さて、先生の持つカードについて調べろ……との事だったが、正直マダムの言っていた『カード』が何のカードかのかイマイチよく分かっていない。
キャッシュカード?クレジットカード?ポイントカード?もしくは私の知らない未知のカード?
マダムは悪ふざけをする人間じゃない、先生の持つ『カード』に何かがあるはずだ。
(……ま、とにかくしらみ潰しにやる……か)
とにかく、先生のカードを調べる必要がある。
しかし先生のバッグだの財布だのを勝手に調べてもしもバレたら凄く怒られるだろうな。
それはダメだ。
となると━━━
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“珍しいね、レイナが外食に行こうって誘ってくれるの”
「別に、コンビニ弁当にそろそろ飽きてきただけ」
その日の夜、私は先生を外食に誘った。
プランA
外食に誘い、財布を覗く。
馬鹿みたいな作戦だが、まあこれが一番手っ取り早いだろう。
“何食べる?”
「何食べる……って……」
…………何を、食べようか。
カードの事で夢中になって何を食べるか全く考えていなかった。
どうしよう、そう言われると何を食べればいいのか全く分からない。
''もしかして考えてなかったの?''
「いや、まあ、先生に任せようかな、って……」
''それならいいお店知ってるよ!''
「……なんだか不埒ね」
''……ハナコに毒されすぎてないかな、レイナ''
「そうかも」
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「ねえ、本当にこんな砂漠のど真ん中に良い店があるの?……何だか寒いし」
夜の真っ暗な砂漠の大地を歩いていると、北風が私の肌の表面温度を冷たくする。
まったく、この前風邪をひいたばかりなのにきれだとまた風邪をひいてしまうぞ。
そう不機嫌な顔をしていると、先生がコートを差し出した。
''私のコート、羽織る?''
「え」
''ごめんね、病み上がりなのにこんな寒い場所に連れて来て''
「それは、良いけど……」
先生のコート。
「ま、ありがたくもらっておくわ」
そのコートを受け取り、丁寧に羽織る。
袖も丈も合っていない、ぶかぶかだ。
……それに、先生の匂いがする。
…………不愉快だ。
''お、あったあった''
私が先生のコートを羽織りながら歩いていると、赤い提灯が光る屋台が賑わっていた。
「……屋台?」
その屋台から良い香りがする……カロリーの香りだ。
「いらっしゃ━━━って、先生!?」
''や、セリカ''
エプロンを着た猫耳の生徒が驚く。
恐らくアルバイトの生徒だろう。
「うへー、そんじゃあ皆集合って事になるねえ」
''あれ?ホシノやシロコ達もいるの?''
「久しぶり、先生」
「お久しぶりです、先生」
''久しぶり''
屋台ののれんの下には椅子に座っている四人の生徒がおり…………待て、ピンク髪の幼女体系の生徒……?
「……ん?先生、隣にいる子は?」
そのピンク髪の生徒が私を見つめて問う。
間違いない、暁のホルスだ。
キヴォトス最高の神秘、陽の当たる場所にいる存在、崇高の素と成りうる者。
「っ……」
思わず先生の陰に隠れる。
何故隠れたのかは分からない、別に暁のホルスは……小鳥遊ホシノは私の事を知らないはずなのに。
''レイナって子だよ''
まさかこんな場所でエンカウントするとは思いもしなかった、どうしよう、攫うか?
……落ち着け、思考をリセットさせろ。
「あ、レイナ」
一番奥には砂狼シロコ……ああ!あの不法侵入してた生徒だ!
「砂狼シロコ……!」
そうなると黒服が言っていた狼というのは砂狼シロコの事なのだろうか。
いやしかし、こんな砂漠の果てに知り合いと出会うとは世間とは小さなものだ。
「お、なになに?知り合い?」
''あれ、レイナ、シロコと知り合いなの?''
「……この前シャーレに不法侵入してたのを見た」
そう言うと、アビドス一行は一斉に砂狼シロコの方を向き冷たい目を向けた。
「ん……違う、アレは……」
「シーローコーちゃーん?」
「ん……ごめんなさい……」
目を逸らしながら気まずそうに謝る砂狼シロコ。
……もしかして、以前にも同じ事をして見つかったことがあるだろうか、やはりアビドスというのは恐ろしい場所だ。
のれんをくぐり、席に座るとアビドスの生徒達各々が自己紹介を始めた。
「レイナちゃん、初めまして!私はアビドス対策委員会の十六夜ノノミですっ!」
「私はアビドス対策委員会の書記、奥空アヤネです!レイナさん、よろしくお願いします!」
「うへー、おじさんは小鳥遊ホシノだよ、よろしく〜」
「アビドス対策委員会二年生の砂狼シロコ……って、もう知ってるかな」
「えっ……と、私は一年生の黒見セリカよ!」
……いや、賑やかな場所かもしれない。
「ていうか、雑談も良いけどなんか頼んでよねっ!」
黒見セリカがそう顔を赤くしてぷんすか怒る、まあこれだとただの冷やかし以外の何者でもないだろう。
先生はそう怒る彼女を見て、私に一枚メニュー表を渡した。
''レイナは何を頼む?''
「えっ……と……」
チャーシュー麺、醤油ラーメン……
「……ラーメン……?」
「あ、おすすめはこの柴関ラーメンね」
「……うわあ……」
選択肢がいっぱいだ。
何を選択すれば間違えないだろうか、何を選択すれば
やはり、おすすめと言われている柴関ラーメン?それとも大きく見出しに書かれている醤油ラーメン?
''すごく悩んでるね''
「……何を選べば喜ぶかなって……あ」
つい思っていた事を口に出すと先生は微笑んで言った。
''レイナ、好きなのを選んでいいんだよ''
「好きなのって……」
そんなの、あるわけない。
何を食べるかとか、何をすればいいかとか、今まで私は命令された事をしてきた。
こんなもの、食べた事すらないのに。
「……じゃ、じゃあ柴関ラーメンで」
''それじゃあ私も''
多くの選択肢を出されるのは苦手だ、何を選べばいいか分からない。
自分で選べない。
「……レイナ、大丈夫?」
「大丈夫」
別になんて事ない。
ただラーメンを選ぶだけなのにかなり動揺してしまった。
…………最近の私は少し変だ。
「そういえばレイナさんと先生はどういう関係なんですか?」
「あ、確かに気になりますね〜、もしかして娘さんとか?」
「ぶふっ!」
''違うよ!?''
そう、色々と考えていると稲光のような発言が十六夜ノノミから飛んできて私は思わず飲んでいたお冷を吹き出してしまった。
「冗談じゃない!こんなのと一緒にしないで!」
そうヤケになるように怒ると十六夜ノノミは困惑しながら言った。
「じゃあレイナさんが先生のコートを羽織ってるのって……」
「……これは、寒かったから貸してもらっただけで……!」
そうだ、これは寒かったから着せられただけで別に他意は無い!
ただ暖かくて、先生の匂いがするコートを着ているだけ、それだけだ!
そう、心の中で叫ぶと小鳥遊ホシノはうへうへと笑う。
「レイナちゃん、油断も隙も無いねぇ」
「……何か勘違いしてないかしら……」
お前がその台詞を言うとなんだか勘違いしそうになるからできる限りやめて欲しいものだ、暁のホルス。
「十万で買う」
「クレジットで対応してますか?言い値で買います♣」
隣を見れば先生のコートを買い取ろうと黄金のクレジットカードと覆面マスクのような物を取り出している二人がいた。
「借金で苦しんでいるってのによくそんなお金出せるわね……」
少しは借金返済の努力をしてみてほしいものだ、せっかく先生が黒服と戦って勝ったのにこのままだとまた大人に食い散らかされてしまうぞ。
「……あれ?そういえばレイナさん、借金の事ご存知なんですか?」
「そりゃあ……まあ、風の噂で」
「結構有名だからねえ」
アビドスの借金事情はキヴォトスの政治事情に詳しい人間なら知っている情報だ。
無論、私は政治事情なんかに興味は無い……何処から知ったって?そりゃあ言わなくても分かるでしょうに。
「へい、ラーメン二丁お待ち!……ありゃ、その生徒は先生の娘さんかい?」
「だ・か・らっっ!!」
''あはは……''
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「なるほど、つまりその子は先生の娘さんじゃなくてシャーレに入った子かぁ」
柴大将にレイナの事情を説明すると、ふむふむといった様子で納得した。
一方アビドスの生徒達は目を見開いて驚愕した表情をしていた。
「シャーレに新しく入った子!?」
「うへ!?」
「ええっ!?それ本当ですか!?」
「本当よ…………えっと、これは……」
レイナの方を一斉に向く一同に、レイナはオドオドしながらも下の提供されたラーメンを見た。
「ラーメンがどうかしたの?」
「……その……これはスパゲティみたいに食べればいいのかしら」
「えっ?」
「れ、レイナさんもしかして……ラーメンを初めて食べるんですか?」
さらに驚く一同にレイナはムキになって叫ぶ。
「何よ!こ、こんなカロリーが高くて油っぽくて、豚肉が乗ってて美味しそうなものを食べた事なくて悪い!?」
「わ、悪くはないけど……」
「そんな事より!これはスパゲティみたいに啜って食べればいいの!?」
「そうそう、ちゅるちゅる〜って啜っちゃうの」
ホシノが落ち着いた様子でレイナに説明をすると、レイナは割り箸をじろじろと見ながら聞いた。
「……フォークじゃなくて箸で?」
''こうやって……''
見本に、私が提供されたラーメンを啜って食べるとレイナはおぞましい物を見た表情をしていた。
「……っ音を啜って食べるの……?何だか下品ね」
''そうかな?ラーメンを食べる時は音を立てるものだと思うけど''
レイナは「貴方の事だから信用ならないわ」とため息を吐きながら箸で麺を持ち上げ━━━
「…………いただきます」
と、音もなく麺を啜った。
「…………」
「どう?」
「…………美味しい……!」
麺を飲み込んだレイナは目を見開いて驚く。
「でしょー!?」
「凄く……美味しい、こんなに美味しいの食べた事ない……!」
「はは、そう言われるとなんだか嬉しいよ」
柴大将も私もレイナの反応を見て微笑む。
レイナはそのまま、ラーメンを丁寧に、それでいて必死に食べ始めた。
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「……ご馳走様」
「あいよ!」
器を子犬に似た大将に渡すと、先生が財布を取り出した。
''大将、支払いますよ''
来た!!チャンスだ、この一瞬を見過ごしてはならない。
この為に私はわざわざこんな砂漠の果てまで来たのだから、収穫を━━━
「おっ……と、これはアビドスの生徒の子達も含めてるな?」
''バレましたか''
(…………現金だと!?!?)
プランA、失敗。
黒服:鷹と鴉は似ているようで似ていないんですよ、どちらも計算高い鳥ですが……鷹に誇りはあるが、鴉は手段を選ばない。
良かったら感想とかめちゃくちゃ欲しいです、マジで欲しい、ください!