ゲマトリア所属生徒『西条レイナ』   作:ガガミラノ

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白猫が化けてくるぞっ

 

 

 

 

「貴方の友人はやはり私達と似た者同士のようですね」

 

 

 二人は煙を背に歩む。

 

 金髪の幼女は杖を立てて、微笑んだ。

 それを見て白猫は微笑む訳でもなく、ただ少しの憂いのような表情を見せた。

 

 

「ええ、そして私達よりも深い闇にいる方だと私は考えています」

 

「ユニークで、話し方に優しささえ感じるのに……何か恐ろしい何かを持っている、そういう印象です」

 

「実を言うと私ですら、彼女が何者か分からないのです」

 

「ほむ、それは意外でしたね……貴方なら何か知っているものかと」

 

「いいえ、彼女が何者か、何を抱えているのか、何故私と同じ感性を持つか……何も分からないのです、ただ───」

 

 

 足を止めて、一言。

 

 

「ただ、彼女は美しい……」

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「局長!?」

 

「バカ!変装に決まっているだろ!」

 

「撃て!怯むなッ!」

 

 

 ヴァルキューレの連中の怒号が屋上を響かせる。

 

 

「もっと動揺してくれてもいいじゃない……はあ」

 

 

 持っていたスナイパーライフルを投げ捨てて、煙幕弾を投げると辺り一面に煙が広がる。

 

 

「っ!?」

 

 

 ここまで警備を引き付ければ何とかなるだろう。

 もしもこれでヘマをコいて捕まったとなるのならもう知らない、勝手に頬をモチモチされる事も無くなるだろうし。

 

 

 ビルの屋上から駆け出して、そのままするりと流れるように飛び降りる。

 

 

 

「なっ!?飛び降りた!」

 

「パラグライダーだ!きっと慈愛の怪盗の回し者に違いない!」

 

 

 

 半分正解。

 私はパラグライダーの扱い方は知っているが、そんな小賢しくて的になるような物を今持ち合わせていない。

 

 

 正解はというと……

 

 

 

 

「……あー、くそ、いざやるとなると───」

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「おや、レイナ……その手の傷は?」

 

 

 血をダラダラと流しながら私はある場所に帰ってきた。

 黒服はそんな私を気にするように、問う。

 

 

「肝心な止血剤を忘れたのよ!」

 

 

 八つ当たりするように怒鳴る私に黒服は笑った。

 

 

「脱獄の手伝いですか、貴方に友人がいたとは……」

 

「いて悪い!?」

 

「クックック、そうカリカリせず……」

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、痛い……鎮痛剤を打たなければ。

 

 

 

 

 

「…………いったいなぁ……」

 

 

 注射器を刺す。

 怖いけど、怖いけど……嫌だけど……やらなければ、耐えられない。

 

 ああ、カッコつけてやったがとんでもなく痛いし、爪の手入れが大変だ……

 ……もう二度とやらない。

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 その後私が脱獄を手伝った連中は『七囚人』と呼ばれるようになった。

 もちろん私の正体がバレる事は無く、無事に指名手配犯になることも無かった。

 

 だが、問題が幾つか。

 

 

 

「…………あんの白猫いつになったら連絡返してくるのよ」

 

 

 あれからアキラとは連絡が取れず、芸術品未だに私の家の中を埋めつくしている。

 しかし飾っているとは到底言えず、ただ引越し直後のダンボール箱をとりあえず置いているような状態だ。

 正直生活しづらくて仕方ない、一つ一つが何億もするものだから扱いに気をつけなければ。

 お陰様で私は一夜にして一流芸術コレクターになってしまった……あと自分で言うのもなんだが普通に一流芸術品がこんな乱雑に置かれてるのはよくないと思う。

 

 

 もう一つは───

 

 

 

「廃墟?」

 

「廃墟に確かに存在するアンドロイドの事はご存知ですね?」

 

 

 …………そう、私はこの後しばらくシャーレに居候する事になるのだ。

 つまり海へ行く機会を一切失った、行きたかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

(筆はここで止まっている…………)

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「あ────!!もう!!やだ──ー!!」

 

 

 ''どうしたの!?''

 

 

 叫び声を聞いて私はすっ飛んでオフィスへ向かうと、オフィスにはペンを握ったレイナと机の上には閉じられた本がある。

 レイナは頭を抱えて、叫んだ。

 

 

「先生!海行きたい!」

 

 

 ''それなら今度ヒフミ達と───''

 

 

 私が続きを言う前に、レイナは廊下を指す。

 

 

「あとアレを何とかして!!」

 

 

 ''えっ!?ゴキ───''

 

 

「違う!!アレはアレ!!」

 

 

 ''えぇ……''

 

 

 何が何だか分からないが、こんな自暴自棄になっているレイナはかなり珍しいだろう。

 

 

「あの時無理矢理にでも持ち帰らせれば良かった!!」

 

 

( ''今日のレイナも可愛いなぁ……'' )

 

 

 そうデスクチェアに座りながら達観していると、ある事を思い出す。

 

 

 ''あ、そういえばこの後来客の予定があるんだけど……''

 

 

「来客!?誰!?」

 

 

 半狂乱のレイナは自分の髪をわしゃわしゃと弄りながら不機嫌オーラ丸出しで聞いた。

 

 

 ''ワイルドハントの子らしくて、レイナに用があるみたいだよ?''

 

「ワイルドハントに知り合いなんかいないわよ!」

 

 ''でもレイナに預けてた荷物を回収しに来るって……''

 

「…………荷物?」

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「初めまして、ワイルドハントから来ました、寮監隊のミリアと申します」

 

 

 一時間後、シャーレの扉を薄ピンクの髪色をした猫耳の生徒が現れた。

 生徒は緑色の服を着ており、丁寧に、そして優雅さを感じる雰囲気で挨拶をしてくれた。

 

 

 ''いらっしゃい''

 

「………………はぁ」

 

 

 一方レイナは目を覆ってため息を吐く。

 彼女がレイナの友人だろうか?

 

 

「本日は友人のレイナさんに預けていた物を回収しに来ました」

 

 ''レイナに預けていた物って?''

 

「具体的に言えば芸術品ですね、七囚人の脱獄が発生して一時的に一部の芸術品を避難させる事になりまして……」

 

 ''それがレイナの元だった……って事?''

 

「はい、そして最早七囚人の対策が完全になった現在、最早レイナさんの元にある芸術品を回収する事が出来るようになったので、こうして回収に伺わせに頂きました」

 

(どの口が言ってんだコイツ……)

 

 

 レイナの方を見ると物凄く面倒くさそうな顔をしている、ハナコが暴走している時と殆ど同じ顔だ……

 

 

 ''レイナに友達がいたなんて初耳だったよ''

 

「バカにしてるようにしか聞こえないんだけど」

 

「ふふっ、確かにレイナさんは変人気質ですから」

 

「どの口がッ!というかさっさとあの芸術品持ってって!邪魔で仕方ないのよ!」

 

 

 レイナは両手でミリアの胸ぐらを掴んで揺さぶる。

 ミリアはそんなレイナを嫌がるわけでも怯えるわけでもなく笑うのみ。

 

 

 

 

 

 ''あ、もしかしてさっきレイナが言ってたアレって……''

 

「…………芸術品よ」

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「レイナさん、そちらの芸術品はこちらにお願いします」

 

「…………」

 

 

 丁寧に、慎重に、レイナはミリアを睨みながら箱を運ぶ。

 

 レイナの部屋にあった芸術品は全て本物のようで、丁寧に梱包された箱などがトラックへ運び込まれる。

 

 

 ''凄く目つきが悪い……''

 

「アキ───ミリア、貴方後で覚えておきなさい」

 

「そんな……私が一体何を……!」

 

 

 よよよ、と嘘泣きをするミリアにレイナは怒鳴った。

 

 

「この芸術品の山でしょうが!どう考えても!いつまで経っても回収しに来ないしやっと来たと思ったら私じゃなくて先生に連絡して来るし!」

 

 ''確かに、どうして知り合いのレイナじゃなくて私に連絡したの?''

 

 

 言われてみれば確かにそうだ。

 友人であるのなら、どうしてレイナではなく私に連絡して来たのだろうか。

 

 

 ミリアは微笑んで一言。

 

 

「ドッキリです」

 

 ''ドッキリなら仕方ないね''

 

「二人とも歯ァ食いしばれ」

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「これで積み出しは終わりですね、お疲れ様です」

 

 

 最後の荷物がトラックに積み込まれ、そのまま何処かへ走り去ったのを確認して……レイナは一言。

 

 

「もう芸術品は二度と持ち込ませないから」

 

「素敵だったでしょう?」

 

「そういう問題じゃなくて」

 

「ふふっ、冗談です……」

 

「冗談とかじゃなくてさ」

 

「はい」

 

 

 そんな漫才に似た掛け合いを……ミリアはレイナの頬を背中から揉みながらしていた。

 

 

 ''す、すごい……レイナの頬をあんなにモチモチするなんて……''

 

「やめて」

 

 

 ミリアはあのレイナの頬をモチモチと揉んでおり、それに対してレイナは文句を言ってミリアと距離を取った。

 

 

 ''どうやってそんなに頬を揉めるの?''

 

「意外と簡単ですよ、こうスルリと間合いに近づいて」

 

「来るな」

 

 

 ミリアは速やかにレイナの目の前に立ち───

 

 

「背後に立って、こう……」

 

「するな」

 

 

 そのままヌルりと背後に回り、頬を揉む。

 

 

 ''なるはど、今度私もしてみよう''

 

「………………」

 

 

 レイナはそのままミリアに頬を揉むのを呆れつつ、受け入れていた。

 

 

「満更でも無さそうなのが良いんですよね」

 

 ''分かる''

 

「二人揃って死にたいの?」

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「どういうつもり!?なんでワイルドハントの寮監隊なんて嘘ついてまでここに来たのよ!」

 

 

 先生がいないタイミングを伺って、私はアキラを問い詰めた。

 しかしアキラは驚いた顔をして一言。

 

 

「それは嘘ではありませんよ?」

 

「は?」

 

「私は今、ワイルドハントの寮監隊として在籍していますが……」

 

「はぁ!?」

 

「勿論その為の偽の身分ですよ、公には私はミリアという名前になっています」

 

「……じゃあ怪盗業はもう辞めるの?」

 

「愚問ですよ」

 

 

 やれやれと呆れた様子のアキラを見て私は少し嬉しくなったような気がした。

 

 

「そういえば貴方こそどうしてシャーレの先生の元に?人の心が欲しいだけのようには見えませんが……」

 

 

 机上に置かれたカップ一杯の紅茶を一口飲み飲んで、ため息。

 

 

「仕事の関係よ、先生にはこの事絶対に言わないでね」

 

 

 私が釘を刺すように睨むとアキラは「分かりました」と言い微笑む。

 都会の騒がしさが窓越しから聞こえる中、彼女は真剣な顔をして私に言う。

 

 

「さてお互い乙女の秘密を晒したところで……一つ質問とお願いがあるのですが」

 

「……もう助けてやらないし、荷物も運ばせないから」

 

「いえ、そうではなく……ええ、まずはお願いからの方が良いでしょう」

 

 

 

 

 

「この後、私と先生を二人きりの状況にしてくれませんか───「どうして?」

 

 

 

 

 私はその言葉を聞いてすぐさま、即答するように質問した。

 

 

「本当に気に入っているのですね……」

 

「……癇に障るけど、気に入ってしまっている自分がいるわ」

 

 

「ふふっ……お気になさらずとも、ただの確認ですよ、あの方が私達の感性に相応しい人物か見定めたいのです」

 

「…………はぁ」

 

 

 ため息を零しながら、目を覆った。

 

 

「そして質問というのは────」

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「お疲れ様です、先生」

 

 ''ミリアもお疲れ様''

 

 

 私と入れ替わる形でレイナは何処かへ走り去っていった、ミリアが言うには『電話が来た』らしい。

 

 

「レイナさんのお陰でなんとか七囚人から芸術品が奪われる事態は避ける事が出来ましたし……本当に感謝しかありませんね」

 

 

 七囚人というと、ワカモのような矯正局から脱獄した生徒の事だろうか……いや、それならどうして七囚人が芸術品を奪いに来るのだろうか?と、疑問に思った私はミリアに問う。

 

 

 ''そういえばどうして七囚人が芸術品を奪いに来るの?''

 

「おや、先生はご存知ではないのですか?」

 

 

 目を丸くしたミリアはすぐに少し険しい表情で語った。

 

 

「自分の信条をモットーとして華麗に芸術品を奪う七囚人……『慈愛の怪盗』ですよ」

 

 ''知らないなあ、私は最近ここに来たばかりであんまり詳しくないんだ''

 

「それはとても恐ろしい方です、煙幕やトラップを使って撹乱し、あれよあれよという間に芸術品を盗んでいくのです」

 

 ''それは凄いね''

 

 

 ミリアの説明を聞いた私がただ一言『凄いね』と言うとミリアはさらに驚く。

 

 

「凄い……のですか?」

 

 ''凄いと思うな、簡単に出来る事じゃないし……あ、物を盗む事は良くない事だからね!?''

 

「不思議な方ですね、犯罪者なのに……会った事も無いのに『凄い』という評価を下すなんて」

 

 

 私はミリアに対して笑いながら、こう言った。

 

 

 

 

 

 ''きっとその子は芸術が好きで好きで仕方ないんだと思う''

 

 ''芸術が好きで、どうしようもない程好きで……あまりにも好きだから暴走しちゃってるんだろうなーって……''

 

 

 

 

 

 そんな言葉を聞いたミリアはまた険しい表情になって───

 

 

「…………貴方くらいですね、慈愛の怪盗にそのような評価を下す方は」

 

 ''あっ!?ごめんね!?良くない事だからやめてほしくはあるけど……!''

 

 

「ふふっ……流石レイナさんが見込んだ方……」

 

 

 そ、そうだった……ミリアはその『慈愛の怪盗』から芸術品を守った生徒なのだった。

 少し言葉選びを間違えただろうか、反省しなければ……

 

 話題をズラすように、私は焦りつつも聞いた。

 

 

 ''そ、そうだ、ミリアはどうしてレイナと知り合ったの?''

 

「ある美術館で偶然知り合い意気投合し……といった感じでしょうか」

 

 ''レイナが美術に興味があるなんて意外だなあ''

 

「あの方は素晴らしい芸術的感性を持っていますよ?私が見るにキヴォトスでもトップクラスのセンスをお持ちかと」

 

 ''そんなに''

 

「正直、私は彼女と共に芸術を描きたいのですが……あの方は気難しい性格のようで」

 

 

 その言葉を聞いて、私はホッとした。

 私以外にもレイナに対してそんな言葉を向けてくれる人がいる事実に、レイナを受け入れてくれる人がいて。

 

 

 私はその事実を聞いて、暫く考え……ある提案をした。

 

 

 ''……そうだ、ミリアさえ良かったら───''







「貴方は一体、何者なのですか?」

「私は西条レイナよ」


━━━━━


''もしも私がレイナの傍にいてあげられないような事態が起きたら……''

''レイナの事を、よろしくね?''







良かったら感想とかくだちゃいな!!

ユナのif外伝いる?

  • いぃらないですねぇ……
  • 欲しい
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