聖園ミカにTS転生した   作:魔女じゃんね☆

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時系列としては先生が来る1年前を想定しています。


カイザーコーポレーションの場合・前編

 ミカにとって最大の狩場はブラックマーケットである。ここは基本的に善人がいない不良と悪い大人の巣窟であり、たとえ暴れたとしても問題ないものが大半であった。

 故にミカはゲヘナ狩りと並行してブラックマーケットに襲撃をよく仕掛けている。その際に出る被害は半端ではなくこれまで多くの企業が倒産し、不良たちが病院送りにされていた。

 ミカの行動に抗議がなかったわけではない。連邦生徒会には幾つものミカを逮捕してほしいという届け出が幾度となく出されてきていた。しかし、元々グレーゾーンばかりの企業の話を聞くはずがない。ブラックマーケットの治安維持を結果的に行ったため、敵に回せばキヴォトスが崩壊しかねないほどの強さをもつミカを優先するのは必然であった。そもそも、ミカ自身そうなるように病院送りにする相手は選んでいたのだから。

 だが、それゆえにミカの命を狙うものは多い。彼女を仕留めることができれば一躍時の人となり、英雄レベルの称賛を受けることは間違いないからだ。そのため、彼女はブラックマーケットにいれば十中八九狙われるが、その程度で死ぬどころか怪我することもないミカには通用しなかった。暗殺者はみんなまとめて病院送りの刑を受けることとなっていた。

 

「ふんふーん♪」

 

 この日、ミカは機嫌が良かった。理由としては大事なナギサと楽しいお茶会が出来た、半殺しにしたホシノがリベンジとして挑んできたから病院に送り返した、そのついででヘルメットを被った変な不良達をアビドスの砂漠に埋めてきた等の良いことが重なったからだ。そのために相手を叩きのめすときに浮かべる悪魔の如き笑みではなく、お姫様らしい可愛い笑みを浮かべていた。

 

「……目標、予定位置に来ました」

『よし、作戦を開始せよ』

 

 だが、キヴォトスにおいてその幸福のまま一日を終えることなど珍しいことである。何かしらのせいで気分を害されるのがここでは普通なのだ。

 それを示すように、機嫌よく歩いていた彼女の上空より幾つもの鉄骨が落ちてくる。頑丈なキヴォトス人といえど当たれば即死は免れない量であり、ミカが気づいた時にはすぐ目の前まで落ちてきていた。

 

「ん!」

 

 しかし、ミカの前ではそれらも効果はない。ミカは右手を力よく振り上げると落ちてきた鉄骨に突き刺す。ミカの拳から放たれた必殺の一撃を受け、拳を中心に鉄骨はひび割れ、真っ二つになっていく。約十本もの鉄骨はミカを中心に周りに散乱することとなった。

 

『成功したか!?』

「っ! 失敗しました! 相手は落ちてきた鉄骨を拳で……!」

「鉄骨程度で私を殺せるわけないじゃん。出直してきなよ。組み立てからね★」

「なっ!? いっ……!?」

 

 慌てて報告を行った人物、カイザーPMCのロボット兵士は一瞬で後ろを取って来たミカに頭を掴まれ、壁にたたきつけられた。頭部の外殻が破壊され、内部の回路が壁とミカの握力により粉々に破壊される。火花を上げて二度と動かなかくなった兵士をミカは先ほどまで笑顔を浮かべていたとは思えない程冷たい表情で見下ろしていた。しかし、それも当然だろう。先程までよかった気分を台無しにされたのだから。

 

「全く……。面倒な奴らに目を付けられちゃったかな?」

 

 ミカは完全に破壊され、二度と動かなくなったカイザーPMC兵を冷たく見下ろしながらため息をついた。以前、アビドス自治区で不良をシバいている最中に一緒に叩き潰して以来敵視されており、嫌がらせのような妨害をしてくることはあったが今回のように直接手を出してくることは初めてだった。

 

「……いい度胸じゃん。この挑発に乗ってあげるよ」

 

 だが、そんなことは今はどうでもよかった。今は大切な親友のナギサとのお茶会で感じた幸せに泥を塗られた怒りでどうにかなりそうだった。今回は食べきってしまった為に持っていなかったがもしナギサ手製のお菓子を持っていれば確実にぐちゃぐちゃになっていただろう。そうなればミカはカイザーコーポレーションごとブラックマーケットを更地に変えていた可能性すらあった。

 

「確かあいつらアビドス自治区に結構出没していたよね。……うん、ならユメちゃんの代わりにアビドスのお掃除をしてあげないとね★」

 

 アビドスを卒業したのに就職できないと電話口で泣きついてきた梔子ユメの泣き顔を思い出したミカは翼を広げると最大速度でブラックマーケットを後にした。しかし、行き先はアビドス自治区ではない。そもそもがカイザーがどこにいるのかを知らないからだ。アビドスはかつては三大学園に匹敵する勢力を誇っていただけあってその所有地は広大である。町や廃墟に基地がないのは日々の不良シバきで確認済みであり、残すは何もない砂漠地帯という事になるが闇雲に探せば干からびる事になるだろう。

 

「先ずは情報収集じゃんね★」

 

 そこで彼女が向かうはこの学園で最もそういった事が得意そうな学校、ミレニアムサイエンススクールであった。実はミカはミレニアムサイエンススクールに訪れたことはない。不良が少ないという事で態々行く理由がなかったためである。彼女にとってはあまり不良がいないここよりもゲヘナやブラックマーケット、アビドスの方が魅力的なのだ。

 

「うわぁ、凄い……」

 

 そして、そんなミカがミレニアムサイエンススクールを最初に見た感想がそれだった。どこぞの独裁国家を彷彿とさせるゲヘナとも古臭いトリニティとも砂漠しかないアビドスとも違う、近未来的な場所だった。ミカは初めて感じる前世並みの都市風景にかつての記憶が蘇ってくるが、すぐに気を取り直してミレニアムの空を飛びまわる。

 

「……あれ? こういう時って誰に聞けばいいのかな?」

 

 そして、ミカは初めて故にミレニアムの事を知らなかった。故に、彼女は気づけば目的地も分からずに上空を飛び続ける羽目になってしまった。

 

「……どうしよう。その辺の娘に聞くべきかな?」

 

 こういう時は知っている人に尋ねるのが一番とミカは落下するように降下し、地面に降り立つ。その衝撃で地面に罅が入り、近くにいた生徒達がびっくりしてミカに視線を向ける。

 

「うーん。こういう時は誰に……お★」

 

 ミカは視線等気にも留めずにあたりを見回して尋ねる相手を探す。その辺の生徒に片っ端から声をかけてもいいが出来るだけ情報を知っていそうな生徒に聞きたいと探していたがその中で一人の生徒を見つけた。それは情報を知っていそうだったとか、知っている生徒だったから、ではない。

 ()()のだ。かつて応戦した小鳥遊ホシノや正義実現委員会の剣先ツルギに匹敵する実力者の風格を纏った生徒であり、思わずごくりと喉を鳴らす。久しぶりの強者の発見はミカから彼女に声をかけない選択肢を奪っていた。ミカは素早くその生徒の前まで移動すると二コリと笑みを浮かべて言った。

 

「ねぇ! そこの()()()()()。情報収集が得意な人に心当たりってない?」

「あ?」

 

 ミカの陽気な問いかけにその生徒、美甘ネルは不良張りのドスの利いた声で返答するのだった。

 




何故か顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら面接に落ちまくっている事をミカに愚痴るユメ先輩が浮かんだので入れました。
因みに個人的にミレニアムの制服が一番好きですね。なんかちょっとかっこいい。
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