サオリめちゃくちゃ好きなんですよね、でもVanitasってる時期のサオリ書くのめちゃんこ難しいんだなあこれが
トリニティの郊外の治安はあまり良くない。
トリニティの中心の治安はキヴォトスではトップクラスに良いが、郊外ではそんな中心部から弾き出された不良が闊歩している。
正義実現委員会も日中は治安維持の為闊歩しているが、夜中となれば必然的に活動は減る。
……だから、私みたいな人間からすると活動しやすい場所って事。
ある廃墟にて……
焚き火の火を焚べていたスクワッドのリーダーを見かけた私は声をかけた。
「ヤモリか」
「これはアズサの分だ」
「塩でも差し上げようか」
「必要無い」
焚き火に二つ、ヤモリの串刺しが焼かれている。
一つはリーダー自身の、もう一つは白洲アズサのモノ。
焚き火を焚べ終わったリーダーは土の上に座り、正面にいる私に問う。
「お前はトリニティの襲撃に参加しないのか?」
「別件の活動だ、だからタイミングが悪ければお前達の邪魔をする可能性がある」
白洲アズサが関わっている以上可能性は0では無い。
……いや、それどころか彼女は恐らくスクワッドに刃を向けるだろう。
面倒な事にならなければ良いが。
「その可能性が事実となっても、私に期待するな」
淡々と……睨む事も、嘲笑う事も、見下す事すらせずに私は事実を述べる。
「留意しておこう」
マスクを被ったリーダーは焚き火を見ながらそう一言だけ言った。
一方、私は目を細めて憂鬱な顔を見せた。
「明日か」
「何か不都合でも?」
「……私には無い」
無い。
そうだ、補習授業部とはもう明日で最後。
試験が上手くいこうと、悪い方向になろうと、私には関係ない。
……なのに、何故私はこうも胸騒ぎを感じる?
罪悪感、業、それとも同情か。
「この後にアズサと最後の調整をする」
「お前━━━いえ、お前
「……元からその覚悟だ」
「そう」
少しの沈黙の後、リーダーは焚き火から目を逸らす。
「……お前から見て、アズサが私達に対する反乱を画策していると思うか?」
「そう思うならこの後に始末すれば良いでしょう」
だが、これは同情や友情で語れる物語では無い。
暗く憂鬱で不幸な物語だ。
冷たい決断がそれを進める。
「…………そうだな」
一瞬の焦り、それとも葛藤か━━━リーダーは曇った表情をする。
それを見て私は笑う。
「貴方も人間なのね」
「……どういう意味だ」
「獣は家族愛を必要としない」
それを聞いてリーダーは、一瞬私の事を恨めしそうに見つめ……話を変えた。
「……それより調印式の動向を聞いておきたいのだが」
「本当にするつもり?」
「ああ、当然だ」
テロリズムかニヒリズムか。
どちらにせよ正気の沙汰では無い計画だ。
燻っていた小さな……小さな火種がこの都市を業火に包む計画。
……マダムはそんな事を気にしてはいないだろう。
自分さえ良ければ良いという思考の持ち主だ、ゲマトリアの事すらも踏み台にし、崇高を目指すだろう。
だから私はマダムが嫌いなのだが。
「……」
焚き火の炎を見つめ……暫くの沈黙の後、私は答えた。
「……方針転換よ、私はシャーレの方の動向を見守るつもりでね、それを邪魔するなら━━━」
銃口をリーダーの眉間に向ける。
「お前達に牙を刺す」
「……」
リーダーは眉を一ミリも動かさず静かに頷く。
それを見て私は銃を下げて……ある事を思い出した。
「そういえばマイ……いや、なんでもない」
一つだけ気になる事があったが……まあ、そのうち自分で調べてみよう。
「話は以上よ」
そう言って、私は彼女に背を向けて何処かへ去る。
「……私だ、トリニティの作戦についてだが……」
「……私も参加させてもらう、マダムには私から言っておく」
━━━━━
音を立てずに玄関の扉を閉じると、雲の隙間から三日月の光が私を照らす。
しかし光はまたすぐに雲に隠れ、何かの不審物が無いかまた周りを見渡す。
……いや、こんな場所に地雷なんかの危険物を置くのは私以外にはいないか。
そのまま私は飛び出して、サオリ達の合流場所へ向かおうとした時━━━
「こんばんは」
「……っ!?」
飛び出そうとした時、突風が吹き視界が一瞬遮られると同時に前から声が聞こえる。
「レイナ!?」
そこにいたのは、月光に照らされた少女……
シャーレの生徒、西条レイナだった。
「夜遅くまで起きるのは肌荒れの元よ」
「それはレイナも同じじゃないか?」
「かもね」
少しの間、沈黙が訪れる。
何故か、私の顬に冷や汗が流れる。
どうしてか、私は彼女を恐ろしいと感じる。
「……」
何日も共に眠った仲。
勉強を教わった仲。
洗いっこをした仲。
かけがえの無い、私の友達なはずなのに。
彼女の姿がくっきりと見えるのに、
殺気は感じない、敵意も。
なんだ……この恐怖は……?まるで、マダムと会った時のようだ。
「Vanitas Vanitatum Omnia Vanitas」
「ニヒリズムの極と言うべきこの考えは古代から存在していた」
いつの間にか、彼女の手に本がある。
トリニティ経典……この学園の規範となっている存在だ。
「この考えを知る人間はそう多くはいない、何せ多くの人間からしたらつまらない教えの一つだから」
「知る人間と言えば信仰熱心なシスターか、考古学関連に詳しい人間か、それと━━━この考えを元に憎悪の炎を燃やす者達か」
「作られた憎悪の炎は簡単に消える」
「まるで酸素が無くなった蝋燭の火のように」
レイナはオイルライターでその本を燃やし、投げ捨てた。
……まるで、アリウスの事を知っているかのように口ぶりだった。
不気味で、正体が分からない。
怖くて、恐ろしくて━━━逃げ出したくなった。
目の前にいるのは、何日も一緒に眠った仲なのに、そうじゃない人間に見える。
それでも私はレイナにキッパリと述べた。
「……そうだ、だからもうやめるつもりだ」
「やめる……?」
「……」
私が静かに頷くとレイナはため息を吐く。
先程までの不気味な雰囲気はどこかに消え、彼女を照らす月光も雲に隠れた。
「はあ……明日は大切な日よ、眠くてまともに試験が受けられなかったなんてオチは許さないからね」
「……分かった」
私はそれだけ言って、サオリの元に走った。
━━━━━
……マダムには反乱者を皆始末しろ、と言われていたが……まあ、黙っていればバレないだろう。
友達を始末するのは心が痛む。
白洲アズサを見送った私は、木の裏に隠れた一人の少女の名を呼んだ。
「…………さて、浦和さん」
「!」
「あんまり人を尾けたりするものじゃないわよ」
そう言うと、彼女は少し警戒しながら姿を現す。
「レイナ
「何も知らない、でもそのうち本人から言うと思うわ」
私は彼女の目を見てハッキリとそう言うと、浦和ハナコは続けて問う。
「……レイナちゃんは今日どちらに?」
「トリニティ郊外」
「……どうして郊外の方へ……」
人は正体が分からないモノの謎を明かして安心を得るものだ。
だが、この場合……彼女は知る必要も無い事を知ろうとしてしまっているのだろう。
天才が故の苦悩か。
「……浦和さん、貴方は勘違いしている」
「勘違い……?」
「私は別に先生に対して危害を加えようとか、トリニティで陰謀を考えている訳でもない」
「私はただ、先生を見守るだけ」
「…………レイナちゃんは私達に色々な事を教えてくれました」
「勉強の事も、レイナちゃん自身の事も、色々……でも、先程のレイナちゃんは━━━」
それ以上は続けさせない。
「浦和さん」
「私は貴方の事を信頼出来る友達だと思っている」
「……貴方も、私を信じてくれないかしら」
少し、困った顔をして
すると、彼女はホッと一息ついたようで。
「……すいません、少し焦っていたみたいで……」
無理もないだろう。
明日で自分達の命運が決まるのだ、それに彼女は色々な事に敏感だ。
だから、知りたくない事まで知ってしまおうとする。
私は彼女に近づいて、小声で話した。
「……その、実は冷蔵庫の中に二つだけプリンがあるの、二人で食べない?」
「二人で夜遅くからプリン……レイナさん、もしかして━━━」
「あーあ、そんな事言うんだったら一人で食べちゃおっと」
「……すいません、私にもどうか一つ……!」
━━━━━
こんこん、とノックの音が二回鳴る。
「どうぞ」と言うとドアからは一人の生徒が困惑した顔で現れた。
「こんばんは、先生……まだ起きていらっしゃいましたか」
''ヒフミも眠れない感じ?''
「は、はい……」
彼女が頷くと同時に、今度は二人の生徒が入ってくる。
「あのねえ、浦和さん、私がプリンを口にする度に変な声出すのはやめてくれないかしら」
「あら、でもレイナさんは私の○○○を気にせず無心に━━━」
「…………」
苦い顔をしながらレイナは「助けて」と言わんばかりにこちらを見ている。
一方ハナコは起きている私達に気づいた。
「あら、ヒフミちゃんに先生、二人とも今日も夜更かしですか?」
「あはは……まあ、ちょっと……」
「それより、今見るとやはりレイナちゃんも扇情的な服装をしていらっしゃいますよね♡肩出しドレスに━━━━」
「何言ってんの!エッチなのはダメ!」
「あら、コハルちゃんも」
コハルのレーダーに引っかかったのか、コハルもパジャマ姿で私の部屋に訪れてきた。
「明日は試験なのよ、休む事も大事だって言ったのはそっちでしょ、アズサもどっか行っちゃったみたいだし……緊張する気持ちは分かるけど」
「まあ、それより……今、試験会場が厄介な事になってるわよ」
「厄介な事、ですか……?」
レイナが自分のスマートフォンを見せると、そこにはあるネット記事が映されていた。
「試験会場の第19分館、今エデン条約の必要書類保護の為に正実による戒厳体制を敷かれてる、しかも本館の方には戒厳令が出てるわ」
「か、戒厳令ですか……!?」
記事にさ正義実現委員会の正式発表と書かれている、まず間違いではないだろう。
「私も先程シスターフッドの方から聞きました、恐らくエデン条約が締結されるまで、あの建物に出入りは許されないでしょう」
「ちょ、ちょっと待って!そしたら私達の試験はどうなるの!?」
慌てたコハルが叫ぶと、レイナは神妙な顔で言った。
「つまり試験を受けたければ正義実現委員会を敵に回せ……って事になるわね」
「そのようです、どうやらナギサさんら本気で私達を退学させようとしているみたいですね」
「どうして、そこまで……」
その時、部屋の扉が開く。
扉の先には……気まずそうな顔をしたアズサがいた。
「……私のせいだ」
「……会わなかった━━━いや、
「ああ、どうやらサオ……向こう側にはもうバレていたみたいだ」
「バレていたって、どういう事ですか……?」
アズサは息を静かに吸って、吐く。
そして、皆に宣言するように……言葉にした。
「皆に、ずっと隠してた事があった……でもここまで来たら、隠しておけない」
「ティーパーティーのナギサが探してるトリニティの裏切り者は……」
「私だ」
「え?きゅ、急に……何の話……?」
困惑しているコハルを無視して、アズサは話を続けた。
「私は元々アリウス分校出身、今は身分を偽ってトリニティに潜入してる」
「あ、アリウス?潜入……?」
困惑しているヒフミに教えるように、レイナが語る。
「アリウスはかつてトリニティの自治区として存在した分派よ、第一回公会議で反対をした結果弾圧を受けて自治区からも追放された」
「その後アリウスはキヴォトスの何処かに隠れていたとなると……まあ、今が絶好のタイミングよね」
「……やっぱり、レイナは知っていたんだな」
「……」
レイナはアズサから目を逸らして、気まずそうにしていた。
「そう、私はここに来るまでずっとアリウス自治区にいた、アリウスの任務を受けてこの学園に潜入していた」
「……任務の内容は、桐藤ナギサのヘイローを破壊する事」
アズサは、丁寧に……声を少しだけ震わせて言う。
「嘘でしょ!?それってつまり……!」
「アリウスはまずティーパーティのミカを騙して私をこの学園に入れた、詳細は知らないけど……トリニティと和解したいとか、そういう嘘をついたんだろう」
(……ま、そんなところよね)
「恐らく全てが終わった後、その罪をミカさんに着せる……そういう流れを想定していたのでしょうか」
「待って、急に何の話?嘘だとは思わないけど、今の私達とは関係ないじゃん……それが私達とどういう関係があるの……?アズサは何で急にそんな話をしてるの……?」
「……」
少し、泣きそうになりながらコハルが問うと、アズサは少しの沈黙の後、話した。
「……明日の朝、アリウス分校の生徒達がナギサを狙ってトリニティに潜入する」
「私は、ナギサを守らなきゃいけない」
震えていた声から一転、アズサは決意を固めた顔でそう言う。
「待って、それならどうしてアズサはティーパーティーを守るの!?おかしくない!?」
「……白洲さん、貴方は最初からそれ目的でここに来た、それも自分の意思で」
「そうだ、桐藤ナギサがいなければエデン条約は取り消しになる、そうなるとこの先キヴォトスで更に混乱が深まるだろう」
アズサは悲しそうな顔をして、目を逸らして言った。
「……その時またアリウスのような学園が生まれないとは思えない」
「それに、いつか言った通りだ……私は皆の信頼も、心も裏切ってしまう事になると」
「だから……桐藤ナギサが探しているトリニティの裏切り者である私のせいで皆はこんな危機に陥っている」
「……本当にごめん、今のこの状況は私がもたらした事だからどうか私の事を恨んで欲しい」
アズサが深く、頭を下げて謝るのを見て……私はいてもたってもいられなくなった
''……それは違うよ''
''元々の原因は信じられなかった事の方''
''ナギサがもっと、皆を信じていたら''
''ミカがもっと、ナギサの事を信じていたら''
''もっとお互いが深く信じられたいたらこんな事にはならなかった''
「……補習授業部は舞台のように注目を浴びる存在として生まれた、本来ならアズサちゃんのようなスパイはこんな所に長くいてはいけないはずです」
「それに、誰にも気づかれないように消えるタイミングは今までいくらかあったはず……でも、アズサちゃんはそうしなかった……その理由を私は知っています」
「……補習授業部での時間があまりにも楽しかったから、そうではありませんか?」
「…………!」
「皆で一緒に勉強したり、ご飯を食べたり、お掃除したり……何をしても楽しい事ばかりだったから━━━だからこの楽しい時間を壊したくなかった」
「目標に向かって努力すること、補習授業部の皆で知らなかった事を学ぶのが楽しかったから」
「違いますか?アズサちゃん」
「……そうかもしれない……皆で何かをするという事……その楽しい時間を、私は手放せなかった」
「まだまだ知りたい事がたくさんある、海とかお祭りとか遊園地とか、行きたいところもたくさんある」
「……何だか知ったような口を聞いてしまいましたが……分かるんです、その気持ち」
続いて、ハナコも自分の気持ちを語り始めた。
「……同じように思った人がいたんです、要領が良くて周りからおだてられてしまうようなタイプで……その人にとって、トリニティは嘘と偽りで固められた、欺瞞と無意味に満ちた空間でした……だから学校を辞めようとしていたんです」
「アズサちゃんは今回の事が終わったらこの学園での生活は終わってしまう……それを知っていたはずなのにアズサちゃんは補習授業部でいつも一生懸命だった」
「その人は試験をわざと台無しにして学園から逃げようとしていたのに、アズサちゃんは短い学園生活に全力でした」
「そこに何の意味があるのでしょう?アズサちゃんが言っていたように全ては虚しいもののはずなのに」
「……答えは、アズサちゃんがその後ろに付け加えていた言葉でした」
……
「虚しくても、最善を尽くさない理由にはならない」
……
「そして、その人もようやく気づいたんです……学園生活の楽しさに」
「下着姿でプール掃除をしたり、水着で夜の散歩をしたり、裸で色々な事を打ち明けあったり、よくある事を全力でする事がこんなにも楽しかったんだと」
「うん……いや裸では無かったけど」
「勝手に記憶を改変しないで欲しいのだけれど」
冷静にハナコが言う存在しない記憶に突っ込む二人。
「…………アズサちゃんの言う通りです、虚しくても最後まで抵抗をやめてはいけませんね」
「アズサちゃん……もっと学びたいのでしょう?もっと知りたいんでしょう?皆で色んな事をやってみたいって、あの時に話したじゃないですか、海に遊びに行くとか、ドリンクバーで粘って夜更かしとか」
「それを、諦めてしまうんですか?……いいえ、何も諦める必要はありません」
「桐藤ナギサさん━━━私達で、彼女をアリウスの襲撃から守りましょう」
ハナコ「こんな時間にプリンとは……罪深いですね♡」
レイナ「何よ、私は正実の副委員長と違って太らないからいいのよ」パク
ハナコ「あんっ♡」
レイナ「…………」パク
ハナコ「いやん♡」
レイナ「…………………………」
後半主人公空気でごめんなさい……
宜しかったら感想評価お願いします〜〜〜
めちゃくちゃモチベーションアップに繋がります!