取り残されていた生徒会の生徒も二人が殲滅し、もう少しで押収室に辿り着きそうになった時……
「モモイ!伏せて!」
無線から叫び声が聞こえると同時にズッダァン!と力強い弾丸が才羽モモイの真上に飛ぶ。
「うわあああっ!?い、い、今頭の上を凄まじい威力の弾丸が飛んだんだけど!?壁に穴空いてるんだけど!?」
「スナイパーね、325方向から」
「325ってどこぉ!?」
つまるところ北北西の辺りだ。
狙撃をするなら絶好のポジション、流石ミレニアムのエージェント集団だ。
そう絶賛していると壁からからんと弾丸が落ち、才羽ミドリがそれを拾い上げる。
「対物狙撃用の49mm弾!良かった、お姉ちゃんの背があと5cm高かったらおでこにクリーンヒットだったよ……」
「ヒューッ、小さくて良かっ……じゃないよ!」
325、風無し、遮蔽らしき物は少なく、正確。
うーむ、かなり厄介なスナイパーだ。
「この辺りはもう狙撃ポイントに入ってるって事だね……C&Cの狙撃手、カリン先輩の」
「先生伏せて、跳弾が貴方に当たる確率は0じゃない」
先生の事は好きじゃないが、ミッションに私情は挟まないのが私のポリシーだ。
先生の前に立ち、銃弾が当たらないように前に立った時。
ドゴォォォン!
二発目の銃弾が私達を襲う。
二発目も外れ、だがその正確さは確かに私達に近づいている。
(流石に並大抵のスナイパーより威力は桁違いに高いわね)
(対スナイパーの心得は遮蔽を利用する事だけどこの場合遮蔽も無意味)
(私の銃の射程距離ギリギリ、でも……)
(……ま、作戦失敗したら失敗したらでいっか)
「レイナさんなんでそんなに冷静なのぉ!?」
「作戦通りに進んでるならそろそろ……ウタハだったかな、その人が何とかしてくれる頃合いじゃないかしら」
「そうだけどぉ!」
「相手のスナイパーは一人でしょう?あっ先生もっと姿勢低くして……それならまだ何とかなるわ」
「当たらなければどうということはないのよ」
「当たりそうなんだけどぉ!?」
「当たらなければどうということはない!!」
「当たりそうなんだって!!」
ズダァン!
三度目の弾丸が飛んだがそれは大きく私達から外れている。
つまり、狙撃手に何か異変があったという事だ。
「………………ね、どうという事はない」
「……狙撃が止んだ」
「ウタハ先輩とヒビキちゃんだ!カリン先輩の相手をしてくれてる間に急ごう!」
ゴゴゴゴゴゴッ……!
と、意気込んだ時地面が揺れた。
何かの衝撃のようだ、このタイミングとなると……
「急いだ方が良さそう……かな」
「多分小塗さんと豊見さんが足止めしてるエージェントが脱出したんじゃないのかしら」
「ど、どうして分かるんですか?」
「今の振動は爆薬、それも大量のね」
「あ、アカネ先輩らしい方法だ……」
━━━━━
最上階の廊下まで辿り着くと、電気が落ちた。
…………ああ、別に腰は抜かさないから、雷鳴ってないし。
「この停電、ウタハ先輩とヒビキの策が成功したって事だよね?」
「そのはず……あ、先生、足元暗いのでレイナさんの手を……」
そう提案された時、私は隣にいる先生の方を睨みつける。
「変な所触ったらここから窓に投げる」
ガルルルルと睨みつけている私を見て才羽ミドリがたじたじになりながら聞く。
「レイナさんと先生、仲が悪いんですか……?」
''仲は悪くないけど、レイナと少しコミュニケーションの取り方を間違えてね……''
「人の事勝手にお姫様抱っこする人間よ、当然の報いね」
「お、お姫様抱っこしたんですか!?……羨ましいかも……」
……と、雑談しながら呑気に歩いていると大きな広い空間に抜けた。
「……えーっと、確かここ抜けたら……うん、もう押収室のはず!ようやくこれで……」
「お、やっと来たね!」
「「!?!?」」
……広い空間に立っている生徒が、一人。
「遅かったねー、だいぶ待ってたよ〜」
ニコリと笑うメイドが月明かりに照らされる。
間違いない、C&Cのエージェントだ。
「先生だっけ?ずっと会えるのを楽しみにしてたんだよ〜?」
緊迫した空気にあまりにも似合っていないニコニコ顔のメイドはこちらに気づくときょとんとした顔に変わる。
「…………あれ?その隣にいる子……ミレニアムの子じゃないよね、誰?」
「……シャーレ所属の生徒よ、西条レイナ」
「レイナちゃんでいいかな?」
「名前なんてどうでもいいでしょ」
「あはは!それもそっか!何となくここに来たらゲーム開発部の子達にも会えたし……」
彼女は静かに銃を構える。
「……始めよっか?」
まぶしい笑顔で。
「一応聞くんですけど、何を……?」
「戦闘!私、戦うのが大好きなの!」
そして、銃を向けた。
宣戦布告。
「あ、そうだ、まだ自己紹介してなかったね」
「C&Cコールサイン・ゼロワン、アスナ!行くよ!」
(……こりゃまた面倒な輩ね、ロボットや生徒会の人間とは話が違う)
「レイナさん!助けて!」
「私は先生を弾丸から守るので忙しいから無理よ」
「うわああああん!」
''二人共、来るよ!''
━━━━━
「ひいいっ!」
「でたらめに強い……!」
「こ、これがC&C……!」
二人はひーひーと息を切らしながらもエージェント相手に戦えている。
コンビネーションがベテラン級と言うべきだろうか、その点は素晴らしいと言えるだろう。
(思ってたより全然悪くない、お世辞にも戦闘能力がすごいとは言えないけど……チームワーク……かな、まるで二人で一人みたいな動き……その点においては間違いなくベテラン級の……)
「双子パワーってやつかな?良いね!」
一方アスナはニコニコとまだまだ余裕そうな表情だ。
「お姉ちゃん、一旦退こう!」
「うん、仕方ない……!」
と、一度下がろうとしたその時、アスナというメイドか叫んだ。
「そうはさせないよっ!」
ドカァァァァン!!
壁の瓦礫が室内を舞う、剥がれた壁の外を見ると……そこには一人のスナイパーがいた。
やはり遮蔽物があっても無意味だったか、対物狙撃用弾とはいえこんな所まで正確に狙えるとは。
それと同時に才羽モモイが無線片手に叫んだ。
「ハレ先輩から連絡!ウタハ先輩が捕まったって!」
「この状況見れば分かるよ!」
「マキからも!レイナさんの言う通りアカネ先輩が脱出したって!同時にすごい数のロボットがこっちに向かって来てる!」
「ええっ!?」
形勢は徐々に不利になりつつある。
ロボット、スナイパー、目前の敵……二人だけでは解決は厳しいだろう。
「あはは、もしかして私達が優勢って感じ?そっちのレイナちゃんも動けないらしいし、計画は失敗寸前かな!」
「うう……!失敗……!」
「…………違う、まだ失敗じゃない……!」
━━━━━
一方、暗い部屋の中……
天童アリスは、機会を待っていた。
「……電力遮断、このイベントが起きたという事は……」
「EMP発動、タワーの電子式の扉を自由に出来るシャッターにしたのと同じ方法……」
暫く目を閉じ、何をすれば良いか、何が最適かを考える。
「把握しました」
「アリス、脱出します」
「アリスのクエストは……まず、押収室に向かう事」
その小さな体とあまりにも大きな剣が動き出した。
━━━━━
「私達が派手に動けば動くほど、アリスへの警戒は薄くなる……」
「それにもしこのタイミングで私達が捕まったとしても謹慎ぐらいだったら部室でG.Bibleを見ながらテイルズサガクロニクル2が作れる」
今回の目的はミレニアムの転覆……ではなく鏡の奪取。
それさえ果たせればこちらの勝利と言っていい程の計画だろう。
「ちよっとずつ必死さが無くなってる気がするけど、まさか諦めた訳じゃないよね?」
「この状況なら、諦めた方が賢明だとは思いますけどね」
奥の方から、誰かが現れる。
黒い制服、青色の髪……恐らく生徒会の生徒だろう。
「ゆ、ユウカ!」
「久しぶりね、とりあえずここまで状況を引っ掻き回した事は褒めてあげる、それについては本当に驚いたわ」
「でもそれはそれ、これはこれ」
「こんな方法を使ってまで生徒会を襲撃するなんて、やりすぎよ」
「猶予を与えた事といい、ちょっと甘すぎたのかしら」
才羽兄弟の方を睨みつけるそのユウカという人物、隣にいる先生も何故か汗が溢れている。
「無条件の一週間停学か、拘禁くらいは覚悟した方が良いわよ」
「そんな!?停学!?」
「一週間だと……ミレニアムプライスが終わっちゃう!」
「捕まっても大丈夫だと思ったけど……鏡を奪えたとしてもアリスとユズだけじゃゲームは作れない、どうにかして突破しないと!」
「突破?私達を?」
ふふん、と不敵な笑みを浮かべるユウカの後ろから……また一人、メイドがやってくる。
「ふう、やっと着きました……」
「うええ!?」
「アカネ先輩に、戦闘ロボットまで!!」
さらにその後ろからは戦闘用ロボットが複数体現れ、私達を取り囲んだ。
「ふふ、今度こそ本物みたいですね」
「改めまして、初めまして、モモイちゃん、ミドリちゃん」
メイド……ということは彼女もC&Cの人間だろう。
ほんわかな雰囲気が出ているけれどこれでもエージェントなのだな、と様子を見ていると先生に小声で囁く。
「衝撃に身を備えておいて」
''……え?''
何せ、まだパズルのピースは揃っていない。
最後の時まで……油断は禁物だ。
表情一つ変えず、生徒会の方を見ているとアカネというメイドが私に気づく。
「それと……先生の隣にいる、その方は?」
「レイナちゃんって言うらしいよ!先生のボディーガード!」
「なるほど、だから先程の戦闘はモモイちゃんとミドリちゃんが……」
「シャーレの所属って……この前までいなかったじゃない!?」
と、なんだか向こうが騒がしい。
変な勘違いしないでくれると助かるのだが。
「いやそうじゃなくて……先生も抗議文くらいは送らせて頂きますので、ご承知のほどをお願いしますね!」
''ひゃい……''
「レイナさん!私は早瀬ユウカ、覚えておいてください!」
「ああ、はい……」
こんな緊迫した状況なのに自己紹介、そして先生に苦い顔をさせている辺り強い人間なのだろう。
それにしてもやっぱりこの大人、情けない。
本当にゲマトリアに相応しいのか?こんな情けない大人が?
と、呆れていると才羽モモイが涙目になる。
それと同時に、下の階にて異音が一瞬だけ聞こえた。
「ごめんね先生、レイナさん……私達の力不足のせいで……私達のせいで……!」
「前にはC&C、後ろには生徒会……こんな状況下で一体どうしたら……!」
私はその異音が何かを察知し、先生を押しのけた。
「伏せて!!」
「光よ!!」
Q.なんでレイナは戦闘に参加しないんですか?
A.主に先生の意向です、本来レイナはミレニアムの戦いに無関係な立場な為出来るだけレイナが怪我をしたりしないような役回りを先生からヴェリタスに頼みました。
Q.なんでスナイパーの方角分かったんですか?
A.それくらいやれなきゃゲマトリアのメンバーになれませんよ。