ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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絆ランクアップ

 

 

 

空崎ヒナ。

 

ゲヘナ……いや、もしかしたらキヴォトス最強の生命体かもしれない。

抱えた銃で不良生徒を破壊し、薙ぎ倒し、風紀委員会の長になった者だ。

 

ハッキリと言おうか。

私でも勝てるか分からないのだ。

 

極端な事を言えばデカルコマニーとゴルゴンダが作ったヘイロー破壊爆弾を使用すれば……或いは罠に嵌めれば勝てるかもしれないが……私はそんなセコい勝ち方をしたくはない。

 

戦闘経験は誰よりも多く、勝利体験も何者よりも多く……ゲヘナの治安の八割は彼女によって維持されていると言っても過言では無い。

 

異常者、テロの敵、冷静で冷徹な人間。

 

 

 

それが空崎ヒナ。

 

 

 

彼女に弱点は無いのか?

 

いいや、あるはずだ。

 

 

……X-DAYで、その弱点が露わになれば良いが。

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

「……エデン条約が軍事同盟……まあ、興味深い見方かもしれない、ただ少なくとも私はそうは思わない、あれはれっきとした平和条約、そう考えてる」

 

 

ヒナにミカの言っていた軍事同盟という見方について聞くと、ヒナはそう述べた。

 

 

「条約によって生み出されるETO(エデン条約機構)は単身で統制で出来るようなものじゃない、こっちのリーダーのマコトもナギサと同じ権限を持つ事になる」

 

「それ以外にも権限はある程度分割されるから、

ETOが誰かの意思で暴走するとは考えにくい」

 

「それにそもそもの話として、全員が協力したとしても、そんな事をするなら初めから両学園の統合でもすれば良いはず、しかもマコトは誰かと協力するなんて出来ない質だし……」

 

 

……そのマコトという人物に会った事は無いが……どうやら一癖ある人物らしい。

 

 

''じゃあマコトは、どうしてエデン条約に賛同してるの?''

 

「多分何も考えて無いんじゃないかしら、そもそもゲヘナ側でエデン条約を推進したのは私だし」

 

''ヒナが……?''

 

「……色々面倒だし、引退するのもアリかなって」

 

 

引退。

 

彼女はこんな時に冗談を言う生徒では無い……となると、本心なのだろう。

 

ヒナがそう言った時、車からヒナを呼ぶ声が聞こえる。

 

 

「風紀委員長、まだですか?」

 

「もう少しだけ待って」

 

 

そう言い、ヒナは少し憂いた表情をする。

 

 

「…………ねえ、先生、彼女の事なのだけど」

 

''レイナの事?''

 

 

ヒナは静かに頷き、続けた。

 

 

「……彼女は何者なの?」

 

''レイナは……''

 

''…………''

 

 

恥ずかしい事に、私は未だ彼女が何者なのか分からない。

 

雷と虫が苦手で、頭が良くて、それでいてちょっと不器用で、甘いものが大好きで、頼り甲斐のある生徒……

 

でも、私は彼女の本心を掴めていない。

 

時折見せる彼女の寂しげな表情、物足りない表情、悲しげな顔。

 

それの正体を、理由が……まだ分からない。

 

 

だから私は彼女が何者であるか、キッパリとした答えが出せなかった。

 

そんな私を察し、ヒナは遠くで景色を見てるレイナの方に一瞬目線を配る。

 

 

「……彼女、何か重大な闇を抱えてる」

 

''分かるの?''

 

「不良生徒を何人も見てきたから、まあ」

 

 

大した鋭さだ、流石風紀委員長と言うべきだろうか。

ヒナは……レイナを睨む訳でもなく……ただ……

 

 

ただ、哀れんでいた。

 

 

「……多分、過去に大切な人を亡くした顔ね」

 

''……ヒナも死体を見た事無いんだよね……?''

 

「私は無いわ、ただ……」

 

 

 

 

 

 

「昔、そういう人(小鳥遊ホシノ)を見た事があるから」

 

 

 

 

 

 

その時、セナが車からまたヒナを呼んだ。

 

 

「委員長、そろそろ出ますよ」

 

「分かった、今行く」

 

「……じゃあ、先生、また」

 

 

そう言いヒナは軽く手を振って、車の方へ向かおうとした時。

 

彼女は足を止めて、こちらを向かずに聞いた。

 

 

「……ねえ、先生」

 

「補習授業部は先生が守るのよね?」

 

''うん''

 

 

即答で、私は答えた。

ヒナは一瞬だけ考え━━━

 

 

「……そう、それじゃあ、一つだけ」

 

「西条レイナに気をつけて」

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

''レイナ、終わったよ''

 

 

橋の奥の方で景色を見ていたレイナの方へ小走りで寄る。

 

 

「長かったわね、少し肌寒いわ」

 

''ごめんね、ちょっと大切な事で''

 

「見当はついてる、ETOの在り方についてでしょう?」

 

''よ、よく分かったね!?''

 

''もしかして聞こえてた!?''

 

 

冷や汗をかきながら、レイナに聞くとレイナはため息を吐く。

 

 

「聞こえてないわよ、聖園ミカとの会話をこの前聞いちゃったから内容は予測出来るわ」

 

 

呆れるレイナに私は安堵しつつ、車に乗りながら私レイナに聞いた。

 

 

''…………そうそう、レイナは今は何がしたい?''

 

 

エンジンがかかり、車が発進する。

レイナはハンドルを握りながら、きょとんした表情を見せる。

 

 

「…………なんでそんな事急に聞くの?」

 

''えっと……最近のレイナ、すごく生き生きしてるなーって思って……''

 

 

そう言うと、レイナは「そう」とだけ言う。

 

 

''レイナは私のわがままにいっぱい応じてくれた''

 

''書類仕事を手伝ってくれるし、ゲーム開発部と一緒にゲームもしてくれたし、今は補習授業部に勉強を教えてくれてる''

 

 

 

 

 

 

 

 

''だから、もしもレイナに何かやりたい事があるのなら……私はそれを全力で手伝うし応援するよ!''

 

 

 

 

 

 

 

その時、彼女の頬が濡れた。

 

 

「…………あれ……」

 

''!?''

 

''れ、レイナ!?''

 

 

車はブレーキで止まり、私はレイナの肩に触れる。

レイナは大粒の涙を流しながら困惑した顔をしていた。

 

 

「ちょっと……目に、ホコリが……ちょっと待って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ダメ、()()()は……真実を話す事を許されていない)

 

(裏切りの対価は…………決して許されない罪)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちょっと、外の空気を……吸ってきてもいいかしら」

 

''……うん、いいよ''

 

 

 

━━━━━

 

 

 

車内が揺れる中、空崎ヒナは外の景色を見ながら彼女の事を考えていた。

 

 

(西条レイナ……か)

 

(そういえば、あのリボン……情報部にいた頃、何処かで見たような……)

 

(……一応もう一度、調べておくべきかしら)

 

 

「委員長」

 

「何かあった?」

 

 

沈黙していたセナは運転をしながら、ヒナの名を呼ぶ。

 

 

「少し隈が出来ていますよ、少し休んでは?」

 

「……そうね、調印式が終わったら暫く休むわ」

 

 

 

━━━━━

 

 

 

車の外に出ると、そこは人がいない暗い港だった。

 

 

 

空に浮かぶヘイロー。

雲一つも無い、星空。

 

 

 

 

先生。

 

あたしは、どうすればいい?

泣き叫べばいい?それとも怒ればいい?

力のままに暴れて、自分が最強だって示せばいい?

 

あたしはどうして今泣いているの?

 

何が悲しいの?何がやりたいの?

 

 

 

''レイナに何かやりたい事があるのなら、全力で応援するよ''

 

 

 

そんな言葉、今更聞いても……私は何をすれば良いか分からないわ。

 

 

唯一無二の価値観を持つ大人、それが先生……

 

 

ああ……もしかしたら、貴方はゲマトリアに入るべきなのかもしれない。

 

貴方はその権利を持っている。

 

 

 

━━━━━

 

 

 

''落ち着いた?''

 

「……うん、ごめん、急に……」

 

 

レイナは数分後、運転席に座りながらそう言う。

私は震えるレイナの手を握り、優しく聞いた。

 

 

''……レイナ、昔、辛い事とかあった?''

 

「辛い事……?」

 

''よかったら、私に話して欲しいな''

 

 

そう言って私は微笑むと、レイナは暫くの沈黙の後…………

 

 

「…………やだ」

 

「絶対に話してあげないから」

 

 

レイナはけらけらと、からかうように笑う。

 

 

''そっかぁ……''

 

''でも話したくなったらいつでも言ってね''

 

 

私は頬を掻きながら、笑った。

 

 

「……先生」

 

''ん?''

 

 

 

 

 

 

 

「私、段々と貴方の事が好きになってきた」

 

「これからも、よろしくね?」

 

 

 





レイナ「…………げっ、そういえば先生の盗聴器外れてたんだ」






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