俗物的な出会いから始まる純情な恋   作:LiLiL

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0−2:私の出会い

「……もっと高く、届きたい」

 

 

 

夜の自室。

 

煌びやかな照明は落とされ、モニターだけが淡く輝いていた。

 

マイクスタンドの前に座り、私は小さく息を吐く。

 

 

 

私の名前は『天宮透子』。春から高校二年生になる十六歳。

 

自分で言うのもなんだが、学校では明るく、華やかで、誰とでも仲良くなれる。

 

男女問わず友達は多く、学年でも「スクールカーストの頂点」なんて囁かれる存在だ。

 

 

 

けれど、それはあくまで“表の顔”に過ぎない。

 

名声

 

 

 

裏の私は――『皇城渚』。

 

 

 

VTuberとしてデビューして半年、登録者数は五十万人を超えた。

 

透明感ある声と、ざっくばらんなトークで人気を集め、「次世代の歌姫」と呼ばれている。

 

配信をすれば同接は常に数万人。アップロードした歌動画はあっという間に百万再生を突破。

 

ファンからは「天女」「癒やし」と持ち上げられ、企業案件も増えてきた。

 

 

 

だが、私は満足していない。

 

 

 

確かに今の私は、誰かから見れば「成功者」かもしれない。

 

けれど私が求めるのは――もっと上だ。

 

万人に知られ、誰もがその名を口にする存在。

 

そう、私の正体は承認欲求の塊なのだ。

 

 

 

「……このままじゃ、まだ足りない」

 

 

 

歌ってみた動画で注目を浴びた。だが、それだけでは長くは続かない。

 

借り物の曲ではなく、自分だけのオリジナル曲を手に入れなければ。

 

それが、次のステージへ進むための絶対条件だ。

 

 

 

私はスマホを手に取り、SNSの依頼フォームを開く。

 

そこにはいくつもの作曲家の名前が並んでいた。

 

無数の候補から、私はひとつの名前を見つける。

 

 

 

『KANADE』

 

 

 

――ネットを席巻する若き天才作曲家。

 

ボカロ曲は毎回数百万再生。提供した楽曲は、歌い手の代表曲となり、時にオリコンチャートをも揺るがす。

 

音楽関係者の間でも「今もっとも注目すべき作曲家」と噂される存在だ。

 

 

 

私は、初めて彼の曲を聴いた時のことを思い出した。

 

夜、眠れないときに何気なく再生したボーカロイド曲。

 

美しい旋律に、まるで世界が一瞬で塗り替えられたような衝撃を受けた。

 

あのときの感覚を、今も忘れられない。

 

 

 

「この人なら……よりファンがつくかもしれない」

 

 

 

心臓が高鳴る。

 

彼の力を借りれば、私は次の段階へ進める。

 

“皇城渚”を、ただの人気VTuberから本物のアーティストへ――。

 

 

 

ただ……彼はなかなか難しい人物だと聞く。噂では結構な数の依頼を断っているだとか……

 

私は少し考えて、メッセージを打ち込んだ。

 

 

 

『曲はそちらにお任せします。依頼料についてはできる限り、あなたの言い値で対応します。

 

ただし、最高の楽曲をください』

 

 

 

送信。

 

 

 

深呼吸をひとつ。

 

 

 

この依頼が通れば、私の未来は大きく変わるだろう。

 

名声を求める私にとって、そのためにいくらかかっても構わない。幸い、収入は結構ある。

 

 

 

モニターの光に照らされた自分の顔を見つめる。

 

そこには、学校で見せる“完璧な笑顔”とは違う、飢えた野心が浮かんでいた。

 

 

 

「私は、絶対に上に行く」

 

 

 

そして――その瞬間、画面に返信が届いた。

 

 

 

『最高の楽曲を作ることを約束しましょう』

 

 

 

私は、唇を噛みしめる。

 

胸の奥から熱が広がり、全身が震える。

 

ついに、夢へと繋がる扉が開いたのだ。

 

 

 

「これで……私は、もっと遠くへ行ける」

 

 

 

誰にも言えないもう一人の私、皇城渚。

 

その名を、本物のスターへと押し上げるために――。

 

 

 

「私の……名声のために!!!」

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