聖園ミカにTS転生した 作:魔女じゃんね☆
聖園ミカが母校であるトリニティと狩場であるゲヘナ、どの学校の領域でもないブラックマーケットを除けば最も頻繁に訪れるのはアビドス自治区である。
何故か? と聞かれれば友人であり、メイドとして雇っている梔子ユメが理由であった。
彼女は休日や空いた時間にはアビドスに出向いて後輩たちの様子を気にかけているのだ。ミカが気が向いたときにヒョロっと出向くには丁度良い場所であったのだ。
「アハハ★ ホシノちゃん変なくちょーで笑っちゃうよ」
「……死にたいようですね」
「ワワワ!? ほ、ホシノちゃんストップストップ!」
心境の変化か自らをおじさんと呼び間延びした口調で話すようになった小鳥遊ホシノを最初に見たときのミカは爆笑し過ぎてお腹をつり、苦しそうに体を震わせていた。そして、そんな彼女に愛銃を突きつけて怒りを顕にするホシノと必死に抑えるユメの姿があった。
最初に出会った時にやりあった2人だがミカは何時もの事なので気にしていなかったがホシノはミカを苦手に思い、あまり近寄らないようになっていた。
『ホシノちゃんに嫌われちゃったみたいで良い顔されないんだよねぇ』
『ミカちゃん直ぐ手を出すからね! そのせいじゃない?』
『ユメちゃんのくせに言うじゃんね★』
天然故に特大の発言をしたユメは布面積少なめのビキニ姿でブラックマーケットを歩かされていたが自業自得である。因みにスタイルは良いユメの姿を見てとあるトリニティ生が「死刑! 死刑!」と騒いでいたらしいが完全に余談である。
「ほらほらぁ。物資欲しいんでしょ? ならきちんとやってよ」
「くっ!」
ほぼ潰れているも当然のアビドス高校だが未だになんとかなっているのはミカがユメの卒業後も支援を欠かさないためである。
ミカが無償でもたらす物資は膨大であり、新入生2人を加えても僅か5人しかいないアビドス生徒達を賄うのには十分過ぎるものだった。
さすがは一応トリニティのお嬢様だとそこに関してはホシノも感謝はしていた。彼女のおかげでホシノ達は食料や日々の消耗品を気にすることなく学校の借金返済に全力を注げるのだ。
因みに、ミカはかなりの大金持ちである。半分は実家の資産であるが残りは全て彼女が稼いだお金と彼女を恐れる脛に傷を持つ者たちからの賄賂である。
ミカの気まぐれで自分達が怪我を負ったり店を潰されないようにするためにそういった者達はミカに多額のお金を渡していたのだ。あまりにも多すぎて何処から受け取ったか覚えてないミカによって、ただただお金を渡しただけの可哀想な人たちもいたりする。
「先輩! 物資の為です! 我慢してください!」
「ん、ホシノ先輩の見てみたい」
「そうですよ。ミカさんの要望じゃなくても見てみたいです♪」
そして、アビドス高校では今ホシノが追い詰められていた。前方には聖園ミカがおり、背後ではシロコとノノミという1つ下の後輩二人が退路を断っていた。残りの2人の後輩はこの状況をどうすればいいのか分からずに部屋の端っこで右往左往していた。つまり、ホシノを庇ってくれる味方は誰一人としていないのだ。
そんな現状にホシノは悔し気に顔を歪ませる。聖園ミカは今回の物資の提供に際して一つの条件を出してきた。それはホシノにとっては到底受け入れられるものではなかった。まさにホシノの尊厳を破壊する屈辱的な行為であり、それをしてしまえばホシノは心に大きな傷を負う事になるだろう。
故に、それだけは避けたいと考えているのだが現状は最悪だった。後輩は裏切り、聖園ミカについている。味方は誰一人として存在しない。頼みにすらならないがユメがこの場にいたとしても状況が好転することはないだろう。むしろ嬉々として聖園ミカの味方をするはずだ。ユメはそう言う人だとホシノは顔を真っ赤にしてミカを睨みつけるがそこに暁のホルスと裏で言われる威厳も圧力もなかった。
「さぁ、いい加減諦めるじゃんね★」
「そうですよ。ホシノ先輩♪
ただただ猫耳カチューシャつけて猫の鳴きまねするだけじゃないですか」
「ん。ホシノ先輩ならきっと可愛い」
「い! や! だ!」
ホシノは顔を赤くしながらそう言って逃げ出そうとするが後輩二人が即座に両腕を抑え込んだ。その隙にミカが手に持ったピンク色の猫耳カチューシャをホシノの頭に装着した。小柄な体躯と合わさってとても可愛らしい猫耳生徒が爆誕した瞬間だった。
「ほらほら、ホシノちゃんポーズポーズ。ユメちゃんも見たいと思うだろうから写真も撮るからさ」
「くっ!」
「写真を撮らせてくれないとホシノちゃんの分だけ物資を上げないよ?」
「ぐぐぐ……!」
時たま、ミカはこうしてホシノで遊ぶ事があった。物資を渡す代わりにとホシノにとってはとても屈辱的な格好やポーズをさせて来るのだ。この前はチャイナ服を着せられて写真撮影が行われていた。ちなみに、ユメが在籍していた頃はこのような事は一切していない。ユメが卒業してから始まった事だ。発案者はノノミでそこにシロコが乗っかり、ミカが了承した事で始まったこの撮影会の度にホシノはいつもの呑気な雰囲気は一切消えてかつての様子のままに逃げるのだがミカの前にそんな逃避行は無駄でしかなかった。
「……に、にゃぁ……!」
「きゃーーーー!!! ホシノ先輩可愛いです!」
「ん。ん。ん! 次は狼でお揃いに……!」
「セリカちゃんと一緒にポーズ取ってください!」
「なんで私も!?」
ミカも混ざった楽しいアビドスの日常。たった一人の介入で少しだけいい方向に変わったアビドスは一人の先輩の羞恥と引き換えに今日も平和に過ぎ去っていくのだった。