神秘のチカラ
それぞれ相反するモノであり、本来ならば同時に使う事は出来ないし意識的に使う事も出来ない。
だがある条件下且つ、特定の技術を知っていれば両方のチカラを行使する事が出来る。
その方法とは━━━━━
''レイナ!今だよ!''
「分かってる」
ビナーの攻撃が一時的に止まった。
近づくならば今しかないだろう。
「レイナちゃん、行くよっ!」
小鳥遊ホシノの目を見て、頷く。
ビナーのとぐろを巻く胴体に飛び移って着地、そのまま胴体を滑り落ちていると私達の意図をビナーが理解したようで、ミサイルを4発射出し、私達をミサイルが追った。
「させないよ」
しかし、暁のホルスはそれを許さない。
普段の彼女の声とは思えない低い声が聞こえたと同時に、散弾銃の発砲音が四回聞こえてミサイルは全て砂漠に墜落。
「それでレイナちゃん、ここからどうやってアレの頭まで飛ぶ?」
問題はそこだった。
ビナーの頭部と地上の距離はおよそ40m。
ジャンプで飛ぶ?鳥じゃないんだから無理。
近くに建物なんかも無いから飛び移って登るのも無理。
ビナーの胴体を登る時間なんて無い、その前にミサイルで撃墜される。
ならば何かの外的要因が必要だ、あそこまで飛べるくらいの衝撃を。
「簡単よ、脛を叩けばいいの」
「……すね?」
きょとんとはてなマークを浮かべる小鳥遊ホシノに私はニヤリと笑いながら胴体を走り始めた。
「私の懐にチャフが四つ、これをビナーの……関節部分とでも言おうかしら、そこにばら撒く」
そう言いながらチャフを適当にほいほいと投げていく。
「相手は精密機械だからチャフは刺さるかもだけど……それでどうやって飛ぶの?」
「異常を理解したビナーは恐らくミサイルやビームを使えなくなり、暴れて私達を振り払おうとする……」
「まさか、その時の衝撃を使って飛ぼうとしてる?」
大正解。
ビナーは蠢き、唸り、大暴れをするはずだ、その時の衝撃は私達を吹き飛ばすのに十分すぎるエネルギーがある。
「それしかないでしょう」
「確かにそうかもしれないけどさ」
少し困惑した表情で小鳥遊ホシノは頬を掻く。
「……無茶過ぎないかな?」
確かに無茶かもしれない、一歩間違えたら大怪我を負う。
しかし最早この手しかない、今ここで奴を仕留めるのならこれで飛ぶしかないのだ。
「私は出来る、貴方には出来ないかもしれないけどね」
「おじさんはトシだから無理かなあ……」
少し対抗心を燃やしてやろう、と思い挑発をするも小鳥遊ホシノはそれを軽くスルー。
「あら、あからさま過ぎた挑発だったかしら?」
「若い子の挑発には乗らないよー、年の功ってヤツだね」
「貴方もまだ子供でしょうに」
チャフの爆発が始まる。
ビナーは自分の身体に起きた異常を理解したようで、胴体を大きく揺らしビームのチャージを始めた。
「賭けは始まった、貴方は乗る?」
「乗るけど……でも後で先生に怒られるよ?」
「んー、大丈夫でしょ」
「大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」
因みに先生との通信は今はオフにしている。
「…………さて、やろうか」
「着地はおじさんに任せて、なんとか拾ってあげるから」
「了解」
高く飛び跳ね、胴体を滑りながらヒールに体重を掛けると火花を散って。
「さあ」
火花を散らしながら滑り落ちる私をビナーは睨み、その胴体がうねって、跳ねて。
「空へ舞わん」
私は遥か上空へ吹き飛ぶ。
狙っていた、と言わんばかりにビナーの口部が私に向けられる。
「レイナちゃんっ!!」
「任せて」
''チカラを込める''
その声は先生の声ではなく、私の声。
私のテクスチャを新たに貼り付けて、自分のチカラを100%使う為の秘密の技。
掌にチカラを込めて、頭の中をまっさらにして。
息を吸って吐くと、身体の中がアツくなって。
私のリボルバー『MerryGoHeaven』は、神秘や恐怖のチカラのリソースを注ぎ込む事を目的にした高威力のリボルバー。
これを耐えるあらゆる物質は存在し得ないし、絶対的な必中必殺のチカラだ、X-DAYの予行練習には丁度良い。
一閃の黒い光は銃口からバチバチと音を鳴らし、まるで日食の光のように光を吸収して稲妻のように唸る。
黒い光という言い方はおかしいだろうって?
仕方ないだろ、その通りなのだから。
その光は段々と、私のリボルバーの銃口に収束していき、そして━━━━━
「さあ踊ろうか」
ビナーがビームを私に撃ち込んだと同時に、トリガーを引く。
一筋の光は瞬きをする暇もなくビナーのビームの中へ入り、貫き……
轟音と共にビナーの口部は大爆発を起こした。
━━━━━
『……やはり素晴らしい』
黒い煙を払い、私は咳き込む。
背後にいたはずのケテルは黒い煙とプラズマを発しながらワイヤーで逃亡し、ここにいるのは勝者である私だけだった。
「黒服」
『ケテルの反応消滅……テストは合格です、これで貴方は━━━』
「待って、黒服……少し……疲れた」
『……ククッ、ええ、回収は此方の方で何とかしましょう』
「フルトン回収だけは勘弁して……」
神秘のチカラを凝縮して解き放つ一閃の光。
このチカラを使うにはただ力が強いだけでは扱えない、
私の場合、神秘テクスチャを切って剥がし、凝縮させた恐怖と…………いや、まあ専門的な話は置いておこうか。
つまるところ私の能力をフル活用出来るテクスチャを私自身に貼り付け、その能力を全て一つの光として解き放つ。
正に
因みにデメリットとして使用後暫く痺れて動けなくなる、大体三分くらい。
黒服は『
『素晴らしいです、レイナ、やはり貴方の力は我々にとっても唯一無二……必要不可欠なモノです』
「ああ、それはどうも」
無線機からパチパチと丁寧な拍手が聞こえる。
倦怠感が酷くて、イマイチ勝利の実感は無い。
『では本日を以て、貴方をゲマトリアのメンバーとして認めます』
『ようこそ、ゲマトリアへ』
『レイナ』
この日は、私が『
……そして、私が地面に倒れ伏しているとゾロゾロと蜘蛛のようなロボットが現れる。
『おや、どうやらレイバーが到着したようですね』
「助けて〜」
『仕方ありません、バルーンを起動します』
「お゛う゛ッ」
腹部に強烈な一撃を食らった私は嗚咽した。
レイバーによる攻撃……ではなくバルーンの衝撃によるもので。
━━━━━
「お、落ちるッ」
そして現在、無事墜落中。
ビナーはケテルのように黒い煙と火花を発しながら轟音を響かせた。
まだだ、まだ終わっていない。
「レイナちゃん!」
「うおおおおお墜ちるッ、ってか墜ちてるッ!早くッ!」
小鳥遊ホシノが地上で私の方へ駆けている。
「キャ──ーッチ!」
「ナイスキャ━━━」
私は、私より体格の小さい生徒に受け止められて……小鳥遊ホシノと共に落下の勢いのまま砂に埋もれる。
「ごぶっ」
「ぎゃっ」
「うぐ、けほっけほっ……」
身体についた砂漠の砂と砂煙を払いながら、私は咳き込む。
「ビナーは?」
「逃げようとしてるよ、多分……あの調子だと暫く上がって来ないんじゃないかな?」
「……いや、逃がさない」
私が銃を砂の中へ逃げようとするビナーへ向けるも、私の手はだらんと力の抜けて落ちる。
段々とアドレナリンが切れてきて、目の前がチカチカと点滅して頭も痛くなって、身体を動かす元気もなくなってきた。
「あ、ダメだ、ちょっと元気ないかも」
最悪の日差し。
最高の気温。
そして、
「すごく身体熱くなってるよ、もしかして熱中症かも」
小鳥遊ホシノが私の傍に寄って、額に手を乗せる。
「目眩はある?」
「少ししんどいし目眩もする……」
「黒いスーツ着てるから日差しを直で浴びちゃったんだろうねえ、立てる?」
「立てない」
足に力が入らない、これは熱中症というより神秘の力を使ったあとのガス欠によるものだ。
「よーし、じゃおじさんがおんぶしてあげようか」
「出来るの?」
「レイナちゃんはノノミちゃんみたいにミニガン持ってないから出来るよー」
「ああ、そうなの……」
「戦闘の影響かは分かんないけど、先生と連絡も取れないし先生のいた所までおんぶしてあげるね」
「ありがとう」
砂漠を踏みしめて、小鳥遊ホシノは私を背負い先生のいた所まで向かう。
戦いは終わった。
今回補足事項多めッ許せッ
Q.この世界のEXスキルとは?
A.すげー必殺技です、ヒナならアビドス3章みたいなビーム出せるしアリスはすんげービーム出せる。
でも普通の生徒は意識的に使う事は出来ない、というか存在を知らない。
先生の指揮下やヒナvsホシノみたいな双方絶対に負けられない戦いなら直感で出せる。
ただしレイナは黒服からそんな事が出来るという知識があった事とレイナ自身が身体を弄り回していた為、三分間ぶっ倒れるというデメリット付きで使用可。
人に使うもんじゃないので対兵器のみ使用を許されてます。
Q.レイナのEXスキル、どういう原理?
A.簡単に言えば『自身に引っ付けられているテクスチャを一旦剥がして、代わりに戦いで激アツの時のテクスチャを自分に貼り付ける』という荒業です。
因みに神秘テクスチャではなく恐怖テクスチャを使用した為かなりの高威力。
勿論前述した通りのデメリットはありますが、シッテムの箱の指揮下なら話は別。
コストを支払ってEXスキルをぶっぱなせます、ただしレイナの場合神秘テクスチャを使う為威力は控えめ。
この時声が先生のようなスタイルになるのはシッテムの箱の力を無理やり使ってるから……なのかも?
Q.レイナのEXスキルの名前は?
A.『さあ踊ろうか』です。
いや、感想くれたらめちゃくちゃ嬉しいなーって……良かったらくれないかなーって……