ほんへは今チマチマ書き溜めしてますのでお待ちを
「こんばんは」
西条レイナは他者に淑女と呼ばれる事が好きだ。
礼儀正しく、丁寧に、そして心の中を読めなくする努力を彼女は怠らない。
それが敵であろうと味方であろうと、或いはそのどちらでもない人間であろうと彼女は心の中を吐露する事は滅多に無い。
後に彼女はシャーレの先生と共に生活する事になるのだが───今回はその少し前のお話。
「こんばんは、お嬢さん」
「カイザーPMCの理事長様がわざわざこんな薄暗い場所に来てくださるとは思いませんでした」
彼が飲める筈の無い紅茶を差し出しながらレイナが話すと、大きな機械の体をソファーに腰掛けて理事長は笑う。
「ハッハッハ、君のような美しいお嬢さんがお膳立てをするもんじゃあないぞ」
「それに、私は君のような
日々子供を脅すような事をしている彼はいつものように声のトーンを一段下げて生徒に問う。
「黒服でしたら今実験の最中です、後ほどお越しを」
「来客より実験か?」
「そういう人ですので」
満面の笑みで笑うレイナに理事長は腹が立った。
「…………」
「何かご不満でも?」
低い声でため息を吐く理事長にレイナは表情を崩さず問うと、理事長は手を組みながら言った。
「資金、施設、そして情報……これほど譲歩してくれてやっても貴様達は飽くまで自分たちが上だと?」
「はい」
即答だった。
レイナはその返事をした後、優雅に紅茶を啜った。
「クッ……ハッハッハッ!私達を誰だか知っていての発言だろう?」
レイナはそんな理事長を見て、淑女らしい振る舞いから一転して足を組みラフな姿勢になってため息を吐いた。
「───軍需企業のお偉いさんってのはいちいち意識が高くて面倒ね」
「なんだと?」
「資金も施設も、そして情報も貴方達がいなくても問題ないわ、別のモノや……なんなら私達だけで完結させる事だって出来る」
「では何故私達を頼る?」
「都合が良いからよ」
「……都合だと?」
レイナのその言葉に嘘偽りは無い、と思わせるような態度に理事長は動揺し、それと同時に『子供にイラつかされている』という事実に腹が立った。
「それに貴方達は自分の益を棚上げしている、アビドスの債権の一部を私達が握っている事を忘れているの?」
「…………」
「御立腹かしら」
黙り込む理事長にレイナは嘲笑うかのように問う。
「ガキのクセに口が減らないな」
「口を減らす事の出来ない貴方に言われても」
「貴様ァッ!」
怒鳴り声が薄暗いオフィスに響き渡り、レイナの額に拳銃が向けられた。
レイナの言葉に理事長は最早冷静さを失い、そして『今すぐこの娘をブチのめしたい』という感情で染まる。
そんな態度にレイナは動揺すらせず、言葉を羅列する。
「…………アビドス砂通り支店、中央公園支店、アビドス駅前支店、アビドス商店街支店、アビドス大通り支店、学園前支店」
「全てアビドスに点在するカイザーPMCの店」
「それかどうしたッ!!」
怒鳴り声は相変わらずで、そんな理事長にレイナはケタケタと笑う。
「私達はこういう時の為にリモート爆弾を貴方達の店や事務所、会社に仕込んだの」
「貴方が私達を裏切るか、攻撃した瞬間」
「ドカン」
「分かる?首根っこを捕まえているのは貴方ではなく私達なのよ」
「貴様ァ!」
最早理事長は冷静さの欠片もない暴君だった。
事態の収集すら難しくなりつつある中、部屋に誰よりも冷たい声が響いた。
「そこまでです、レイナ」
「黒服……」
藁にも縋るような声だった。
『コイツなら私の味方になってくれる』という一筋の希望を理事長は抱いていた。
「レイナ、お客様に対する対応ではありませんね?」
「そう?お客様から攻撃者にランクダウンしそうになってたけど」
「はぁ……貴方はそういう短気ならところを治すべきですよ」
「留意しておく」
「─────まあ、爆弾は本当の事ですが」
理事長はその後、アビドスでの事態で更迭され黒服から見捨てられる事になるのは言うまでも無い。
Barlさんからイラストを頂いたのでちょっとした短編を描きました
ありがとう、Barlさん!フラーッシュ!