先生にすっごい怒られた。
''お疲れ様、二人とも怪我が無くて本当に良かったよ''
ニコニコと笑う彼からはどこか怒りを感じる。
目も口も笑ってるのに、特に私に対して怒りというか呆れというか、そういうモノを感じる。
逃げたい。
「うへー、先生も無事で良かったよ、ビナーが逃げようとした途端通信が出来なくなったからさー」
''少し無線の調子が悪かったみたいなんだ、今は大丈夫だと思うけど……''
「もう少しでセリカちゃんやノノミちゃんも到着するらしいし、ゆっくりお昼寝でもしよっか」
''あ、その前に''
「ん?」
''私に何も言わず、あの作戦を立案したのは誰かな?''
「あっ」
即座に先生から目を背ける。
「…………」
''レイナ?''
そんな私を呼ぶ声で心臓がキュッてなった、いや恋とかじゃなくて、やらかした時に怒られる時のアレで。
だがしかし、こうなった時の対処法を私は知っている。
「……勝ったからいいじゃん」
''うん、勝ったからレイナ達は今怪我無くここにいてくれてるね、ありがとう''
しかしその言い訳もすり抜けて、先生は逸らそうとする私の目を見続ける。
「じゃ、別にいいじゃん」
''でも私はどうすればレイナ達が怪我なく勝利出来るか、どうすればレイナ達が嫌な思いをせずに勝利出来るか考えてるんだ''
「いいじゃん、別に……」
完敗。
「前から思ってたけどレイナちゃんって実は先生の娘だったりしない?」
「しない」
「しないかー」
しません。
''さて、帰ったらレイナは説教ね''
「はぁ〜?大人しく聞いてやるとでも?」
''そっか……ホシノ、レイナは私が背負うよ''
「待って勘弁してッ」
「はいよ〜」
「イヤッイヤァーッ!」
この後めちゃくちゃ背負われた。
━━━━━
「お、そろそろアヤネちゃん達も到着するっぽい」
小鳥遊ホシノがスマホを見ながら歩んでいると、一枚の写真が送られていた。
『セリカちゃんが怖がってます♧』
写真には黒見セリカが凄い角張った表情でヘリの席に座っている、高所恐怖症なのだろうか……
「そういえばレイナちゃん、すごいビーム撃ってたよね?あれどーやったの?」
小鳥遊ホシノが先生に背負われている私に問うと、私は日照りに鬱屈としながらも一言。
「気合い」
「気合いで出来るものなの?」
「出来る」
「出来るんだ……おじさんもやりたいなー」
断言しよう、出来る。
知識と気合いがあれば誰でも出来ます、簡単です。
その代わり今の私みたいに暫く動けなくなる……いや、
''ビームを出したの!?''
「出してたよ!こう……光がびゅんっ!ってすごい速さでレイナちゃんの銃から出てさ、ビナーの口を貫いてたんだよね〜!」
「ふん、そんなに褒めても何も出ないわよ」
「レイナちゃんレイナちゃん!おじさんもあんなビーム出せる!?」
「気合いさえあれば出せるわよ」
「おー!良かったら教えてくれないかな!?」
ふん、そうとなれば私からあの暁のホルスへ直々に教えてやろう。
「まず脇を閉じる」
「閉じるっ」
「足に力を込める」
「込めたっ」
「…………うわァーッ!ってなる」
「…………!?」
「なったら出せる」
「ず、随分とレイナちゃんらしくない説明だね?」
「だから精神論なのよ、これ以上詳しい説明が出来ないから」
実際私はこんな感じでいつも
感情の有無は大切だ、恐怖と神秘の源は感情に在る、つまり無感情のロボットと感情を持つ生徒では天と地ほどの力の差がある……という訳である。
「うへぇ〜、おじさんには出来そうにないなぁ」
「それは…………残念」
何故だか瞼が重くなる。
''……あのヘリコプター、アヤネのヘリじゃない?''
「やっと一息つけるねぇ」
段々と息を荒くなって、そのまま重たくなる瞼を閉じた。
「…………」
''……レイナ?''
━━━━━
「「レイナさん!」」
「れ、レイナさん……」
「レイナっ!」
「レイナちゃん!」
「レイナちゃん♡」
「レイナ」
「れ、レイナさん!」
「レイナ……」
''レイナ''
声が聞こえる。
この数カ月、苦楽を共にした人達だ。
ゲーム開発部。
補習授業部。
そして、スバルと先生。
針の音が聞こえる。
目の前が暗くなる。
暗くなる視界には白い時計。
『十二時』
━━━━━
「────ですから、恐らく……」
声と蛍光灯の光が私の目を覚ました。
周りはやんわりと涼しいが身体は熱く、それと同時に脳をピクルス液で浸されたような気持ち悪さが襲う。
「……あついぃ……」
「あっ、レイナさん!」
ソファーで寝ていた私からそんな声が勝手に出ていく。
「おー、大丈夫そう?」
「きもちわるい……どこ、ここ……」
朧気な視界の中、小鳥遊ホシノの姿と他四人の姿が見える。
「アビドス学園だよ、レイナちゃんが熱中症で倒れちゃってたから急いでヘリに乗せてここに連れてきたんだよ?」
そんな柔らかさと同時に少し心配した声は間違いなくあの・暁のホルスから発せられたもので、私は少し驚いた。
「ありがとう……はぁ、すごく……気分が悪いわ」
頭を抱えながらソファーから起き上がると、砂狼シロコが水筒を差し出した。
「飲む?」
「のむぅ……」
私はその水筒を震える手で受け取り、蓋を開けて中の液体を勢いよく飲み込んだ。
「……あっ、これ水じゃなくてスポドリ……おえ……」
それと同時に舌から電気信号が発せられた。
『この酸っぱくて爽やかな風味はスポドリだ』と。
私はスポドリが苦手だ、どうも爽やかさに変な風味を感じて好きになれない。
「スポドリ嫌いなんですか?」
「甘酸っぱい変な味で、なんか好きになれないのよ……」
「はいはい、ワガママお嬢様の為のお水だよ」
机の上に置かれた透き通った水を見て、私はまた勢いよく飲み込む。
ああ、透明感のあり透き通った無味無色……安心する。
「ありがとう…………先生は?」
周りを見渡すといるのはアビドス一同のみで先生の姿は見えない。
「今は図書館であの白い蛇の行先を探しているみたいですが……」
「……そう、なのね」
少し不機嫌。
「…………ん」
「あ、シロコちゃんがジェラってる」
「別にジェラってない」
「ジェラってたわよね」
「ジェラってましたね」
「誰に何をジェラってるの????」
━━━━━
「───でね、レイナちゃんがぶわーって凄いビーム出してさー」
小鳥遊ホシノが自慢げに他のアビドス生徒に語るも、生徒達は怪しげだった。
無理もないだろう、小鳥遊ホシノが言っているのは『防戦一方だったけどレイナちゃんがすごいビーム出して逆転勝利でした!』なのだから。
「えっと……本当になんですか?レイナさん」
奥空アヤネが『流石に冗談ですよね?』といった顔でこちらを見るが私は明後日の方を向きながら
「あー、そうだったようなそうじゃなかったような……」
と、曖昧な回答。
「そうだったよー!やり方まで教えてくれたじゃん!」
小鳥遊ホシノが慌てているのを見て、私は思わず笑ってしまった。
「けけっ」
自分でも可愛らしくない笑い方だと思うが、これが私の心からの笑い方なのだ。
因みにマダムと黒服から苦言を呈されて出来る限り『お淑やかな笑い方』にするようにしている。
「ビーム……銀行強盗する時にビームがあったらすごく楽だろうね」
「……ん?銀行強盗……?」
えっ、今この人銀行強盗って言った?
ナチュラルに犯罪行為について言及したよね、銀行強盗って結構ダメな行為だよね。
「し、シロコちゃん!」
「えーっと、レイナさん、シロコ先輩は……その……」
奥空アヤネがなんとか取り繕おうと焦った様子で私に話しかけるも、私は全てを察した。
「……ま、まあ多様性よね……」
全て飲み込んだが、だからといって適切な言葉が上手く出るとは限らないものだ。
それに私だって似たような経験をしている。
「よくそれで飲み込めましたね……」
「私だって同じような事をしてたから人の事は言えないわ」
「もしかしてレイナも銀行強盗を……!」
「目を輝かせるな!」
うん、それについては本当に自重してほしい。
一方で私は話題転換の為に、自身が何をやったか語った。
「……カイザーコーポレーションの情報施設を一人で襲ったのよ」
「……!?!?」
「あ、これ先生には秘密にしておいてくれるかしら、あの人めんどくさいから」
「待って、詳しく教えて」
目を輝かせる砂狼シロコ。
「あれは、春の始めの頃だった───」
「……あれ、これもしかして長くなる?」
━━━━━
チク、タク、チク、タク。
1、2、3、4、5、6……
長針は傾き、また傾いて、さらに傾く。
「……西条レイナという
「良いでしょう、真のゲマトリアが何者か……何を成すか、あの
「幸い、あの
「……
長針は同時に傾く。
寸分の違いも無く。
ただ、理のように。
だが、決して短針は動かない。
チク、タク、チク、タク……
『十二時』を指す時計は長針だけが傾いていた。
Q.レイナさん病弱過ぎませんか?
A.はい、病弱です、元々病弱体質なんですあの子。
Q.ホシノもビーム出せる?
A.実は出せない、テラー化したら出せる。
よかったら感想が欲しいのサ、感想すっごく欲しいのサ
評価でも良いのサ、なんでもいいのサ
ユナのif外伝いる?
-
いぃらないですねぇ……
-
欲しい