ワカクサ本島の原住民 作:メタモン推しの人
竹を担いでえんやこら。
竹の葉揺れてゆっさゆさ。
「はぁー、どすこい」
「メチャー!」
結局、俺とメタモンで3本ずつ。計6本の竹を頂けることになり、無事拠点のテントまで持ち帰ることができた。
交渉してくれた当のクワッスは、まだあの群れで行動をするらしく、しばらくこちらに来ることはないそうだ。
肩に担いでいた竹をゆっくり丁寧に地面へ下ろす。どれもしっかりと成熟した太い竹であり、加工は難しそうだが、それだけ耐久性も期待できる。
「おつかれメタモン。頑張ったな!」
「メタメタ!」
メタモンを労えば、メタモンから労われた。うーん、心が幸せ。
正直、あの場でタケノコまで要求する勇気はなかった。そんなことをしてもクワッスへの借りが募るばかりだろうし、ウェーニバルたちに食糧不足という弱みを晒して足元を見られる可能性もあった。
食材はまだ未確保のまま。それでも竹は手に入ったので現状は一歩前進といったところか。
「よし、次はこれで容器を作る。メタモン、ココとココ。切れるか?」
「モン!」
訊けば頼もしく応えてくれた。
少女形態から姿が変わる。光と共にシルエットが変形して、メタモンはマニューラの姿にへんしんした。鋭利な爪同士を打ち鳴らし、やる気は充分らしい。
俺は節の位置を見て、切りたい場所を指でなぞる。竹を支えて、ズレないように補佐をすると、メタモンは俺の要望箇所目掛けて爪を振るった。
ストンと、切れ端が落ちる。肉厚の竹を相手に、その爪は引っ掛かりも弾かれもせずに上から下へ。何の問題もなく切り落とした。
支えている竹が少しだけ軽くなる。次いでメタモンは2箇所目も同じように爪を振るう。
「メタ!」
やはり同様に切れ落ちる。
すんなりと落ちていったソレを少女形態にへんしんしたメタモンが拾った。
「モンモン」
「ありがとう。いやぁしっかし、これはなかなか」
差し出されたので受け取る。
断面からは独特の香りがした。覗けば空洞があって、節の内側が底になっている。
切り口に指を滑らせれば、非常に滑らかな触り心地が返ってきた。研磨の必要性がなさそうなことに、マニューラの爪の恐ろしさをメタモン越しに垣間見た気がする。
ともかく、想定通りの竹でできた容器だ。順調に進みすぎて現実味が薄い。けれど確かに両手で持ったコレは求める役割をこなせる形であった。
「……早速、使ってみるか」
物は試し。もしコレを駄目にしてしまってもまだ竹はあるのだし、試行錯誤してみよう。
「メタモン、次のお願いだ」
「メタ!」
さて、ここからは簡単な理科のお話だ。俺がどれだけ正しく覚えているかの実証テストとなる。まぁ、この世界の物理法則がそっくりそのまま地球と同じかどうかは不明だが、いったん同じと仮定する。
このテストに合格すれば水が手に入り、不合格なら容器をひとつ失う。そんなテストだ。
「枯れ葉に枝、あとなんかフワフワした植物」
「メタメタメタ」
「周囲に延焼しそうなものはぁ? ……無しッ!」
「メタッ!」
川辺の開けた場所で焚き火の準備。テント付近から燃えそうなものをかき集めた。火を扱うので万が一にも事故がないように指差し確認ヨシ。
「メタモン、これに『ひのこ』を頼む」
「メチャァ!」
起こりの火種が欲しかったのでそう頼むと、メタモンは“ほのおワニポケモン”のホゲータにへんしんした。
「おっ! ついたついた」
「メタメタ」
メタモンが口から吐いた火の粉は、あっと言う間に綿のような植物に引火する。そうして生まれた小さな火に枝をくべてやると、やがてそれは安定した大きさとなった。
枝から水分が飛んでいるのだろう。パチパチと焚き火らしい乾いた音が響く。せせらぎと相まって聞く耳が和む。
とはいえ、所詮はいくつかの枝で燃やしている程度。火の規模も小さく、いつ消えるかも分からない。悠長に楽しむのはまた今度だ。
「そんでもってコレだ」
川から水を汲んだ竹の容器。
中で並々と揺れる水は、一見して沈殿物のない澄んだ姿を見せている。が、あくまでそれは肉眼に限った認識だ。細菌や寄生虫を考えると口をつける勇気はない。飲むにはこれを煮沸しなければならないのだ。
「ちょーっと距離が遠いか……
ここからやることは簡単。水入り容器の直火焼きだ。まぁ吊るすようなものも無いし、火に近い真横へ設置。倒れないように容器をその辺りの石で囲って固定する。
竹の燃焼が何度から始まるのか、なんてピンポイントな知識は生憎持ち合わせていない。けれど流石に水の沸点より下ではないとは思う。
ならば容器の中に水を入れている以上、引火する温度まで竹が熱を持つことはないはずだ。側面は多少焦げるだろうけれど、燃え始めるより先に中身の水が沸騰する。
「……上手くいくかな」
「メタぁ」
自信がない。今日はまだ飲まず食わずだからか、少しネガティブな思考が表に出てしまう。それをもはや見慣れた姿に戻ったメタモンが隣に座って励ましてくれた。
「『人事を尽くして天命を待つ』だったかな。……上手くいきますよーに!」
「メータ!」
手を合わせて、誰に祈るでもなく、願う。
そこにはただ静かに煙る焚き火と小さな陽炎があるばかりだ。揺れる火を背景に熱される水を俺たちは眺める。
たまに火が消えないよう枯れ枝を追加する。今はそれくらいしかすることがなかった。
ぼうっと座っているとメタモンが軽く手を引いてきた。そちらを向けばニコニコと笑顔で川を指差している。
素直に視線誘導されると、上流側からどんぶらことウパーが流れていた。かと思えば川の流れに身を任せているようで、緩やかに下流へと消えていく。
一連の光景が微笑ましくて頬が緩む。
なんてことはない待ち時間ですら、メタモンは暇をさせてはくれないらしい。最高だな。
「教えてくれてありがとな、メタモン」
「メタメ──」
「おっと」
「メチャぁ!」
風が吹く。突発的な強めの風だ。木々がさざめき、髪が
そんなのんびりとした待ち時間を過ごしてどれほどか。
「もう、大丈夫かな?」
目の前には湯気を昇らせている容器がある。
うろ覚えの知識だが、菌は何分か沸騰させないと死滅しなかったはずだ。問題はそれが何分だったか覚えていなかったこと。
だから俺は待った。ボコボコと水が沸騰を始めてから焚き火に枝をくべることは止めた。あれから火は勢いを落とし、今では燻るだけの姿になっている。
並々と汲んだ水は湯気と共にそのカサを減らしていた。けれど飲むだけなら充分すぎるほどに確保ができた。
容器を倒してしまわないように、恐る恐る手に取る。
「
「メタメタ!」
「うん、うん! 本当にありがとう! メタモン、大好きだぞ!」
「メタ! ──メタ!?」
やっぱり竹の側面は焦げていた。しかも焦げていない部分は薄く変色してなぜかヌルヌルしている。触れた指に残る光沢といい、完全に油なのだが──。
「……うわ、え? マジで油じゃん。引火してた可能性あったの? 怖っ」
舌で舐めたりはしない。竹の油が食用で流通しているなんて話、聞いたこともないからだ。俺の知識が浅いだけなら断然そっちの方が良いが、恐らく料理に使えたりはしないはず。試す気は起きない。
ともかく、油問題は一旦脇に置く。今は水が先だ。
息を吹きかければ水面が揺れ、湯気も流動する。
幾度かそれを繰り返し、俺はゆっくりと容器に口をつけ、それを傾けた。
竹臭い。ろくな味じゃない。ただの水のはずなのに少し口に残るものがある。容器に小さな灰が幾つか浮いているのを見つけた。一緒に飲んじゃったかもしれない。絶対そうだ。そもそもまだ熱くてやけどしそうだった。
たった一口で色んな感情が溢れた。
不満や改善案が頭の中を埋めていく。思考はもう次の段階へ移ろうとしていた。ああしよう、こうしようと考えを巡らせて──。
嚥下した喉から熱のこもったため息が漏れる。
「……水だぁ」
じんわりと染みるように、心が追いついた。
・メタモン
とんでもない『ふいうち』をくらった。動揺して服(に見える身体)のへんしんが溶けかけた。即座に持ち直して見られずにすんだが、それはそれとして見られていなかったのは不満らしい。
主人公はテンション上がって自分が何言ったか分かっていない。クソボケがよォ。
・ウパー
ぼうっとしながら流されるのが好きな子。気をつけないと巣に帰れなくなるが、今日も気ままに流されている。
うぱ~
~~卄(・⌣・ )卄~~