ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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貴方が味方なら私も味方

 

 

 

「マイアっ」

 

 

見覚えのある後ろ姿を見つけて、あたしは後ろから抱きついた。

 

 

「れ、レイナちゃん!?どうかしたんですか?」

 

 

驚いたマイアの手からぽとぽとっ、と金色の小さな筒が零れ落ちた。

 

 

「何してるの?」

 

「回収されてない薬莢の回収とか、薬草を見つけたりしてるんです」

 

 

落ちた薬莢を二人で拾い上げながらそう語るマイアに、あたしは自信満々に言う。

 

 

「へー……それじゃ、あたしも手伝ったげる」

 

「大丈夫ですよ!私、戦いが苦手でこういう事しか出来ませんし……」

 

「マイアは強いというより優しいと思うけどなあ、あ、薬草めっけ」

 

 

薬草をぶち、と引っこ抜くとマイアは辛そうな表情をして苦笑いをした。

 

 

「……アリウスじゃ、優しさなんて無価値ですよ」

 

「でもあたしはマイアのそういう所好きだよ」

 

「レイナちゃん……っ!」

 

「あ、地雷」

 

「ぎゃっ」

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

目を覚ますと、そこは暗い部屋だった。

 

周りを見渡せば質素な作りの部屋と薬品の香りがする。

窓の外を見れば十三夜月が私を照らしており、窓なら少しだけ涼しい風が流れていた。

風はカーテンを揺らし、ふわりふわりと一反木綿のようにたなびいている

 

 

(……ここは……)

 

 

そうだ、私はあの後聖園ミカのヘイローを壊そうとして……先生の声が聞こえて、意識が消えた。

 

その後、亡霊とお茶会をして……

 

 

(……ただの夢……よね)

 

 

夢にしては具体的だった。

だが会話は抽象的だった。

 

そう、その後は確かスバルとマイアの夢を見た。

 

懐かしい記憶だ、今も彼女達は元気だろうか。

今の私を見たら驚くだろうか、受け入れてくれるだろうか。

それとも……

 

 

時計を見ると時刻は夜の八時。

 

身体を見ると包帯だらけ。

 

 

(邪魔くさいな……)

 

 

ぶち、ぶち、と腕や身体に巻かれた包帯を毟り取ってベッドから降りた時……

 

 

「うげぇっ!?」

 

 

左足を着いた途端、激痛が走った。

 

『これ以上負担をかけると俺はもう知らんぞッ!』と言うかの如くジンジンと痛みを走らせている!

 

 

「っ……いたたっ……!」

 

 

思わず床へ倒れ、唸る。

 

 

「くそっ……聖園ミカめ……」

 

 

舐めていた。

聖園ミカも、錠前サオリの事も。

 

たかがティーパーティーのお嬢様。

たかがマダムの忠犬。

 

……世界は私が思っている以上に広い。

奴らの覚悟を舐め腐っていた。

 

この傷はそのツケ。

 

 

覚えておこう、奴らに次は無い。

 

 

次は決して舐めたりはしない、本気で叩き潰す。

 

 

「ちっ、ドレスもボロボロだ」

 

 

身体中に巻かれた包帯をビリビリと破り捨てて、ハンガーにかけられていたボロボロのドレスを着こなす。

 

包帯と癒着した皮が剥がれるが、痛みは慣れた。

 

 

「…………」

 

 

何も聞こえない、響かない、無音。

 

 

いつの間にか、この静けさが違和感になった。

 

補習授業部と合宿をしていた頃はどうにも騒がしかった、最初は煩くて落ち着けなくて、嫌だったけど……

 

 

(……楽しかったな)

 

 

少なくとも、今はそれが何故か恋しくなっている。

思えば私から先生を求め始めたのもあの合宿の最中だった。

 

不思議だ、夏の魅力というものは。

 

 

「……リボン」

 

 

机の上に置かれた埃一つもないリボンを髪に結ぶ。

 

 

 

ふと、周りを見渡す。

 

何も無い空間。

無音で、何も響かない、聞こえない、あるのは月明かりだけ。

 

 

 

(……いやだ……)

 

 

 

その時、私になんとも言えない……空虚感、無力感、孤独感を襲った。

 

一人でいるのが怖い、恐ろしい、不愉快だ。

誰かといたい、話したい、側にいてほしい。

落ち着かない、そわそわする。

 

 

こういう時、どうすればいいんだっけ。

 

 

 

 

 

 

 

(先生に、会いに行こう)

 

 

 

━━━━━

 

 

 

トリニティ拘置所……

 

 

 

 

牢獄の鉄格子ががらら、と重い音を立てて閉じられた。

 

 

「もーっ!一応は怪我人だよー!?」

 

「……厳重な態勢にしろと言われていますので」

 

 

聖園ミカ、あばら骨二本骨折、腕関節に軽度の骨折……

 

……のみ!!

 

 

 

ごろり、と少しだけ硬いベッドに横たわってミカは月明かりを見た。

 

 

(……にしても、あの子達試験ちゃんと受けられたのかなー)

 

(ナギちゃん凄く悩んでたもんね……まあ、私のせいでもあるんだけど)

 

(レイナちゃんは大丈夫かな、すごい怪我だったけど……それも私のせいだけど)

 

 

ぐるぐると考えを巡らせていると、ミカは大きなため息を吐いた。

 

 

(……ほんと、なんで私あの子のリボンに固執してたんだろ)

 

(あの子のアイデンティティを奪いたかったのかな、あの子が羨ましかったのかな)

 

(……そうだよね、先生のすぐ傍にいたのが羨ましかったのかも)

 

 

 

━━━━━

 

 

 

音の立たない引戸を引いて、暗い廊下を見回す。

 

 

(……誰もいないのか)

 

 

現在の時刻は八時半、クーデターの件もあるから人がいないのも無理はないだろう。

 

 

(薬臭くて落ち着かない、気分が悪くなる)

 

 

早いところこんな所から抜け出して、先生に会って、例の件についてレポートを纏めなければならない。

 

それに合宿中に全く書けなかった日記も書かなければ……

 

 

「……暗い」

 

 

かつ、かつ、と靴の音だけが響く。

 

やがて電灯の光が届かない場所まで歩いた頃━━━背後から声が聞こえた。

 

 

「レイナ」

 

 

暗闇の中、木の軋めく音。

振り向くと、巨匠(マエストロ)がそこにいた。

 

 

「随分と手酷くやられたようだな」

 

「アリウスの覚悟を舐めていたツケよ」

 

 

私の傷を見て、マエストロが唸る。

 

 

其方(そなた)なら数日で完治するだろう、そういう風に設計したはずだ」

 

「ええ、痛みは既に慣れたわ……それで、何の用かしら?」

 

「例の日に()()は完成する、念の為伝えておこうと思いここに来た」

 

「あの教義が?……ああ、成程!それでスクワッドを!」

 

 

思わず感嘆の声を出す私、対照的にマエストロは至極残念そうにしていた。

 

 

「あの生徒達が私の芸術を理解出来そうに無いのが残念だが……まあ、良いだろう」

 

 

どうせ、私達以外に理解できる者はいない。

ニヒリズムを信奉する奴らに芸術は過ぎた文明だ。

 

嘲笑するように、私が静かに笑うと巨匠は軋めく。

 

 

Communio Sanctorum(聖徒の交わり)は其方がいなければ、いくつかは未完成だったはずだ」

 

「神秘と恐怖(テラー)の二面性の解釈、概念解釈……つまりこの地(キヴォトス)における存在証明とも言えるモノ」

 

 

 

 

「アンブロジウス、ヒエロニムス、グレゴリオ……そして━━━」

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

 

 

アタナシウス。

マエストロの芸術の一つの形とも言えるモノ。

 

 

 

 

「……時期が来た時、其方にも見せよう」

 

「私の芸術の真意、そして喝采を」

 

 

巨匠はからり、と音を鳴らして消えた。

 

私は暗闇に目を向けて、歩む。

 

 

(……早くシャーレに戻ろう)

 

 

 

━━━━━

 

 

 

''…………''

 

『先生、そろそろ休息を取った方が……』

 

''そうだね、少し休もうかな''

 

 

レイナを病院で送った後、私はトリニティで事情説明や騒乱の鎮圧をしていた。

 

特にパテル分派の騒乱は激しく、ミカを信奉する子達はシスターフッドの陰謀だと叫び、武力でミカを助け出させようとしているが……

 

 

( ''…………'' )

 

 

銃声は絶え間なく続く。

 

一歩、また一歩と前へ踏みしめて、私はため息を吐いた。

 

 

やがて銃声は遠くなり、ただひたすら静かで、暗い路地を歩いていた。

 

人はおらず、ただただ電柱の光と月光を頼りに私は歩む。

 

 

『先生、この先30メートル先に生徒さんが一人います、念の為気をつけてください……!』

 

''分かった、ありがとう、アロナ''

 

 

こんな時間に生徒が一人いるなんて、珍しい……というか少し心配だ。

 

私は慎重に、警戒しつつ歩いていると……

 

 

ぶん、と電灯から音が聞こえた時、壊れていた電灯に光が灯る。

 

 

「……先生……!?」

 

''……え?''

 

 

電灯の光は、見知った少女を照らした。

 

 

''レイナ……?''

 

 

後ろを振り向いた彼女は、ひどく驚いた表情をしていた。

歓喜と驚愕をごちゃ混ぜにしたような声をあげて、レイナは少しよろめく。

 

 

「…………どうして、ここに……」

 

 

よろめくレイナを私は支える。

レイナは包帯を破り捨てたようで、洗濯されたはずの少し破れたドレスやジャケットのスーツに血が少し染みている。

 

 

''私はシャーレに戻ろうと思って帰っていたところだったんだけど……''

 

「…………えっと、私は、その……」

 

''血が出てるよ……?今すぐ治療しないと''

 

「……大丈夫、すぐ治る」

 

''大丈夫じゃないよ、ちゃんと治療しないと痕になるし……''

 

「…………」

 

''レイナ━━━''

 

 

私が話している途中、レイナは言葉を遮った。

 

 

「うるさい!」

 

「薬臭いの嫌いだし、注射はもっと嫌いだから!」

 

「それだけ!たったそれだけの事よ!」

 

 

彼女の怒声が、暗い路地を響かせた。

 

……でも、私は知っている。

 

 

''……レイナは嘘をつく時目を背けるよね''

 

''本当の事を私に教えて欲しいな''

 

 

レイナは私に目を合わせていなかった。

 

 

「……うるさい……うるさい……!」

 

 

ぽろぽろと水の雫が落ち……私の胸元でレイナは泣き始めた。

 

 

「あたしの事、何にも知らないくせに!あたしがどういう気持ちか分かんないくせに!」

 

「起きた時、寂しかった!!誰かがいて欲しかった!!あたしの事を見ていて欲しかった、あたしを……一人にしないで欲しかった……!」

 

''…………''

 

 

私はただ、レイナを抱きしめた。

 

 

「もう嫌なの、今更一人になるなんて、耐えられないの」

 

「あれだけ、楽しくて愉快で、暖かい場所にいたのに……急に冷たくなると怖くなったの」

 

 

震える手で、私の手を握るレイナ。

 

 

「だから、抜け出した」

 

「見捨てられたような、気がして」

 

 

強く握って、離さない。

 

 

「……悪い?情けない?いつも気丈に振舞って、背伸びしてるあたしが寂しいだなんて、馬鹿げてる?」

 

 

震える声で、私に問う。

 

私はレイナの手を握り返した。

 

 

''ううん、そうは思わないかな''

 

''ごめんね、寂しかったよね、辛かったよね''

 

「…………」

 

''私は君の事を何も理解しようとしていなかった、ただただ君の側にいるだけだった''

 

''……私はもっと君に寄り添うべきだった''

 

 

そう私の謝罪を受け入れるかのように、レイナは下を見つめるが、腕を離さない。

 

 

 

 

 

「……あたしの事を味方って言ってくれた」

 

「あたしの事を見捨てなかった」

 

「あたしの側にいてくれた」

 

「…………だから、これはあたしのワガママなの、寂しがり屋なだけ、ただ……夢を見たかっただけ」

 

「……ありがとう、あの時止めてくれて」

 

 

 

 

 

レイナは決してこちらを向くことは無かった。

 

でも、彼女がどういう表情をしているか分かった。

 

私はそれに応えるように、微笑む。

 

 

 

 

''生徒の暴走を止めるのも先生の役目だからね''

 

 

 

 

 

暫く、レイナは私の腕を離さなかった。

 




レイナの先生に対する好感度表

信頼度:85%
親愛度:95%

ほぼ先生堕ちしてる、先生はゲマトリアのメンバーに相応しい存在だと思っている。
先生と同じくらいゲマトリアが大切。
理性はある為、ゲマトリアの事はまだ話さないでおくつもり。

因みにもしもレイナの事を先生が味方だと言わなかったらバッドエンドルートに突入します。



補習授業の好感度

信頼度:55%
親愛度:85%

大切な友人。
割と守ってあげたいという思いが強い。



ゲマトリアの好感度表

信頼度:100%
親愛度:100%

ゲマトリアの存続の為なら命を散らすつもりでいる。






宜しかったら感想とかくれるとめちゃくちゃ嬉しいなーって
エデン条約編はどうでしたか?ちょっと話数多くなったけど楽しめたら幸いです
次の章はアビドス&レイナVSビナーです、完全オリジナル章ですがあんまり長くはやらない予定……
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