島流し令嬢   作:もちもち物質@布団

6 / 100
島流し2日目:まずは食料*3

 さて。

 これで後は時間さえかければ、石斧が出来上がる。

 ……形の良い丈夫そうな石を探してくるのはマリーリアにしかできない仕事だが、その後、石をひたすら研ぐ仕事はゴーレムに任せてしまえばいい。これだけでも随分と、時間と労力を節約できる。

 ゴーレムに仕事を任せて浮いた時間と体力で、マリーリアは早速、次の仕事を進めることにした。

 

「次はやっぱり、炉よねぇ」

 ……そう。いよいよ、マリーリアは焼き物を始める!

 

 

 

 ……とはいえ、炉を作ってすぐに焼き物ができるわけではない。

 というのも、炉を粘土で作るのにはある程度時間がかかるからだ。

 

 炉は、粘土を一段ずつ積み上げて作る。だが粘土は乾くまでは柔らかい。つまり、下段が乾いてからでないと、上に粘土を積み重ねられないのだ。

 よって、炉を作るのは数日がかり。更に、その炉がしっかり乾ききるまで待ってからでないと、ものを焼くことはできない。

 更に、炉を作るだけでは炉は動かせない。燃料が必要なのだ。そしてその燃料は、現状では枯れ木を集めてくるしかない。

 石斧が完成すればそれで木を切って燃料にすることができるが、切ったばかりの木材は燃えない。しっかり乾燥させなければならないのだ。

 ……ということで、大規模に焼き物を実践できるのは大分後のことになる。つまり、屋根瓦や煉瓦は後、ということだ。

 が、テラコッタゴーレムや土器といったものは焼き上げたい。今後の食糧調達のことを考えても、荷物持ちのゴーレムが1体は欲しいのだ!

 よって、炉を作る!マリーリアは、数日がかりで炉を作ることにしたのだ!

 

 

 

 炉の材料は粘土である。そして粘土は、川に削られた形跡のあるちょっとした崖などから採ることができる。拠点近くの水場付近には、こうした粘土の採掘場がそれなりに存在していた。

「一段目だけ作ったらご飯にしましょ。ふう……」

 マリーリアは空腹を覚えつつも、『まあ、時間がかかるものから先にはじめましょ』と元気に粘土を採掘していく。

 簡易スコップを突き刺してはてこの原理で粘土の層に罅を入れ、そのまま粘土を崩していく。崩れた粘土を手で掬って……昨夜作った籠の中にぽいぽいと入れていき、それを抱えて拠点まで戻った。

「……水を汲むための土器が欲しいわぁー」

 そして、採掘した粘土を炉建設予定地の傍にぶちまけたら、早速それに水を加えて練るのだが……現状、水を運べる道具は小さめの鍋と瓶しかない。効率は悪いが、仕方がない。これも、炉を作って土器を焼き上げるまでの辛抱である。

 マリーリアは粘土を練って、砂利や木の根はできるだけ排除し……それを捏ねて、積み上げていく。

「こんなものかしら」

 地面に描いた炉の形の通りに粘土を形作って、ひとまず一段目が完成である。恐らく、6段か7段ほど積み上げることになるだろうが、まあ、気長にやるしかない。

 

 

 

 ということでマリーリアは川辺で粘土まみれの手を洗うと、早速、食材の調達に向かう。

「……今度は外れね」

 まずは、池。朝仕掛け直した罠に魚がかかっていればよし、と覗いたのだが、今は何もかかっていなかった。残念だが仕方がない。マリーリアはまた罠を沈め直して、次の食料のアテを探しに行くことにする。

 

 次に向かうのはベリーの茂み。ここには確実にベリーがあるので、まあ、小腹は満たされる。

 シルバーベリーと木苺とを満足するまで食べたら、夕食分、ということで、籠にベリーを摘んでいく。……まあ、ベリーを主食にするわけにはいかない。ベリーの季節はそう長くないのだ。そう遠くなく、魚や野草だけで食事を賄えるようにしなくてはならない。

 まあ、ベリーを食べて活力を得たマリーリアは、そのまま海岸の方へと向かう。海岸には、拾いたいものがたくさんあるのだ。

「ふふ、あるわねあるわね……沢山落ちてるわぁ」

 にこにこしながら麻袋に拾い集めていくのは、貝殻だ。貝殻も何かと利用できる。焼いてモルタルにしてもいいし、土器の表面を磨いて割れにくくするのにも使う。そして……いずれ、製鉄するようになったら、その時にはまた、貝殻を使うことになるだろう。

「流木も大事よねえ……。良い具合に乾いているもの」

 続いて流木も拾い集める。燃料が限られる今の状況では、流木も可能な限り拾い集めていきたい。すぐ燃料として使える枯れ木は然程少なくはないが、それでも無尽蔵にあるわけではないのだ。

「それから……今日の漂着物は……うーん、あんまり無いわねえ」

 ついでに漂着物も探してみるが、流木だまりのあたりにはめぼしいものは特に無かった。

 だが。瓶か何かだったのだろう、綺麗な色をしたガラスの欠片が落ちていたので、それを拾い上げる。

 ガラスの欠片は波に擦られてすっかり角が取れて丸くなり、ころん、とした可愛らしい形になっている。擦りガラス特有の半透明の具合がなんとも美しい。マリーリアは『折角だから持って帰りましょ』と、それも麻袋の中に入れていくことにした。

 ……折角の無人島暮らしだ。生きるためだけに動くのではなく、娯楽らしいものを見つけて楽しんでいきたい。マリーリアはふんふんと鼻歌を歌いつつ、綺麗な貝殻を見つけて歓声を上げつつ、それも拾って麻袋へ入れるのだった。

 

 

 

 流木に貝殻にベリーの籠に、と荷物を抱えて帰ったマリーリアは、荷物を置いたらまた探索に出る。できるだけ、拠点と海岸までの間……つまり、島の比較的外側の方を探索するようにして、魔物との遭遇はできるだけ避けたい構えだ。

「蔓はいくらあっても足りないものねえ」

 マリーリアが採取しているのは、木の蔓である。

 蔓は半分に割いて、そのまま紐のように使っているが、本当ならば水に浸けて柔らかくし、組織を叩いて壊すか腐らせるかして取り除き、繊維だけを取り出して紡いで撚って、紐にした方がいい。……まあ、今はそこまでこだわる余裕が無いが。

 今のところ、木の蔓は紐であり、同時に、籠の類の材料である。

 効率的に魚を捕りたいマリーリアとしては、あともう2つ3つ、魚用の罠が欲しいのだ。今日の残りは籠を編んで過ごすことにしよう。

 

 

 

 その前に一応、池の罠を確認しておく。川エビが2匹入っていたので、ありがたく捕まえた。焼いて食べよう。

 エビを焚火でそのまま焼くのはよろしくない。灰まみれのエビはあまり美味しくないのである。ということで、川辺で比較的平らな石を拾ってきたら、その石を焚火にくべてフライパン代わりにする。

 よく熱せられた石の上にエビを並べて焼けば、ほわり、と美味しそうな匂いが漂ってくる。

「……本当ならもうあと10匹くらいいてくれてもいいのだけれど」

 小さな川エビ2匹では、到底空腹を満たすことはできない。マリーリアはエビが焼けるまで、昼に摘んだベリーをもくもくと食べ、水を飲み、空腹をなんとか誤魔化した。

 ……いよいよ、そろそろ本格的に食料供給を考えないと、飢える。一応、島流しの際に持ち込んだ保存食はまだとってあるが、あれはいざという時のために取っておきたい。

「明日は海でお魚を捕ろうかしら。それとも別の食べ物を探す?何にしても、そろそろ大物を獲りたいところよねえ……」

 マリーリアはそんなことを考えつつ、焼けた川エビを早速、食べ始めるのだった。

 

 

 

 その日の内にマリーリアは魚用の罠をもう2つばかり作って、池に仕掛けておいた。これで魚が獲れる可能性は3倍……になるとよいのだが。

 そうしてその日はそのまま眠って、翌朝。

「さ、今日のお魚はどうかしらぁ」

 マリーリアはわくわくしながら池へ向かった。何かかかっていてくれ、と思いつつ、3つの罠を池から引き揚げて確認すると……。

「……昨日の方が獲れてたわねえ」

 なんと、3つの罠全てを合わせても、川エビが1匹と、掌に乗るくらいの大きさの魚しかかかっていなかったのである!

 これでは到底、空腹を満たせない。だが、一気に空腹を満たせる程の食糧があるでもない。マリーリアはため息を吐きつつ、『また地道にベリーを集めて、海でお魚を釣るのがいいかしら……でもそうなると、釣り針を作るところからよねえ……』と考える。

 ついでに、『なら釣り竿から垂らすための釣り糸は……木の蔓で代用するしかないかしら……』などとも考えて、木の蔓を眺めている内に、ふと、マリーリアは思い出した。

「ああ、そういえば……」

 ここの木の蔓よりよほど太い蔓に、牙のような棘が並んだ蕾。……そう。

「マンイーターが居たわよねぇ……」

 大きめの、『食べられるもの』の存在が、確かにこの島にはあったのだ。

 

「あれ、仕留めて焼いて食べましょ。うふふふ……」

 そうと決まれば、早速動かなければ。マリーリアはにこにこ笑いながら早速、マンイーターを焼いて食べるまでの計画を立て始めるのだった!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。