インフィニット・ストラトス ~その男の名は~   作:ヘタレ侍

2 / 4
テストも終わって時間ができたんで投稿してみます。
だれかおらに文章力をおくれ!


ボーイ・ミーツ・エリート

奇妙な沈黙に支配されていた。

人の声がまったくしないわけではないが、あまり第三者には聞かれたくないのか、ヒソヒソとした話し声ばかりである。

対照的に教室の外は他クラスの生徒で溢れかえっていて、喧騒に満ちていた。

後者の原因は1年1組の男性操縦者、というよりも織斑一夏だろう。

では前者の原因はというと、

 

(十中八九、俺だな……)

 

遅刻寸前で教室に入って来た身長180センチの悪人面が

自己紹介すれば、果たしてどうなるのか?

答えは教室の雰囲気から推して知るべし。

 

(どうしたもんかねえ)

 

幸い、中学の時は仲のいい友達も何人かいたし、親友と呼べるやつもいた。クラスに馴染める可能性は0ではない。時間をかけてイメージアップを図ればなんとか、茶飲み話をする相手くらいできるだろう。

 

「おーい!」

 

思案に耽っていると横合いから声が掛かる。

声色から判断するに女性ではない。

となればあとは消去法だ。

 

「どうした織斑?」

 

人好きのする笑顔で話し掛けて来たのは、もう一人の男子、織斑一夏。

 

「いや、同じ男子同士仲良くしたいと思ってさ。

よろしくな!えーっと、何て呼べばいい?」

 

「好きに呼べ」

 

「じゃあ旭で。よろしくな旭。俺も一夏でいいよ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

無難に挨拶を済ます俺と織斑。その表情に俺を怖がっている様子はあまりない。

 

「それより、なんで俺の名前が織斑だってわかったんだ?」

 

「お前は有名人だからな。名前も写真もバンバン出回ってる。新聞かニュースを人並みに見てれば誰でもわかるさ」

 

「あ、そっか」

 

納得がいったような表情を浮かべる織斑。こいつ考えが表情に出るタイプみたいだ。

 

「じゃあ旭はどうなんだよ。世界で二人目の男性操縦者だろ?」

 

「所詮は『二人目』ってところだろ」

 

「そんなもんなのか?」

 

実際はこいつの姉が『あの』織斑千冬だということもあるのだが、身内の有名人を引き合いに出すのは流石に憚られるので言わなかった。

 

「そんなもんだ。それに俺みたいな悪人面の写真なんざ、一銭にもならねえだろ。マスコミもそこまで暇じゃねえってこった」

 

「悪人面って……。俺はカッコいいと思うぜ、旭のこと」

 

「そいつはどーも」

 

「あ、信じてないな!俺は本当にそう思ってるんだぞ!」

 

「そーかい」

 

 

 

「ちょっといいか」

 

 

 

織斑の社交辞令を軽く流していると、女子生徒から声が掛かる。

 

「ん、なんだ?……って箒?!」

 

反応したのは勿論織斑。どうやら知り合いのようだ。

箒、と呼ばれた女子は今度はこっちを向いた。

 

「少し一夏に話がある。借りてもいいか?」

 

「好きにしろ」

 

「感謝する」

 

そう言って箒と呼ばれた女子は織斑の手を掴み、

 

「ここではなんだ、場所を変えるぞ一夏」

 

「え、あ、ちょ、待てよ箒~!」

 

そのまま何処かへ行ってしまった。

 

織斑が来るまでの間、俺が針の筵状態だったのは言うまでもない。

 

 

 

§ §

 

 

「━━━━━━なので、ISの軍事転用はIS運用協定によって規制されています。皆さんには『アラスカ条約』と言った方が分かりやすいかもしれませんね」

 

IS学園は入学式当日から授業が行われる。IS操縦者育成機関とは言え、高等学校としての側面ももつこの学校では、IS関連の授業に加え一般教養の授業も存在する。

故にカリキュラムには余裕がないため、式典の日もこうして授業があるというわけだ。

しかし、今山田先生が教えているのはIS学園の生徒なら分かって然るべきレベルの内容だ。

 

「━━━━━━━というのがISと社会との関係ですね。皆さん、何か分からない所はありますか?」

 

一区切りついた所で山田先生が確認するが、皆知っていて当然といった表情を浮かべている。

約1名を除いて。

 

「織斑君、どこがわからなかったんですか?」

 

ビシッと手を挙げたのは織斑一夏。

まあ、わからないとは言っても、複雑な用語の確認ぐらいのものだろう。まさか、勉強そっちのけで遊び呆けるような馬鹿でもあるまい。

 

「あの…………ほとんど全部わかりませんッ!!」

 

馬鹿だった。

 

「え?!ほとんど全部ですか?」

 

おいおい、まだ難しいことはなんも言ってないぞ。流石にこのレベルでついていけない生徒がいるとは思っていなかった山田先生がクラスを見回し、再び確認する。

 

「他の皆さんの中に、今やったところでわからない所がある人はいますか?」

 

………………。

 

もちろんそんなやつはいない。

ここにいるのは競争の激しいIS学園の入試をパスした人間なのだ。

クラスを見回していた山田先生の視点が俺に向いた。

二三深呼吸をして、意を決した様子の山田先生が俺にも質問してくる。

 

「ほ、北条君は、な、何かわからない所はありますか?」

 

俺に話しかけるのに相当緊張しているらしく、表情は不安気。教師にも怖がられていることはショックなのだが、質問に答えないわけにもいかないので、自分に出せる最大限に穏やかな声で答える。

 

「特に問題はないです」

 

「で、ですよね……。変な質問をしてごめんなさい」

 

生徒の理解度のチェックは教師の仕事なのだから、変な質問とは思わないのだが。

 

「なんで旭はわかるんだよ?!」

 

「勉強したからな」

 

答えるや否や、織斑の後ろからヒュンと風を切る音がした。

 

「馬鹿者が」

 

「いッ!何すんだよ千冬姉!」

 

再び振るわれる出席簿

 

「何度言えばわかる、学校では織斑先生だ」

 

「……はい織斑先生」

 

「この程度の内容がわからんとは、参考書は読まなかったのか?」

 

「参考書……?」

 

ISに関する用語などが記載されている参考書が入学者には配られる。俺が授業についていけるのもそれで勉強したからだ。

 

「必読と書いてあったのを忘れたか?」

 

「ああ、あれか。古い電話帳と間違えて捨てちまった」

 

前言撤回、大馬鹿である。

大馬鹿に三度、出席簿が振るわれる。

織斑先生はただただ呆れ顔だ。

 

「馬鹿者が。再発行してやるから一週間で覚えてこい」

 

「え、あの分厚い本を一週間ってのはちょっと…………」

 

「覚えてこい」

 

「…………はい」

 

どう考えても覚えるのに一ヶ月以上かかりそうな厚さの参考書を、一週間で覚えろと言われたことには同情を禁じ得ないが、自業自得の一言に尽きる。

 

 

「ISに関する規則、規定は当然覚えておくべきものだ。知らなかった、では済まされないぞ。いいな?」

 

「「「「はい!」」」」

 

「よろしい。すまない山田先生。授業を再開してくれ」

 

「わかりました。では皆さん教科書の━━━━」

 

こうして授業は問題なく再開された。

約1名を除いて。

 

 

 

§ §

 

 

「旭~、助けてくれよ~」

 

授業が終わるとすぐに織斑が泣きついて来た。

 

「助けるっつっても、覚えるしかねえだろ」

 

「それはそうなんだけどさ……。ほら覚えるコツとかそういうの、あるだろ?」

 

「そんな都合のいいものはねえよ」

 

「そこをなんとか」

 

すがる織斑とそれを突っぱねる俺。という構図でしばらく問答していると、後ろから女子生徒が話し掛けて来た

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「ん?どうかしたか?」「あ?」

 

「まあ、なんという間抜けな返事!この『セシリア・オルコット』が話し掛けて差しあげているのだから、もっとそれ相応の態度というものがあるでしょう!?」

 

話しかけられた、というよりも絡まれたという方が正確かもしれない。セシリア・オルコット、と名乗った目の前の女子はこちらの反応には目もくれず、捲し立てるように話し始めた。

 

「いいですか?イギリスの国家代表候補生であるこの私と同じクラスで学べるということが、どれほど幸福なことであるか。理解していますの?」

 

「してるしてる。俺達は超絶ラッキーだな」

 

「馬鹿にしてますのッ?!」

 

この手の人に一々対応していたらキリがないので、話半分程度で聞き流しておこう。とろくでもないことを考えていると、織斑が頭に疑問符を浮かべ脇腹を肘でつついてきた。

 

「なあ旭、代表候補生ってなんだ?」

 

「読んで字の如し。国家代表の候補生だ。大抵、国から専用機を支給されている。平たく言えばISの世界のエリート様ってわけだ」

 

「なるほど~」

 

「そう、エリート!私はエリートなのですわ!」

 

説明に納得した織斑とエリートという単語に敏感に反応するオルコット。はっきり言って、対応が面倒になってきた。

 

「そんで、そのエリート様が何の用だよ」

 

「ええ、貴方達はISについての知識に乏しいのでしょう?ならばこのセシリア・オルコットが貴方達にISについて教えて差しあげてもよろしくてよ?」

 

「『高貴なる者の務め(ノブレスオブリージュ)』ってか?」

 

「その通り。エリートである私が、劣っている貴方達に手を差しのべるのは当然のことですわ」

 

面と向かって『劣っている』と言われてカチンと来たのか、織斑はやや顔をしかめている。

国家代表候補生という肩書きは伊達じゃないのだから、

エリートであるというのは間違いではないし、ISに触れて日が浅い俺達が劣っているというのも決して嘘ではない。言い方はムカつくが、内容は的を射ていると言えなくもない。

なんだかなあ、と思っていると予鈴が鳴った。

 

「時間ですね。この話の続きはまた後で」

 

次は織斑先生の授業だから、予め着席しておかないと、出席簿を降り下ろされかねない。オルコットもそれは恐ろしいのか、言うだけ言って、自分の席へと戻っていった。

 

 

 

§§

 

「ではこれより授業を始める。と、その前にまだクラス代表を決めていなかったな」

 

そういうのは授業後のSHRでやるもんじねえのかよ。

と思いつつも、決して口には出さない。

 

「自薦、他薦は問わん。誰か適任だと思うものはいるか?」

 

織斑先生の発言にクラス中がざわつき始める。

その中で女子の一人がハイっと手を挙げた

 

「織斑君を推薦します!」

 

「え、俺?!」

 

それをきっかけに、箍が外れたようにクラス中が口々に織斑を推薦し始める。

 

「せっかくの男子なんだし、持ち上げないと!」

 

「他クラスに情報売れるしね♪」

 

「いいね、いいね♪」

 

推薦する理由の大半が碌でもないもんだが、数の利には勝てず織斑はたじたじだ。 ちなみに俺を推薦する声はない。

 

「ちふ……織斑先生、俺は」

 

「言っておくが他薦された者に拒否権はないぞ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

お前は藤木くんかよ。

 

「他には誰かいないか?いないなら、織斑に決まりだが」

 

このまま行けば代表は織斑だなー、とぼんやり考えていると、後ろの方で机を叩く音がした。ついでに嫌な予感もした。

 

 

「そのような選出は納得がいきませんわ!!」

 

やっぱりオルコットさんだったか。

 

 

 

 

 

§§

 

 

 

 

果てしなく面倒くさいことになりそうだが、織斑は救いの神を見るような目をしている。

 

「ただ男だからという理由での選出など、断じて認められません。この私にクラスの代表が男であるという屈辱を味わえというおつもりですの?!」

 

「オルコットが自薦、と。他はいないな」

 

織斑先生、スルースキル高いな。まあ見る限り、スルーというより、面白そうだから放っておこうみたいな感じか。教師がそれでいいのかよ。

クラスの支配者が何も言わないのをいいことに、オルコットがさらに捲し立てる。

 

「だいたいこのような文化的にも後進な島国にわざわざ来たのは、ISに携わる者として、国を代表する者として己を高めるためであって、黄色猿のサーカスを見に来ているのではありません!」

 

黄色猿って、漫画に出てくる嫌味な白人しか言わねえだろ。しかも日本が文化的に後進って、ISの産みの親もブリュンヒルデも日本国籍なんだぜ?むしろ日本はISのメッカだろ。

するとオルコットの散々な物言いに、織斑の我慢の限界が来たようだ。

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い飯で何年覇者だよ」

 

「な、なんですって!?」

 

この一言が、ただでさえヒステリーを起こしていたオルコットさんには効果抜群だったようだ。

 

「私の祖国を侮辱するおつもりですの?!!」

 

「先に言ってきたのはそっちだろ!」

 

もう売り言葉に買い言葉で、織斑も喧嘩腰でオルコットと言い合いを始める。

 

俺はそんなやりとりをぼーっと聞いていた。

推薦されていない以上、どっちが代表でも関係ないし、さして興味もない。高圧的で差別的なオルコットの物言いに思う所がないでもないが、行き過ぎた高校デビューとでも思えば我慢できないこともない。

そんなことよりも空腹でグルグルしている腹具合の方が気になる。

昼飯は何を食おう、と益体もないことをつらつら考えていると、目の前を季節外れの蚊が横切った。放っておけばそのうちどこかに行くだろう。

 

 

「━━━━━━━━━━!!」

 

「━━━━━━━━━━!?」

 

 

二人はまだ言い争っているらしい。内容はよくわからん。どこかに行くと思っていた蚊の羽音がまた聴こえる。さすがに鬱陶しいので机に止まっている所をバシッと叩く。すると思いの外大きな音がなり、さっきまでざわついていた教室が、途端に静かになった。

 

「ん?どうした北条、お前も立候補か?」

 

「いや、虫がいたんで」

 

「そうか」

 

これ完全に教室が五月蝿くて不機嫌なヤンキーだと誤解されたな。入学そうそうやっちまった。

奇妙な静寂が支配する教室で咳払いが聞こえた。

 

「決闘ですわ!!」

 

「いいぜ!四の五の言うより分かりやすい」

 

どうやらクラス代表の行く末は決闘に委ねられたようだ。織斑も難儀な奴だな。適当に聞き流していれば、面倒事を避けられたのに。

 

「それでハンデはどうする?」

 

「あら?威勢のいいことを言う割にはもう手加減のお願いですか?」

 

「そうじゃねえよ。俺がどれくらいハンデをつければいいかってことだよ」

 

織斑としては至極真っ当なつもりだったんだろう。しかし、言う場所と時代が悪い。

 

今、世界の市場の中心はISであると言っていい。そしてそのISは女性にしか扱えない。だからISの使える女性は偉い。そんな理屈とも言えない理屈で社会は女尊男卑の風潮に染まり切っている。

 

女が男より強いのは当たり前。そんな時代で男が女にハンデをつける、等と言えばどうなるか。

 

教室が笑い声に包まれる。

 

「織斑君、男が女より強かったのはずっと前のことだよ?」

 

「それに相手は代表候補生だし」

 

「まだ遅くないからハンデつけてもらいなって」

 

どの笑い声も織斑を見下すニュアンスを含んだ不快なものだった。見れば織斑も唇を噛んでいる。

あの様子だと、今の社会に何か思う所があったのかもしれない。

 

「黄色猿にしてはジョークのセンスがおありのようですわね。まあ実力の差は明らかですし、頼みようによってはハンデをつけることも吝かではありませんのよ?」

 

皆が織斑を見下し、嘲笑っている中で、民意の体現者とでも言わんばかりのオルコットが嘲るように言った。

 

ここら辺が我慢の限界だった。

 

「さあ、先程の非礼を詫びなさい。そうすれば手加減くらいは

 

「ハンデなんざ必要ねえだろ」

 

俺の言葉に教室が水を打ったように静まり返る。こういう時に悪人面は便利だ。怯えとも非難とも言えない視線を感じるが、そんなことはどうだっていい。

 

「この学園に入学した時点でISを動かせるんだ。スタートラインは同じの筈だろ?ならハンデなんざいらねえよ」

 

「で、でもオルコットさんは代表候補生なんだよ!?」

 

「本当にお前らはオルコットが代表候補生だから、実力に明確な差があるから、それだけの理由でハンデつけろって言ったのか?」

 

「そ、そうよ!それの何がいけないのよ!」

 

「俺には『ISに乗れるってだけの弱い男が思い上がるな』って言ってるようにしか聞こえなかったんだがな」

 

そう言うと反論の声がピタリと止む。

 

「勘違いするんじゃねえぞ。女が強いんじゃねえ、ISが強いんだ。そんなこともわからねえ奴らが力を笠に着て他人を見下すんじゃねえよ」

 

言うだけ言って席に着く。クラス全体の非難を浴びる形になったが後悔はしていない。

 

「話は済んだようだな。よろしい、では一週間後織斑、オルコット、北条の三名による代表決定戦を行う」

 

うん、話は纏まったようだな。それじゃあ頑張れよ織斑に北条…………って

 

「織斑先生、俺自薦も他薦もないんですけど?」

 

「あれだけ大見得切ったんだ、関係ありませんなんて言えるとでも思ったか?」

 

嘘……だろ?!

織斑を見ると『頑張ろうぜ!』って顔でサムズアップを決めてくる。

 

 

 

「よし、異論はないな。では授業を再開するぞ」

 

 

 

前言撤回、後悔しかなかった。




感想、こここうした方がいいんじゃね?的なアドバイス等待ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。