聖園ミカにTS転生した   作:魔女じゃんね☆

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愛清フウカの場合

 ゲヘナというマンモス校の生徒達の食事事情をたった二人、いや実質一人で支えている愛清フウカは目の前で死んだような目で連行、もとい連れてこられた不良達と真反対にニッコニコの知り合いの天使を見て苦笑いを浮かべた。

 ゲヘナ給食部の部長をするフウカだがたった二人の部員しかいない上にもう一人の部員は料理をすればごはんとは思えない謎の生物を生み出す事になるために簡単な下ごしらえしか出来なかった。つまり、彼女一人でゲヘナ生徒達の食事を作っているのだ。

 そうなれば必然的に料理の質は犠牲になる。そんなことをしていれば量を用意できないからだ。しかし、そのせいで給食部の飯は不味いと不評を買い、罵倒を浴びる結果となった。ゲヘナが誇る二大テロリストの一角、美食研究会による定期的な拉致も合わさり改善される兆しは一切なかった。

 そんなフウカが天使、聖園ミカと出会ったのは偶然だった。料理の為の買い出しに出ていた際にゲヘナ狩りをしていたミカと鉢合わせたのだ。

 

『あれ? まだゲヘナ生がいるじゃんね★』

『ヒィっ!!!』

 

 フウカの耳にもミカの噂は届いていた。というよりもゲヘナに住む者なら知らない者はいないだろう。ゲヘナをまるで獣か何かと勘違い、正当な評価を下しているミカは狩りと称してちょくちょくゲヘナ生徒を病院送りにしていた。それに巻き込まれたくない為に万魔殿が主導する情報ネットワークが構築されており、ミカが出現すれば必ず分かるようになっていた。ちなみに、()()()それ以外でミカの情報を予測は出来ない上に気づけば発信源が病院送りにされる為に万魔殿以外の情報サイトは存在しないようになっていた。

 

『あ、あの! 私が病院送りになると給食が……!』

『給食? ゲヘナ生なら1月絶食しても問題ないじゃんね★』

『理不尽!』

 

 一体目の前の悪魔はゲヘナ生徒を何だと思っているのか。その辺のゲヘナ生よりも質が悪いミカにフウカはガクガクと体を震わせる。ただでさえ戦闘は苦手なのにキヴォトストップのミカに勝てるとは思えなかった。

 このままではゲヘナの食事事情は終わるとフウカは土下座をして必死に命乞いを始めた。それはもう話せることは何でも話した。給食部の事、予算の少なさ、普段からクレームの嵐だという事。気付けば愚痴ばかりを言っていたがそれでも何で助かるかは分からないと話せることは全て話していた。何なら自分やもう一人の部員のスリーサイズさえ言っていたかもしれない。

 

『え? 何それ。ちょっとドン引きなんだけど……』

 

 その結果、ミカから同情を通り越してドン引きされる事で病院送りを回避する事に成功した。流石のトリニティでもそんなワンオペの極みみたいな状況にはなっていない。少なくとも給食関連は。というかそんなことがトリニティで起こっていれば即座にミカが飛んできただろう。

 

『可哀そうだし見逃してあげるよ』

『ほ、本当ですか!?』

『うん。そんなことを聞いてまで病院送りにしたいとは思わないしね★』

 

 こうしてフウカは無事に助かる事が出来たわけだがミカとの関係性はこれでおしまいではなかった。むしろ始まったというべきだろう。

 翌日、なんと万魔殿より多額の予算がおりたのである。それどころか議長の羽沼マコト自身が土下座をして今までの非礼を謝ってくるほどであり、それには驚愕してしまっていた。

 

『ヤッホー★ 手伝いに来たよ』

『ヒェッ! ミカさん!?』

『こう見えて料理はおいしいってナギちゃんには絶賛されてるからね★ 任せてよ』

 

 その後にはミカが手伝いと称して食堂に現れて料理を手伝ってくれたのだ。ミカの手際はよく、いつもよりも早い時間で準備をする事が出来ていた。それに加えてフウカを攫おうとした美食研究会がやってきた際にはミカを見てUターンしてしまい誘拐される事が無かったのだ。

 

『ちょうどいいじゃんね★ 私の料理を食べていきなよ』

『ヒッ!? わ、私は結構でsムグ!!???』

『おいしいでしょ? 美味しくないなんて、いわないよね?』

 

 そしてそんな美食研究会の者達は無理やり拘束された上で()()()は完璧なミカの料理を無理やり食べさせられたうえで美味しいと言う事を強要されていた。暫くはトラウマとなるかもしれないレベルの脅迫だった。

 

『ヒッ!? みみみみみみみ聖園ミカーーーーー!???』

『なんでだよ!? 今日は学食が安全だって……!!』

『いらっしゃいじゃんね★ ここに来て何も食べずに帰る奴は許さないよ。クレーム言うのも許さないし残したりしたら……わかるよね?』

『『『ハイ……』』』

 

 その日はフウカにとってはとても素晴らしい一日となった。何時もなら罵詈雑言が飛ぶ学食はやけくそ気味か号泣しながらの美味しかったです! という声以外では話し声すらしない快適な空間となっていたのだ。おかげでいつもよりも出来の良い料理を提供できていただろう。

 因みに、聖園ミカの料理を食べた全員が顔を青くしていて無理やり飲み込んでいるように見えたがフウカは見ないふりをした。流石に藪蛇であることは理解できたからだ。手伝ってもらっている身としては文句など言えるわけもない。一応、()()()は完璧なのだから。

 

『でもやっぱり人手不足は深刻ね……』

 

 ミカとて毎日手伝ってもらえるわけではない。これ以降定期的にミカが訪れる事でゲヘナ学園内で最も静かな場所と化している為にクレーム関係の処理をしないで済むようになったとはいえ一人で料理を作るのは厳しいと言わざるを得なかった。

 それをミカに相談した結果が目の前で並ぶ不良達だった。

 

「ミカさん。この人たちは……?」

「私と同じ学校に通っていたラブちゃんと陽気な仲間たちだよ★ ヘルメット団っていう不良をやってるんだって」

「陽気……?」

 

 どう見ても死刑執行前の死刑囚にしか見えない程顔が真っ青だがミカが連れてきた時点でただ事ではないのは明白であるのでそれ以上は何も言わない。一つだけ言えることはこれで人手不足も解消されるという事だ。

 

「貴方達料理は?」

「やった事ないです」

「カップ麺にお湯入れるくらいなら……」

「服を切り刻むくらいなら」

「恋人を食べるための下拵えなら……」

 

 しかし、案の定料理経験者はいなかった。戦力として数えるにはまだまだ時間が必要だろう。しかし、それはミカも理解しているのかフウカの内心を理解しているように言った。

 

「暫くは私も手伝って彼女たちに料理を、最低でも下拵え程度は出来るように徹底的に仕込むつもりだから安心して★」

「「「ヒェッ」」」

「ん? 嫌だった?」

「「「そんなことは有りません! ものすごく光栄です!!」」」

 

 そんなミカたちの様子にフウカも大丈夫そうかなと判断した。ミカがいない時が心配であるがミカの不興を買うような事をするとは思えない。そんな度胸があるのならここまで大人しくついてきていないだろう。

 

「とにかく、これなら大丈夫そうね」

 

 フウカは明確に改善されていく給食事情に満足そうに笑みを浮かべた。その裏で積み上げられる半ば自業自得と理不尽な犠牲者たちに目をつぶりながら。

 




万魔殿が出すミカの情報が正しい? 一体いつ誰がそんなことを言ったのか……

追記
桐藤ナギサからの評価
「……ミカさんらしさで溢れてますね。舌の上でまるで踊り狂うように痛めつけてくる味覚。喉を通るだけで憂鬱にさせる喉越し。そして今の私のように食べた人全ての胃を破壊する主張性。
……えぇ、ミカさんらしい料理ですよ。昔の私なら食べられなかったかもしれませんが今の私ならば愛おしさすら感じる素晴らしい料理ですね」

百合園セイアの評価
「……うぇ」(気絶
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