実は今日私の誕生日だったり
爆発音が響く。
爆煙を突っ切って、スクワッドのリーダーへ距離を詰め、頭に目掛けてデザートイーグルを鈍器のように振るう。
「っ!」
しかし、リーダーは即座に鈍器を持っている腕を掴み、そのまま私に対して華麗な回し蹴りを狙うが━━━
「甘い」
掴まれている腕を力づくで動かして、足を受け流す。
私はその隙にがら空きになったリーダーの頭へ頭突きをした。
「が……っ!」
「……ククッ……!」
戦いに勝つのにプライドは必要無い。
必要なのは勝つ為の手段の知識と力。
それだけ。
それだけが、勝つ為に必要なモノ!
「……貴様……ッ!」
狼狽えるように距離を離したリーダーは、アサルトライフルを私に向けて撃ち始めた。
「ちっ」
すぐに近くにあったレンガの遮蔽物に飛び込み、弾丸を避けようとした時……
ドカン!と炎と熱、破片が私の腹に突き刺さる。
地雷の破片が私の額を切り裂き、血が流れる。
(地雷か!)
私はたじろかず、フラフラと動かず……ただ、その場で痛みに耐えた。
(ここで逃げ回ったら終わり……!)
ここで動き回れば奴の思う壷、逃げようとした先に地雷が必ずある……!
私は息を整え、爆発で崩れかけているレンガから一つの爆弾を奴に投げ込んだ。
「!」
爆弾から煙が放たれ、奴の視界が塞がれているはずだ。
しかも、この煙はただの煙では無い。
(スモーク?……いや、違う、この臭いは……!)
「燃えろ」
一発の弾丸を煙に向けて打ち込んだ時……煙は瞬時に炎へと変わり、大爆発が起こった。
(……煙に可燃性ガスを含ませたグレネードよ)
花や草、木に引火し燃え盛る炎、もくもくと上がる黒い煙。
少なくとも、大ダメージを食らったのは間違いないはずだ。
(……何処だ?)
しかし、付近に奴はいない。
まさか焼死体になっている訳では無いだろう、奴がそこまで弱い訳がない。
(……いや━━━)
その時、背後から草木を掻き分ける音が聞こえ……同時に私の首が強く絞められる。
「ぐっ……お……まえ……!」
「はぁ……はぁ……コートや服が多少燃えたが……致命傷は避けた」
どうやら爆発寸前に避けたようで、奴の手や身体は煤だらけになっていた。
(まずい……このままだと……)
銃の弾数はゼロ、こんな状態ではリロードも出来やしない!
(こうなったら……ッ!)
グレネードのピンを、引き抜き……私は掠れた声を出して笑った。
「今度は逃げられない」
ドカアアアアアアアアアンッ!!!
━━━━━
「……か、勝った……」
「全員戦闘不能」
「先生の指揮があって本当に助かりました……」
体育館を占拠していたアリウスを殲滅し、大きく安堵する。
レイナからの連絡は特に無いが……恐らく彼女の事だから何とか上手くやっているはずだろう。
「では難所をひとつ乗り越えた所で、次のフェーズに移りましょうか……この後増援部隊がここに到着するでしょう、ですが私達は時間を稼ぐだけで大丈夫です」
「恐らくレイナさんがかなり足止めをしてくれているはずですし、正義実現委員会もそろそろ動く頃です……!」
その時、巨大な爆発音が響く。
それと同時にアリウスの部隊がぞろぞろと体育館に侵入してくる。
「増援部隊がこんなに早く……!?」
「……数が多い、大隊単位だ、恐らくアリウスの半数近くが……!」
「れ、レイナさんが足止めをしてるはずじゃないの!?」
「……こんなに数が多いと、もしかしたら、レイナちゃんは……」
「あれ?レイナちゃんもいたんだ」
その時、聞き覚えのある声が体育館に響く。
かつ、かつ、とヒールの音が響き……その声の正体は私達に姿を見せた。
「まあレイナちゃんでも勝てないよね、だってこの人達はこれからトリニティの公的武力集団になる人達なんだから」
''ミカ……?''
「やっ、久しぶり先生、また会えて嬉しいな」
ピンク色の髪、ティーパーティーの制服、渦巻くヘイロー。
その生徒は、ティーパーティーの聖園ミカだった。
「因みに正義実現委員会、それ以外に邪魔になりそうなものは動かないよ、私が改めて待機命令を出したから……そう、ティーパーティーの命令が届く限り全てのところに色んな理由をつけて足止めしておいたから」
「ナギちゃんを襲う時に邪魔されたら困っちゃうもんね」
「まあ簡単に言うと……黒幕登場☆ってところかな?」
━━━━━
花の冠の作り方を、私は本当に知らない。
幼少期に本で読んだ時はお姫様みたいで可愛くて、欲しかったけどその時の私の周りに花は無かった。
夢物語だった。
だから私は花冠が作れない。
未だに作れない。
作る事が出来ない。
ああ、でも花は好きだ、色鮮やかで良い香りがして美しい。
ねえ、アズサ。
貴方は誰に花の冠を教えてもらったの?
私も、教えて欲しかった
「ッ!」
目が覚める。
体内時計で換算するにアレからざっと十五分だろうか。
「いちちっ……」
身無理くり立ち上がると体中に痛みが走る。
いくら私とはいえ、あの距離で
右腕、捻挫。
左腕、脱臼。
あばら骨が数本イカれた、左足が損傷……多分折れてる。
耳、目、鼻……問題なし。
出血部分は多い……が、特に問題は無い。
左足を引き摺りながら、先生達との合流場所である体育館に向かおうした時━━━
(……待て、奴は何処だ)
周りを見渡すも奴の姿は何処にもない。
気配も感じない、何処にいるか分からない。
(逃げた……訳ではなさそう)
逃げるはずが無い。
恐らくアリウスの部隊に回収されたか、先に起き私を無視して白洲アズサを殺しに行ったか。
だが少なくともかなりの大怪我をしているはずだ。
(いちち……誰かが来る気配も無いし、あっちは今頃ろくでもない事になってるわね)
再び、私は足を引き摺った。
━━━━━
ミカは嬉しそうにこの計画の一部顛末を語った。
トリニティでクーデターを起こし、エデン条約を阻止する。
その為の『力』として、アリウスと密かに協力した……ナギサをホストから叩き落とす為に。
「……トリニティの穏健派を追いやって、空席をアリウスで埋める」
「それで新たな武力集団を得て再編されたトリニティがゲヘナに全面戦争を仕掛ける!そう、これが私の計画!」
ミカのそのセリフを聞いた時、私はゲヘナの子達の笑顔をが走馬灯のように流れた。
そして、その笑顔を崩さんとせんミカに……睨んでしまった。
''……っ!''
「わっ、びっくりした……」
「先生そんな怖い目が出来るんだね……うん、先生がすごく怒ってる事はよく分かった、ごめんね、説明も急いじゃったし雑だったよね?」
「もっと丁寧にお話したいけど、まずは色々と邪魔なのを片付けてからにしよっか」
アリウスの生徒達とミカが銃を構える。
「……気をつけて、先生……こうして見ただけで分かる、かなり強い」
アズサのその言葉は私にもよく分かる。
強い……それも、ヒナやホシノと比べてと謙遜無いくらいには。
「はい、じゃあ補習授業部を片付けて━━━」
ドガン!!!
ミカがそう話していた時、体育館のドアが吹き飛ぶ。
「……もー、何?今良いところだったのに」
そしてドアを吹き飛ばしたのは……大怪我をした黒いマスクを着けたアリウス生徒だった。
そして、それを見てアズサは酷く動揺した。
「……!!」
「アズサ……!」
マスクを被った生徒はアズサを酷く睨みつけた。
「……サオリ?来てたんだ、それよりなんでそんなに血まみれなの?」
ミカの言葉を無視して、その生徒はアリウス生の人混みを掻き分けてアズサに対し銃口を向けた。
「…………サオリ」
「……全ては虚しい、それが世界の真実だと貴様も知っていただろう?」
「……」
「何故、今更陽の当たる場所に進んだ……!」
「……昔、私達は花の冠をあの人に教えてもらった」
「その人の口癖を私は今も、覚えているから」
「ああ……『諦めないで』……か、しかし奴は私達の前から消えた、これが答えじゃないのか?」
「違う、私は……私は━━━」
「あの人が言うみたいに、諦めないで生きたいから……!」
「だから……私はサオリ達を裏切った」
「……ごめん」
そんな言葉を聞いて、その生徒は一瞬だけ顔が曇った……が、すぐにまたアズサを睨みつける。
「そうか、やはり貴様は━━━「はいはい!ストップストップ!」
「感動の再会もいいけどさ、そろそろ始めてもいいかな?」
マスクの生徒の言葉を遮るように、ミカは喚く。
それと同時に、一人のアリウスの生徒がマスクの生徒に包帯を渡した。
「リーダー、傷の手当を……」
しかし、マスクの生徒は包帯を受け取らずに……アズサへ再び憎悪を向けた。
「……多少の足止めを食らったが、私は健在だ」
「全部隊、前進」
「私も戦う」
( ''……あの傷、間違いない……レイナと戦ったんだ……'' )
Q.どうしてサオリがトリニティに来てるの?
A.バタフライエフェクト、つまり『あの人』の影響です。
あとマダムも絡んでるとか。
Q.あの人って?
A.そのうち会える……会えるかなあ?
Q.サオリはどんくらいの傷?
A.右腕左腕捻挫、左足骨折、右足脱臼、あばら骨数本折れてます。
あとメンタル面でもデバフがあったり。
良かったら感想や高評価くれると嬉しいなあ……って