竜王のワンピース   作:野生の生蛇

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第9話

 

「♪ ~」

 

 ラードゥンは一人、城の広大な風呂に入っていた。

 大浴場、百人は軽く入れる広さを持つ風呂だ。

 湯船につかり、鼻歌を歌う様は実に絵になるだろう。

 当然ラードゥンは擬人化している。

 

 そうして暫く風呂を堪能した後、ラードゥンは風呂を上がり廊下に出る。

 湯煙を出しながら歩いているとニコラスが走って来る。

 

「竜王様! 新聞見ましたよ! 凄いっすねこれ!」

 

 ニコラスは片手に新聞を持ちながら興奮した様子で伝えてくる。

 

「ん、我らにも見せてみろ」

 

 ラードゥンがそう言うとニコラスは新聞を渡してくる。

 

 "竜王"ラードゥン。マリンフォード襲撃! 

 金獅子のシキを傘下に納めたか?! 

 

 そう見出しで出るのはラードゥンの擬人化状態である。

 そして懸賞金も乗っている。

 

「我らの懸賞金は二十億ベリーか……意外と低いな」

 

 もっと破壊しておけばよかったか? とラードゥンは考える。

 シキは十三億ベリーである。

 

 だが初等が五千万、次が三億ときていきなりの二十億だ。右肩上がりにも程がある。

 

「さぁ、勢力を盛り上げるぞ!」

 

 

 そして、一年の時が経った。

 

「巷で暴れている海賊ぅ?」

 

 玉座の間。

 本来の姿のラードゥンが入るには狭いが、それでも相応の広さを持つ広間だ。

 玉座の後ろには竜王軍の旗があり、横向きのラードゥンの顔が描いてある。

 玉座に座るのは当然ラードゥンだ。

 ラードゥンの前にはニコラスが居る。

 ラードゥンはニコラスから報告を聞いた。

 

「はい。何でも強くて、傘下の海賊たちでは相手にならないとか」

「ふうん」

 

 この一年で竜王軍も勢力を伸ばした。

 特に精力的に動いたのはシキだ。傘下の海賊団を五つも手に入れているし、シマにした領海(なわばり)も三つもある。

 当然、傘下の中には実力者も結構な数いる。

 それらが相手にならないとは、相応の実力者だという事。ラードゥンは興味を抱いた。

 

「よし。港にいくぞ」

 

 ラードゥンはそういい、玉座の間から出た。

 

 

 ■

 

「ハハハハ! なんだ、竜王軍は雑魚しかいないのか!」

 

 元スルハ帝国、現竜帝国の首都があるラルース島の港町、バース。

 そこは死屍累々だった。

 

 シキが態々傘下にした海賊団の一つが壊滅し、皆殺しにされている。

 笑っているのは長身の女だ。身長は二百二十センチ程と擬人化したラードゥンと同程度。

 赤い鬣のような髪に紅蓮の瞳。筋肉質な腹筋にデカい胸とケツを持つ女である。

 胸と腰、股間ぐらいしか隠していない露出の多い服を着ている女だ。

 

「ほう。随分と威勢がいいな」

 

 ラードゥンは空から港に着地し、女を見やる。

 

「ほう? あんたが竜王ラードゥンか!」

 

 女──名をレオは獰猛的な笑みを浮かべる。

 

「そうだ。我らこそが竜王ラードゥン。この世界の支配者である!」

「随分とだいそれた事を言う女が居たもんだな! ──それはオレも同じか」

 

 くっくっくとレオは笑う。

 

「まぁいい。よくも我れらが配下を虐めてくれたな。その代償は高くつくぞ!」

「はっ、こんな雑魚幾ら死んでも同じだろ? ──こい、弄んでやる!」

 

 ラードゥンとレオがどちらともなく駆け出し、拳を突き放ち衝突する。

 レオは武装色で強化した拳だが、ラードゥンは覇気などの力を込めない素の拳だ。

 だが、硬さではラードゥンが上回り、レオの拳の方がダメージを受ける。

 

「はっ! 硬いな!」

 

 すぐさまレオは攻撃に移る。

 両手の拳のラッシュだ。怒涛の連続攻撃である。

 ラードゥンは回避も防御も不要と判断しその体に拳を受ける。

 顔に、腕に、腹に、胸に。レオの拳が命中していくが大したダメージには成らない。

 

「今度はこちらの番だ」

 

 ラードゥンはそう言うと無造作に拳を固め、振るう。

 無駄の多い動きだがレオは見聞色で察知出来ても回避、防御は間に合わずその腹に受ける。

 腹に受けた衝撃でレオは後ろに大きく飛ぶ。体全体がくの字に曲がった。

 地面を数度バウンドし、家屋にあたる事でようやく止まる。

 

「やってくれたな……!」

 

 レオは獰猛な笑みを崩さず、腰を低く構える。

 そして突進。ラードゥン目掛け突撃する。

 ラードゥンはつまらなさそうに迎撃するように蹴りを繰り出すが当たる寸前にレオが向きを変え回避、ラードゥンの背後に回る。

 レオはそのままラードゥンの腰を掴みバックドロップをお見舞いする。

 

 だがすぐさまラードゥンは這い出て怒りに顔を染める。

 

「やってくれたな!」

 

 ラードゥンはそう言うと拳を繰り出す。

 レオもまた見聞色で回避と防御をしようとするが、速度ではラードゥンの方が圧倒的に上だ。

 擬人化したとしても一部のスキル以外ラードゥンのステータスに変化はない。

 

 ラードゥンの拳がレオの拳に、腹に、顔に、足に命中する。

 全身を武装色で防御するがレオも甚大なるダメージを受ける。

 最後にラードゥンはレオの頭を片手で掴み、地面に叩きつける。レオの頭はギャグマンガのように地面に埋められた。

 

「死んだか?」

 

 ラードゥンは嘲るようにそう言うとレオから少し距離を取る。

 

 暫くするとレオは頭を地面から引っこ抜き、座り込む。

 

「いやー負けた負けた! オレの負けだ!」

 

 降参だ! とレオは両手を上げ負けを認める。

 

「なんだ。潔く死にたいという訳でもなさそうだが」

「ああそうだ。オレをあんたの──いや竜王様の傘下に加えてくれ!」

「はぁ?」

 

 唐突な申し出にラードゥンは目が点になる。

 

「まさか、その為に傘下を一つ潰したのか?」

「ああ。その方が力を示しやすいだろう?」

「……蛮族か貴様は。だが、ふむ……」

 

 ラードゥンは顎に手を当て考える。この女を傘下にした場合のメリットとデメリットを。

 だが、こういうのを入れても面白いだろう。その思考が勝り受け入れる事にした。

 

「いいだろう。精々我らの配下として活躍する事だ」

 

「ありがてぇ! オレは誠心誠意あんたの為に働くぜ!」

 

 

 ■

 

 数日後。王城の談話室で。

 談話室にはラードゥン、シキ、レオの三人が揃っていた。

 三人そろってソファに座りラードゥンはコーヒーを。残る二人は酒を飲んでいる。

 

「で、新しく傘下にした海賊だ」

 

 ラードゥンが雑な紹介をする。

 

「紹介された"赤獅子"のレオだ、よろしくな!」

「ジハハハハハハ! 傘下に入る為に海賊団一つ潰すとはなかなかやるじゃねぇか! しかも五億の首たぁ大それたことしてんなぁ!」

 

 シキは景気よく笑う。

 

「しかしシキ。傷を負っているようだが何かあったのか?」

 

 竜の視力と嗅覚をもってすればシキが多少の怪我を負っている事を悟る事など難しくない。

 

「ああ、これ? ロジャーの奴とちょっと小競り合いをしてな」

「ロジャーというと……ロックスを打ち破った海賊か。強いのか?」

「強い。あんたに勝てるとまでは言わないが、いい勝負は出来るだろうぜ」

「ほぉ……」

 

 ラードゥンの実力をよく知るシキが言うのならば相応に強いのだろうとラードゥンは期待を抱く。

 

「うちの部下に欲しいな」

「俺も欲しいちゃ欲しいが、ありゃ誰かの下に着くような性分じゃねぇなぁ……」

「ま、駄目で元々。気が向いたら勧誘でもするか」

「ああ。それぐらいがいいな」

 

 ラードゥンとシキ、レオの三人は夜遅くまで計画について話し合うのであった。

 

 

 

 

 ■

 

 数日後。シキはラードゥンに真剣な顔で話をしていた。

 

「古代兵器ぃ?」

「ああ。何でも使えば世界をひっくり返せる代物だ……使えば最低でも島一つ消し飛ぶと思ってくれていい」

「なんだそれは。我らもやろうと思えば島の一つや二つ消し飛ばせるが」

「ということは、あんたに匹敵する兵器って訳だ……その兵器の所在を、ロジャーが掴んだらしい」

 

 ほぉ? とラードゥンは眉をひそめる。

 

「欲しいな。ゴール・D・ロジャー」

「ああ。だからこそ、本気で攻めに行こうぜ! ロジャーの奴を!」

「ああ、動かせるだけの者を動かし、攻めに行くぞ!」

 

 後の世でエッド・ウォーの海戦と伝わる戦が始まりかけていた。

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