ワカクサ本島の原住民   作:メタモン推しの人

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欲張らないから毎日安定して3000文字くらい書ける才能が欲しい。


竹取物語 with ウェーニバル

 

 自然の中で目印になるものは少ない。

 特に鼻の効かない人間は視覚情報に頼りがちだ。だのに素人目では木々の1本を区別することすら難しいときた。舗装もされていない雑木林に入れば、いずれ迷子になること請け合いだ。

 

 そんな環境下において、今の俺たちには川がある。これを辿れば確実にテントへ帰ることができるというのは大きい。

 

「んじゃまぁ、下流方面から探してみようか」

「メター!」

 

 俺たちは上流側から来たのでシンプルに行き先を決める。具体的な目的地はないのだ。安直なくらいが丁度いい。拠点周りの環境把握も重要だからな。

 

 それにいずれは何かしら見つかるだろう。楽観視というよりはほぼ確信に近い推察として。恐らくだがこの付近には安定して得られる食べ物があるはずだ。

 

 根拠はクワッスとニャオハの2匹にある。

 どちらも生命である以上、食べずに生きるのは不可能だ。ならば、その生活圏内にはそれぞれが食用としているものが存在して然るべきだろう。

 ソレが人間の食用に適しているのか。俺たちが採っても問題ないほど数があるのか。不安点は多々あるが、それは実物を見つけてから悩めば良い話。

 

 今日の探索は気楽な心持ちだった。

 

「ぁえ?」

「メチャ?」

 

 いざゆかんと勇んで数歩。俺の足は早速止まる。無論、こんな近場で食材を見つけたわけではない。

 メタモンはそんな俺に疑問符を浮かべていたが、それに応えるどころではなくなった。

 

 クワッスたちのテント横に枝木が積まれている。クワッスが運んでいたものだろう。資材置場にしているのか、丁寧に向きを揃えて山なりになっていた。

 昨日の最後に見た時点ではあんなもの無かったので自然と目についた。それを集めたなぁ~と呑気に眺めて、気がつく。

 

 煩雑な枝木に紛れて、いくつか青々とした()らしき姿があったのだ。

 

「やっぱり、竹だ」

 

 明確な敷地があるわけではない。が、あまり近づきすぎないように間隔を空けて観察をする。

 

 緑色で、表面が滑らかで、確実に節がある。細長い葉も生えていて、どう見ても竹だ。もしかしたら笹かもしれないが、そこの差異は関係ない。

 

 アレがあれば簡単に容器を作れる。加工は切るだけだ。木や石と違って彫らなくていい。節と平行に切る、ないし折れば完成なのだ。その工程もメタモンに頼れば実現できるはず。

 容器さえ作れたら食事に関する問題が大幅に改善される。水を煮沸して飲み水を確保できるし、生食できないものに火を入れることだって不可能じゃない。

 

 一気に生活水準が跳ね上がる。欲しい。この竹、たまらなく欲しい。が、そこはそれ。コレはクワッスたちが一生懸命に集めたものだ。とったらドロボー。それは人間相手だろうがポケモン相手だろうが変わらない。

 

「クワッス~、ニャオハ~。……いないかぁ」

 

 どこで手に入れたのか。せめて方角だけでも訊きたかったが、残念なことにクワッスもニャオハも外出中らしかった。

 

「メタモン、予定変更だ」

 

 朝令暮改……暮令朝改? するようで申し訳ないが、緊急事態だ。昨晩は食材確保と言ったが、流石に優先度が違いすぎる。

 

「今日の俺たちは竹取の翁になるぞッ」

「メタ? メチャァ!」

 

 よく分かっていないようだったが、ノリには乗ってくれた。俺と一緒に胸を張って並び立つ。

 

 かぐや姫なんかはいらないが、竹を取るついでにタケノコも掘れたら理想だろう。便利な資材と食材をゲットする一石二鳥作戦だ。

 

 

 

 

「──という経緯でしてぇ。決しておたくの縄張りを荒そうという意図はなく」

「ウェーィ」

 

 俺は今、ノリの軽いチャラ男に絡まれている……ワケではない。

 

 周囲には探し求めていた竹林がある。

 ここは拠点から川を挟んで向かい側。そこを歩いて少しのところだ。クワッスたちの歩幅から考えて近場とは思っていたが、予想通り目と鼻の先にあった。

 

 そして竹林を背景にコチラを囲むウェルカモ達の姿。しかし雰囲気はWelcome(歓迎)とは程遠く、剣呑であった。

 俺たちの一挙手一投足を見逃すまいと緊張感を張り詰めさせている。まさに一触即発。まだ追い出されていないのは、そんなウェルカモ達に様子見を指示したポケモンがいたからだ。

 

「ウェーィ、ウェイウェイ」

 

 そう、今俺の前でオラついているウェーニバル。コイツがウェルカモ達へ待ったをかけて、悠然と俺たちの前へ躍り出たのだ。

 

 ウェーニバルからの言葉には、恐らく責め立てるようなニュアンスが含まれている。

 極端な解釈をすれば、『おどれら誰に断り入れてうちの縄張り(シマ)に乗り込んだんじゃ? ええ? 何者(なにもん)()うてみぃ?』と言っているかのような凄味があった。

 くろいメガネでもかけさせたら完璧にその筋のポケモンだ。略してスジモンである。それくらいの威圧感だ。

 

 今もウェーニバルは俺たちの前で毅然とした態度を貫いている。それは群れを守るという確固たる意志の表れなのだろう。

 

「メタメタ」

「ウェイ──ヴェッ!?……ウ、ウェニィ!?」

「メタぁ?」

 

 などと思っていれば、メタモンが一瞬へんしんを解除してから少女形態に戻るという謎行動を挟む。流石にそれにはウェーニバルも動揺し、狼狽えていた。が、きっとそれは少女形態だった姿をメタモンだと認識していなかったからだろう。

 

 そう考えて、俺はメタモンの意図にも思い至る。冷静に考えれば当然の話だった。

 

 こんな自然の中で暮らすウェーニバル達からすれば、ヒトとは完全に未知の生物に写るはず。ともなれば自分たちの縄張りにソレらがいるなどハッキリ言って恐怖だ。人間でいうところの庭先に宇宙人がいたようなもの。何をする生態なのかすら分からない。もしかしたら敵意があるかもしれないのだ。

 

 未知とはそれだけで恐怖足り得る。

 だからこうして俺たちは問答無用で囲まれたに違いない。やられる前にやれ、もしくはその見極めのため。

 

 そしてメタモンはその誤解を紐解こうとした。怪しくないし、危なくないよーといった具合に。へんしんを解除して身分を明かしたのだ。

 未知の生命体2匹より、片方がポケモンだと判明すれば軋轢も小さくなるはず。そういった思慮がメタモンの行動からは感じられた。

 

「ウェーニ……ウ、ウェル」

「モン」

 

 それはそれとして、実は俺、ウェーニバルが話し始めたときから密かに思っていたことがある。

 

「ウェェ」

「メタメタ」

 

 やはり、()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。ニュアンスが耳に馴染んで、脳に理解できる意味として出力されている感覚がする。

 昨日はポケモンと会話できる兆しすらなかったのに、これならなんだか会話できそうな気分だ。しかし、急に何故だろうか。もしや人間に秘められた環境適応能力が感受性を豊かにでもしたとか?

 

 とはいえ、この感受性もまだまだ研鑽しなければなるまい。だってあれだけ強気でいたウェーニバルが、素の状態のメタモンを見た瞬間『姉御ォ!?』とでも言うような反応をしたのだ。弟妹というよりは舎弟寄り。敬意や畏れの混じる鳴き声に聞こえた。

 

 この感覚を信じるのであれば、あの2匹は知り合い同士ということになる。だがメタモンはウェーニバルを知らない様子。これじゃあ意味が通らない。

 だったら人違いならぬポケモン違いか。別のメタモンと勘違いしたのなら、それはそれで色違いメタモンが他にもこの辺にいることになる。が、聞く感じそういう認識の行き違いをしている風でもなかった。

 

「ウェイ、ウェルウェニぃ?」

「メタメタ」

 

 ──いやだから帰っていただきたくてですね?

 ──竹ちょうだい。

 

 といった感じで、あの2匹が今やっているやり取りを聞いた限りだと俺にはそう解釈するしかなかった。

 けれどこの解釈ではなぜか急にウェーニバルが下手に出始めたことになるし、メタモンとも会話が成立していないことになる。これがリスニングテストなら不正解を貰っていたことだろう。

 

 ポケモン翻訳家になれそうでなれない。凄くもどかしい立ち位置にいる。これの何が嫌だって、下手に意思を伝えようとして間違った解釈が伝わる可能性があることだ。余計に喋りづらくなった気がする。

 

 メタモンとウェーニバルのやり取りに加わることもできず、今の俺は見守るしかない。またそれはウェルカモ達も同じで、ウェーニバルの変わり身にざわつきつつも、群れのリーダーを見守るしかないようであった。

 

「クワぁ?」

 

 そんなときだ。寝惚けたような、呆けたような鳴き声が俺の耳朶(じだ)を打った。

 

「クワ! クワックワー?」

 

 あまりに急なことで誰も止められなかったのだろう。ソイツはウェルカモ達の脇をスルリと抜けて、俺の下に駆け寄ってきた。

 もし聞き間違いでないのなら、コイツは俺を見て『やっぱり! オマエらなんでここにいるの?』と、そう言った。

 

「お前、あのクワッスか」

「クワッ」

 

 やはりそうらしい。てっきりニャオハとのコンビだとばかり思っていたが、帰属する群れもあったんだな。

 しかも何気に会話が成立している。会話内容自体はシンプルだが、通じないとでは雲泥の差だ。感涙ものである。

 

 それはそれとして、場の空気は死んでいた。時が止まったとか、凍ったとか表現してもいい。

 メタモンと話し合っていたウェーニバルも、それを見守っていたウェルカモ達も、このクワッスの突発的な行動に息を飲んでいた。そりゃあ子供が未知の生命体に近寄ったのだ。保護者に緊張感が走ったって仕方ない。

 

「そうだ。クワッスから話を通してくれないか? 俺たち竹が欲しくてな。何本か分けてくれると嬉しい」

「クワァァ?」

 

 不満そう。露骨に眉を寄せられた。でも譲歩できない提案ではないようで、渋々ながらクワッスはウェーニバルへと足を進めてくれた。

 

「クワ!」

 

 振り向き様、クワッスは『貸しだからな』と俺に残す。

 

 その背は物理的には小さいが、今の俺には大きく見えた。小生意気だが、根は良いヤツなのだろう。器が広いというか、クワッスからすれば断ってもよかっただろうに引き受けてくれたのだから。

 

 やがてクワッスはウェーニバルと向き合い、ウェーニバルもまたクワッスに視線を合わせた。これから行われるクワッスの交渉に、俺は固唾を飲んで耳を傾ける。

 

 ──あいつら僕のトモダチなんだ。竹、分けてくれよ親父。

 

 ──むぅ、そうなのか? いやしかしだな。いくらお前の友とはいえ、唯々諾々と安請け合いをしては我々の面子が潰れるぞ?

 

 ──大丈夫さ。この貸しはいつかキッチリ取り立てる。恩を返さないようなら骨の髄まで後悔させれば良いだけだろ。

 

 ──……友達なんだよな?

 

 ──トモダチだぞ?

 

 ──なら、まぁ、好きにしろ。ただし責任はお前が背負え。できるな?

 

 ──もちろん!

 

 以上、『クワ』と『ウェニ』で構成された会話から身振り手振りも含めて総合的に解釈した内容だ。もしかしたら細部は違うかもしれないが、大方意味は同じだろう。齟齬らしい齟齬はないはず。

 

 クワッスの発言には一瞬「ヒエッ」と声を漏らしかけたが、よくよく考えなくても道理ではあるし、借りを返せば問題ない話。無意識にメタモンの手を握ってしまったが、握り返されたので心は落ち着いた。

 

 お礼の品、早めに決めないと後が怖そうである。




・竹
しなるし、丈夫で色々作れる。抗菌作用もあるし、焼いたら竹炭になる。タケノコは食材にもなる万能チート素材。
2025/09/20現在のポケスリでは存在を確認できないが、ワカクサ本島は広いし、いつか来るだろうと先取り。
■新しい食材『○○タケノコ』の追加!
みたいな未来、ありそうじゃない?

・メタモン
昔、ケンカを売ってきたウェルカモたちを蹴散らしたことがある。が、些事だったので覚えていない。
なぜか相手が下手に出ているので、これ幸いと強気に竹を要求している。じゃあ相手が強気だったら諦めるのかというと諦めない。なんだコイツ。

・ウェーニバル
青いメタモンにトラウマあり。武者修行時代、ニャローテと一緒に酷い目にあった。今でこそ争う関係だが、互いにあの過去には触れないように気を使っている。
息子の価値観に不安は残るも、容赦ない大物になりそうで内心ワクワクしている。

・クワッス
生意気だがどんな状況下においてもその態度は崩れない。メタモンとの勝負でも心は折れていなかったし、その上で貸しを作って取り立てるつもりでいるのだからだいぶ肝が太い。道理が通っている内は寛容。

・竹林
ウェーニバルたちの縄張りの一つだが、普段暮らしている場所はまた別である。
ここは特訓場として利用され、クワッスやウェルカモはここで走り込みや竹を蹴ることで脚力を鍛えている。

・主人公のブローカ野とウォルニッケ野
昨晩(おいしいしっぽ消化)辺りから変異の兆しあり。それに伴う健康被害無し。私生活への悪影響無し。主人公がこの事実を知る可能性無し。メタモン自覚無し。
指差し確認、ヨシッ!
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