『…………ただのAIの暴走じゃないの?』
シンギュラリティという言葉を聞いた事は無いだろうか?
シンギュラリティ……AIが自己進化を繰り返して人間を超える事。
キヴォトスではシンギュラリティ……とまではいかないが、よくAIが暴走して人間に対し攻撃的な手段や機能不全に陥る事がある。
まあ大抵の場合原因は人間側のハッキングやプログラムのバグなのだが……
『はい、極端に言えばそうでしょう』
黒服はアッサリと認める。
彼がこうやって素直に認めるのは珍しい事だ、私は少し驚いた。
だが、黒服は続けた。
『しかし、その規模は今までに無い規模です』
アビドス砂漠にて存在が確認されている物体『
極地にて火山噴火の原因となっている物体『
氷河地帯で輸送網を攻撃する『
見た事は無いが聞いた事はある。
都市伝説的な存在で、ミレニアムの失敗した実験の産物だとか言われている。
『そして今、貴方の目の前にいる物体……
「確かに他の奴らと毛色が違うわね」
四脚型で重武装の兵器。
そして巨大だ、5メートル以上はある。
苔が生えたコンクリートの壁を背に、私は白い息を吐きながら様子を探る。
『異名は……『最もきらびやかに輝く至高の王冠』……だそうです』
「王冠……」
『レイナ、単刀直入に言います』
『ケテルの情報を集め、帰還してください』
━━━━━
''レイナ!左からミサイル4基!''
「了解」
砂漠を駆け抜けながら飛んでくる音を頼りに銃を撃ち込んでミサイルを次々と撃墜する。
「レイナちゃん、大丈夫?」
ミサイルを撃ち落とした直後、小鳥遊ホシノが私の傍に駆け寄ってきた。
「ミサイルは全部撃墜した、そっちは?」
「大丈夫、あんまり追尾精度は良くないみたいだよ」
「それは良いこと……で先生、倒す方法はあるの?」
無線で後方で隠れている先生にそう聞くと、先生は少し唸った。
''無い訳では無いけどかなり危険だよ、あまり気は進まないね……''
「私も構わないわ、どっちみちこのまま狼狽えていたってどうしようもないもの」
「おじさんも大丈夫だよ、このままあのビナーを置いて逃げても街が壊されるだけだし」
自前のショットガンで弾丸を排莢しながら小鳥遊ホシノは言うと、無線機越しの先生は少し唸っていた。
「じゃ、破壊する方針で良いわね?先生」
''う、うん……方法についてだけどビナーが口部のレーザーを放つ時、ビナーのエネルギーが口部に集中してるんだ''
''だからその時に口部の発射口を何とか破壊すれば━━━''
「突然エネルギーの放出先を失ったビナーは自爆する、って事だね」
合理的且つ奴にとって致命的なプランだろう。
''でも問題が二つある''
''自爆しない可能性もあるって事と、レイナ達なら至近距離じゃないと口部は破壊出来ないって事''
「確かに私達はスナイパーライフルも持ってないし、至近距離じゃないと効果を発揮しない武器だけ……」
「しかも
''だからかなり危険な作戦になるんだ、自爆に巻き込まれて大怪我をするかもしれない''
何か怯えてると思えばそんな事を心配していたのか。
恐らく以前私が大怪我したせいだろう、自分が怪我する訳でもないのだからそんな心配する必要は無いのに……
「悪い方に考えても仕方ないしそれで行くわよ」
''……レイナもホシノも安全第一、だよ''
━━━━━━
雪が降りそうなくらい寒くて風も強い日の事だった。
ケテルと私が出会ったのはこの『力』を手に入れて三年が経った頃の話、訓練とか知識を深める事を三年間続け……そして今、ついに実戦投入というワケだ。
「四脚型兵器、20mmガトリングが二丁、四連
『何か攻撃の回避方法があるはずです、ロケットやブースターのようなものはありませんか?』
苔むしたコンクリートの壁を背に、音を立てず機械の様子を伺う。
驚くほど静かで巨大な機械は固定された四脚を動かす以外に何かの回避方法は見当たらない。
「そういう物はここからだとよく見えない、戦闘して追い込めば見られるかも」
『戦闘をしたいのですか?』
「……したくないと言えば嘘になる」
少し言葉や発想を間違えたか?と憂いた時、黒服は静かに笑った。
『ククッ、顕示欲ですか』
「悪いかしら、私はこの三年間貴方達と共に歩む為の力を育ててきたのよ」
『それの証明ならばもっと貴方に相応しい手段があると思いますが……まあ良いでしょう』
「ごめんなさい、少し子供っぽい考えだったわね」
ゲマトリアは大人の組織だ。
私は
ゲマトリアに相応しい大人になるのが私の夢だ。
『いえ、恐らくマエストロやベアトリーチェが同じ立場なら彼らも同じ行動を取るでしょう』
「大人でも顕示欲があるのね」
『ゲマトリアとはそういうものですから』
クックック、と少し喜びを感じるような声で黒服は笑う。
『ですが気をつけてください、デカグラマトンは未知数な部分が多いです』
「この重装備だとビームなんか出てきてもおかしくなさそうね」
『冷静沈着に、そして確実な情報をお願いします』
ふと、
「……もしかして私のテストも兼ねてる?」
『おや、言っていませんでしたか?』
「はあ……貴方のそういうとこキライよ」
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気が滅入りそうなくらい暑くて風も無い日だ。
「レイナちゃん、今日は暑いねえ」
「正直かなり気が滅入ってるわ」
「こんな日は冷たい物でも食べたいわね」
「そうだねー」
滴る汗が砂を湿らせたかと思えばすぐに蒸発する。
雲一つ無い空から太陽が紫外線を照射し続け、足元の砂粒は熱を籠らせていた。
……問題は下校中の生徒の会話ではないという事だろうか?
''二人とも、ビナーが動き出したよ!''
「了解」
「それじゃレイナちゃん、任せたよっ」
「そっちも、期待してるから」
ビナーがこちらに向かって砂を泳ぎ始めた瞬間、小鳥遊ホシノは作戦通りビナーの方へ動き始め私はビナーを避けるように走る。
''ビナーの身体は大きいけど、ミサイルやビームを撃っている間は巨体を活かした攻撃はしてこないと思う''
''向こうはこっちの装備を理解してる、だから自分にとって不利になる間合いには来ないはずなんだ''
「ミサイル攻撃とビームが主な攻撃だろうねえ」
流石AIだ、冷静で的確な判断。
しかしその巨体はその判断を上回るデメリットとなるだろう。
''ホシノが陽動してる間にレイナが背後から頭部に乗ればチャンスは必ずある、それまで何とか耐えて!''
「はいはーい、タンクはおじさんに任せて」
普段陽気に振る舞う彼女が一瞬少し真面目な顔向きになって……笑う。
その顔に少し畏怖を感じた私は、少し変なのだろう。
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暗い、暗い、暗い、暗い……部屋。
それは深淵より深く、闇より黒い場所。
壊れた時計はいた。
呻いた。
「感じる……強い異物、特異点……いや、浮遊物と言うべきでしょうか?」
かち、かち、かち、かち、かち……
時計の音は鳴り続けるが針は決して動かない。
「兎にも角にも、どうやら
その時計は奇妙で、不気味に笑う。
「どれ……今度は、どのような気づきを与えてくれるでしょうか?」
ぱらりとページが捲られた。
「学園都市……その世界に浮かぶ、世界にとって似つかわしく無い人間が二人……ヒヒッ……」
まるでゲームの説明書を見て愉しむ子供のように、ニヤニヤと笑う。
しかし、ある
「……しかし、この浮遊物は気に入らない」
一人の少女が砂漠を駆けていた。
かち、かち、かち……音が段々とエスカレートするように鳴り続ける。
「西条レイナと言いましたか……こんなガキがゲマトリアだとは、思い違いも甚だしい……!」
かちっ。
「そんなもの、ゲマトリアの名が……」
「ゲマトリアの名が廃るだろうが━━!?」
怒声だけが響いた。
「クズがぁッ……!はぁッ、はぁッ……良いでしょう」
「こうなれば、真のゲマトリアが何か……あのガキ……いや、今のゲマトリアの連中に見せてやりましょう」
「真のゲマトリアの姿を知るのは、小生のみ……!」
まだ動かないはずの、壊れた時計。
Vs.KETHER(ケテル)
四脚型の凄まじい重武装をした兵器を襲った。
絶え間ない弾幕と厚い装甲はキヴォトスでも最高峰の兵器だろう。
デカグラマトンという最近活動を始めた……組織だろうか、それともAI?
兎にも角にもスクラップにでもすれば何かの情報は得られるだろう。
……それにしても本当に寒いなあ……
これ書いてたらデカグラマトンでケテルが大やらかししてるって話聞いてゲラ笑いしました
いつも感想などここすき、評価などありがとうございます!!
良かったらまたください!!