001
ギィと扉があけられる、最初に入ったのはウォルターだった。
本来であれば護衛役のレイヴンが開けるところだろう、だがウォルターは責務を果たそうとしていた。
ウォルター「そこにいるのは、ミリアル、なのか」
ミリアル「「そう、私はミリエル、我々の防衛意識」」
ルシアとミカルは寝ている、だが口だけは動いている、続いてレイヴンと義体のエア、最後に主治医であるRAD医療技術者が入ってくる。
ミリアル「「我々が攻撃したのは謝ろう、すまなかった」」
ウォルター「いや、いい、あぁしなければ作戦が成功しなかったのは事実だ、それを利用した俺もな……」
ミリアル「「だがあそこで危険を冒した理由はなんだ?下手をすれば貴方は死ぬこととなったのだぞ」」
ウォルター「俺たちの作戦はこうだった」
まずウォルターが情報を知る、それを伝えることで起動した【蝗】をエアが探知、各地に配備したハウンズACや企業AC、傭兵までも動員した総動員作戦だったらしい。
それをRADと各企業が各々作り出したバルテウスに発想を得た急速加速移動装置、通称ヴァンガード・オーバードブーストが【蝗】を発見し、起動する以前、ウォルターをロックオンするまでに破壊にかかる。
平行世界戦移動装置によって本拠地ごと移動していた【蝗】は老朽化によりその機能は万全とはいかなくなっていた。
それの破壊を決意した企業傭兵連合によって破壊されたというわけだ。
ミリアル「「だが私の秘密漏らしたのは誰だ?あのクソ蝗は秘密を知った人間を許さない、そして私の周りには監視用のナノマシンが汗から散布されるようになっている、どうなっている?私が知れない秘密なんてないはずだ」」
どこかあの時のKEYを思い出したエアは少し笑いそうになってしまった、だが表情には出さない、彼女は破壊ではなく平和を願っているのは明らかだったからだ。
???【それは私だ、久しいな、ミリアル、ルシア、ミアル】
ロニーの持った通信機器の画面が起動され、そこに映し出されていたのはピラミッド状に並んだ王冠が並んだエンブレムだった
ミリアム「「その声は……雷帝ですか!?第621世界線の!?死んだはずでは!?」」
ロニーはピクっと反応する、ウォルターもエアもピクっと反応する、何か言いたげだが我慢することにしたらしい。
621番目雷帝【あぁ?言わなかったか?次世代に託したと、今は次世代の裏人格として暗躍中さ、キヴォトスの平和のためにね】
ミリアム「「その言い方、620世界線を思い出しますが、悪業は背負っていないようで」」
621雷帝【いや、背負っているさ、平和を願って、そのまま滅んだ世界線の雷帝をね、まぁそれはいい、ウォルターは企画の一部だ……破壊計画ををしたのは私だ、厳密にはミシガンと私とスネイルと各キヴォトス派と言える企業たちだな?】
ミリアム「「ナノマシンの仕様書を知っていた貴方であれば納得です、よく私の居場所が……いや、貴方なら廃材からでも一時間あれば発見装置くらい作れますね」」
ウォルター「そういうことだ、俺が作戦をしったのは本当のギリギリになってのことだ、服などにナノマシンがつくという恐れもあってのことらしい、まさかミシガンから俺を信じてほしいなんて言われる日が来るとはな」
621番目雷帝【そういうことだ、なんせ、基地すら作るつもりがないのに勝手に作られた上に起動すればネームドやテクストと呼ばれるこの世界の楔を断ち切ることができる兵器なんて放っておく理由なんてないんでね、まぁオールマインドはこの世界線から逃げれる自信があったのか参加はしなかったけど、あの者もキヴォトスの崩壊までは望んでいないのだろうね、まぁあくまで実験材料を大事にするというレベルの話であるがね】
ミリアム「「この世界の楔は今いつです?」」
621番目雷帝【シャーレ計画発足世界線、星外連合侵入時世界線、連邦生徒会長失踪世界線、先生と呼ばれるイレギュラーが来た時の世界線のうちのどれかだ、まぁ君たちが不良生徒をやってくれたおかげで奇跡的な確率の収束にこの999世界線はなりつつある】
ミリアム「「あぁ、それですか、それは私が誘導したことです」」
ロニー「何だって?つまりウォルターやエアの誘導のようなことを無意識化でナビゲートしてたと?」
ウォルター「その誘導は……まさか経験則か?」
ミリアム「「えぇ、老朽化による防衛システムの判断力の低下、サーバーの行方不明、悪しき雷帝の卒業、あるいは死というマザーデータの放置という状況が重なった結果、後述の結果が生まれました……」」
ー【蝗】による先生死亡世界線です
002
ロニー「シャーレの先生の死だって?あのプレナパテス先生みたいなことか?」
ミリアム「「ここは質問してみましょうか、シャーレの先生が我々のことを知ろう、そう考えた時にすることはなんですか?」」
エア【それは……あのバリアも貼れる端末で調べるのでは?……っ!まさか!あのあろなだかA.R.O.N.A.だかのシステムは検索機能も強固なクラスだというのですか!?】
ミリアム「「イエス、エア、あの端末にいる謎の存在はデータシステムとしての貴方並みです、おそらくはそれにお願いしてみたのでしょう、ルシア、ミカルのことを調べて、と。」」
ロニー「なんだそれは……とんだ即死トラップだな」
ミリアム「「ある時から連続して世界線の移動が開始されました、長くて数か月、短くて数週間単位です……総じてシャーレの先生がやってきた日や当番と呼ばれる生徒制度ができた日でした」」
ウォルター「確かに先生は当番にくる生徒のことはモモトークで呼び出していたな、いつの間にか連絡交換していたという生徒も珍しくはないという噂がある……まさかあの端末がやっていたとはな」
ミリアム「「経験則からハウンズとダークバードがいない世界線に限り、そして先生と私たちの目があった瞬間に世界線が【クソ蝗】によって破壊されると分かった、あとは私がゲヘコ、トリコとしての偽証身分を作成し顔と体を完全に隠し、隠れて生活するだけだ……それだけでしたが、人生最後に思い出を作りたいという二人の願いは止められませんでした」」
ウォルター「それでハウンズにか……確かにハウンズなら過去に傷を持った生徒も多い、過去を調べられたくないと言ったら誰もがそれに頷くだろう、だが諜報部はどうした?あそこは優秀だ、企業レベルとは言えないがそれなり以上はある」
621番目雷帝【そこはこの私がやった、こう見えて頭の性能は裏の人格の時は雷帝据え置きさ、数百年分の平行バックアップがある私に勝てる存在なんていないさ、それに今でもやろうと思えば若い雷帝時代に作ったシェマタ以上の代物を作って量産やろうとも、この私はやらんがな】
ロニー「作ったら絶対ぶっ壊すからな」
621番目雷帝【それは頼みたいところだね、いつ卒業した、あるいは誰かがさせた世界線の雷帝が殴りこんで来ないかヒヤヒヤもんだよ】
ロニー「格安で受けてやる、ハウンズメンバーは誘わない、傭兵でやる」
ミリアム「「貴方だったのですね、雷帝……よかった、生きてて、いつか面と向かって出会えるといいですね我々に」」
621番目雷帝【フッ、そうさね……おっと、そろそろ誰かが気づきそうだ、私はおいとまするよ……この体だと夜眠くてしょうがないよ、なんでこんな幼い体にしたもんかねぇ……ふわぁ】
ブツリと画面が消える、通話が終了したようだ、何か、人型のエネルギー状としか言えない者が寝ている二人から浮かび上がる
エア【変異波形……!?】
ミリアム「「これは我々の体に作られた……作り出されてしまった私の意志、神秘ともいわれるものの残滓、ウォルターを攻撃したのは私です、私の意志なんです、どうか二人には……!」」
ロニー「お前は」
ウォルター「いや、俺が言おう……俺が伝えなければならないことだ。」
ウォルターが一歩前に出る
ウォルター「残念ながらミリアム、お前の提案は断らなければならない」
ミリアム「「っ!」」
ウォルター「三人そろってのお前達なのだろう、三人共に長年連れ添ってきたのだろう、ならば三人共にいなければダメだ……ミリアム、お前の罪を許そう、何、反抗期のようなものだと思ってしまえばいい、軽い反抗が少々行き過ぎただけ、お前達はそう認識すればいい。」
ロニー「監視カメラの映像もエアが細工した、安心しろ、コエとクルミはお前達自身が説得しろ……まぁ簡単だと思うがな」
エア【何せここの監視映像はハウンズの皆が見てますからね】
ミリアム「「はは、二人の独り言も筒抜けということか、これは恥ずかしいな……おや、我々にも恥ずかしいという感情が残っていたのか……はは、意外だな」」
ウォルター「事後承諾だが621番目雷帝から情報を貰っている、あまりに膨大すぎて編纂が必要だろうが……これを公開してもいいか?仲間が仲間を、俺が子供をよく知るために」
ミリアム「「……えぇ、ですが私だけはデータだけの存在になってしまうでしょう、私は防衛のための意識、防衛する必要がないとなれば……私は消え」」
ロニー「そんなことを俺たち、ハウンズが許すと思っていたのか?」
ミリアム「「……ぇ?」」
エア【現在情報開示を求め……あ、すぐ送られました、貴方はKEY、いえケイという存在を知っていますか?】
ミリアム「「あのアリスという少女の……AL-1SのプロトコルATRAHASISの助手のAIですか?」」
エア【情報が古いです!私の友人でもあるケイは今機械の体になって活動しているゲーム開発部の新入部員です!それにあなたの救出に関する情報を持っていました、ケイとオールマインドと621番目雷帝のキヴォトス滅亡エンドの情報に興味深いものを発見しました、神秘のアーカイブ化、そしてキヴォトス全土の機械金属化、これを応用すれば二人の合体神秘である貴方も物体化できるはずです!】
RAD医療技術者「しょーじき言って私はなんもわかりませんでした!世界線ってなんですか!?雷帝ってなんですか!?神秘ってなんですか!?ですが今わかることは貴方がた三人は死にません!今全企業への技術開示をお願いしています!頼れるのはかは正直言ってわかりません!何コーム要求されるかもわかりません!ですがRADは貴方がたを助けます!一がある技術を何百倍!何千倍にもするのがRADの本域ですからね!カーラも笑いながら納得するでしょう!」
ロニー「ハウンズも全体が動いている、まぁ通信機から聞こえる泣き声がすごいことになっているが」
エア【ウォルターが私達を先生に預けようとしたときもこれくらいみんな泣いてましたよね、ウォルターがいいーって、ロニーも】
ロニー「だって事実だし」
ウォルター「621……」
ミリアム「「私は……我々は、生きていていいのですか……?」」」
全員が瞬時に勿論と言う。
私は泣いた、静かに、二人を起こさないように、だが感情が伝わるのか、二人とも涙を流しながら笑顔だった。
あぁ!なんて楽しいんだろう!実験は順調だ!
未来で見たイレギュラーを二人も獲得できるなんてなんて幸運なのだろう!
彼女らの特別な血液から取り出せた相対するエネルギー!
神秘から抽出した元となった神話のテクストの武器!
これは無限の可能性を秘めている!
精神も肉体も素晴らしい!いくら壊しても再生する!燃え盛る永久的に動く灯のようだ!
だが残念なことにイレギュラーな彼女らはこの第620世界線にしかいないらしい、まだ存在が確認できていない999番目の世界線ならいるだろうか?
あとの世界線の彼女らは正直言って凡人だ、この世界線移動自己防衛装置の犠牲となってもらおう。
どうせ私を利用して得た技術だ、問題なかろう、あとの彼女らに価値はない。
しかしこれは面白い、血液を解析して作れたがクローン技術らしい、私のクローンも作れるだろうか?
だが問題なのは私自身には何もないことだ、これ以上ない高身長なくらいか?あと筋肉もあるな、だがネームドと呼ばれる半分ほどイレギュラーな奴らには勝てないんだよなぁ。
そういえば別次元の私は角も羽も尻尾もあるらしい、しかも頭もいい、だが私達との意識混濁はしていない、幼すぎるから届いていないのか電波が?
ふむ、思いついたが私の遺伝子強度を三倍にしてみるか?私が三人ほど集まれば勝てると電子計算装置には出ている。
あとは適当に放逐すれば試練を与えられて帰ってくるだろうか、このキヴォトスに。
あとは平行世界戦移動装置に深海基地防衛用の相対エネルギーとも言うべき無限物質から発想を得た技術漏洩防衛設備も作った。
これで彼女たちは生きる!生きてこの世界を見届ける!そうした技術情報はこの自販機型AIに偽装したサーバーに登録されていく!
あぁ、幼い時に先生とか傭兵とかになりたかった純粋な私はどこへ行ったやら、ははは、ははは!はははははははは!!!