンを見て驚愕の声を上げた。

 

(というか、昔やった蜥蜴じゃねぇか!)

 

 ラードゥンの巨体と十の首がある異質さを一度見れば嫌でも忘れる訳が無い。

 

「いいぜ。ここでなます切りにしてやるよ! }

 

 シキは腰から名刀『桜十』と『木枯し』を抜き、好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

 そしてシキの前まで来たラードゥンもまた怒りに顔を染める。

 

「殺す! 縊り殺して嬲り殺してその血で世界を染めてやる!」

「やってみろ、蜥蜴野郎!」

 

 ラードゥンとシキが衝突する。

 シキが両手で剣を構え、ラードゥンの右から四番目の頭の突撃を迎え撃つ。

 

 ギャリギャリと硬い金属同士がぶつかった様な否や硬質的な音が響く。

 

(かてぇ!)

 

 シキはラードゥンの硬さに舌を巻く。

 武装色の覇気を使っていないというのにこの硬さ。余程悪魔の実の能力の質が高いらしい。

 ラードゥンの右から六番目の首が口を開きブレスを放とうとし、見聞色で察知したシキは真下に飛ぶ事で事前に回避。

 遅れてラードゥンがブレスを放つもそこにシキは居ない。

 

「ちっ!」

 

 ラードゥンは十の首を縦横無尽に動かし、時にブレスを放ちシキを攻撃する。

 

「ジハハハハハハ! いいぜ、もっと見せてみろ!」

 

 

 

 ■

 

 一時間後。其処には消耗しきったシキと未だ力を保ったままのラードゥンが居た。

 

「あり得ねぇ……なんだ、その力は……!」

 

 戦いとは消耗するモノだ。

 シキは見聞色も武装色も消耗し、疲労している。

 対してラードゥンは大して疲れていない。竜の体であればたった一時間ぽっちの戦闘で疲労など感じるはずもない。

 

 長時間の戦闘となればラードゥンの方が圧倒的に有利だ。

 

 だが、ラードゥンは内心焦っていた。

 

(こいつ、レベルにして六百かそこらだろう……! 何故この程度の敵に苦戦する!)

 

 そう。本来の竜王ラードゥンならばシキ程度倒せている。

 倒せていないのは、本物のラードゥンではなく憑依転生者であり、その力をまだ十全に使えていないから。

 雑に体を使うだけで倒せる雑魚海賊とはシキは格が違うのだ。

 言ってしまえば経験値不足。如何にF1最高の車があるとしても搭乗者が赤子では使えるものも使える訳が無い。

 つまりはそう言う事。ラードゥンは何年経っても成長していなかった。

 

 ラードゥンは十の首で息を吐いた。

 

「これからは気合を入れるとしよう」「うむ。本気だ」

 

「なんだ、今までは本気ではなかったと──」

 

 ラードゥンは心を入れ替える事にした。これまでなあなあで生きて来たのをやめ。本気で──この世界の住人として活動すると心を入れ替えた。

 言葉にするのは簡単だ。だが実行するのは難しい。これまで適当に生きて来たのをはいそうですかと変えれる訳が無い。

 

 だが、ラードゥンには十の人格がある。その人格の過半数以上が心を土壇場で入れ替える事に成功した。

 

 

 ──ぞっとした。

 

 シキはラードゥンから発せられる威圧感に冷や汗を流す。

 

 駄目だこれは、勝てない。

 

 見聞色の覇気は極めれば未来予知すら可能とする。シキほどの実力者ならばそれもまた可能だ。

 

 その未来で見えたのは──ラードゥンのブレスで焼け死ぬ自分の姿だった。

 

「ジハハハハハハ! 辞めだ!」

 

 シキは両手から武器を離し、適当に浮遊させる。

 そして両手を上げ、降参のポーズをとる。

 

「? なんのつもりだ」

 

 ラードゥンは訝しみ、攻撃をいったん辞める。いきなりの行動にラードゥンの思考が追い付いていない。

 

「ビジネスの話をしよう。ラードゥン。これからの未来に着いて話さないか?」

「いきなり襲い掛かって来た奴が何を言う」「殺すぞ」「まぁ待て。話だけなら聞いても良いのでないか?」

 

「ああ。お前さんの目的と俺の目的は一致しているだろう? ──共に世界を獲る気は無いか?」

 

 ふむ。とラードゥンは考える。

 悪くはない考えだ。ラードゥンの目的がこの世界の征服である以上協力者は必要だ。

 だが

 

「ふむ。腹に一物抱えている腹心を持つ気はない」「故。力で服従させよう」

 

「パーどぅん?」

 

 シキは目を丸くした。

 

「何。圧倒的な──覆しようのない力の差というモノをわからせてやるだけだ」

 

 

 三十分後。其処にはフルボッコにされ反逆する気を無くされたシキが居た。

 

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