ワカクサ本島の原住民   作:メタモン推しの人

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ハーメルンはランキングで性癖蠱毒をする場所だって?
ほな、この話も放流してええか


へんしんってスゲー!

 

 なんかもう悲しさが許容量オーバーして吹っ切れた。

 一周回って楽しくなっちゃったもんね。ポケモンの世界だ。いいじゃん。人によっちゃあ垂涎ものの立場だ。楽しまなきゃ損損。

 

「てか、お前色違いじゃん」

「メタ?」

 

 落ち着けばレアモノの価値にも目が向く。

 メタモンとは通常ピンク色の配色なのに対し、こやつ寒色系の色違いメタモンなのだ。低確率、それだけで価値が生まれるレアな個体である。

 

 現実的な話をすれば色違い、つまりアルビノみたいなやつは群れからあぶれる運命にある。野生では目立つことは天敵に見つかりやすくなるデメリットでしかなく、群れにとっては邪魔な存在なのだ。

 だから孤立しやすい。警戒心がいっそう高くなければ生きていけない。産まれた瞬間でもなければ、他の生き物に警戒心を剥き出しにしたっておかしくはない。

 

 しかし、どうだろう。このメタモン、見たところ1匹だけれど、のほほんとしている。未だ呑気に俺の隣で日に当たっていた。

 これは恐らくだが、メタモンという種が特別なのだろう。というのもメタモンというポケモンは『へんしん』することで姿形を変えることができる。俺が気づかずメタモンを石だと判断したように、メタモンという種において、色違いとはディスアドバンテージ足り得ないのだろう。

 

 Q:では1匹でいる理由は?

 A:知らん、孤高でも気取ってるんじゃね。

 

 と、おふざけは一旦置いておいて、真面目な話をすれば“群れる習性がない”とかだろうか。俺は別にポケモン博士とかではないから、公式設定とか読み込んでいるわけでもなし、それっぽいことを考えるしかない。

 その上で、メタモンは他のポケモンにもへんしんすることができる。つまり、メタモン同士で群れを作る必要性がないわけだ。

 規模の大きなポケモンの群れに素知らぬ顔して紛れ込めば良いのだから楽な話である。

 

 もしくは群れる必要が元よりない、とか。つまり──。

 

「まさかなぁ」

 

 こんなアホ面晒しているメタモンがそんなハチャメチャな存在であるわけもなし。そもそも寝ているとき、石にへんしんしていたのだ。擬態をするということは隠れる必要があるということ。

 狩りの獲物を待っているとかならばともかく、無防備な姿を徹底して隠したがるのは被捕食者側の行動だろう。

 

「なあ、メタモン」

「メタァ?」

「お前のへんしんってさ、何にでもなれたりする?」

「……メタァ?」

 

 首……首っぽいところを傾げられた。

 何だろうなコレ。そもそもできるかどうか分からないって話ではなさそうだ。根本的に『話しかけられていることは分かるんだけど何を言ってるのか分からない』って雰囲気をヒシヒシと感じる。言語の壁かぁ。ボディーランゲージでどうにかならない?

 

 俺はさっき折ってしまった気の棒を掴んで、地面に簡素な絵を描く。描いたのはラルトスだ。どうにか伝わってほしい。届け、コレにへんしんしてくれという意志!

 

 すると、地面の絵と俺を交互に見比べたメタモンは、光と共に姿を変えた。

 

「メタ!」

 

 メタモンがへんしんした姿は俺の依頼通り、どころか意図をちゃんと汲み取ってポケモンとしてのラルトスにへんしんしていた。

 よかった。地面を見たまんまの、落書きみたいなラルトスにへんしんしなくって。このメタモン、マジで賢い。

 

 さて、このメタモンがへんしんしたラルトス。どんなポケモンかというと、めかくれポケモン……失礼、きもちポケモンといって相手の気持ちや感情をテレパシーで感じ取れるポケモンなのだ。

 

 つまり、メタモンがラルトスにへんしんすれば、言葉が通じなくとも意志疎通ができるかもしれないし、誠意を見せれば信頼を勝ち取ることも可能なのではないかと俺は考えたわけだ。

 色違いメタモンとか是非とも仲間になってほしい。そのためにこんな手段を講じた。下心なんてそれくらいしかないのだから、思考を覗かれたって構わないフルオープンの姿勢で俺はメタモンを迎える。

 

 メタモン、俺の仲間にならないか?

 

 気分としてはフリーハグOKといったところか。両手を広げてYESかNOか、待ち構えていると、メタモンは更に何かにへんしんした。

 

 きっと俺から何かを読み取ったのだ。だってなんかへんしん前に微痙攣していたし、舐められていると怒りを宿したのかもしれない。けれど俺はコイツと旅に出たい。もう心がそうと決めてしまったし、正直独りで林に入りたくない。

 野生ポケモンへの対抗手段という意味でも、魂の叫びという意味でも、今ここでこのメタモンを仲間にしない選択肢はない。

 

 だからどんな一撃を喰らおうと耐えて再度アプローチをするつもりだった。よっしゃバッチ来いと、目をつぶって構えていたら前方から衝撃が飛んできて、俺は後ろに倒れる。

 

「メタぁ!」

 

 けれど痛みとかそういうものはなくて、むしろ柔らかな感触の心地よさに包まれた。というか、耳元で凄い良い声するし、サラサラした髪のようなものまで頬に当たっている感触がある。

 

 恐る恐る目蓋を開帳すると、こちらを見つめるスカイブルーの瞳と目があった。

 

 Who are you?

 いや、察しはつくんだけどさ。

 

 そりゃあ本心すべてをさらけ出す気概ではいた。事実、別に見られて困る思考とかしてないし。

 ただコチラの想定外を挙げるとすれば、ラルトスってやろうと思えばそこまで()()ことができるポケモンなんだぁってコトくらい。

 ほら、気持ちとか感情とか、捉えられる内容ってそういう部分だけかと思うじゃん。まさか()()()()()()()()だとは思わないじゃん。それがメタモンのへんしんと悪魔合体するなんて誰も思わないって、ねぇ?

 

 まぁ、まぁまぁまぁ、なんか信頼はされたっぽいし? これも俺の誠意の表れって感じかな。それにしては妙に懐かれた気がしないでもないけど、これから旅をする内に誤差の範疇になるだろ。不仲よりは良しとしよう。

 

 取り敢えず直近の問題としては……そうだな。

 

「メタモン、一旦離れてくれない?」

「メチャァ!」

 

 下心がひとつ、増えてしまいそうなことだろうか。

 

 


 

 

 side:不動の青

 

 そのメタモンは物心がついたときから己が弱者であることを知っていた。どこで生まれたかは定かではないが、未だに残る原初の記憶は変わることのない雪原にあった。

 

 最も古く、最も屈辱的で、初めて命の危機に瀕した記憶。メタモン自身が己を弱者であると定義させた戦い。それは雪積もる場所でニューラの群れと戦闘をしたときである。

 戦いの起こりはなんてことはない。弱者をいたぶることが趣味だったニューラが、偶然通りかかった青色のメタモンを見つけて爪を振り上げたことだった。

 

 メタモンはソレを瞬発的に相手と同じニューラにへんしんし、爪で迎え撃った。どころか、返すように反対の爪で顔面を切り裂いてやり、二度と舐めた行動ができないようにトラウマを植えつけるつもりだった。

 けれど、タイミングが悪いことにメタモンが反撃した瞬間だけを目撃したニューラの群れが『仲間が攻撃されている!』と勘違いをした。戦争勃発である。

 

 結果、ニューラの群れの半数を瓦解させたものの、多勢に無勢。ニューラたちが逃げていかなければ、もしかしたら死んでいたかもしれなかった。

 

 この経験からメタモンは1つの学びを得た。

 例え1つ2つのバトルに勝とうが、己は強者ではないのだと。たかだか未進化ポケモンが群れるだけで危うくなるような弱者でしかないのだと。

 

 その心は以来変わることがなかった。

 一所に留まることは性に合わず、この島を転々回ることがメタモンにとっての生き様となっていた。

 多くのポケモンを見て、すべてを学習する。当然、旅をする中では他のポケモンの縄張りに足を踏み入れることもある。だがメタモンとって知った話ではない。得た知識を実践する良い機会でしかなかった。

 よって、この寒色系は所構わず横断した。道中でユキノオーを締め上げ、ハガネールを振り回し、リザードンを撃墜して、スイクンを退けるような蹂躙劇。さながら青い暴風であった。

 

 すべてに打ち勝ち、すべてを屈服させてなお、しかしこのメタモンは驕らなかった。

 油断をしたが最後、あのニューラたちのような手痛いしっぺ返しが飛んでくるに違いなかったからだ。

 

「マジで何もないじゃん」

 

 だからメタモンにとって、先ほどから辺りをうろちょろとしているこの未知の生命体(ポケモン)は警戒するに値した。

 

 朝一番、湖面の輝く景色を眺めながら起床することが最近のお気に入りのルーティーンであったメタモン。しかし目覚めた瞬間、見知らぬ生き物が近くで寝ていることに気がついた。

 

 恐怖であった。

 いくら寝ていたとはいえ、これほど近くにまで接近されて気がつけないワケがない。だのに事実、ソレはそこにいて寝息を立てていた。気がつかない内に、だ。

 

 弱者のフリをしているナニカ。そうとしか見えなかった。石にへんしんしたまま、メタモンは微動だにすることなく、ソレを観察する。

 

 やがて目覚めたソレは奇っ怪な行動しかしなかった。周囲に油断を誘っているのか。そういう生態なのか。今のメタモンには判断がつかないものの、『どうやらコチラには気づいていないらしい』というのが観察し続けた結論であった。でなければ、メタモンの頭上に堂々と座るこの生き物は、ほぼ必中の距離で今から“ハサミギロチン”を受けることになる。

 

 ただの石と、へんしんした石の姿も見分けられない観察眼。終いにはこうも無防備な姿を晒し続けるというのも個体としての弱さを際立たせる要素でしかない。

 

 ならば次は学ぶことにしよう。

 警戒から観察、観察から学習、学習から実戦。今までがそうであったように、この未知を己の糧にする。そうして今まで生きてきて、そうしたからこそ生きてきたのだから。

 

「メタ?」

 

 へんしんを解いて姿勢を崩してやれば目があった。

 何と鳴いているのかメタモンには分からなかったが、『お? やるか?』と挑発するも意図が伝わったか怪しいところ。

 

 ソレは次に地面に身体を預けて、腹を見せた。服従のポーズである。戦う前から降伏とは相当に弱い生き物なのだろう。笑っているのは自棄になったからだろうか。どちらにせよ上下の差に聡い生き物らしい。

 

 ともすればメタモンはこのとき、へんしん前の姿に服従を見せたソレを愛らしく思った。へんしん後ならばいざ知らず、へんしん前からなんぞ生まれて初めてであり、悪い気はしなかった。

 特に恐怖心を抱いた様子がないのが良い。か弱い生き物がコチラを信頼し、腹を見せるも怯えたりはしない。その姿のなんと愛らしいことか。

 

 脳内にウインディとガーディの親子を想像し、メタモンはそれを自身と目の前の生き物に置き換える。

 

 それは激動の野生下において、心の癒しに他ならなかった。

 

 何者をも退けたメタモンだからこそ、孤独ではなく孤高の中に身を置いていた。足手まといを連れ回るのは“慢心”だと思っていた。

 けれど1度想像してしまうとダメだった。今後と比較してしまう。孤独が浮き彫りになる。『孤独ではない』わけではなかった。『孤独だったことを知らなかった』だけなのだと考えが至ってしまった。

 

 目の前の子分──覆らぬ決定事項──は変わらず何と鳴いているのか分からない。けれど何やら地面に描いて見せてくる。絵を褒めてほしいのかと思案するも、それだと些か突拍子のない行動に思えてしまう。

 

 すると子分は絵とメタモン自身を交互に指差す。それだけで必死さやら、何かを伝えたいらしいことは伝わった。であればそれが何なのか。

 

 より絵を注視すれば、それはエスパーポケモンの幼体に見えた。記憶の中にあるディティールを引っ張り出せば即座にへんしんすることも可能だろう。

 そして、メタモンは子分が伝えたいことを理解した。

 

(この子分、賢いぞ!)

 

 メタモンの特性を理解し、へんしん先のポケモンの特性すら理解している節がある。でなければこんな提案をしてくるワケがなかった。

 

 今、互いにある意志疎通の壁。これの打開案を挙げられるだけの知性に、メタモンは驚嘆した。如何に戦闘能力がなかろうと、知識とは力だ。

 これは思わぬ拾い物をしたと思いながら、メタモンは地面に描かれたポケモン、ラルトスにへんしんする。

 

 特性はテレパシー。心を開いていれば開いているだけ考えを読むことができるエスパーポケモンらしい特性だ。

 本来は戦闘中の群れで同士討ちを防ぐために使われるコレも、工夫すれば異種族交流ツールとなる。

 

 子分はメタモンがへんしんしたことで喜色を表した。やはりそういう意図だったようだ。両腕を広げて、テレパシーを受け入れる気満々の格好にメタモンは微笑ましくなってしまう。

 

 だから望み通りにメタモンは子分にテレパシーを使った。

 

 使って、敵対心だとか、悪意だとか、そういった害意を子分が持っていないことに安堵して()()()()()()

 

 未だメタモンの知らないポケモンの数々。

 子分に似た生き物たちが無数に暮らす環境。

 そして子分が──彼が本当の意味で孤独になってしまった現在に至るまで。

 

 彼はメタモンとは違った。文字通り、住んでいた世界が違ったのだ。

 彼は群れで生きる生き物だった。独りでは生きられないほどか弱い生き物なのだ。だのに、ある日急に群れから、住んでいた巣から見知らぬ土地に放り出された。コチラ側に来てしまった。

 

 喪失感があった。悲しみで息ができなかった。不安に押し潰されて──けれど、コレはメタモンの感情(もの)ではない。

 

 それがどれだけ痛ましいことなのか、最初から独りだったメタモンには真に理解できるものではない。それでも彼は本心から、笑顔でメタモンと生きようと考えていた。

 

 だから思ってしまったのだ。

 ()()はないだろう、と。

 

 メタモンはこの島のことをよく知っていた。貪欲に知識を貪り、島の生態系をよく理解していた。

 

 その上で、そんなメタモンをして、彼のような存在は()()だったのだ。

 

 生命体の生きる根幹は子孫を残し、種を存続させるもの。孤高に生きたメタモンだっていつかはと考えていたし、他のポケモンたちだって(つがい)を見つけて次世代を育んでいる。

 当然機会に恵まれず死に逝く生命だっている。弱いからと淘汰された命だってある。

 

 だが、もう彼は独りだ。まだ生きているのに、個の生命体として生存競争にすら参加させてもらえない。そんなの、あんまりではないか。

 

 けれど彼はメタモンに服従していなかった。寝転んで自棄になっていただけだ。それを単に早合点しただけだった。テレパシーでそんな些細な勘違いは容易に解消できた。

 

 彼は始めからメタモンの子分ではなかった。

 

(だからなんだ?)

 

 メタモンは既に彼に同情してしまった。憐れみを覚え、共に生きる気で将来の生き方を考えていた。元より子分として面倒をみようとしていたプランが少し変わるだけだ。何ら問題はなかった。

 

 ただ、そう、ほんの少しだけ立場が違うだけ。

 上下から対等に。

 施すだけではなく、心を埋め合う関係に。

 

 メタモンという種族の生態があるからこそ、彼はまだ独りにはならない。

 彼は仲間としての対等な関係、異種族混合の群れのようなものを望んでいるようだけれど、それでは寂しかろう。

 

「メチャァ!」

 

 彼が今後、どのような答えを出すかは未知数だ。

 しかしメタモンはその相手として、誰を選んだかはへんしんした姿がありありと物語っていた。




・色違いメタモン
この島の生態系の頂点に君臨している。
性格はしんちょう。食材タイプのおてつだいポケモンとしては不採用待ったなしなのだが、バトルにおいては天賦の才を持っていた。
一度見たものは忘れず、戦闘中はバカみたいにへんしんを繰り返す。タイプ相性を理解しているようだ。つまり、そういうことである。
油断してくれない絶対王者であり、ワカクサ本島の古株ポケモンたちは動く青色を見ると一瞬怯える。
メタモン自身はワカクサ本島を出たことがなく、島外にはスイクンみたいなのがウジャウジャいると思っている。そのためニンゲンを主人公以外知らない。
『メタモンが人間のメスにへんしんするシチュエーション』が読み取った記憶にあったため参考にした。

・顔に傷痕のあるマニューラ。
何だかんだあって群れのボスにまで上り詰めたマニューラ。幼少期の強者から油断を消し去った戦犯でもある。
コイツのせいで絶対王者が生まれたようなものだが、自覚はない。メタモンだけには喧嘩を売るなと新参ニューラに口酸っぱく教えているとか。
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