「・・・・・・・」
「何で魔女がこんなところに…」
「公衆の面前でよく顔を出せたものね…」
「恐ろしい…!!」
(あーあ。この喫茶店ももう行けないかな~。ここのケーキ美味しかったのになぁ~)
トリニティ総合学園自治区内にある喫茶店の中で、周りから嫌な視線を向けられているのは、聖園ミカである。彼女はエデン条約締結から始まる一連の事件によってティーパーティーのホストの権限を剥奪され、奉仕活動を義務付けられている立場である。
「でもまぁ…しょうがないか…自分のせいだもん」
「hey、ミカー!久しぶりネー!探しましたヨ」
「こ、金剛ちゃん…」
「いつもの場所にいないから探すのが大変だったネ」
ミカがお気に入りの喫茶店にもう行けないなとため息をついていると、彼女の元に巫女服のような服を纏い、金属製の特徴的なカチューシャを付けた茶髪の少女が目の前に現れる。彼女の名は金剛型戦艦1番艦金剛の記憶を受け継ぐ艦娘である。ミカと彼女が一連の事件の後に会うのは今日が初めてであった。
「キャー金剛お姉さまー!」
「Hi!マイシスターたち! Burning Looove!チュッ!チュッ!」
「まぁ!金剛お姉さまが私に投げキッスを!」
「・・・・・・」
金剛はトリニティの生徒からの人気があり、皆から「金剛お姉さま」と呼ばれ慕われている。そんな彼女が何故「裏切り者の魔女」になった自分に、いつもと変わらず声を掛けるのかミカは不思議であった。
「金剛お姉さま、「魔女」のことは放っておいて私たちと、お茶を…」
「ノンノン!私はミカとお話に来たネ。Sorry、また後日ネ」
「えっ!?ちょっと…」
「Hey!ミカ、ついて来て下さいネー!」
「わわっ!?ちょっと!?」
金剛は他のトリニティ生にお茶会に誘われるが、自分はミカとお話をしに来たと言い彼女の腕を掴む。いきなり金剛に腕を掴まれたミカは困惑しつつも、彼女について行く他なかった。
「やっと2人きりになれましたネ」
「・・・・・・」
「大丈夫ですカー?最近全然会えてなかったから、心配してたんですヨー?」
「あはは…私は大丈夫だよ…」
ミカが連れて来られたのは金剛のお気に入りの古びた喫茶店であった。この喫茶店はトリニティの若者たちからは注目されておらず、もっぱらお年寄りがよく来るようなお店である。金剛はミカの現状を鑑みて、2人になれる場所を選んだのである。
「大丈夫じゃないでショ?」
「・・・・・・」
「今のミカは無理して笑ってるネ。センセイから事情は聞いてるの。今ミカが一番辛いって知ったから、急いで会いに来たんだよ?」
「金剛…ちゃん…」
そして金剛は先ほどの笑顔から打って変わって、真面目なトーンでミカに語り掛ける。金剛は先生からミカの現状について先生から聞いて、彼女のために急いで会いに来たと語る。その様子はさながら彼女の母かもしくは姉のようである。
「全部ワタシに話して欲しいデース…」
「私のせいで…私のせいでみんなが不幸になった…私があんな事しようとしたから…!!」
「うんうん…辛かったですネ」
「私のせいでナギちゃんとセイアちゃんを傷つけて…それで…!!」
「もう、大丈夫。私がついてマース」
金剛に話して欲しいと言われたミカは、涙を流しながら自分が犯してしまった過ちについて、その後悔を語る。金剛はそんなミカのことを、ただただ優しく包み込むように励ましていた。
「ごめんなさい。ミカがそんなに辛い思いをしていたのに、私は気づかなかったし、傍にいることもできなかった…」
「ち、違う…違うの!!私がバカだったから…!!」
「いいの。もう苦しまなくていいの。今度はちゃんと私が護ってみせるから」
彼女は大変なときにミカの傍に居なかったことをとても悔やんでいた。そして金剛は二度とミカにこんな思いをさせないと、固く誓っていたのである。
「ねぇ、なんで?なんでそんなに私に優しいの?こんな問題児なのに…」
「手のかかる子ほどカワイイって言いますからネー」
「こんな私に金剛ちゃんが優しくする必要なんてないよ!私なんかに構うより…もっと…」
「そんなこと言う子をほっとけるワケないでショ?」
「・・・・・・・」
ミカはこんな自分のことを優しくする必要はないと金剛に訴える。だが金剛は、頑なに彼女のことを放って置かなかった。
「ワタシにも妹が3人いるの。「比叡」、「榛名」、「霧島」。みんな大切な私のカワイイ妹たちデース」
「その話ならもう100回くらい聞いたよ…?」
「でも、ワタシは「比叡」と「霧島」を守ることができませんデシタ。一緒に戦っていた妹の「榛名」を独りぼっちにして、寂しい思いをさせてしまったネ」
「それは…初めて聞いた」
そして、金剛は古の自分の記憶をミカに語りだす。金剛の妹である比叡と霧島の2人はそれぞれ金剛よりも先に沈んでおり、彼女はそれを悔やんでいるのである。そして残りの1人であり、金剛と作戦を共にしていた榛名を残して沈んでしまい、寂しい思いをさせたことも同様に悔やんでいた。
「だから、ワタシはミカのことも放っておけないの。それに、貴女は私の特別だから」
「特別…?」
「初めて会ったとき言ったデショ?」
『Hey!そこのカワイイカノジョー!!』
『えっ!?何…?誰…?』
『ワタシは英国で生まれた帰国子女の金剛デース!その髪型、ワタシとお揃いで素敵デース!』
『え?アハハ…ありがとう。金剛ちゃん面白いね!!』
「そういえば…私の髪型褒めてくれたっけ…」
さらに金剛はミカのことは特別な存在だと言い、ミカは彼女と初めて会ったときのことを思い出す。彼女たちの共通点といえば、その特徴的なお団子へアーである。金剛とミカはそこから仲良くなっていったのである。金剛は他のトリニティ生たちを一様にマイシスターと呼ぶが、ミカだけは特別な存在だと認識していた。
「ねぇ、金剛ちゃん…」
「なんですカー?」
「こんな私でも、幸せになれるかな…?」
「もちろんですヨー!ミカは私のカワイイ妹ですからネー!」
「フフフ…ありがとう。お姉ちゃん」
ミカは金剛にこんな自分でも幸せになれるかと尋ねると、彼女は自信満々に自分の妹だからなれると答える。その後初めてミカは金剛のことを「お姉ちゃん」と呼んだ。
「さぁ、湿っぽい話はここで終わり!ここからは楽しいお話をしまショ?」
「た、楽しいお話…?」
「楽しいお話と言えば…恋バナでデース!ミカはセンセイのことが好きなんでショ?」
「うえぇぇぇ?な、なんで知ってるの…?」
「お姉ちゃんは何でもお見通しですヨー?」
金剛はミカとの湿っぽい話を終わらせて、恋バナをしようと言い始める。そして金剛はどこで知ったのか、ミカが先生のことが好きなことを知っており彼女を驚かせていた。
「どんなところが好きなんですカー?」
「えーっと…優しくて、私のことを「お姫様」って言ってくれたの」
「「お姫様」ですカ…。羨ましいネー、コノコノー」
「えへへ…恥ずかしいな…」
Fin