聖園ミカにTS転生した 作:魔女じゃんね☆
「うーん。どうしようかなぁ……?」
その日、聖園ミカは困りに困っていた。普段は多少の困難などナギサの胃を巻き添えに破壊して突き進むミカは多少の事で悩む事など存在しない。悩んだら即行動! がミカのモットーだからだ。
だが、今日ばかりはそんなミカでもどうしようもない事だった。
「これユメちゃんがクソ雑魚なだけじゃないよね?」
「ひぃん……。私だってそこまでではないと思うよ?」
ミカの後ろに回り込み、泣きそうになりながらミカの髪とハサミを両手に持っていた。そう、今ミカはユメに頼んで散髪をしていたところだ。
普段のミカはあまり髪に対して気にしたことはなかった。女性らしく多少のオシャレはする事があれどそれもこだわりという物は薄く、結構な頻度でナギサに手入れをしてもらう程だった。基本的に彼女の髪型はその日のナギサの気分で決まる事が多いのだ。
だが、それでも最近は髪が長くなりすぎて鬱陶しいと感じる事も増えてきた。ミカの髪はとてつもない硬度を誇っており、引っ張られたくらいではちぎれる事も根元が抜け落ちる事もない。特にとある日にはゲヘナで暴れている際にカスミに引っ掛かってそのまま気付かずに飛翔したことだってあった。その時のカスミは情けないことに体中からあらゆるものを空中にまき散らしながら泣きわめいていた。ちなみにその件でミカが謝ることはなかった。
そんなわけでユメに対して散髪するようにお願いをしていたのだが……。
「ひぃん。やっぱり無理だよぉ……。全然切れないよぉ……」
ユメはそう言ってハサミに何度も力を入れるがそのたびにガッ! ガッ! という髪の毛から発せられるとは思わない音を響かせるのみだった。
そう、ミカの髪の毛は最早ハサミで切れる程軟な代物ではなくなっていたのだ。その硬度は鉄以上の何かであり、たかがハサミ程度で切りつけられるわけがなかったのだ。
「困ったなぁ……」
とはいえさすがにこれにはミカもお手上げだった。このままでは散髪もまともにできなくなってしまい、伸び放題になってしまう。そうすれば髪の毛の重量は嵩み、体重移動が難しくなるだろう。その程度でミカがどうにかなるわけではないとはいえ鬱陶しい事には変わりはない。
いっそのこと自らの腕力で引っ張るとも考えたがそうなれば途中で切れるどころか根元から引きちぎられる可能性が高い。前日までは普通だったミカの髪型がいきなりツルツルになっていたらナギサは発狂してしまうだろう。ミカはそうなる事は嫌だった為に選択肢には入らない。
「そうなるとやっぱりミレニアムに頼む? でもナギちゃんに言われて出禁にされちゃったからなぁ」
ミカの言葉にユメは苦笑する事しか出来ない。カイザーPMC基地を調べる為にミレニアムに訪れて以来技術的困難が出てくればミレニアムに頼むという事を覚えたミカはそれはもう利用した。利用しまくった。アポイントや自重なんて言葉を知らないミカによってミレニアムは一時期大混乱に陥ったのだ。勝手に訪れては目的の人物に無理やりお願いをしてあり得ない期間を指定して終わるまで引っ付いており、ミレニアムの生徒達に恐怖を植え付けていたのだ。
様々な方法で逃れようとしてもミカの力の前にはそれらすべてが無意味に終わった。特に一番ひどかったのがセミナーの奥にある反省部屋という名の大金庫を力でぶち破り、それによってセミナーの重要資料が全て物理的に吹き飛んだ時であった。当時のセミナー会長はそれによって胃を破壊され辞職。調月リオが跡を継ぐことになったのだ。これにはさすがにミレニアムとして苦情を入れ、事態を重く見たナギサは恍惚とした表情でミカに注意を行ったのだ。
以来、ミカはナギサに課されたミレニアムへの出禁通行をきっちりと守っていたのだ。
「なら先生にお願いしてみるのはどうかな? 先生ってすごいんでしょ? きっと解決してくれるって!」
噂でしか知らないシャーレの先生に対するユメの評価はなんとも言えない状態になっていた。そもそも、出回っている情報が「彼の指揮の前には敵はいない」、「先生に敵対した生徒は地面に埋められて足を舐めまわされる」、「彼の入浴には生徒は裸でお世話をしないといけない」、「先生が望むなら生徒は甘んじて髪の毛の匂いをかがれないといけない」、「先生は生徒をペットとして扱う事が好きである」等ミカも到底信じられないような噂が出回っている為にユメは色々と凄い人という評価になっていた。
彼なら例え銀行強盗でも大企業相手に喧嘩を吹っ掛ける事も、遥か上空から裸でスカイダイビングでもしそうという謎の信頼感がユメには生まれていた。変態的な噂のせいでユメが先生に会いに行こうと思う事は一生ないと思われるが。
「そうだねぇ。先生なら何とかできそうかな? 最悪、先生経由でミレニアムに依頼すればいいし。それならナギちゃんも許してくれそう!」
そうなれば即時に行動しようとミカは立ち上がるとユメにお礼だけ言って家を飛び出していった。あまりにも早いミカの行動にユメはぽかんとする事しか出来なかったが既にミカの行動にはなれているユメは直ぐに再起動すると部屋の掃除を再開するのだった。
「先生! 髪切って!」
「”み、ミカ!?”」
そしてミカはまるでミサイルか!? とでもいうような速度で飛んでシャーレの壁に激突。無傷で内部に入るとミレニアムのセミナーの会計である早瀬ユウカと仕事をしていた先生に開口一番にそう言った。
シャーレがよく爆発するとはいえまさかこのような行動をする事は先生も予想外だったが修理費のねん出が一瞬で脳内に入り、胃がキリキリと痛み出した。
一方でユウカの方はミカの顔を見て表情が抜け落ちていた。彼女の脳裏に浮かぶはミカのせいで発生した膨大な修理費。壁や天井、床なんて彼女を止める障害にすらならず、不良がいれば建物ごとシバき倒し、ゲヘナの生徒がいれば容赦なく建物ごと破壊する。
ティーパーティーのナギサによってそれらの修理費とプラスして迷惑料が支払われているがミカがミレニアムに訪れるだけでユウカの胃はキリキリと痛み出してしまう程になっていた。それどころかミカがミレニアムに最後に訪れた時に限界を迎えて胃に穴が開き、少しの間入院することになっていたのだ。
ミカに関してもナギサによってミレニアムへの出禁が通達されてからは訪れる事は無くなり、漸く胃の痛みから解放されたと思った矢先の邂逅である。ユウカの表情がなくなるのも仕方のない事だろう。
「あ! 確か貴方ってミレニアムの生徒会の人だよね? ちょうどよかった! ミレニアムにお願いしたいことがあるんだけど……」
「おね、がい……?」
瞬間、ユウカはこれまでのミカの被害が一瞬でよみがえった。どこぞの怪獣王並みの被害にユウカの体は震え始める。
「? どうかしt「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」え、ちょっと……」
「”ゆ、ユウカ!?”」
突如として悲鳴を上げて猛ダッシュでシャーレを飛び出していくユウカにミカも先生も呆然とすることしかできなかった。彼女の逃げ足はミカでさえ驚愕する程であり、ミレニアムの底力を見せつけているようであった。
それから少ししてミカは先生経由でミレニアムにミカの髪も簡単に切れるハサミの開発を依頼。時間はかかったものの、無事に完成されたそれによってミカは最終手段の実行寸前で散髪を行う事が出来るようになったのだった。
因みに、そのハサミはミカを簡単に傷つけられる鋭利さを持っている為に普通のキヴォトス人相手だと凶器にしかならない為に普段は厳重に保管し、散髪以外では使用しないことを先生に注意される事になったとか。
因みにですがこれの最終話は一応決まっていて当然といえば当然ですが対アリウスとその後の後処理で終える予定です。何時になるかは未定ですが