レイナの頬はモチモチしている
私の友人について話そう。
名を清澄アキラ、学年不明、年齢不明、部活不明。
芸術を誰よりも愛し、誰よりも美術品を愛す者。
慈愛の怪盗と呼ばれているのは有名で、キヴォトスでもトップレベルの犯罪者だ。
変幻自在、自由奔放、神出鬼没、華麗奔走……
アイツに出来ない事は無いんじゃないか、ってくらいにアイツは何でも出来る。
…………と、べた褒めしたが実情は『変人』という言葉が正しいだろう。
アキラは芸術を愛するがその芸術というのは絵画や彫刻だけではなく……
「あら、こんばんは」
「私の背後に立つのはやめて、あと頬を揉まないで」
「本当にモチモチしてますね、どうやってこんなにモチモチさせているのか気になります」
「うるさい、モチモチするな」
何故か私を愛でる……というか、芸術的な興味を向けている。
疑問に思った私は本人に何故興味を持っているかについて聞いた事がある。
「どうして私に興味を持っているの?」
「私が芸術作品に興味を持っているのはご存知でしょう?」
「私は芸術作品じゃないけど」
「貴方は芸術作品のようなものだと私は思っているので」
「嫌だなあ、私も貴方のコレクションの中に加わるの?」
「コレクションではありません、『真に価値を理解出来る人』が現れるまで私が代わりに保管しているだけです」
「…………私をコレクションの中に加えるのを否定しないの……?」
本人によると私は『芸術作品』らしい。
まったく、人の事を芸術品扱いして……
私はそんなアキラの事をどことなく面白いヤツだと認識している。
多分向こうも同じ。
アキラは決してヴァルキューレ程度の連中には捕まらない……はずだった。
しかし、いつの日か私の元に一通の手紙が来た。
小賢しい暗号で記されていたから名前が書かれていなくてもすぐに分かる。
解読すると、大体こんな感じの手紙だった。
『ワケあってわざと矯正局ぶち込まれますので連邦生徒会が混乱に陥ったら助けて下さい、私は内側から何とかします、あと私の美術品を一応貴方の元へ避難させておくので何とかしてください』
因みにその手紙と同時に大量の美術品が届いた。
私は頭を抱えた。
……これが大体連邦生徒会長が失踪する一ヶ月前の事だった。
「あの白猫……絶対にいつかぶっ飛ばす」
そう心に誓った日を今も覚えている。
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「もしもし、こちら
『こちら
「一応ビジネスパートナーだから」
『ツレないですね、もうちょっと貴方は感情を表に出した方がいいですよ?』
「遠慮しておく」
『そうですか……貴方は笑った時の顔が一番美しいのに』
「御託は終わりよ」
夜中の3時。
矯正局の向かいにある誰もいない雑居ビルにて、私は無線機と双眼鏡片手に矯正局の様子を見ていた。
『貴方がひっそりと差し入れの中に入れてくれた無線機のおかげでこうやって通信が出来ますし……』
「脱獄したら早急にあの美術品を何とかして」
『検討しておきます』
検討とかじゃなくてやってください……
「それで?私は何をすればいいの?」
ため息を吐きながら、私は双眼鏡で夜中も尚輝く矯正局を覗く。
『脱獄までは私達だけで何とか出来るのですが、どうもその後の追っ手が打開出来ないようで』
「それを私に何とかしろと?」
『はい、お願い出来ますか?』
「大々的に助ける事は出来ない、私が指名手配犯になると困るし……って、私達?」
『総勢七人の脱獄になるそうですよ?』
「なんで他人事なのよ……」
人数に関してはともかく、私は身分が身分なのでもしも顔がバレて『囚人脱獄協力者』として指名手配でもされたら終わりだ。
『クックック……貴方はゲマトリアから追放です……笑』
『そういうこったあああああああ!?!?』
黒服やマエストロ達からブチギレられるのは目に見えている。
というか今回の件はそもそも黒服達には何をするかは秘密で来ている、つまり私の身分がバレたら終わる。
だから大々的に助ける事は出来ない、ヴァルキューレの装甲車を私が壊すなんてのはまず無理。
「ただ、ここから追っ手を狙撃する、という事なら出来なくない」
スナイパーライフルの詳細をここに挿入。
『
「AR、SMG、SR、HG、その気になればロケットランチャー、徒手空拳だって使える、使える物は何でも使う主義なの」
『流石ですね』
「ルートを教えて、トラップを仕掛ける」
『ルートはシラトリ区四番道路です、私はそのまま真っ直ぐと逃走する予定なので追っ手さえ破壊してくれれば』
「了解、あと二つだけいい?」
『なんでしょうか?』
「脱獄する前にヘマして捕まっても助けないってのと、私は貴方以外助けるつもり無いから」
『承知しております』
縁もゆかりも無い奴らを助けるほど、私は慈悲深く無い。
「……じゃ、頑張って」
通信終了。
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朝日が昇る。
アキラの連絡によると朝9時に脱獄を始めるとの事だが……
「へっくち!春の早朝は寒いわね……」
……夜中の三時からずーっと待機している。
流石に寒い、どうしてこんな真夜中から待機し始めたのか。
自分でもちょっと疑問に感じる。
その時、無線機からコールが鳴る。
『こちら白猫、聞こえますか?』
そんな小さな声が聞こえて、私は欠伸をしながら答えた。
『聞こえる、もう寒いし眠いし……帰ってもいいかしら?』
『ダメです』
「ダメか」
落胆、当然冗談だが。
『そろそろ作戦開始時刻のようなので、念の為ご報告をと』
「こっちも準備完了、いつでもどうぞ」
『ふふっ、ありがとうございます』
アキラのこうした心の底からの『ありがとうございます』は初めてかもしれない。
そう思うと、少ししみじみとしたような……嬉しい気持ちになる。
「私はこれが終わったら海にでも行こうかしら」
『まだ春ですよ?』
「だからこそ」
一人で海の漣を聞きたい気分だ……最近、少し騒がし過ぎた。
『私も行きましょうか?』
「なんで指名手配犯の脱獄犯と一緒に海に行かなきゃならないのよ、シッシッ」
『それは残念』
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しばらくして、矯正局がさらに明るくライトで照らされた。
同時に警報が鳴り響き、パトカーの音が何処からともなく集まってくる。
仕事が始まった。
「さて、ちゃちゃっと終わらせるかね」
スイッチを押すと黒煙がモクモクと上がって至る所でバチバチと炸裂音が鳴り響く。
(これで普通車の増援はしばらく身動きは取れないはず)
矯正局に向かう為の道は全てC4とクレイモアで塞いだ、最低でも15分は稼げる。
しかし問題はもう一つある。
(ま、こんな子供騙しじゃ装甲車は防げないか……)
何台かの装甲車はC4の爆破を突破し、矯正局に向かっているのだ。
その為には……
引き金を引く。
数秒後に装甲車は黒煙を放ちながら横転。
『何者かが援護しているぞ!?』
『位置だ!位置を探れ!』
『絶対に囚人を逃すな!』
傍受している無線からはそんな怒り狂った声が聞こえる。
───対物ライフル。
この時のためだけに持ってきた物だ、市販品を改造したものだが神秘を込める事は不可。
一撃ぶっぱなせばあらゆるモノを吹き飛ばす、例えそれが装甲車だろうと戦車だろうと、何でも吹き飛ばして破壊する。
「朝っぱらから大変ね」
再び引き金を引くと装甲車は再び大破。
同時にまた無線機からコールが鳴る。
『こちら教授、聞こえますか?カラスさん』
聞こえたのは少し幼さを感じるような若い声。
まずアイツでは無いだろう。
「あー、貴方が白猫の友人?」
『ニヤニヤ教授と申しておきましょうか、どうぞよろしくお願い致します』
「なんでもいいけど今回私が援護するのは白猫だけ、貴方を支援する気は無いからそこのところよろしく頼むわ」
『ええ、存じていますとも……ところでヴァルキューレの公安局が貴方の居場所を特定した事はご存知ですか?』
「ええ、そしてこの通信を傍受している事も知っている……でもあの連中は私の顔を見ることもないわ」
懐に隠しておいたあるものを被る。
『と、言いますと?』
「私は白猫から泥棒術を教わった、それだけの事」
『成程、それはそれは……凄く楽しそうですね』
教授も意図を察したのか、楽しげに笑う。
「奴らが私の顔を見れば腰を抜かす事になる」
「突入するぞ!」
「手榴弾っ!」
ビルの屋上の扉が破壊され、数名のヴァルキューレ生徒が突入してきた。
「手を挙げろ!ヴァルキューレ公安局だ!」
「…………」
「っ!?」
しかし生徒は私の顔を見るなり、酷く動揺した。
手を震わせて、『ありえない』といった顔つきで───
「きょ……局長!?」
「…………」モチモチモチモチ
「…………あの、頬をモチモチするのいい加減やめてもらえる?」
「あまりにも揉み心地が良いもので」モチモチモチモチモチモチ
「そういうモノを何か盗んでくればいいじゃない」
「そうですね、今宵は貴方を盗ませて頂こうかと」モチモチモチモチモチモチモチモチ
「歯ァ食いしばって」
良かったら感想とか評価とか欲しぃなぁ…………って……
ユナのif外伝いる?
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いぃらないですねぇ……
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欲しい