とは言ってもまだストックはありません……申し訳ない
白鋼の蛇が睨む
''レイナさん……あの……''
「…………」
鋭い目で私を睨みつけるレイナ。
鋼色の手錠を両手に付けられた私。
冷たい感覚が背筋を伝う、私は恐ろしい目で睨むレイナの目を直視する事は出来ず目を逸らし続けていた。
「冷蔵庫にあった名札付きのプリン、何処にやった?」
目を逸らす私にレイナは至近距離で呟く、私は震えつつジョークで返した。
''……君のような勘の良い生徒は嫌いじゃないよ''
「なるほど、フライにするわね」
うーん、確かに
私を担ぎ上げて窓に放出しようとするレイナを私は何とか引き止める。
''待って待って待って待って''
「遺言は聞いたわよ」
「うへえ、痴話喧嘩?」
そんな絶体絶命の状況で救世主の如く現れたのはアビドスの生徒会長、ホシノ。
私はレイナに担ぎ上げられた状態で必死に助けを求めた。
''ホシノ、助けて……''
「うーん、事の顛末は聞いたけどこれに関しては先生が悪いからねえ……おじさんから助け舟は出せないなあ」
なんてことだ、私はこのまま窓の外に投げられて死んでしまう運命なのか。
クロノススクープで「シャーレ窓外放出事件」として特集を組まれてしまう、それだけは回避しなければ。
「でもそのまま窓に投げ捨てると先生死んじゃうから、何とかバックドロップくらいで許してあげられないかな?」
「じゃあバックドロップ」
''ぎゃっ!!''
天井と床が逆さまになったと同時に、頭がかち割れたような気がした……
━━━━━
「久しぶりね、小鳥遊さん」
少しだけぐちゃぐちゃのオフィスでコーヒーを一杯、オッドアイの少女に渡す。
……小鳥遊ホシノ、別名『暁のホルス』
キヴォトスで最も強い神秘を持つ生徒。
戦闘スキル、神秘、経験値……あらゆる面に於いて私を上回る存在。
以前も言ったが、この世界で私が力及ばない生徒が二人いる。
一人目は小鳥遊ホシノ。
二人目は 雷帝。
二人目は
もっとも、今の私の状況だと敵に回る事は無いだろうが……
「久しぶり……と言っても二、三週間ぶりくらいじゃない?」
「私、若いから時間が経つのが遅く感じるのよね」
「お、おじさんだって結構若い方なんだよ!?」
「おじさんなのに?」
「おじさんだけどさ!」
けらけらと揶揄い、私は少し苦いコーヒーを一杯飲み込む。
平静を保っているように見えるが、こう見えて暁のホルスの事をすごく警戒しているのだ。
しかし決してそれを悟られないように私は平静を装う、私の演技を見破った人間は今まで一人としていない。
''そういえばホシノ、今日はどうしてここに来たの?''
「あー、そうそう……実は今アビドスでよく分からない大きな蛇?みたいなのが暴れててねえ」
''蛇……?''
「詳しい事はおじさんも見てないからよく分かんないんだけど何だか砂漠に潜んでるみたいで……先生が何とかしてくれないかなー、なんて思ってさ」
''蛇って、どれくらいの大きさなの?10m?''
「……100m?」
''100m!?''
それはもう蛇だとかそういうレベルじゃ無い気がする、多分怪獣だとかUMAだよそれは。
「それはもう怪獣じゃないかしら……」
「アヤネちゃんの見立てだと100mはくだらないって言ってたんだよねえ、そんな蛇……いや、怪獣が街に現れたらただでさえ少ない人口が更にいなくなっちゃうし」
「……先生、100mの怪獣を相手に何とかなるの……?」
''レイナとホシノがいるから大丈夫!''
「私達の事スレイヤーか何かだと思ってない?」
自信満々そうにする先生。
頼られる事に悪い気はしないが、100mの怪獣相手にどうすれば良いものか……
「うへ、とりあえず現地で見てみないと何も分かんないしレイナちゃんも先生と一緒に来る?」
「……まあ、どうせ暇だし」
━━━━━
夏の砂漠は想像を絶する程の熱を帯びている。
40℃……いや、50℃は軽く行くだろう。
無論普段着ている黒いスーツは無しだ、自殺行為に等しい。
白色の日傘を差しながら砂粒を踏みつける。
「今日は一段と暑いよ〜……暑くて干からびそ〜……」
汗がダラダラと溢れて止まらない。
やはり私は冬が好きだ、夏は蒸れるし暑いし汗が止まらないし悪い事尽くめだ。
''そういえばシロコやセリカ達は?''
「別の場所で探してるって、バラバラで探した方が効率的だからね〜……」
まるでパンダを探しにジャングルの奥地まで探検する探検家の気分。
「こんな暑い場所で歩き回ってるんだから取り越し苦労じゃないと良いけれど」
「レイナちゃんだけ日傘なんてずるいよ〜」
「準備を怠らない性格なだけ」
こういう時の為にも日頃から用意はしておくものだ。
少なくとも必要な時において損が無い。
……と、日傘を差しながら歩いていると小鳥遊ホシノが歩いて近づいてくる。
「おじさんも入っちゃお〜……」
「寄らないで、暑苦しい」
「うへ〜、レイナちゃんなんだかおじさんに辛辣じゃなーい?」
「暑苦しいものは暑苦しいもの、先生も寄らないでね」
''こう見えて私は暑さに耐性があるんだ!''
また自信満々そうに胸を叩く先生に小鳥遊ホシノは目を丸くした。
「でも先生、確かアビドスに初めて来た時シロコちゃんにおんぶされてたよね」
「女子高生におんぶされたの!?ありえない!」
''ち、違うんだよ……''
「あの時はシロコちゃんが死体を持ってきたものだと思ったなあ」
……その時、小鳥遊ホシノの持つ無線が鳴り響いた。
「どしたの?アヤネちゃん」
『ホシノ先輩!今何処にいますか!?』
やけに切羽詰まった声だ、純金の宝でも見つかったのだろうか。
「え?今はアビドス砂漠の━━━」
揺れた。
地面が、身体が……全てが揺れた。
轟音が鳴る、砂煙が舞う……
『今、ホシノ先輩がいる場所に巨大なエネルギー反応があるんです!』
''うわっ!?''
「っ!先生!」
砂漠を切り裂き、現れたのは
私達はその蛇が現れた衝撃で吹き飛ばされてしまった。
「っ……捕まえたっ!」
先生の事を空中で抱き上げ、着地する。
「先生!大丈夫!?」
「レイナが捕まえてくれたおかげで助かったよ……」
「まったく、取り越し苦労の方が良かったかもしれないわね……!」
そうか、何故私はコイツの存在を考えなかった!?
アビドスのカイザーPMCが対デカグラマトンの用意をしていた事は以前から聞いていたはずだ、おまけにここはプラズマを発生させる希少鉱物が少しだけある……理由は十分だ!
『ホシノ先輩!今ヘリコプターでそっちに向かっています、逃げてください!』
悲痛な叫びが無線から響くがそう上手くはいけなさそうだ。
「逃げるの?」
「逃げるしか無さそうだよ」
「……鋼鉄のとぐろに巻かれている状況で?」
「…………」
周りは
''とにかく今は戦うしかないみたいだね……''
「まったく、蛇風情が生意気よ」
ビナーは私達への絶対的な勝利を確信しているかの如く見つめている。
不愉快極まりないな、過去にお前の同胞をバラバラにした事を知らないのだろうか?
まあ良い。
厄介なモノは壊しておいて損は無い。
「どうする?レイナちゃん」
「脱出路の確保と先生の安全が第一、奥空さん達との合流は時間がかかりそう?」
「アヤネちゃん達はヘリコプターだけどここから結構距離があるっぽいし、おじさん達だけで戦う事になるね」
「自信があるの?」
「無い、と言ったら嘘になるかな……レイナちゃんは?」
「蛇なら捕まえて調理した事がある……今回も同じよ」
「ひゃー、かっこいーっ!」
「……」
少しだけ恥ずかしくなった。
''指揮は私が執るよ!''
「じゃ、安全第一でいこっか〜」
Vs.BINAH(ビナー)
狂ったAIが砂を切り裂き襲ってきた!
良いだろう、所詮は神のなり損ないのようなロボットだ、私に勝てるはずが無い。
それに以前戦ったデカグラマトンはスクラップ寸前にまでしてやった、今回も同じだ!
……それにしても、本当に暑いなあ……