後悔はしてない。
「…………え?」
午後12時。
仕事がいつもより大分早く終わり、本を読んでいた時の事だった。
彼は異常に派手な衣装を私に見せて言った。
''最近魔法少女が流行ってるらしい''
魔法。
古代及び中世のキヴォトスにおいて信仰された力…………とはいっても、現代のキヴォトスでは信仰だとか魔女狩りだとか、そういうのは無く、ただのコンテンツとして消費されている。
「で、わざわざコスプレ衣装屋から衣装を借りてきたの?」
先生が持ってきたその衣装は、異常に派手でキラキラしていて可愛げのある黄色い衣装……そう、魔法少女の衣装だ。
''サイズは合うと思うよ!''
「いやそういう問題じゃなくて」
そういう問題では無い……というか私に着させるつもりなのか!?
''レイナに絶対似合うと思うな''
「嫌よ、こんな派手な衣装、私には似合わない」
私には煌びやか過ぎる、黄色はあんまり好きじゃないし。
''似合うよ!!!!''
「うるさっ……」
ドデカい声で叫ぶ彼に嫌な顔をしつつ、私はため息を吐いた。
「こんな衣装着て、誰かに見られたら私自分のヘイロー壊したくなるわ」
''大丈夫、ここには私とレイナしかいないよ''
「だからそういう問題じゃ……」
''お願い、一回だけ着てみない?''
先生のしつこい頼みに、私は苦い顔をしながらも……
「…………まあ、一回だけなら」
━━━━━
「………………ねえ、やっぱり似合わないって」
''すごく似合ってるよ!''
鏡で自分の姿を見てみるも、やはり派手だ。
黄色で、大きなフリフリが付いていて……少し恥ずかしい。
「なんだか落ち着かないし、派手すぎない……?」
''そんな事ないよ''
そう言われて渡されたのは……謎の黄色い棒。
「…………この棒はなに?」
ハートのステッキ?だろうか、それとも鈍器?先生を殴れという意味?
''マジカルステッキだよ!''
「いや、そんな常識みたいに言われても……」
自信満々に言う彼に私はツッコむ事を諦める。
「……ねえ、こういう衣装って、何かしらのセリフとかあるんじゃないの?」
''そうそう、セリフは確か……''
'' 「ボルトキャッチ、テルミットイエロー!」 ''
'' 「魔法の力で光となれ〜!」 ''
先生のスマホから聞こえた音声は、若く黄色い声で……聞くに絶えないセリフだった。
つまり、私にこれを言えという事だ。
「……っ、何その……恥ずかしいセリフ!嫌!言いたくない!」
''お願い……します……!''
ズゴッと頭を地面に打ち付け、土下座をする先生。
だが嫌なものは嫌だ、私にも尊厳というのがある。
「ぜ、絶対嫌だから!そんなセリフ、小学生じゃないし……!」
''ミラクル5000……買ってくるから……!''
「ミラクル5000を!?…………いや、でも……」
''カフェのストロベリービッグパフェも……!''
私の中の天秤が、ぐらりと揺らぐ。
「…………い、一回だけ……なら……」
''ありがとう!!!!''
またもやドデカい声で感謝する先生に、私は顔を赤くしつつ、軽く咳をした。
「こほん……」
「……ぼ、ボルトキャッチ!テルミット……い、イエロー!」
「魔法の力で……光となれ〜!」
''…………最高だよ……!''
涙を流しながら拍手喝采する彼に、私は耐えられなくなり……
「も、もう無理!脱ぐ!こんなの……耐えられない!」
と、衣装を脱ごうとするも先生は泣きながらそれを止めた。
''待って!写真だけ撮らせて!お願い!''
「やだ!絶対嫌だから!写真に残すとかありえない!」
''お願い!!''
「……」
''駅前の……限定ワッフルも……!''
駅前の1200円の限定高級ストロベリーワッフル。
私の中の天秤は利益で染められてしまっている為━━━またもや、ぐらりと尊厳より利益が傾いた。
「い、一枚だけ……一枚だけ!!」
''ヤッターーーー!!''
「…………はい、チーズ……」
パシャ。
━━━━━
「あーもう恥ずかしかった……本当に最低ね、貴方」
''一生大切にするよ、この写真''
「貴方は本当に滅ぶべき人間よ……ほんとー、さいてー」
だが……まあ、決して悪い気分……では無かったかもしれない。
もう二度と着ないが。
''次はこのバニーガールを……''
「ふざけんな!!」
僕と契約してゲマトリアになってよ!
ええっ!?私が……ゲマトリアの研究者に〜!?
マジカルガール☆レイナ・ブラック
日曜の午前九時に放送開始!