ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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初夏が終わる

 

 

 

「うへ〜、さっきまで皆いたのに急にいなくなったねぇ?」

 

「不安?」

 

「子供じゃないんだから」

 

 

 皆がそれぞれの事を始めて、教室からいなくなってしまい……また小鳥遊ホシノと私だけになった。

 いつの間にか軽口を叩く仲になってしまった。

 おかしいな、こんな仲になるつもりはなかったんだが……

 

 

「そういえばレイナちゃんさ、おじさんいくつか気になる事があるんだよねー」

 

「……?」

 

 

 また冗談かプライベートのことだろうか?

 私のスリーサイズとか、パンツの色とか───

 

 

「なんで先生と一緒にいるの?」

 

 

 そんな声は、私に冷水を浴びせたような感覚をさせた。

 

 

「…………なんでって、どういう意味?」

 

「前に先生に聞いたんだけどさ、先生がレイナちゃんをシャーレに誘ったらしいじゃん」

 

「でもさ、それってレイナちゃんに何か『メリット』とか『利益』があったからシャーレに入ったんだよね?」

 

 

 私は口に手を添えて、暁のホルスの真っ直ぐな目を見つめる。

 

 

 考えろ、納得させうる理由を。

 

 

 強く、恐ろしく、そして強大だ。

 さっきまでの軽口を叩いていた生徒とは思えない程に強大な存在。

 

 私は思わず息を呑んだ。

 思考が少し止まった。

 

 

「どうして急に?」

 

「レイナちゃん、おじさんと同じ目をしてるからさ」

 

「……目?」

 

「うん、大切な人を亡くしたような、そんな目をしてる」

 

 

 大切な人を?

 まさか、そんな訳が無い。

 私には友人も家族もいなかった、いるのは黒服達だけ。

 

 思い違いも甚だしい、何を勘違いしているのか。

 

 

「…………私にはそんな記憶は無いわ、ただの気の所為よ」

 

 

 ため息を吐いて、言葉を続けた。

 

 

「シャーレに入ったのだって気まぐれ、おかげで楽しい毎日を過ごしてるけど」

 

「本当に?」

 

「それはどっちの答えに対する疑問?」

 

「両方」

 

 

 いい加減にして欲しいものだ。

 入った理由についてはともかく、私は親しい人や大切な人を亡くした記憶なんか微塵も無い!

 

 

「私はシャーレに気まぐれで入った、そして私には死んだ大切な人なんていない、それで終わりよ」

 

「そっか、ごめんね、急にこんな事聞いて」

 

 

 ため息を吐いて、一息安堵。

 小鳥遊ホシノはいつもの小さく縮まったおじいちゃんのような雰囲気に戻り机に肘を立てた。

 

 

「貴方らしくもない勘違いね」

 

「そんなにレイナちゃんが思ってるほどおじさんは凄い人じゃないよー?」

 

「そう?アレと戦ってた時だって先生を助けられる為に一定の目線と動線を配ってた、おかげさまで私は先生に気を配る必要が無くてやりやすかったわ」

 

「ありゃ、気づいてたか」

 

「そりゃあね」

 

 

 それくらいは私にでも分かる、恐らく空崎ヒナや美甘ネルも理解できただろう。

 ……なんだろう、すごく悔しいような気がする。

 今度は私が小鳥遊ホシノのカバーに出てやろう、そうしよう。

 

 

「ただいま」

 

「おー、おかえり」

 

「レイナ、体調は大丈夫?」

 

「大丈夫、お陰様で元気よ」

 

「ん、それは良かった」

 

 

 砂狼シロコ。

 アヌビスの神、死の神……らしい。

 黒服は暁のホルスの計画が失敗した時の保険と言っていたが、先生が健在な限り無理な話だろう。

 

 しかし……何か、何か彼女と私で因縁のようなものを感じるのは気の所為だろうか?

 特に彼女とは関わりも接点も無かったはずなのに……私の思い違いだろうか……?

 

 

「そういえばレイナ、一つ気になる事があるんだけど」

 

「……なに?」

 

 

 人が周りにいるのに考え事に夢中になるのは昔からの私の悪い癖だ。

 声をかけられて少しドキンとしつつ、私は彼女の方を向いた。

 

 

「ライディングに興味は無い?」

 

「ライ……もしかして自転車の事……?」

 

「ん!」

 

 

 何処に出かけていたのかと思いきや、自転車に乗っていたのか。

 ライディングというと自転車だろう……まさかバイクや馬では無いだろうし。

 

 だが、私は馬なんかはともかく自転車なんかには乗った事が無い。

 ……まあ、多分その気になったら乗れるだろうけど、私何でも出来るタイプだから。

 

 

「自転車は乗った事無いから興味無いわね」

 

「えっ!?」

 

「乗った事無いの!?」

 

「……そんなに変?」

 

 

 いやいや、自転車に乗った事がないくらい普通の事だろう?

 別に特別変な事ではない……はずよね?

 

 

「ホシノ先輩、これは由々しき事態」

 

「そうだね……これはシャーレ……いや、連邦生徒会全体の問題かもしれないよ」

 

「ん、そんなに」

 

 

 なわけあるか。

 

 

「いや、たかが自転車に乗れないだけでしょう」

 

「ダメだよぉ!自転車は乗れないと!」

 

「ん!いざという時に困る!」

 

「自転車なんかに乗れなくても走るか車に乗ればいいじゃない」

 

「分かってない……ダメだね、レイナは」

 

「ええい!うるさい!」

 

 

 段々と自転車に乗った事がない事実が恥として私の心に染み付いたので、ちゃぶ台返し。

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

 

 その後も定例会議、二度目のちゃぶ台返しなどが続き……

 

 

 

「あ、もう夕方ですね」

 

「うう……結局何も話が進まなかった……」

 

 

 窓から夕日が差し込み、少し窓からは冷えた空気が吹いている。

 

 

「……いつもこんな調子なの?」

 

「ええ、まあ……」

 

 

 私に続き、ちゃぶ台返しで場をひっくり返した奥空アヤネが気まずそうに答える。

 

 

「……話がまったく進んでないじゃない」

 

「うっ……痛いところ突かれた……」

 

 

 びっくりするくらい話が進まない。

 みんなウンウンと唸り、誰かが何か提案するも現実味は皆無で却下。

 時間は進む、されど会議は進まず。

 

 

「……まあ、進展が無いかと言われればNOだけれど」

 

 

 しかしそんな会議だったが、唯一の進展とも言えるべき……ものが一応はあった。

 

 

「そう、怪獣祭り!」

 

「よくあんな物騒な怪物を祭れるわね」

 

 

 ビナーを祭ってアビドスを復興しよう!…………いやいや、無理があるだろう。

 

 

「でも結局先生に止められて却下になっちゃいましたね……」

 

 ''流石にアレを祭るのは良くないと思うな……''

 

(そもそも自分達に害を及ぼすものを祭る事自体おかしいと思うけれどね)

 

 

 まあ、神様はそうやって生まれたものなのだろう。

 まさか現代社会でその実例を見るとは思わなかったが。

 

 

「それじゃ、今日の定例会議は終了って事で」

 

「はーい」

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「じゃーねー」

 

「はーい!また明日〜」

 

「レイナさんも、またよろしくお願いします!」

 

「ああ、うん……」

 

 

 皆、それぞれ帰っていく。

 騒々しさはあっという間に消えて少し寂しいような寂しくないような。

 

 

 なるほど、これが学園生活というものか。

 皆それぞれ自分の事をやって、集まって語って騒いで…………少し私には眩しいな。

 

 

 ''帰ろうか''

 

「……うん」

 

 

 先生のその声はどことなく、優しさを感じるものだった。

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

 

 〇月‪✕‬‪‪日(△)

 

 熱中症になった。

 最近、段々と身体が衰えている気がして仕方ない……気のせいか、それとも身体が鈍ったか?

 たまには身体を動かさないとダメだな、そろそろ例の日も近いし。

 

 小鳥遊ホシノと接触した、以前は黒服から接触を禁じられていたが今はその制約は無い。

 そしてやはり奴は不透明な人間だ、表面上は飄々としているが心で何を考えているのか全く分からない。

 黒服からもそこがヤツと私の違いだと言われていた、私って単純……なのだろうか……

 

 兎にも角にも例の日に備えなければならない、先生の安全確保も考慮しなければ。

 事前に調印式に行かないよう引き止めておけば良いだろう、言う事を聞かないのなら最悪監禁しよう。

 

 

 …………孤児院出身の私に大切な人なんかいないのに。

 今まで感じた事のない空虚さを感じるのは小鳥遊ホシノのせいだろうか?

 

 

 

 心境変化……多少あり?




Q.今回先生空気だね。
A.そのうち濃厚摂取します。

Q.過去編を寄越せ!
A.書いてやるよォ!!!オラァ!!!


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ユナのif外伝いる?

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