朝。
朝は嫌いだ、本来の私は夜行性だから朝日が嫌いなのだ。
まあ、そんな事はどうでもいい。
朝起きたら顔を洗って歯を磨いて髪を整えて先生のおにぎり食べて服を着替えてお化粧して……
思えば、最近の私はやけに健康的な生活を送っている気がする。
毎日三食、毎日睡眠。
前より時間をかけて化粧なんかもするようになったし、日も浴びるようになった。
……まあ、いい事なのは間違いないだろう。
「冷たっ!?ちょ、目にシャンプーが……」
廊下から聞こえる下江コハルの声。
(……朝っぱらから元気だこと)
ベッドの上で猫のように伸びをして、廊下の扉を開く。
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「おはよう、レイナ」
教室に着き、欠伸をしながら自分の席に座ると、前の席にいる白洲アズサが挨拶をしてくれた。
「おはよう……朝から元気ねえ……」
「レイナさんも、良ければ明日の朝から裸の付き合いをしますか?♡」
「遠慮しておく、私にそんな趣味は無いわ」
「私も無いわよっ!!」
朝からシャワー室から声が聞こえると思ったら洗いっこをしていたのか、本当に元気だなあ。
そんな雑談をしていると、阿慈谷ヒフミががらりと引き戸を引き、息を切らした様子で現れた。
「お、おまたせしました、そろそろ始めましょうか?」
急いで来たのか、ちゃんと髪の毛を整えられていない様子だ。
「……阿慈谷さん、後ろの髪が跳ねてるわよ」
「え!?……あ、ありがとうございます、少し寝坊しちゃって……」
阿慈谷ヒフミは急いで跳ねてる毛を直し、教壇に立った。
「それでは皆さんこちらに注目してください!」
「今から、模擬試験を行います!」
「モギシケン?」
「きゅ、急に試験!?なんで!?」
「闇雲に勉強してもあまり効率が良いとは言えません、目標達成の為には何が出来て、何が出来ていないのか……まずそれを把握する必要があります!」
「という訳で昨晩こちらの用紙を用意してきました!」
阿慈谷ヒフミが見せたのは、何枚かのテスト用紙。
「昨年トリニティで行われた試験問題と、その模範解答です!集められたのは一部だけですが、先生も手伝ってくださってちょっとした模擬試験のような形にできました!」
「試験内容は本番と同じです、さあ、まずはこれを解いてみましょう!」
(当然のように私の分もあるんだけど)
先生が用意したんだろう、どーせ。
私に盗聴されてるくせに、いい身分だこと!
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''それじゃあ、試験開始!''
先生の号令と共に、チャイムが鳴る。
(今度は冷静にやってみせようか)
恥は二度もかかない。
ここで圧倒的点数を取り、補習授業部の人間と先生を驚愕させるのだ。
(ふふ……目にものを見せてやる!)
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採点結果━━━
ハナコ:4点
アズサ:33点
コハル:15点
ヒフミ:68点
(ふっ)
レイナ:95点
…………まあ、よく考えてもみてほしい。
私は高二にして高三どころか、専門的な知識まで吸収している存在。
だからゲマトリアの研究にもついていけているし、こうやって基礎的なテストで圧倒的な点数を叩き出している。
当然の結果、それで自慢げに思うのは賢い思考では無いだろう。
でも嬉しいものは嬉しいのだ、がはは。
「……これが、今の私達の現実です、このままだと私達に明るい未来はありません」
まあ明るい未来も何も、このまま落第し続ければ退学だからなあ。
「これからあと一週間、皆で60点を超えるために残りの時間を有効活用していかなければならないのです!」
「そこで!まずコハルちゃんとアズサちゃんはどちらも一年生用の試験ですので、ハナコちゃんとレイナさんにお手伝いをお願いします!」
「ハナコちゃんについては、実は一年生の時の答案を見つけてしまいまして……それで後ほど今の状態になってしまった原因についてを私とレイナさんで探しましょう!」
「……」
「まだ途中ですが試験を作成中ですので、定期的に模試を行います!」
「……これが恐らく、今出来るベストの選択です……!」
(うわあ、こりゃあ嫌でも絶対に落第しないわね)
トリニティの裏切り者がどうとかの以前の話だ。
そもそも阿慈谷ヒフミと浦和ハナコ以外のメンバーはあまり勉強が出来ないタイプの人間だ、私は出来るからな。
恐らく、昨日の夜に先生が言っていた『ヒフミはヒフミに出来る事』を考えた結果なのだろう。
阿慈谷ヒフミの合格に対する熱気に、あまり勉強に熱心していなかった三人も気迫されたらしい。
「……うん、了解」
「わ、分かった……」
「ヒフミちゃん、すごいですね……昨晩だけでこんなに準備を……」
熱量に驚く三人、正直私も驚いている。
先生の協力があったとしても、ここまで勉学に熱量を割けるのは尊敬ものだ。
「それに、それだけではありません!なんとご褒美も用意しちゃいました!」
ごそごそとキャリーケースから取り出したのは━━━
「こちらです!良い成績を出せた方にはこの『モモフレンズ』グッズをプレゼントしちゃいます!」
「モモフレンズ……?」
「何それ?」
「げっ」
それは、初めて彼女と会った時の
忘れていた、侮っていた……彼女のセンスを。
「あ、あれ?最近流行りの、あの『モモフレンズ』ですが……もしかしてご存知ないのですか……?」
あたかも大人気シリーズの如く困惑しているが、多分違うだろ、絶対そんなに人気じゃないでしょこのセイウチ。
「初めて見ましたね……」
「何これ、変なの……豚?それともカバ?」
「いや、私はセイウチだと思う」
「違いますっ!ペロロ様は鳥です!見てくださいこの立派な羽!凛々しいクチバシ!」
……鳥なの!?
いや、一瞬鳥?とは思ったが、鳥にしては翼が小さすぎるし不気味だったからセイウチかと思っていたぞ!?
しかもそれクチバシだったのか、そういうデザインのセイウチかと思ったぞ。
「目が怖いし、名前もなんか卑猥……」
「……うん、やっぱり
「た、確かにそう仰る方も一部いますけど……よく見てくださいっ!」
ぐいぐい見せられても前衛的なものは前衛的だ。
「あ、思い出しました、ヒフミちゃんのスマホケースやカバンがそのキャラクターのものでしたね」
なんか妙なデザインかと思ったらこれか!!
何故、成績優秀で非常に仕事が出来るのにセンスは致命的に悪いのか……!
「私はいらない……」
「…………」
苦笑いが止まらない。
この冷ややかな空気をどうしようか、先生見てないで助けなさい。
「アズサちゃん……?」
縋るようにアズサを見つめる阿慈谷ヒフミ。
一方白洲アズサは……
「……か、かわいいっ!!」
「「「!?」」」
「可愛すぎる、なんだこれは……この丸くてフワフワした生物は……!この目、表情が読めない……何を考えているのか分からない!」
何イイイイイイイッ!?
マジか白洲アズサ、マジか!
いや、それをポジティブに考えられるって……いや、そういうセンスの問題か!?
そうなると私のセンスが悪いのだろうか?一般的にはこれは可愛いのか!?
待て、なにも『モモフレンズ』はこのセイウ……鳥だけじゃない。
他のぬいぐるみはきっと━━━
……これは……?
「レイナさんはウェーブキャットさんがお好きですか?」
なんだこの猫、伸びてるぞ。
しかもぬいぐるみだからやわらかい。
…………あれ、思ったよりも好きかも……
「好きって言うより、可愛いっていうか……」
さっきの鳥をボロクソに評価したからアレだが、この猫は可愛い。
……別に、好きではない…………はず。
「ウェーブキャットさんはいつもウェーブして踊っている猫なんですよ!」
「ウェーブして踊る……?」
「はい!!」
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ウェーブして踊る?
アレか?最近流行りのナ○トダンスか?
嫌だぞそんな踊りこの可愛い猫がやるの。
「ヒフミ、この小さいのは?」
「それはMr.ニコライさんです!いつも哲学的な事言って不思議な目で見られてしまう方ですね!」
ええい!今はこの猫に集中だ!
なんだこのフォルムは、この目は!
そんな目で、私を見つめて何になる!?
「すごい……!これを貰えるのか?まさか選んでもいいのか?」
「はい!好きなのを選んでください!」
「あらあら……」
「何なの……」
むにむにむにむに。
「……やむを得ない、全力を出すとしよう、必ずや任務を果たしあのふわふわした動物を手に入れてみせる!」
むにむにむにむに。
「はい!ファイトです!」
ええいなんだこの頬は!
何故こんなに……柔らかい!
ああああああっ!!!
「あら、レイナさんさっきからずっとその……ウェーブキャットさん?の頬をむにむにしていますが……」
「むにむにしています」
「よかったらレイナさんは今回良い成績だったので、そのウェーブキャットさんを差し上げますよ?」
「むにむに」
「えぇ……」
▼ ウェーブキャットを手に入れた。
レイナ「ウェーブキャットのパジャマを注文したわ」
ヒフミ「良いですね!ぬくぬくで暖かいですよ!」
レイナ「私、モモゾンprimeに加入してるから明日届くの、楽しみね」
ヒフミ「……ここに配達するようにしたんですか!?」
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