聖園ミカにTS転生した 作:魔女じゃんね☆
治安が終わっているゲヘナだが一応生徒会と呼べる組織が存在している。その名は
そんなパンデモニウム・ソサエティーの頂点に立つのは羽沼マコトという生徒だった。
彼女は様々な経緯を経て今の立場にいるがその一方で風紀委員会の空崎ヒナを一方的に敵視しており、彼女や風紀委員会に対して様々な嫌がらせを行って
羽沼マコトという人物を知る者たちからはとても信じられないだろう。だが、とある少女に原因があると知れば納得せざるを得ないだろう。
「ヤッホー★ マコトちゃん。遊びに来たよ★」
「みっ!? みみみみみみみみみみみみ聖園ミカあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」
「アハハ★ セミみたいな変な声出して。折るよ?」
「はい! 黙ります!」
パンデモニウム・ソサエティーの建物の外壁をぶち破り、侵入してきた少女に羽沼マコトの挙動は目に見えて可笑しくなった。近くにいた棗イロハはソロリソロリと気付かれないように扉の方に向かって歩くが突如として視界から消えた少女、聖園ミカに両肩を掴まれたことで自らの運命を悟り、一気に抵抗を諦めた。
「イロハちゃんも久しぶり!」
「ミカさん、お久しぶりですね。今日のご用件は?」
「え? ないよ。強いて言うならゲヘナをシバいて来たから喉渇いちゃったからかな★」
「ならば適当に水でも持ってきますよ」
「うん! 良いよ!」
逃亡をあきらめたイロハはミカから少しでも離れる口実にお茶くみを買って出てミカの許可のもと部屋を出ていく。マイペースなイロハだがこのまま逃亡することはない。そうなったら最後、今も入院中のチアキのように青春の一部を病院で過ごすことになってしまうだろう。
そんな事は嫌だと思うイロハはなるべくゆっくり持ってこようと思いつつマコトに心の中で合掌した。
さて、ミカとともに二人きりにさせられたマコトは胃が痛くて痛くてしょうがなかった。できることなら奇声を上げながらこの場から逃亡したいがそんな事は物理的に不可能だった。目の前のミカ相手にそんな事できるはずがないのだ。
マコトとミカの出会いはミカによるゲヘナ狩りが始まってすぐ辺りだった。当時のゲヘナは雷帝と呼ばれる傑物による統治が行われていた。そのためにミカの動きはすぐに捕捉され風紀委員会が即座に対処したのだ。
当時のマコトはそれでおしまいだと。バカなトリニティ生が無謀にもケンカを売ってきたと、それで終わると思っていたのだ。
『この程度の戦力で私を倒せると思っているの? 随分となめてくれるね』
しかし、その予想は即座に崩れることとなった。雷帝がいる建物にミカが強襲を仕掛けてきたためである。彼女の両手にはボロ雑巾のごとくボロボロになった風紀委員会の生徒が握られていた。
それからは悲惨としか言いようがない状況が続いた。当時、雷帝が組織していた親衛隊員は雷帝を守ろうと動いても次々とやられていき、建物はドンドンボロボロになっていく。
辛うじてミカの暴力を逃れたが逃げることも出来ずに最後まで見届けるしかなかったマコトはミカと雷帝の戦いを観ていることしか出来なかった。
ミカが拳を振るい、雷帝が武器で応戦する。ゲヘナの頂点に君臨するに相応しい実力を持った雷帝はミカに大きな傷をつけて純白の戦姫を真っ赤に染め上げていく。
しかし、そんな雷帝もミカには及ばなかった。最終的に押し勝ったミカにより雷帝は地に伏し、彼女の独裁政権は崩壊した。
その圧倒的な力を間近で見続けたマコトの心はその時点で折れていた。このままミカに見つかる事なく縮こまっていたいと願っていたがそれは叶わなかった。
『あれ? まだ一人残ってたんだ……。そうだ! ねぇ、君。君をゲヘナのトップにしてあげる。良かったね! 今日から君がゲヘナの頂点だよ★』
『へえ?』
そんなミカの思い付きによりマコトは雷帝の後継者としてゲヘナのトップに君臨することになった。しかし、当時のマコトは雷帝に仕えるただの生徒でしかなく、反発はすさまじかったものの、マコトを就任させたのが聖園ミカ故にその反発も次第になくなっていった。それと同時にマコトはゲヘナの政治に追われる日々を送ることになった。
『何故だ……! 何故私はこんな目に……!』
『大丈夫大丈夫! 珍しくナギちゃんが手放しで喜んでくれたし連邦生徒会長さんもほめてくれたんだよ? なんか少し後悔しているとか言ってたけどね★』
そりゃこんな化け物を抑えられる人物がいなくなったためだろ、とマコトは心の中で叫んでいた。無論、それを本人に言うつもりは無い。ミカがその程度で怒るような人物ではないのは付き合いの中で分かっているがそれでいて変なところで短気な面があり、何処に核地雷が埋まっているか分からなかったのだ。
「いやぁ、それにしてもまさかカヨコちゃんが部活動を止めるなんて思わなかったよ★ 言ってくれればいいのに!」
「……ソウデスネ」
あんたが怖くて逃げたんだよ、とは口が裂けても言えない。雷帝政権下ではマコトよりも高い地位にいた鬼方カヨコという生徒は聖園ミカによって体と心がバキバキにへし折られていた。結果、彼女は聖園ミカから逃れるように部活動を止めてしまったのだ。
最近では勝手に起業した奴等と一緒にいると情報が入ってきているがカヨコの経歴を知っているマコトは追う気にはなれなかった。少しくらい羽目を外しても問題は無いだろうと判断したからだ。何故か風紀委員会では彼女たちを執拗に追いかけまわしているらしいがマコトはそんなことをするのならミカの相手をしてくれと切に願っていた。
聖園ミカは不自然なほどに風紀委員会とかかわりを持とうとしない。ゲヘナ生徒をシバいている途中で鎮圧しに来た風紀委員のメンバーを叩き潰すことはあってもマコトに会いに来ているようにミカから訪れる事はない。それだけマコトを気に入っているのか体の良いサンドバッグとでも思っているのか、風紀委員会には何かあるのか、マコトには分からなかった。
「そういえばサツキちゃん見ないね。チアキちゃんは?」
「サツキは買い出しに行っていて暫く返ってこないです。チアキに関しては、まだ入院中です」
「あ、そうなんだ。ついつい怒ってやりすぎたかもしれないとは思っていたけどちょっとやりすぎちゃったみたいだね★」
あれはちょっとやり過ぎたとは言わないんだよ! とマコトは内心で叫んだ。四肢は完全に折れ、体中が青あざだらけで真っ青になっていたチアキの姿が脳裏に思い浮かぶ。あれは雷帝への襲撃以来の衝撃だったとマコトは体が震えだす。ミカの機嫌が悪かったこと、チアキがゲヘナ生だったこと、失礼な態度だったことが合わさった結果であった。大切なカメラは粉砕され、心と体はバキバキに折られている。果たして退院は何時になるのか。それまでにはミカへの恐怖も薄れてくれていればいいがとマコトは願った。
「ミカさん。水ですが持ってきましたよ」
「さんきゅ★」
ミカは徐にイロハが持ってきたコップの水を一気に飲み干した。喉が渇いていたというのは本当のようでここは給水所じゃないんだよ、とマコトは嘆く。
「ぷはぁ★ うん! 喉も潤ったしもう一回暴れてくるからまたね★」
コップをイロハに返すとミカは自らが開けた穴から飛び出していった。幾度目かもわからない修理の依頼も手馴れてしまっている。頼む業者もゲヘナではよくあることとはいえ同一人物にここまでやられるのは中々経験したことがないだろう。
ミカによる被害は全てトリニティのティーパーティーが補填してくれている。最初は申し訳なさそうにして胃を押さえていたミカの幼馴染というティーパーティーの生徒も今では少し快感になってしまっているのかたまに女性がしてはいけないような酷い顔をして連絡をしてくることがあった。
ミカの行動で胃をキリキリと痛めているマコトもいずれああなるのかと近い自分の未来を見せられているようで更に胃が痛くなるのだった。
羽沼マコトがこの胃の痛みから解放されるのが先か、胃の痛みを快感に感じるようになるのが先か。どちらにせよマコトにはもう最悪の未来しか残されていないのだった。
この作品では雷帝の武力はミカに匹敵するレベルにしました。あのゲヘナを制した人物だし結構な武力を持っていたかもしれないと思ったからって言うのとミカの暴力で簡単に屈したという事にしたくなかったためですね。理由は特にないです。