聖園ミカにTS転生した 作:魔女じゃんね☆
「ひぃん……。ミカちゃんごめんね……」
「アハハ★ ユメちゃんだし別に気にしてないよ」
アビドス最強の生徒、小鳥遊ホシノの先輩にしてアビドスの卒業生、梔子ユメはポンコツである。それはもうどうしようもない程のポンコツである。呆れるしかない程のポンコツである。演技とさえ思えない程の酷さである。
小鳥遊ホシノが1を聞いて10を理解し、100の成果を上げられる生徒だったとすれば梔子ユメは1を聞いて1を理解し、10の突飛な行動を起こして100の問題を起こす様な人物なのだ。キヴォトスのような特殊な場所でなければ卒業どころか留年、最悪の場合は退学になっていたかもしれない。
それ故に、ユメは卒業後の就活に失敗していた。大失敗と言っても良い具合であり、ブラック企業からすらお祈りメールを受け取るレベルである。とはいえこれには自身のポンコツだけが招いた結果ではない事だけは擁護出来る。
先ず、アビドス高等学校の卒業生という事で書類落ちする場合が多い。これは企業の間ではアビドスの土地をカイザーコーポレーションが狙っている事が知られているためである。カイザーコーポレーションも嫌がらせも兼ねてアビドスの卒業生にけがを負わせるようなことをしている。アビドスの過疎化を進める事が目的であり、その弊害をユメは諸に喰らっているのだ。
次にユメが聖園ミカから支援を受けていたという事も響いている。聖園ミカの凶暴性は広く知られており、彼女に目をつけられた結果社員ごと駆逐された企業も少なくない。そんなミカとつながっているユメにもしもの事があった場合、自分達にもとばっちりを受けるのではないか? そう言った思いからユメを受け入れようとする企業は少なかったのだ。
そして、そうやって面接までこぎつけた企業もユメのポンコツぶりを見て不採用を決定するのだ。カイザーコーポレーションの嫌がらせと聖園ミカの悪名、そして自身のポンコツが組み合わさった結果、ユメはフリーターにすらなれなくなってしまったのだ。
生徒会長という地位もこれらの前では無いに等しく、ユメは一番の友人であるミカに泣きつく結果となったのだ。流石にホシノに泣きついてドン引きされるような事にはならなかったようだ。
「それじゃ、仕方ないから私が雇ってあげるよ★」
「ほんと!?」
そんな状況のユメを流石に哀れに思ったミカは仕方なく、仕方なく! ユメを使用人として雇う事を決めた。どこかの会社に放り込んでもいいがその場合、自分が暴れるたびにユメの立場は無くなっていくだろうと思っての事だった。
とはいえユメに使用人としての仕事が出来るかと言えば怪しいとミカは考えていた。最悪の場合、手間が増えるだけで雇った事を後悔するかもしれないとユメには失礼だがそう断言できる程の予想をしていた。
何なら嫌がらせも兼ねてゲヘナでなんちゃってアウトローをしているピュアゲヘナに押し付けてもいいかもしれないと思う程には信用をしていない。長年の付き合いでなければ見捨てていただろう。
「ユメちゃん。一応確認するけど掃除や片づけをお願いするからね? 破壊や荒らしをするわけじゃないからね?」
「ミカちゃん。流石にそんなことは私でもしないと思うけど……」
「ユメちゃん、本当にしないでね?」
「ひぃん……」
トリニティの寮はきちんとした清掃員がいるために必要ないため、ティーパーティーで確保している秘密のセーフハウスの一つの掃除要員として雇ったがミカは不安で不安で仕方がなかった。あまりにも不安すぎて授業は手につかず、いつも以上にゲヘナ生をぼこぼこにしてしまう程だった。
「ミカさん。一体どうしたのでしょうか? いつもよりも不安そうですが」
「ナギサ? あれで不安そうにしているというのかい? どう見ても生き生きとしているようにしか見えないのだが……」
そんなミカを見たナギサは的確にミカの心情を理解し、セイアはただただドン引きしていたがそんなことも視界に入らない程ミカは心配だったがそれらは杞憂で終わることになった。
「わーお」
セーフハウスを訪れたミカが見た光景は廃墟と化した部屋ではなく最後に見た時よりもきれいになった部屋であった。どうやらユメは掃除に関してはきちんと出来る能力はあったらしくミカは予想外の光景に何も言う事が出来なかった。
「ふふん! 私もこのくらい頑張れば出来るんだよ!」
でかπを誇らしげに張るユメに対してミカも彼女の評価を改めた。無論、良い方向にであり、これならば使用人として雇い続ける事も出来るだろうと考えていた。
「それじゃユメちゃん。この調子で今後も掃除お願いね★ あ、住み込みOKだし壊さなければ調度品も好きに使っていいからね★」
非常事態でもない限りは使用することのセーフハウスだ。ユメがやらかしても問題ないと考えての配置だったが結果的には良い方向に転んだとミカはルンルンな気分でセーフハウスを後にしたがこの時のミカは知らなかった。今日は
そして、数日後に訪れる事になるミカはユメのやらかしを見て雇った事を後悔することになるのだった。
「ユメ先輩……」
2年生となり、後輩が2人も出来たホシノはユメからのモモトークを読んで呆れていた。色々あって気まずいミカに雇われたことは知っていたがミカからお説教を受けたと泣いている絵文字付きで来ており、変わらない様子のユメに呆れと懐かしさを感じていた。
「ホシノ先輩? どうかしたんですか?」
「んー? 何でもないよ。少し……結構頼りない元先輩から連絡が来ただけだから」
後輩の一人である十六夜ノノミにホシノはそう返した。ユメ程度の人物が就職先を見つける事は最早アビドスでは不可能になっていた。産業はほぼ崩壊し、インフラは修理するたびに砂で埋もれて台無しになる。日に日に人口は減っており、自分たちが死ぬまでにアビドスから人はいなくなってしまうと思う程に衰退が著しかった。
アビドス高等学校自体も10億近い借金のせいで首が回らなくなりつつあり、近いうちに学校を手放さなければならなくなるだろう。
人口減少で滅びるか、借金のせいで滅びるか。アビドスはそのどちらかの未来に向かって突き進んでいるのだ。
「さて、今日も頑張っていこー」
だが、ホシノはそんなことをさせる気はない。幸い、ユメ先輩が卒業しても聖園ミカの支援は続いていた。それとミカが定期的に不良をシバきにアビドスまで来て暴れる為に最近では不良はほとんど駆逐されていた。これらの陰でホシノは借金問題の解決に全力を注ぐことが出来ていた。
後輩も入り少しずつだがいい方向に進み始めている。この流れを止めない為にもホシノはアビドスの未来の為に今日も邁進するのだった。