竜王のワンピース   作:野生の生蛇

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第8話

 

「本物の竜ねぇ……」

 

 ラードゥンとシキはさっそく出来上がった城に来ていた。

 居るのはラードゥンの私室である。

 広大な私室にはソファと机があり、ラードゥンとシキは向かい合って座っていた。

 勿論ラードゥンは人型になっている。

 尚シキはラードゥンの擬人化状態に鼻の下を伸ばした。

 

「信じられぬか?」

「いや。信じよう。この手の嘘には敏感なんだぜ」

 

 信じるといったシキの言葉をラードゥンもまた信じ、ならばよいと告げる。

 

「ならばよい。これからの計画を話したい」

「ああ。この海を征服する手段に着いてだ。一つ、便利な手段がある」

「ほう? それはなんだ?」

「海軍さ」

 

 にやり、と笑みを浮かべながらシキは言う。

 

「海軍?」

「ああ。海軍は何時の時代もこの海において力を誇示してきた──その海軍を襲撃し他の者どもに力を示すんだ」

「実にいいな。だが滅ぼすとなると影響が大きすぎないか?」

「そこら辺は加減を考えないといけないな。まぁ襲撃して一時間ぐらいで撤退、手のが一番いいだろうな」

「いいだろう。では早速準備をするぞ。海軍を攻め落とすぞ!」

「落とすなよ」

 

 ■

 

 海軍本部、マリンフォード。

 そこはある一報を受けて同様の最中に会った。

 

 ──空を飛ぶ船が十隻程向かってきている。

 

 それは言うまでも無く、ロックス海賊団元船員金獅子のシキの能力によるモノだ。

 

 つまりは、シキがマリンフォードに攻めてきているというモノ。

 

 だが、その報告の中には可笑しな物が入っていた。

 ──船の帆には金獅子海賊団の海賊旗は無く、代わりに竜王軍の旗があり。

 

 どういうことだ、と一同──特にセンゴクやガープは混乱した。

 

 何を持ってその行動に至ったのか。竜王軍を傘下に収めたにしては行動が唐突過ぎる。

 

 何を考えているのか全く分からない現状に海軍は混乱するしかなかった。

 

 

 そうして、迎撃準備が整った頃。二人の男女がマリンフォードにやって来た。

 言うまでも無く金獅子のシキと岩の上にのせられた擬人化したラードゥンだ。

 上空からシキとラードゥンは海軍を見下ろし、海軍中将ガープは見上げて叫ぶ。

 

「シキ! なんの用だ!」

 

 その言葉にシキは「ジハハハハハハ!」と笑う。

 

「これは宣戦布告だ! ぬるい海軍と、世界に対しての!」

 

「宣戦布告だぁ?! 何言ってんだ馬鹿野郎!」

 

 その言葉に海軍兵士全員がいきり立ち、武器を抜く。

 

「という事でお願いします。親分!」

「お前がやるんじゃないんかい!」

 

 思わずガープはツッコミを入れたが、直ぐに疑問を抱く。

 金獅子のシキが、親分と呼ぶ相手? 

 

「ルハハハハハ! そう、我らこそが竜王ラードゥン! この世界を征服する者である!」

 

 ラードゥンはそう胸を張って堂々と宣言する。

 一部の者は変な女が変な事を言っている、程度にしか感じないが中将以上──覇気が使える者達は敏感にラードゥンの力を感じ取る。

 

 強い。これまで戦ってきたどの敵よりも! 

 

「さぁ行くぞ──鏖殺(おうさつ)だ」

 

 ラードゥンは本来の姿に戻る。

 

 全長百七十メートル。体重十八万トン。

 漆黒の鱗に覆われた竜の体に十に別れた竜の首。

 背中からは蝙蝠にも似た被膜の付いた翼。前足は鋭く全てを斬り裂く形をしている。

 

「ラードゥンだと?!」

 

 センゴクは唐突に現れたラードゥンを前に驚愕する。

 ラードゥンの擬人化形態は手配書に乗っていない。海軍関係者がラードゥンの擬人化姿を見る機会が無かったからだ。

 

「ルシャアアアアアア!」

 

 ラードゥンは叫び、右から六番目の首がブレスを放つ。

 放たれるのは日属性のブレスだ。直線状に放たれるレーザーにも似たブレスではなく、火球上のブレスである。

 手加減なんて考えていない、全力のブレス。これ一撃でマリンフォードが消し飛んでも可笑しくない威力のブレスだ。

 

「こりゃまずい!」

 

 ドン、とガープが大地を蹴り飛ばす形で跳躍。

 

拳骨衝突(ギャラクシーインパクト)!」

 

 ガープは覇気を込めた一撃だ。

 竜王のブレスと海軍の英雄の一撃が衝突し──拡散。衝撃が周囲に散らばる。

 

 その衝撃によって弱い海兵は吹き飛ばされ、なんとか少将以上で耐えられる。

 壁や床にも罅が入り、建物が揺れる。

 

「出鱈目なブレスを放ちおって……!」

 

 ガープは舌打ちをする。

 見聞色の覇気で分かっていた事だが、余りにも強すぎる。

 これまで戦ってきた敵よりも強い。下手すればロックス以上に。

 

「さぁこい、人間共、皆殺しにしてくれる!」

 

 ラードゥンはそう叫び、スタンピングを行う。

 それを防ぐのは海軍大将仏のセンゴクだ。

 センゴクは全身を金色に変化させ、大仏の姿となる。

 巨人族並みの体躯を持つ大仏である。

 

「ぬぅん!」

 

 センゴクは仏の衝撃を合わせた拳を振るいラードゥンの足を攻撃する。

 スタンピングを受けそうになった海兵たちを避け、ただの地面にラードゥンのスタンピングが振り落とされる。

 

「食いでがありそうだ!」

 

 ラードゥンの右から七番目の首がそう言い、センゴクに食らいつく。

 

「ぐおっ?!」

 

 そのまま食いちぎりそうなところをセンゴクは本気の一撃を与えラードゥンの頭を外す。

 

「ぼさっとするな! 我々も攻撃するぞ!」

 

 ラードゥンの背後から中将以下海兵が攻撃を開始する。

 マリンフォードには大砲や軍艦も配備されている。それらが一斉にラードゥンの方を向き、砲撃を開始する。

 だが──ダメージが通らない。まったくもって、鱗には傷一つ負わない。

 

 中将の一人が跳躍し、ラードゥンの背中を吐きを込めた剣を持って斬りつける。

 だが、まったくのノーダメージ。傷一つ負わない。

 

「なんという硬さだ……!」

 

 これほどの防御力など、新世界でも早々お目にかからないだろう。

 

「煩わしいぞ、人間共!」

 

 ラードゥンはそういい、前足を振るい中将以下海兵たちを吹き飛ばす。

 

「ジハハハハハハ! いいぞ、もっとやれ!」

 

 シキは口を開けてラードゥンが暴れるのを見て笑う。

 

 ラードゥンは首を振るい頭突きで周囲を破壊し、スタンピングに前足を使い周囲を破壊する。

 百七十メートルの巨体が暴れるのだ。周囲の被害は尋常ではない。

 

 勿論、センゴク、ガープ、つる、ゼファーが止めんと立ち向かう。

 だが首が二つ以上襲い掛かり、対応をする。

 ラードゥンのブレスは一撃が即死級だ。特に火属性のブレスは喰らえばまず死ぬ。

 それ以外は何とか耐えれるが、それでも数発受ければまず死ぬ。

 

 ラードゥンは暴れに暴れる。首を使い、破壊し、前足と足、尻尾を振るい海兵たちを殺していく。

 

 

 

 

 

 ──一時間後。其処には死体の山が出来上がったマリンフォードがあった。

 

「まだ戦えるか? センゴク」

 

 ぜぇぜぇと肩で息をしながらガープがセンゴクに問いかけた。

 

「なんとかな……しかし、何という出鱈目な強さだ……!」

 

 一時間も暴れたというのにそこには変わらず君臨するラードゥンの姿があった。

 ラードゥンとて膨大なスタミナを少しは消耗している。だが、それは全体から見て五パーセントにも満たないスタミナをだ。

 それに対し海軍側は大将一名死亡。中将が五名死亡。それ以下百名以上が死に、軍艦も四隻沈められた。

 

 だがラードゥンは無傷。

 ダメージを負わなかった訳ではない。センゴクやガープの攻撃で鱗を破壊されたり、骨に多少の罅が入る事はあった。

 だが、その程度。致命傷には程遠い。骨の一本も折れていない。

 そしてその程度の傷など斬られた首が数十秒で生え変わる程の再生力を持つラードゥンをもってすれば数秒あれば治る程度の怪我でしかない。

 

 つまりは、無傷のラードゥンと死屍累々の海軍だ。

 

 どうするか──もはや命を捨てての特攻しかないか、と全員が覚悟を決めかけた時。

 ジリリリリ、とベルの音が鳴り響いた。

 

 なんだ、と全員が顔を向ければそこにはラードゥンと海軍の戦いを眺めていたシキが懐から時計を取り出していた。

 

「親分、時間でっせ! 晩御飯の時間ですよ!」

 

 何を言っているんだ、と海軍一同は思った。

 

「そうか。もうそんな時間か──では帰るとしようか」

 

 再度、海軍の者達は混乱した。

 帰る? これだけの被害を出し、あと一歩でマリンフォードを滅ぼせるというのに? 

 

「ではな、人間共! 精々次会う時まで鍛錬を怠らぬようにな!」

 

 

 ルハハハハハ! とラードゥンは笑い、シキと共に飛び去った。

 

 

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