ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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オオカミとカラス

 

 

 

「でも、そんな事は物理的に不可能じゃないか?試験は九時から、アリウスの作戦開始時刻も同じ時間だ」

 

「ほ、他の方達から助けを求めるとか……?」

 

「それもそうですが、私達がしっかりと試験に合格する為にはそれだけでは足りません……まずは私達の方から動きましょう」

 

 

人差し指を立てて、にや〜、とハナコは笑う。

 

 

「こらまで様々な嘘や策略に弄ばれて来ましたが……今度は私達の方から仕掛ける番です」

 

「何せここには正義実現委員会のメンバー、ゲリラ戦の達人、ティーパーティの偏愛を受ける自称平凡な人とトリニティのほぼ全てに精通した人がいます」

 

「へ、偏愛!?」

 

「……」

 

「?」

 

「その上ちょっとしたマスターキーのようなシャーレの先生とキヴォトスで一番の諜報能力を持った生徒までいるんですよ?」

 

''ま、まあ……''

 

「否定はしないけど……」

 

 

それにしても語弊がある気がするが……

 

 

「この組み合わせであればきっと……」

 

 

 

 

「トリニティくらい、半日で転覆させられますよ♡」

 

 

 

 

「……はい!?」

 

「どういう事!?な、何をする気!?」

 

「何をするも何も、試験を受けて合格するだけです♡作戦内容は一旦私にお任せ下さい♡」

 

「……なんかやらしー……」

 

 

どよめく補修授業部を鼓舞するように、ハナコは叫ぶ。

 

 

「さあ、今こそ力を合わせる時です、行きましょう!」

 

 

 

━━━━━

 

 

 

私は少し補修授業部の事を見くびっていたかもしれない。

 

白洲アズサは自身の裏切りを自ら告げて懺悔し、浦和ハナコは「トリニティを転覆する作戦♡」とやらを考案し、下江コハルも阿慈谷ヒフミもアズサを、トリニティを守る為に受け入れた。

 

 

何故、白洲アズサがアリウスの教え……いや、マダムの洗脳教育を押し退けて、桐藤ナギサを守ろうとしたのかは分からないが━━━

 

 

「……?どうかしたか、レイナ?」

 

 

その瞳は会った時とは違い、真っ直ぐ輝いていた。

 

 

 

時刻は午前四時。

私達は桐藤ナギサを助けるべく、合宿所からトリニティの本校まで歩いていた。

 

夜明け前の為、人気は無く、私達の声だけが誰もいない街を響かせていた。

 

 

「そういえば、レイナちゃんはどうしてアズサちゃんの素性を知っていたんですか?」

 

「えっ」

 

「ああ、そういえば私も気になっていた」

 

 

じー、と私に疑いの目を向ける皆に私は汗を垂らしながら言い訳を考えた。

 

そりゃそうだ。

『これから襲う連中のリーダーと面識がある』だなんて言える訳が無いし……

 

 

「……最初、私はレイナちゃんはアズサちゃんや先生を監視するアリウスのスパイかと思っていたのですが……」

 

「いや、違うと思う、アリウスの生徒はあまり多くないから、もしも私を監視するスパイとかだったらすぐ分かる」

 

「当の本人の目前でよくそんな議論が出来るわね……」

 

 

呆れというか、緊張の無さというか……

私はため息を吐いて、語り始めた。

 

 

「……昔、アリウスに知り合いがいたのよ」

 

「気弱な子と、気丈な子の知り合いがね」

 

「だから知っていたの、白洲さんが最初に『Vanitas Vanitatum』の話をした時にピンときた」

 

「あとは━━━いや、アレは確か秘密なんだったっけ」

 

''……''

 

 

先生は「それは言わないで欲しいな」と言うかの如く私に目を向ける……

全く、こうなった元凶は聖園ミカだと言うのに、とんだお人好しだ。

 

 

「……まあ、つまり……古い知り合いのお陰で白洲さんの事情が分かった、誰よりも早くね」

 

 

そんな私でも、唯一分からなかった事がある。

 

マダムの洗脳とも言える教育は苛烈だ。

でも、白洲アズサは諦めずに……今までいたアリウスに刃を向けようとしている。

私には、その動機が理解出来なかった。

 

 

「……教えて、白洲さん」

 

「貴方はどうして希望を捨てなかったの?」

 

「ここの生活が楽しくて、捨てたくなかったのは理解出来るわ、でもそれだけじゃない……あなたには決定打があったはず」

 

 

私は謎の焦りを感じた。

何故彼女は希望を捨てなかった?

何故彼女は諦めなかった?

 

どうして?

 

 

「……実は私も昔、アリウス外の友達がいたんだ」

 

「白髪の子で、優しくて、リーダーにバレて怒られたけど……花の冠をくれた」

 

「『諦めないで』が口癖だった、でも急に会えなくなって……」

 

「……だから私は諦めたく無かった、諦めたらその子に会えなくなるような気がしたんだ」

 

 

不可解だ。

アリウス外の人間がアリウスに辿り着くのはほぼ不可能と言える。

どうやってあのカタコンベの迷宮を抜けた?

マダムやアリウス生徒の監視を掻い潜って……どうやって……?

 

 

「……」

 

 

じーーー、と私に目を向ける先生達。

 

冗談じゃない!

私は白洲アズサと面識は無いしそんな記憶は微塵も無い!

 

 

「…………何、私じゃないわよ」

 

「だって、昔アリウスの生徒と面識があって白髪って……」

 

「それにレイナちゃんは優しいですし」

 

 

違うったら違うって!

 

 

「……確かにレイナに似ていたけど違うと思う」

 

「はあ……第一私は花の冠の作り方なんて分からないし、そんな口癖は無いわよ……」

 

「教えようか?」

 

「…………これが終わったら、教えてもらおうかしら」

 

 

そして、残った謎を解き明かした時……気づけば、目の前には大きな校門がそびえ立っている。

 

 

「つ、着いてしまいましたね……」

 

「作戦通りに進めれば良いんだな」

 

「お願いしますね、皆さん♡」

 

 

 

━━━━━

 

 

 

アリウスと私の関係性について語っておくべきだろうか。

 

私がゲマトリアに入る前、私はマダムにアリウスの入校を打診された。

……が、黒服やマエストロ達が断固拒否した為、私はゲマトリアのメンバーとして加入する事になった。

 

しかし、全くの関連性が無い訳ではない。

 

最近だと反乱やアリウスからの脱出を試みる連中を始末したり、ポルタパシスの調査をしたりだとか……

 

幼い頃に、友人を作った事だとか。

 

 

今のところその友人達は反乱や脱出を試みてはいないはずだ。

 

 

そう信じている。

 

 

 

「こちらレイナ、アリウスの増援がトリニティ本校へ侵入開始」

 

 

木の上から望遠鏡でアリウスが校門から侵入した事を確認。

夜明けは近い、試験までにアリウスを全滅させなければ。

 

しゅたっ、と出来るだけ音を出さずに木から飛び降りると無線機から声が聞こえた。

 

 

『こちらヒフミです!こちらはナギ……た、対象の保護に成功しました!』

 

「了解、白洲さんは予定通りに動けてる?」

 

『こちらアズサ、撹乱に成功、かなりの時間を稼げるはずだ。』

 

 

白洲アズサも問題無く動けているそうだ。

と、なればこちらも……

 

 

「ナイスよ、こっちもそろそろ━━━」

 

 

 

「作戦の状況はどうなっている」

 

「それが……」

 

 

 

その時、一人……見覚えのある生徒が白洲アズサのいる校舎に向かって歩いているのが見えた。

 

 

黒いマスクと帽子、白いコート。

鋭い狼の様な目つき。

 

なるほど、厄介な奴だ。

 

 

「……足止めを開始する」

 

 

銃を握って、私は奴が向かう所へ走った。

 

 

 

 

 

 

''レイナ、無理はしないでね''

 

 

''……レイナ?''

 

 

 

━━━━━

 

 

トリニティ本校、中庭庭園にて。

 

 

「スパイが裏切った?」

 

「はい、試験を受ける為だとか、意味の分からない事を言っており……」

 

「……」

 

 

何故だ。

アズサ、どうしてお前は其方側に立った。

 

全ては虚しいのでは無かったのか、無意味では無かったのか。

 

アズサの身体は覚えているはずだ。

そしてすぐに思い出す……真実を。

Vanitas Vanitatum Et Omnia Vanitas.

 

虚しい、全ては虚しく無意味。

こうしてここに来ている事も無意味なはずなのに、私は来てしまった。

 

……マダムに叱られ無いといいのだが。

 

 

「退却しますか?」

 

 

脳裏に考えが巡っているのを部下の声が現実に戻した。

 

何を躊躇っている、私は。

 

 

こうなる事を覚悟して、ここに来たのではないのか。

 

あの八咫烏の言葉を聞いて、目が覚めた。

アズサは必ず裏切る。

 

だからこうしてここに来た。

 

 

全ては、無意味なのだから……

 

 

「……更なる増援部隊を派遣させろ、こうなってはトリニティとの全面抗争も視野に入れるべきだろう」

 

「了解です」

 

「私はスパイを始末しに行く、場合によっては……」

 

 

 

 

 

 

「ヘイローを破壊するつもりでしょう?」

 

 

 

 

 

 

鋭く、恐ろしく……不気味な声が、私の背後から聞こえる。

 

 

「ッ!」

 

 

振り向き、声の正体に銃口を向けると……そこには、例の()()()がいた。

 

 

「昨日ぶりね、少し焦っているんじゃないかしら」

 

「誰だ!おま━━━ぐあっ!」

 

 

部下が即座に頭を撃ち抜かれて気絶する。

 

私は奴を睨み、トリガーに指をかけた。

 

 

「……何のつもりだ」

 

「運命の巡り合わせよ、お前のスパイだった者は貴方と敵対する選択肢を選んだ」

 

「それに私もついていく、それだけ」

 

 

簡単に言う……!

奴とアリウスは決して良き協力者では無かったが()()()()()()で敵に回るほど、関係は悪くなかったはずだ。

 

 

「マダムにどう説明するつもりだ?」

 

「マダムはどうせ今回の事に期待なんかしていない」

 

「何故そう言い切れる!」

 

「私はマダムと同じ立場の人間よ、お前とは与えられる情報量が違うの」

 

「それにお前も知っているはず、この計画自体にそこまでの意味は無い事を」

 

「……」

 

「トリニティを転覆させるなら調印式の計画は何の為にあるの?……答えはそもそもこの計画は失敗する事が前提だから……違う?」

 

「……知った口を……!」

 

「知っているもの、お前と違ってね」

 

 

嘲笑うように見つめるその態度は……マダムにそっくりだ。

 

 

「…………つまり、お前は私とやりあう気でいる、と捉えて良いんだな?」

 

「ええ、至極残念」

 

 

微塵も残念そうには見えない。

 

 

「何故其方側に着く?何の意味がある?」

 

「無意味よ、何もかも」

 

「なんだと……?」

 

「そう……無意味だけれど━━━今回ばかりは彼に手を貸してあげてもいいって思っただけ」

 

「彼の秘密を探れるかもしれないから……ね」

 

 

けらけらと笑う奴に、私は怒りを感じた。

 

 

そんな理由で、私の邪魔をするというのか?

 

そんな事すら無意味で虚しいというのに━━━━!

 

 

 

 

 

 

 

トリガーを引く。

 

 

 

 

 

「八咫烏がッ!!」

 

「狼は嫌いよ!群れるから……ッ!」

 

 

 




Tips! レイナは古い知り合いにアリウスの知り合いはいないよ!スクワッドはビジネスパートナー?

Tips! 実は「お友達ごっこ」のくだりは入れる予定だったけど特に変わり映えしないから省きました……

Tips! レイナの好きな花はシオン









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