聖園ミカにTS転生した 作:魔女じゃんね☆
ゲヘナ学園の自称アウトロー、陸八魔アルが彼女の事を知ったのは入学して間もない頃だった。この頃のアルはゲヘナの生徒とは思えないほど内気かつ真面目でおとなしい生徒だった。なんでゲヘナに入学したのかというくらいにはゲヘナの雰囲気に似合っていなかったがそれは本人の問題であり、疑問にこそ思えど突っ込む事ではないだろう。
そんなアルはその性格から友達を作ることも難しく、幼馴染のムツキ以外とはあまり話すことがなかった。そんな彼女はある日、下校中に不良の抗争に巻き込まれたのだ。
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
今とは違いまともに戦う事も出来ない彼女はただただ逃げ惑う事しか出来なかった。武器のスナイパーライフルはまともに使用したことも少ないために当たる可能性は皆無だった。
だから彼女は逃げる事しか出来ないがそれも長くは続かない。気付けばターゲットの一人にされており、壁際に追い込まれる形となっていた。涙を目じりに溜め、恐怖でガタガタと体を震わせる彼女の姿に今の姿を見る事は出来ないだろう。そして、不良達にとってはそんなアルの姿は一方的に屠れる弱者にしか見えなかったのだ。
「どこの生徒か知らねぇがゲヘナの洗礼を受けやがれ!」
「しょんべんチビってもしらねぇぞ!」
「ひ……!!」
最早これまでと思った時だった。彼女は突如として現れたのだ。アルと不良の間に舞い降りるように現れたその少女は純白のドレスと天使の如き羽が合わさりアルの目には女神のように映っていた。だが、対する不良達には悪魔の如き存在として映っていた。
「み、みみみ聖園ミカ……!!!」
「や、やべぇよ……」
「まだ死にたくない……!」
「アハ★ 人の顔見てそんな反応とかゲヘナはやっぱり失礼じゃんね」
よく見れば彼女、聖園ミカの手は真っ赤に染まっている。今しがたゲヘナをシバいた帰りだったのだろう。ミカは他を圧倒する強者の圧を纏いながら不良達に近づいていく。その姿は戦姫どころか覇王とさえ認識できる程強大であり、不良達は抵抗する気力を奪われ、その場に崩れ落ちる。
しかし、ミカの後ろにいるアルにはミカの姿は美しく映っていた。気付けばアルの顔は朱に染まり、神様を見るようなヤバい目つきをしていたのだ。
そこから始まった蹂躙劇も凄まじかった。まともに抵抗する事も逃げる事も出来ない不良達がミカの拳で次々と宙に舞い、地面に倒れ伏していく。銃弾すら超える威力のそれらをいくつも受けていく不良達の顔は悲惨なものになっていき、血だらけになりながらぴくぴくと体を震わせていた。
圧倒的な強者による戦闘とさえ言えない戦闘。アルはその姿にあこがれを持ってしまったのだ。一通りの掃討を終えたミカは手についた血をハンカチでぬぐいながらアルに声をかけた。
「大丈夫だった? 何処の学園の人かは知らないけどゲヘナは危ないから近づいちゃだめだよ?」
「あ、えっと……」
ミカにさえゲヘナの生徒と認識されていないアルは戸惑いながら本当の事を言うべきか悩んだ。とはいえミカの様子からゲヘナに対していい感情を抱いていないことは察せられ、最悪の場合はゲヘナ生だと言った瞬間に目の前の不良達のようになる可能性もあった。だが、ここで言わないで後から判明した時も怖い。目の前の不良達以上の悲惨な姿になりそうで。
「えっと、わ、私はゲヘナの生徒です……」
「ふぇ?」
結果、アルが選択したのは今伝える事だった。ミカにぼこぼこにされる時はされる時だと腹をくくったのだ。だが、ミカの方は本当にゲヘナの生徒だと思っていなかったようで目を丸くして驚いていた。
「え? 嘘でしょ? ゲヘナの生徒には見えないんだけど?」
「本当です。今年入学したばかりでその……」
入学してまだ半年も経っていないのだ。染まっていないと言えばそうだが大半の生徒は入学前からゲヘナらしい立ち振る舞いをしている。アルが完全に異端なのだ。
「……貴方の名前は?」
「え? ……り、陸八魔アル、です」
「アルちゃんね。ねぇ、トリニティに転校しない? ゲヘナにおいておくには凄くピュアだから」
「えぇ……」
まさか出会って即座に転校を提案されるとはさすがのアルも予想外だった。それだけゲヘナには似合っていないのだろうかとそれはそれで凹むがミカは内心など気にせずに続けてくる。
「だってアルちゃんはどう見てもゲヘナっぽさがないんだもん。角なんてトリニティでも中々見ないけど別に気にする奴なんていないしトリカス共がなんかしてきたらそいつらを物理的に折ってあげるから心配はいらないよ。私、こう見えても偉いから★」
そう言って胸を張るミカは少しどや顔をしている。様々な経緯の結果としてついた職で本人には思い入れはない。精々が幼馴染と一緒の役職についているといううれしさくらいだろう。そのせいで幼馴染はいつも胃に穴が開きそうな思いをしているが。
「い、いえ。私は……」
「まぁ、無理強いはしないよ。アルちゃんがこのままピュアなら手も出さないでいてあげるしゆっくり考えてね★」
ミカはそれだけ言うと羽を広げて飛び去って行った。ミカの抜けた羽が宙を舞い、まるで本物の天使のような美しさを纏っていた。
そんな光景にアルは目を奪われていた。そして同時に彼女の姿はアルにとって憧れとなった。
-弱きを助け、強きをくじく。そんな存在になりたい!
実際は弱かろうと強かろうとゲヘナ相手ならばシバき倒す化け物なのだが入学して間もないアルちゃんにそこまで知れというのは酷な話だろうがとにかく、この日以来アルは憧れの人に近づけるように努力を開始した。
メガネはコンタクトにし、同じように髪を伸ばして内気にならずに前を向くように心がけた。格闘戦は残念ながら才能がなかったために今まで以上に狙撃の腕を磨き上げたアルは幼馴染と留年していた先輩を誘って起業したのである。何でも屋である便利屋68を。その過程でアウトローに憧れるようになってしまったがミカへの憧れは残ったままである。
「これで成功して少しでも近づけるように、って思っていたのにどうしてこうなるのよおおおおおっ!!!」
「アハ★ アルちゃんにアウトローなんて向いてないよ★ 諦めてトリニティに転校してきなよ」
「なんでよおおおおっ!!!」
自称”アウトロー”な陸八魔アル。元来の性格の良さから気づけば正義の何でも屋として認識されてしまっており、今日も今日とて悪を裁くために活躍するのだった。
そして、自分が思い描いていた未来図とは違う現実に白目を剥いて悲鳴を上げるのだった。
Q.アルちゃんがシバかれてないのはなんで?
A.ゲヘナとは思えない程ピュアだから。なお他の便利屋はそうでもない模様。アルちゃんの社員だから見逃されているだけ。
因みに便利屋68は原作だとゲヘナで違法な組織となっていますがこの世界では合法です。
マコト「ゲヘナでも流石に学生時代からの起業は許されないぞ」
ミカ「は?」
マコト「いえ合法です違反してないですすいません助けてください」