マダムから頼まれた仕事が二つある。
一つは先生のカードについて探る事と、もう一つは……
「…………」
「レイナ様ですね、こちらへどうぞ」
合宿所からひっそりと抜け出し、辿り着いた先はトリニティの廃れた街。
そしてそこには十二人ほどのアリウス生徒が私を出迎えていた。
「スクワッドと白洲アズサは何処だ」
アリウス生徒に聞くと、リーダーらしき人物が答える。
「スクワッドは現在、調印式襲撃の最終調整を行っています、白洲アズサはスクワッドの方に……」
「トリニティの方の作戦は事実か?」
「はい、夜中の二時半に九つの分隊でトリニティに潜入、チームVは━━━」
作戦内容を説明しようとするそいつを遮る。
「作戦内容はいい、それで?私は何をすれば良いか聞こうか」
「レイナ様には、シャーレに対する━━━」
『シャーレの先生』という言葉が聞こえた瞬間、また私は全貌を聞く前にそれを拒否した。
「断る、私の先生に対するアクションは全て友好的なもので無ければならない、そういう契約だ」
「し、しかし……」
「スクワッドは利用出来ないのか」
「アリウススクワッドは今回の作戦には参加せず、アリウス親衛隊のみで執行する予定です」
「なるほど」
やはりその通りだ、マダムは全てを見透かしていたらしい。
つまり、こいつらは終わりって事だ。
「一人」
即座に隣にいたアリウス生徒にヘッドショットを叩き込むと、銃弾をまともに食らったそいつはバタリと倒れた。
「っ!?な、何を!?」
ゾロゾロと警戒態勢に移るそいつらにも分かるよう、淡々と説明した。
「マダムから連絡があった、親衛隊の一部で反乱を起こそうという動きがあると」
リボルバーに一発弾丸を装填し━━━宣言する。
「私は反乱部隊を殲滅しに来た」
自分達の状況が分かったアリウス生徒は慌てて私に銃口を向けて臨戦態勢に移るも━━━
「毒ガス投入!」
「二人」
屋根の上にいたボンベで毒ガスを撒こうとする生徒をノールックで撃ち抜いた瞬間、私は彼女達に向かって高く飛んで距離を詰めた。
毒ガスは炸裂する事なく、毒ガスのボンベは不発のまま屋根から落ちた。
「っ!?そんな━━━」
「三人」
次に驚く生徒の隣に音も無くつま先から着地し、即座に一発頭に撃ち込む。
「くそッ!食らえッ!」
無駄だ。
私は足元に転がる手榴弾を認識した瞬間、隣で倒れた生徒を持ち上げて盾にしてやり過ごす。
「あ、あいつ……クロハを盾にしやがった!」
「やれ!」
手榴弾のピンを歯で外し、三人の生徒に投げ込み━━━
「グレネードッ!避けろ!」
炸裂した手榴弾のせいで埃や砂、爆風が舞い、周りが見えなくなっている生徒達の背後に素早く飛び上がり、銃口を一人の後頭部に向けた。
「ッ!?うし━━━」
「六人」
一人ずつ、確実に弾丸を頭に撃ち込み排除していく。
バタリバタリと倒れゆく生徒を踏みつけ、私は笑った。
心地好い。
「な、何故トラップの位置がバレている!?」
「現代のアリウス式ブービートラップは私が考えたものよー、そりゃあ見破って当然、それに弱点は教本に書いていたわよね?」
この空間にいくつものトラップがあるようだが、このトラップの形式は私が作ったもの。
コブラが自分の毒で死んでたまるものか。
「そんな……馬鹿な……!撃て!撃てェ!」
サブマシンガンで一気に掃射をする二人に私は近くにあった空き家の窓にガラスを割りながら飛び込む。
サブマシンガンは隠れた私の事を壁越しでも執拗に狙うが、運が良い事に空き家の壁は硬いらしく壁抜きが出来ないようだ。
(残りは六人)
弾をリロードしつつ、口で手榴弾のピンを抜いて投げ込む。
「八人」
そして爆発する前に逃げようとする二人の頭を空き家の壁を抜いて撃ち抜く。
「馬鹿なっ!」
「弾の無駄遣いはよくない、マダムに0点をつけられるわ」
窓から身を乗り出し、残る四人を仕留めようと一瞬だけ辺りを見渡す。
(左に二人、屋根に一人、右奥に一人)
左にいる空のドラム缶を遮蔽として利用する生徒を仕留める為、閃光弾のピンを抜いてドラム缶に放り投げる。
着弾と同時にパァン!と凄まじい炸裂音と光がドラム缶から溢れるのを確認し、二人が怯んでいる隙に距離を詰めて━━━
「十人」
頭を狙って的確に撃ち込み、無力化を確認する。
その間、屋根の生徒と右奥にいた生徒はあまりの殲滅スピードに呆気にとられていただけだった。
無様なものだ。
「嘘だ……まさか、アレが……」
「
(……ヤタガラス?)
聞き慣れない言葉を聞いて、追撃に移ろうとしたが一旦止まる。
八咫烏というと……神話かなんかに出てくるカラスだっただろうか、導きの神?うーん、しっくりこないなあ。
「あれはただの都市伝説じゃなかったのか!?」
「分かんないよ!私だって見た事ないんだも━━━」
屋根の上にいる生徒の所まで高く跳ねて……
「十一人」
円を描くように、華麗な回し蹴りをして屋根から叩き落とす。
ぼとり、と地面に落ちる生徒と共に無音で地面に着地し、残った一人に銃口を向けた。
「っ……あ……ぁ……」
一人となった生徒が震えながら私に銃口を向けている。
一方の私は無邪気に微笑んだ。
「どうする?鬼ごっこか隠れんぼでもする?多分私が勝つと思うけど」
「ひぃ……た、たすけ━━━」
そう、笑っていると残った一人のアリウス生徒は銃を落とし、両手を挙げるも最後の銃声が鳴り、辺りは静かになる。
私は服の裾を持ち上げて、黒い煤のような汚れを払い落としてため息を吐いた。
「…………んーーー、服ちょっと汚れちゃった、お風呂入ったばっかりなんだけど」
仕方ない、明日洗濯しようかな、と考えながらポケットに入っていた携帯で電話をかける。
「もしもし、マダム」
「反乱分子は殲滅した、カードについてはまた何か分かったら連絡する」
「報酬?……そう、なら新しいドレスをお願い」
「それじゃ、また」
携帯をポケットに入れて煙たい周りを見渡すと、廃墟の奥から三人の生徒が現れる。
「鎮圧の協力に感謝する」
「こいつらが私の事を白い八咫烏と呼んでいた、何か知ってる?」
「ただの都市伝説だ」
「そう」
アリウススクワッド。
マダムの配下であるアリウス分校の最高戦力。
ロイヤルブラッドとリーダー、副リーダーの三人は警戒しつつも決して敵対するような態度はとらず、淡々と事実のみを述べた。
「X-DAYが近づいている、準備は怠らないようにする事ね」
「分かっている」
「それじゃここは任せる、私はやる事があるから」
「それとスナイパーで狙われていたら感じが悪くて仕方ないの、次からそういうのはナシにしてくれるかしら」
「…………」
リーダーは呆気にとられたような表情で固まり……無線機で一言伝えた。
「……ヒヨリ、撤退しろ」
『は、はい、リーダー……』
私はスクワッドに背中を見せて、後ろで手を組みながらその場を去る。
「お前達の武運を祈るよ」
『…………800m先ですよ……?』
「奴には関係ないんだろう」
━━━━━
「…………っよいしょ……」
自室の窓をひっそりとカラカラ開けて、音も無く身を乗り出した瞬間……パチン、と電気がついた。
''おかえり''
「げっ!」
そして、そこにいたのはシャーレの先生だった。
''モモトークは見た?''
「みてなぁい……」
バツが悪そうに、人差し指と人差し指を合わせて目を逸らす。
すると、先生は怒ったり、失望せずに……
''ヒフミがすごく心配してたよ、今は寝ちゃってるけど''
悲しんでいた。
そして、補習授業部の生徒達も。
「……なんで外に出たか聞かないの?」
クエスチョンマークが浮かぶ頭の中に従って、私は疑問に思った事をそのまま言葉にする。
すると先生はニコリと笑った。
''それよりレイナが怪我無く帰ってきてくれた事に安堵してるかな''
「……私の部屋にいたのは?」
''帰ってくるって信じてたからかな''
''おかえりって伝えたかったからかな''
「…………荷物、漁ってないわよね」
''漁って欲しかった?''
「そんな訳ないでしょ!」
顔を赤くしながら怒ると、先生は私の背中を押して諭すように話した。
''さ、今日はもう寝ようか''
「…………はあ、貴方には勝てないわね」
アリウスモブ生徒に聞いてみたっ!
━━━マダムの白い八咫烏という都市伝説を知っていますか?
A『知ってる、確か……反乱とか、革命とか……アリウスから逃げようとしたりすると白い八咫烏に八つ裂きにされるって都市伝説だよ』
B『確か作戦決行日の前日とかに白い八咫烏が来て……ズタズタに引き裂かれるとかって、噂があるんだ』
C『反乱とか画策した生徒は天罰だって言われて、半年の間独房に入れられるし再教育とかもされるらしい……です……』
皆さん!!いつも感想や評価!ありがとうございます!!!!
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