ワカクサ本島の原住民 作:メタモン推しの人
昔の偉い人は言いました。
腹が減っては戦ができぬ。
朝昼しっかり食べて夜は少なめに。
軍隊は胃袋で動くものだ。
要するに、日々の活動は食べなければ始まらない。食事とは生きる上での大前提であり、目下食糧事情は改善されなければならない事案である。
「つまーり、食いもん探しだ」
「モンモン?」
「そう、食いもん」
ノーマルタイプの食事処へと連れてきてくれたメタモンだったが、キーのみを食べ終わってからは特に“次の場所へ”なんてことはなかった。
ならば次は俺から動こうと立ち上がれば、メタモンも立ってついてくる。俺の一挙手一投足に合わせてくれるようで、手を差し出せば素直に握ってくれた。
今度は俺がメタモンを連れる側になったわけだ。
「たぶんあると思うんだよね」
この辺りの立地なんて知らないけれど、近くに湖があることだけは見ているのだ。あれだけ大きな湖ならばあって然るべきだろう。
「湖からどこかに繋がってる
メソポタミア、エジプト、インダス、黄河。これら四大文明が栄えた最たる象徴。人間にとって水とは生活に必要不可欠な代物だ。切っても切り離せるものではない。それはこの世界とて同じだろう。
川に沿って移動すれば文明に出会えるかもしれない。よしんば見つからなかったとしても、水源が近くにある安心感は大事だ。水があるということは植物が自生できるということ。その中には食材に適したものがあるかもしれない。
以上のことから俺は湖畔外周を調べて河川を見つけようと決めたのだ。
お昼ごはん用にキーのみをいくつか懐に収め、メタモンと一緒に来た道を引き返す。
「メッタ♪ メッタ♪」
「タイプワイルド!」
歌ってて思ったが、やはり靴が欲しい。
流行りもののスニーカーなんて上等なことは言わない。せめて足を保護したい。でなければ近い将来、ボロボロの足が出来上がりだ。
とはいえ、今すぐ何か作れるものでもない。踏み慣らされて足の皮膚が硬くなるのが先か。素人クオリティの靴を作成できるのが先か。これも今後の課題だろう。
「よーし、帰ってこれた。相も変わらず綺麗だなぁ湖面」
「メタァ」
朝方と比べてだいぶ日も高くなった。光の当たり方が変われば当然湖面の表情だってガラリと変わる。しかしその美しさは健在で、巨大な宝石のようにすら見えた。
「さて……左回りで行こうかな」
パッと見では分かりづらかったが、意識して観察すると左手側に河口らしきものが見えた。
入り口があれば出口もあるはずだ。アレがどっちかは知らないが、ここから向こう岸の様子は遠すぎて確認できない。右には河口なし。ひとまず左から攻めてみることにする。
しかし、湖畔は歩きやすくていいね。飛び出た木の根っこなんかを気にしなくて良いのが楽だ。背の低い芝生のような地面だから足に優しい。
たまに隠れた小石を踏んで顔をしかめてしまうけど、なに、マッサージみたいなものと思えばいい。これくらい大したことではない。
ところで全く関係ない話ではあるが、俺は金輪際足つぼマッサージだけはしないと固く誓うことにした。いや本当に、全くもって今の状況とは何ら関わりのない事柄だが、二度と同じ轍は踏みたくないね。踏んだのは小石だけれど。
そんなこんなあって、無事河口付近にやってくることができた。高々小石1つにのたうち回ってメタモンに心配された俺は過去の俺だ。今が無事なのだから無事到着したと宣言する。
「河口だぁ!」
「メチャァ!」
湖から外へ。湖畔の境界線から穏やかに流れていくせせらぎが耳に心地よい。
そしてここの河川の幅はそれなりに広かった。ごろごろと落ちている小さく丸まった石たちが、長い年月を掛けた侵食作用を想起させる。このひとつひとつがどれだけの時間をかけてここまで運搬されたのか。俺には想像がつかない。
それらを踏みしめて、俺とメタモンは先に行く。
「メタメタ」
行こうとして、不意に繋いでいた手を軽く引かれた。どうしたのかとメタモンを見れば、川の浅瀬をチラチラと見て指差している。
「遊びたい?」
「メタ!」
なるほどね。確かに日差しが少し暑いかもしれない。熱中症予防という意味でも1つ、ここらで涼むことを視野に入れようか。
「メタァ?」
「なーに、本気を出して遊ばないだけさ。適度に、涼む程度には楽しもう」
「メタァ!」
メタモンに引っ張られて、ゆっくりと浅瀬に足を入れる。アキレス腱が浸かりきらない程度の場所で、足に水温を馴染ませる。
透明感のある水流は滑らかで、けれど力のある感触を肌に伝えた。それに聞こえてくるせせらぎとが合わさって、最早これだけで心が和む。
これも侘び寂びか?
「メチャァ!」
と思っていると、突然顔に水が飛来した。犯人は知れている。
「おまっ、やったな!? それウチの島じゃ戦争だからな。バカップルと青春謳歌してるヤツしか許されない行為だから。オラッ倍返しっ!」
「メチャァっ!」
お返しとばかりに水を掛けてやったら凄い笑顔で反応した。え? 楽し。全身濡れて替えの服とかないのに超楽しい。
「くらえっ、みずでっぽう!」
「メタっ、メタドロッ!」
「なにそれズルじゃん!?」
両手で飛ばしたみずでっぽう。
手のひらから飛んできたハイドロポンプ。
撃って撃たれて水浸し。けれど最高の気分だった。
「いやー降参降参。疲れたからいったん止めよ」
「メタ~」
結局、時間を忘れて遊んでしまった。腹の空き具合からしてお昼時に丁度良いくらいだろうか。
心情的にこのカロリー消費を無駄と定義したくはないが、現状余裕がないのもまた事実。お昼ごはんにキーのみを食べて、午後から真面目に移動しようか。
「さてさて、お昼の時間だぞ~。キーのみが欲しいメタモンは誰かな~?」
「メター!」
元気よく手を挙げるメタモンに、俺は持ってきたキーのみを1つ手渡す。メタモンはそれを両手で受け取って、好物を手にしたリスみたいにかじりついた。
あざと可愛いかよ。え? ウソ、天然でやってる? 小動物系メタモンってコト? いいじゃん。
「だーかーらー!」
「メタ? メ──」
俺が1人悶々としていると、先ほどまで小さな口を必死に動かしていたメタモンが動きを止めた。
「あぁいやごめんな、急に叫んで。気にしなくても……メタモン?」
食事の邪魔をしてしまったかと思ったが、何か変だ。
メタモンは一点を見つめるようにして動いていない。それは俺を咎めるような視線ではなくて、俺より後方に意識を割いているように見えた。
緊張があった。纏っている雰囲気が俺にも伝播して、この場を動くことが罪であるとさえ思わせた。けれど、確認しない選択肢もまた同じように選びがたい。
俺は僅かな逡巡をして、振り向くことを選んだ。
ゆっくりと。
静かに。
やがて、
「──」
ここからそう遠く離れていない木の影にソイツはいた。
木の幹のように太い両腕を垂れ下げて、直立のままコチラをじぃっと覗く巨体の姿。緑を基調とした自然に不釣り合いなピンクの体毛が、物言わぬ姿をより不気味に引き立てていた。
奇抜な配色が突然変異でないのなら、種族特徴であるのなら、それは目立とうが生き残れる強さの証でしかない。狩りで己の存在に気づかれようが関係ないという圧倒的なまでの力の証左。
そのポケモンを俺は知っている。
「キテルグマ……」
野生の脅威が、俺たちを狙っていた。
・メタモン
楽しい気分に水を差されて沈黙した。
キテルグマが何もせずに去るのなら見逃すつもりでいる。それ以外の行動をとったら潰す。
・キテルグマ
今まですべての問題をアームハンマーで蹴散らしてきた暴君。実は主人公たちが遊んでいる場所がコイツの縄張りの1つだったりする。つまり主人公たちが悪い。
メタモンの警戒範囲に近づく前、遠くから手を振っていた(威嚇) お前はお前でもっと分かりやすく威嚇しろ。
最近はワカクサコーンしか食べていないようだ。
サブタイトルはポケカから引用。皆は分かったかな?